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白樺勘定男
≫外伝
 空高く飛んでいる鳥は繰り返し繰り返し鳴いていた。鳶か、と二人の男はほぼ同時に呟く。すると、浪人風の大柄な男が口を開いた。
「俺は、生まれ変わったら鳥になりたいと思っていた」
そして、大柄な男──三之助は目を細めて鳥を見た。薬売りの商売道具だろうか、その大きな背には柳行李が背負われている。
「三之助は変わっているな、鳥になりたいだなんて」
「どこか可笑しいか」
三之助の隣を歩く小柄な男──数馬も、つられて飛ぶ鳥を見上げた。
「自由に飛んでいたら、見たくない物まで見てしまうかもしれないではないか」
「見たくない物」
例えば何だ、と三之助が促す。すると、数馬は足元の仏を避けながら言った。
「海──とか」
山道には、野党に襲われたと思われる死体が転がっていた。女、子供、老人、まるで容赦が無い死体の山と血の海の脇を二人は歩く。歩幅が思うままに広がらない数馬の草履の縁に、べたりと血が付着した。死体も見慣れている様ではあったが、改めてそれを見ると顔を顰める。
「海は青い、と信じているからな」
「ああ、海は青いさ」





(了)


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