白樺勘定男 ≫跋の幕 やがて、白樺城と城下は活気を取り戻したと風の噂が二人の耳にも届いていた。 「数馬、次は何処へ行きたい」 「何処でも良いさ」 「やはり、定職を見付けるべきだろうか」 茶屋の印が風で翻るのを見ながら、小柄な男は柳行李を小脇に団子を串から口へと運ぶ。 「白樺城へと戻るか」 「それは」 新緑から光が漏れ、切れ長の目をした男は更に目を細めた。以前は不細工だの怖いだのと言われてきたが、面構えは優しく万人受けをする様になっていた。 「わたしも、嫌だ」 面を見合わせて、二人は笑う。 「これから暑くなるな。北へ行くか」 「それは良い、わたしが暑いのを嫌いだと覚えていたのだな」 「まあな」 二人が富山へと向かった事を、誰も知らない。 「三之助、行李を背負ってくれ」 「仕方無いな」 (了) [*戻][進#] |