白樺勘定男 ≫拾肆の幕 しかし、どの様にあがいたとしても次の日は来る。すっかり気分の良くなった俺は、桶と手ぬぐいを手に井戸端で汗を流していた。 「榎戸」 「ぎゃあぁあああっ」 井戸端で顔を洗っていると、姫が現れる。いや、姫と呼んで良いのかは解らぬが、皆が未だ姫と呼んでいるので俺もそれき便乗する。 「煩いぞ、榎戸」 「は、はあ、申し訳ございませぬ」 「……榎戸、どうしてその様にわたしから離れるのだ」 無意識に、後退りを繰り返していたらしい。姫は縋る様な目で、俺を見ていた。 「わたしは、悲しいぞ榎戸……。皆、遠巻きや見てくれでしか判断せぬ。榎戸まで、わたしをそう扱うのならば……わたしは」 「いえ、決して左様なわけでは……」 上半身をさらけていた、俺の肌に触れる姫。その白く弱々しい手は、確かに女のものだった。しかも、甘く柔らかな香り。世の男は、これに騙されるのかと実感する。 「わたしは、お前が」 [*戻][進#] |