龍と花
さようなら我が家
「準備できました」
「それだけでいいのか」
家から持ってきたものは、旅行鞄一つだけだ
龍也がジトリと俺を見てきた
「これだけです」
「もう・・・連れて来ねぇぞ」
「大丈夫です」
そう言うと、なら乗れ。と言われて車に乗り込む
発進した車は来た道とは違う方に向かっているらしい
「帰らないんですか?」
「あぁ、まだ寄る所がある・・・なぁ、楓」
「はい?」
顔をこちらに向けないまま、隣に座っている龍也が聞いてきた
「お前のバイト先の店長、どうだった?」
「?」
突然どうしたんだろう?
「はい、いい人です。優しいし・・・」
因幡さんのことを思い出して自然と頬が緩む
なんでそんなことを聞くのかと首を傾げていると、一瞬龍也がこちらを向いた
「・・・っち、クソが」
「?何か言いました?」
龍也が何か言った気がしたので聞いてみたが、いいや。と首を振るだけだった
そこから車を静寂が包み、静かに目的地に向かって行った
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