鬼(龍?)のかく乱(2)
「こら・・放せってば」
「てめぇ・・ぁに・・・・逃げて・・んだ・・・」
「龍成、手放してやって。診察できないでしょう」

そう言っても龍成はしっかり握った俺の手を放そうとしない。



「逃げないって!!放せってば」
「うるせえ・・・・てめぇは・・ここに・・・」
「はいはい、コータは横にいますから。とにかくまずは浴衣に着替えさせたいので、コータの手、放してください」

その言葉にようやく離れた手はバタンと畳に落ちた。どうやら力の限界が来たらしい。
椎神と助手の2人がかりで着替えさせている最中、亀山という先生が俺に話しかけてきた。



「おい、坊・・・お前さん若のコレか?」

そう言いながら亀山先生は小指を立てた。
コレ?・・・小指?・・・・

「コレって・・・?はあぁ!!」

俺は医者の立てた小指の意味が分かり、情けない声をあげてうろたえた。

「お前さん京極の若のコレなんじゃろ」

ニヤニヤしながら小指を立ててヒヒヒ・・・と笑う。

「ち、違います!!変な事言わないでください。あれは・・・」

そりゃあさっきの・・・あんなところ見られたから変に誤解されて、押し倒されていたように見えたのかもしれないけど、俺達はただの同級生でさっきのはなんでも無い、あれはいつものことでふざけていたんだ!と真剣に訴えてみた。

「そうか・・・・・・・まぁ、お前さんがそう言うなら、それでもいいがな・・・」

本当に分かったのかまだ誤解しているのか定かではないが、龍成の着替えが終わったようなので先生は大きなカバンから聴診器を出し診察を始めた。




目を閉じて相変わらずゼーゼーと呼吸が荒い。
風邪か?あいつをここまで不調にさせる風邪菌ってすごい強力そう。あとでうがいしておこう。うつったら困るもんな・・・

「お、い・・・タロ、お前は・・」

「こりゃ、若。しゃべると心音が聞きとれん。静かにせんか」
「うる・・せ・・ジジイ・・タロ・・・」
「おい、お前さん。終わるまでちょいと外してくれんか。このままでは診察ができんわい」

俺がいると龍成が落ち着かないらしく、亀山先生に部屋から出るように言われた。

「てめ・・・クソじじ・・・なに勝手、な・・」
「龍成、終わったら来ますから。おとなしく治療を受けてくださいね。行きますよコータ」
「し・・がみ・・てめぇ・・・・・・・タロ・・置いて・・・け・・・・・」

それでも虎太郎から視線を外さず、医師を押しのけて起き上がろうとする龍成を、先生と助手さんが上から押えつけた。

「ほれ、アレを出せ」
「はい」

亀山先生は助手さんから注射器を受け取り、消毒もせずにブスッっと龍成の腕に突き刺した。

「わっ・・」

俺は暴れる龍成に思いっきり注射した様子にびっくりして、思わず声が出たが、そのまま障子を閉められ、椎神に連れ出された。

「ねえ、椎神、今の・・・・」
「どうせ鎮静剤の類でしょう。龍成って・・・もう本能で動いてますよ」

「本能?」

下校時からおかしいとは思っていたけど。そんなに悪いのならどうしておとなしくしないんだろう。無駄な体力使っちゃって。

「それにしても・・・・・・・心底愛されてるよこれは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・覚悟してねコータ」

「あ・・・ああ???」

愛って・・・なに?
何に対して覚悟が必要なんだ?
そんな気色悪いことあるか==========!!!


「き・・気持ち悪いこと言うな!」


椎神はクスクス笑いながらちょっと早いけど、今のうちにごはん食べちゃおうと言って、気持ち悪さに打ち震える俺を振り向きもせず、広間に向かって俺を引っ張て行った。



ん?ご飯?
俺・・・いつ帰れるんだ?

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あきゅろす。
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