友達なんだね(2)
月曜日。
俺の謹慎も解けた。龍成達も京極の家から直接来るというので、1人での登校は今日が最後になる。
教室に入ると同時に俺に視線が集まる。覚悟はしていたけど、やっぱりちょっと居心地が悪い。
「よ、おっす。綾瀬」
最初に声をかけてきたのは俺を殴ったやつ。するとさっきまでの冷たい雰囲気がパット崩れて次から次へと、「おはよう」とか「元気だったか」とか「顔酷いな・・・」とか声をかけられた。なんだか照れくさい。
「これ、休んでいる間のノート。京極君達の分もあるから。女子みんなで分担したの」
駆け寄って来た女子達が、3冊の学習ノートを手渡してくれた。中を見ると色とりどりのペンで目がチカチカするほど彩色され、マーカーは引き過ぎてどこがポイントなのか分からないけど・・・
「あ・・ありがと・・」
よかった・・・龍成、みんながお前達を待ってくれているよ。
心が温かくなる。デビル7組。始めは大嫌いだったけど、今は違う。このクラス好きになれるかも。
「みんな・・・ありがとう・・・ほんと・・・・ありがとう・・」
俺は中学校で初めて涙を流した。
「泣くなってば、綾瀬・・ってげ====================」
みんなが驚愕の声を上げ固まる。何事だ?
俺の後ろの方に、教室中の視線が集まる。なんだ?と思って振り返るとそこには・・・教室のドアのところには、いつものようにニヤニヤ笑う龍成と、天使の笑顔の椎神がそろって立っていた。
「あ・・・」
戻って来たんだ。よかった・・・
そう思ったのもつかの間、2人のにこやかな形相が一気に崩れた。
俺の顔を、目を見開いて見ている。何かついてるのかな俺の顔?
「おい、タロてめえ、何だそのツラは、あぁ!!誰にやられやがった」
「コータなんで朝から泣いてるの、誰が泣かしたの」
響く怒声。驚愕するクラスメイト。そういえば俺の顔って悲惨な状況だった。でもこの涙は感動の涙なんだけど。
「こ、これは」
言いかけた時バタバタと音がして、あの不良グループ8人組が床に座り込み、なんと龍成達に向かって土下座している。そして頭を下げたままリーダーが叫んだ。
「わりい、龍成、椎神!!綾瀬のは・・・・・・・・・・・俺達がやった。でもな、ケンカはその、お互いさまだったし、それに先に手を出したのは・・・」
言ってる途中なのに入口の机が吹っ飛んだ。
それを合図に女子は即座に廊下に避難し、他の男子もあわててそれに続く。俺のケンカは止めても、龍成は止めないんだな。でもその考えは懸命だよ。誰だって命は惜しい。
「俺がいねぇ間に、好き勝手やってくれたな。てめえら覚悟はできてんだろうな」
「まって、龍成、先にケンカしかけたの俺だし」
「うるせえ、てめぇも後で躾し直しだ」
「げ!!でも、俺・・・・・・そうだ、俺今回はケンカ、勝ったよ!負けてないから、ペット条項にも違反してないし」
「うるせえぇ!!てめえは15回だ!!体でも洗って待ってろ」
(「ぎや======、15回も噛まれたら、し、、死ぬあれ・12回に減ったんじゃなかったけ?」)
今までの最高記録をマークした宣言通り、後々15回噛まれることとなったが、休んだ理由はこっちにあるからと、椎神が助け船を出してくれた。でもやっぱり椎神は龍成側の人間だから俺に得するようにはできてなくて、
「一日3回ずつの5日払いね」
それは分割払いに変わっただけだった。
吹っ飛ぶ机、替えたばかりのピカピカの窓ガラスも割れる。龍成から逃げる奴ら、そして結局全員つかまりボコられる。騒ぎを知ったマッチョマンが職員室から一直線に走ってくる。
ああ、いつものデビル7組だ。
そして、俺もいつものように止めに入り、たいして役に立たないストッパーぶりを発揮して見せた。
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