ペット記念日
「ぐっ、いて、やめ、、」


ギラギラした飢えた野獣のような眼をした龍成が、見下したように俺を見る。





「おい、タロ、誰が無関係だって?」

「・・・すs・・・す・・すいません!ごめんな・・さい。あれは、・・・・・・・・・・・・・・・間違いです」

「どう間違えたって?」

「あ・・僕たちは・・・か、関係がありますぅ==」
「どんな」
「友、、友だちぃ」


久しぶりに涙目になった俺に段々顔を近づけてくる。

「友達かぁ、そういやぁ昔タロの親にそんなこと言ったなぁ」

懐かしい記憶を思い出しながら、血走った目が少し戻ったかと思いきや、肩を踏んでいた足を今度は両手に変えて俺に覆いかぶさって来た。



「なぁ、タロ、お前との付き合いも結構なげえから、この際友達関係をちょっと変えてみねえか」

「?」
言ってる意味が分からない。友達関係を変えるって、友達じゃなくなるってことか?

「それって、どういうことかな・・・」

想像がつかず、不安気に聞いてみる。龍成は口元をゆるめてニヤリと笑ったかと思うと、目は酷薄な表情のまま不遜に言い放った。





「飼い主と下僕」



「!!!!!!!!!」

「でも、心配すんな。ペットは大事に飼う主義だ」

なんとも嬉しそうに笑いながら、俺の首にその牙を落とした。



ガリッ

「い、いっ!!いたたたぁーー痛い、、痛っ、ぐぁぁ、、」

ひどい。
絶対血が出て切れてる。
こんなにひどく噛まれたのは初めてで、血の匂いが龍成の吐息の熱さに混じって自分の鼻をかすめる。




「俺がタロを飼う。犬はご主人様の言う事を聞け」

ぺロっと、龍成の熱を持った舌が、傷口をしつこく舐めまわす音がする。何で俺がお前の犬になんか、大体舐めてんのはお前で、お前が犬みたいじゃねえか!!



「返事はタロ」

押さえつけられた肩、血がにじむ首、痛み・・・
どうしてこんなことになったんだろう・・・

「ね、コータ。もう龍成に変な事言ったらだめだよ」

俺の横にかがみこんで、噛まれる首を覗き込み、きれいな血の色だね・・・なんてつぶやく。

「甘ぇんだ、こいつ皮膚も、肉も、血も」

首元から牙を離し、下唇に着いた血を舐めとり自分が刻んだ噛み痕を満足気に見る。

「ああ・・・ほんとに甘そうな血だ。噛み痕もくっきり付いちゃったね。でもペット記念日にはいい印だよ」

うっとり赤い傷跡を見つめてペット記念日とか不埒な事を椎神は言った。



返事のない俺に龍成がせかすように声を荒げる。

「また噛むか」

「や、、噛むな」

「じゃ、今日から晴れて俺の下僕、ペットに昇格な」

「・・・・・う」

昇格?こいつの中では友達より下僕が上なのか。
言葉は悪いが、友達の下じゃないから、いいのか?でも、下僕って「僕より下」って書くよな。
こんなことを考えているから、本当に大事なことをいつも見落としてしまうんだろうな。


そして、「無関係」発言のおかげで見事「下僕タロ」になり下がった俺。



それで、話は戻るが、

こんな2人と一緒にいるもんだから、厄介事がどんどん転がってきて、ケンカに下僕にと、無残な中学生活を余儀なくされている。


そしてまさに今、目の前に不良が3人、俺の行く手を阻んでいた。

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