極悪ヒーロー
「な、、何で、、」



僕はまた涙が出てきて、しゃくりあげながら首を押さえて転校生に、

「何・・で・・・こんな・・・・こと・・す・・す・・るの、、」

と、パニックに陥った気持ちを爆発させて言ってしまった。

聞かれた転校生は、また腕を組みうーんと唸った後、ペロッと舌舐めずりをしながら僕を見て信じられないことを言った。



「お前、、、美味かったから」


「!!!!!!!!!!」


転校初日に噛んだお前の肉、柔らかかったし、今まで噛んだ中で一番美味かったと・・・

「あ・・、あんた人・・噛むの」

「俺、龍成な、京極 龍成。自己紹介したじゃねえか。聞いてなかったのか」

あの時は、それどころじゃなかった。ショックで泣いてたし。それに今更自己紹介されても、僕は君の名前を呼ぶことなんて無いよ。



「噛ま・・な・・いで・・よ」

「どうするかな〜。折角助けてやったのにな。そうだ、お礼ってことでもうちょっと味見させろ!」

「ば、バカな事言うなよ・・そんなの無理」

普段しゃべらない僕が、自分の身を守るために必死になって訴えているのに、転校生はそんな俺を観察しながら、舐めまわすように高姿勢な態度で見る。

「うーん。じゃあその代わりに」

噛まない代わりに何をしろと・・・
次の言葉にドキドキしながら、僕は転校生が何を言い出すのか気が気でならない。

「お前さ、しばらく俺に付き合え」

「ふぇ?」

「そばにいろ」

素っ頓狂な返事。だってそうだろう、いきなりなんでこいつはそんな事を考えて言ったんだ。

「そしたらいじめられることもねえだろ」

ニッコリ笑ったって凶悪にしか見えない顔でそばにいろとか言って・・・・・お前の方が怖いんだけど。

「返事はぁ?」

首傾けてかわい子ぶって何聞き返してんだこいつ。
いつまでも返事を期待している。
正直こいつ怖いし、嫌って言ったら僕も殴られるかも知れないし・・・勇気を出して・・・

「ほ、ほんと、に噛ま・・ない?そばにいても・・・、、噛ま・・ない」

念を押す。

「うーーーん。しばらくはな」

「げ、やだ!やっぱやだ」

「じゃあ今噛ませろ、すぐ喰わせろ、5人追い払ったて助けてやったんだから5人分で5回な、よし首出せ」



!!!!!!なんなんだこの獣は!!!!!!



さっき正義のヒーローかっこいいとか思ったけど。

訂正する。

こいつヒーローはヒーローでも、極悪ヒーローだよ!!



「それもやだ==ぁ」

「わがままな奴だな、どっちか選べ」



そして僕は究極の選択を迫られた。



後で冷静になって考えると、そばに居てもいつかはまた噛みたいと言っていたのだから、どっちを選んでも噛みつかれる目に遭うんだ。

それなら、いつ噛まれるか分からない恐怖に震えながら転校生の傍にいるより、痛くて怖いけど5回さっさと噛まれてサヨウナラをした方がよかったのかもしれない。


しかし、選ぶとか選ばないとかそんなが問題ではなかったんだ。



噛みつき癖のある野獣みたいな転校生が、


偶然にも隣の席に座ったのが僕の最大の不幸であり、


たまたま噛みついた相手が美味かったという、常識では考えられない嗜好の持ち主だったことを嘆いて、


僕たちの奇妙な友達?関係が始まった。

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