友達なんだね(1)
「俺に謝っても・・・謝るなら龍成に謝ってよ」

「そ、、、そう・・・だな・・・」

顔が引きつっている。そりゃあ怖いだろう。あいつらに真実を語るのは・・・




一応和解が成立したのかな?仲直りの握手なんて小学生じみたことして「月曜学校来いよ」と言われた。「綾瀬、小学校の時不登校ぎみだったじゃん。今回のことが原因でまたそうなったら俺達ボコられる。いいか、絶対来いよ」そんなことを言われた。

結局龍成が怖いんだ・・・なんて現金な奴らだろう。
でも、さっきの言葉にウソは無いと思う。


『仲間なのに、やなこと言っちまったな』


きっとデビル7組なら、龍成達が帰ってきても受け入れてくれると思う。もしそうじゃなかったとしても、俺だけは今までのままでいてやろう。




謝ってもらえたせいか、こころなしか気持ちがすっきりしている。部屋で携帯を見つめながらここは思い切ってかけてみようと、なけなしの勇気を振りしぼって番号を呼び出した。




まてよ、龍成にするか、椎神にするか・・・




前者はまず電話に出るかどうかが心配だった。あいつが携帯で話しているところってあんまり見たことないし。かかってきても画面見てぶち切ってたし。機嫌が悪いと電話に出ない。携帯の意味が全くないよあいつは。

椎神は豆だし話もまともだから、これからのことを聞くにはこいつの方がいいんだろうな。まず椎神で、ある程度状況が分かってから龍成だな。

そう思って椎神の番号を押そうと思ったが・・・

でも、なんか文句言われそう。



―――――てめえの飼い主はだれだったかなぁ―――――



ああ・・・それもありえる。



俺は結局、繋がらなかったとしても、着信履歴が残るから言い訳になるなと思い、「出ませんように・・・携帯のそばにいませんように・・・留守番電話でもOKです・・・」と矛盾したことを考えながら、龍成のボタンを押した。コール音が5回・・よしよし、出るなよ、出るなよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そばに居ないのかな。
6回、7回・・・・・・・・・10回いったら切ろう。


10回・・・ブッッ!!!



「げ!出た!!」

「ああ?てめえ、開口一発が『げ』って、どういうつもりだタロ」

出ました俺様龍成様!



「い、いや・・・その・・・・なかなか出ないから」

「こっちも忙しいんだよ。にしてもてめえ、今頃電話なんかしてきやがって。しかも何で携帯なんか買ってやがる。色気づきやがって、俺がいない間に好き勝手やってんじゃあねえよ。こら、聞いてんのかタロ」


なんだかいつもより饒舌だね。久しぶりだからかな。

「そっちが連絡くれないからだろ、し、、心配、してたんだからな」

「ああ?」

「その、ニュースで」

「なんてこたあねえ、撃って逃げた奴も捕まえたしな」

「え?」

「まあいい、月曜には帰る。俺がいねえ間どんな生活してたのかじっくり聞かせてもらうからな。それと13回分、いや、土日の分も入れて15回分たまってんだからな覚悟しとけよ」

「何が?」

15回分って何をこいつは言っているんだ。

「はあ?犬のくせに、てめえはほんと物忘れがひでぇ、また躾しなおしかよ」
「言ってる意味が分からないんだよ龍成」

「15日休んだ分喰わせろ」
「な、、なんで。そんなの、おかしいじゃん。だって」

「だっても何もねえ、俺は喰うと言ったら喰う。こっちじゃ我慢してたんだぜ」
「我慢って・・・そんなに噛みたけりゃあ・・・椎神でも噛んでればいいじゃんか」

「クソが、気持ち悪いこと想像させんな。あんなもん喰ったら腹壊す、ありゃあ毒だクソマジイ」

酷い言い様だね。一緒に育った仲でしょうが君達。

「それに休んだのはそっちの都合で俺は何も悪くない。15回もなんて嫌だよ」
「しょうがねえな、じゃあ電話してきたのを割り引いて、12回にしておいてやる」

「なんだよそれ、やだよ。俺何も悪くないし」
「てめえ、なめてんじゃねえぞ」


携帯で話すのは初めてだけど・・・何だかちょっと楽しい。おかしいね。相手は大嫌いな龍成なのに。こいつが珍しくいっぱいしゃべるからだよきっと。面と向かっては言いにくいけど声だけなら、こんなに話しやすいなんて、買ってくれた兄ちゃん姉ちゃんたちに改めて感謝したい。




「おい、怖ぇのがさっきから睨んでるからちょっと変わるわ」


そう言って龍成の携帯から聞こえてきたのは・・・・椎神の声だった。やっぱり一緒に居たんだ。ってか、怖いのか椎神が。あの龍成が?


「ああ!!コータ私達のこと心配してくれたんだね。声が聞けてうれしいよ」


椎神も相変わらず元気そうで安心した。怖いって言ってたけど機嫌よさそうじゃん。

「お姉さんたちからメールもらって、番号は知っていたんだけどね。ごめんね連絡できなくて。龍成の言うとおりいろいろあったからね。連絡は控えていたんだ」

あんな事件だったんだからしかたない。俺も始めは連絡がなくて嫌な気持ちになったけど、2人の声を聞いて安心して、もうそんなことはどうでもよかった。それからたあいのないことを話し、電話を切ったあと、早く月曜が来ないかな、いつもの不遜な顔ぶれと早く会いたいな、なんて柄にもないことを考えてしまった。


人はその場の雰囲気にのまれて、時にとんでもないことを考えてしまうものだ。でもその時、垣間見えた友情にほだされていた俺は、当然真実なんて分からなかったんだ。俺にとっては友情でも、あいつらにとっては・・・・・・・・・・・・・・・そうじゃなかったのかもしれない。

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