全国ニュース(1)
あの二人が学校を休んで今日で3日目になる。






外は雨が降り続き、梅雨に入ったとニュースで言っていたのを思い出した。


『しばらく迎えに行けないから。登下校はくれぐれも気をつけるんだよ。他校のしつこい奴らは龍成が10倍返しで仕返しに来るって脅しておきな。それと、もしも変な奴らと出くわしたら・・・全力で逃げること。いいね。』



そう言って椎神から家に電話があったのが二人が休む前日の夜11時。周りはほとんどが携帯を持っているが、うちは高校生になったらという決まりがあるので早く来年にならないかなと携帯を手に入れるのが待ち遠しい。

今までも時々休むことがあったが、3日連続は珍しかった。



「おい、綾瀬。あいつらどうしたんだ?」

いつも龍成にくっつきたがる危ない連中も気になるらしく、椎神がそばに居たら俺には声をかけない奴らがここぞとばかりこぞって理由を聞いてきた。

「知らないよ。あいつらの休みの理由なんか」

彼らにとっては、龍成+椎神+綾瀬でワンセットなのでここは当然虎太郎から情報を得ようと、他のクラスの者達にまで声をかけられた。しまいには教師にまで。
担任の先生も知らないことをどうして俺が。



担任が言うには、初日の朝、龍成と椎神の保護者と名乗る人からしばらく休むと連絡があり、それ以降音沙汰がないそうだ。

「保護者?ああ・・・もしかして山城さん?」
「なんだ、綾瀬。お前やっぱり知ってるじゃないか」
「知ってるって言っても、話したことなんてほとんどないですよ。遊びに行ったとき何度か顔見たくらいで」

先生は俺が山城という人物を知っていたことに驚いて、「さすが綾瀬」と何が「さすが」なのか分からないが、妙なところで納得された。

「今日も電話したんだが、その山城さんに連絡がつかなくてな。お前ちょっとあの二人に電話してくれないか」
「え!!なんで」

担任のいきなりの頼みごとを俺はきっぱり断った。

「いやだ。なんで俺が」
「お前ら仲がいいじゃないか」

「それは、先生の勘違いです。俺達は仲良くなんてありません」
「そんなこと言わずにな、頼むよ綾瀬〜友達なんだろ〜」

マッチョな体育教師が両腕をくねらせて生徒におねが〜いとか頼むなよ。気色悪い。

「先生がかければいいだろ」
「あいつら調査票に山城さんとこの電話番号しか書いてないんだ。緊急連絡先も無し。よって頼れるのはあいつらの携帯のみ、お前知ってるよな」

「知って・・・ますけど・・・じゃ、あいつらの携帯の番号教えますから」
「さすが綾瀬。やっぱり携帯の連絡先も知ってるじゃないか〜だからこそ、綾瀬にかけてほしいんだ。よ!元気〜とか言ってさ、いつ登校するのか聞き出してくれ」

「すぐ、メモして渡します」
きっぱりと言い渡すが

「俺はかけんぞ。かけるのは綾瀬だ」
担任もきっぱりと言い返してくる。

「じゃあ、連絡とれませんね」
「どうして、友達に電話するのがそんなに嫌なんだ?仲はいいはずなのに、ケンカでもしたか?あ!・・・分かったぞ、お前それツンデレとかいう奴だろ」

「はあぁ?」
「知らないとか、電話しないとか言って本当は心配なんだろ。そうに決まっている。あれだけ一緒につるんでいていきなり連絡もなしに休むから、お前すねているんだろう」

どこをどうやったらそういう解釈になるんだ。この熱血バカムッチョマンは!
友情とか、青春とかで熱くなりすぎて脳みそ溶けてるんじゃないか?それとも梅雨でカビでも生えたか?

「俺、別にすねたりしてませんから。それとそんなに仲がいいわけでもありません。絶対連絡なんてしませんから」

怒った俺は担任を振り切って家路を急いだ。

冗談じゃない。何がすねているだ。ふざくんな。
あいつらが居なくてせいせいする。俺にとっては天国だね。
なのに先生何勘違いしてるんだ。これだから思い込みの激しい奴は・・・それにしても・・・ツンデレって何?


ムッチョマンの謎の一言は虎太郎にはよく分からなかった。

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あきゅろす。
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