花火のあとの男子会
夏休み最後の楽しいと思っていた花火を楽しんでいるのは俺だけのようで、椎神は表情が冷たいし・・・すでに縁側に座って花火を止めていた龍成はこっちを睨んでるし、なんで?



俺何か悪いことしたか?



なんか府に落ちない。ムカムカする。なーんにも理由が思いつかない。クソッ!
いいさ、俺は俺で楽しもう。気なんて使ってられるか!!

そして連続打ち上げ花火に引火した。

真っ暗な夜空に上がる一筋の光。
一瞬何も見えなくなってその直後、夜空に光の花が咲き、真っ黒な空に溶けて流れながら消える。そして後を追うように次の花火が音を立ててそれに続く。


「すげー、兄ちゃん達にも見せたい。あーみんなで早くやりたいな」

「コータ」

この感激を家族に伝えたい、早く見せたい、一緒にやりたい、だから帰りたい。全身でそう訴えていた虎太郎を、椎神は冷やかな目で見据えた。

「そろそろ花火は終わりだよ」
「あ、うん、面白かった」
「そう、よかった、コータが楽しんでくれて」
「何か、俺ばっか花火して、悪かったかな」
「・・・・・・・・・・・・いいですよ・・・・・・・・・・・・今度は・・・・・・・・・・・・・私達が楽しむ番ですから」


まだ、何かするのかな。



花火を片付けながら、少しだけ椎神の機嫌が戻ったように感じた。

龍成は片付けもせず、どこかに消えていた。自分の部屋に戻ったのかな。

椎神も珍しく俺を置いたまま、どこかに行ってしまった。


2人とも機嫌が悪い?


そして1人残された俺は、煙と汗と手に付いた火薬のにおいをきれいさっぱり洗い流そうと、嫌いなこの家の中で唯一好きな場所である、風呂場に向かった。







本宅の隣に併設する、別宅にある風呂は大きい。うちの家族が7人全員で入っても大丈夫な広さだと思う。どうしてこんなに広く作ったんだろう。贅沢というか、お湯がもったいないと素直に出た疑問に対して、

「だって、組長が愛人と入るならこれくらいの広さが必要でしょう。3,4人くらいで一緒には入るんじゃないの、面白そうだよね」

なんてことを言うんだこいつは。俺は耳まで真っ赤にして、固まった。

「コータって、うぶだね」
「椎神がおかしいんだよ。そんなことあからさまに話す方がどうにかしてるって」
「これくらいのこと何が恥ずかしいの?」
「赤裸々」
「学校じゃもっときわどい事話すでしょ」
「俺話さないもん」
「へ〜免疫なさ過ぎ、あは、でもコータらしくていいや」


のぼせあがると鼻血が出る。そんな中学生男子は大いに興味があり盛り上がるのが性的な話。男が2人集まれば、Hな話で花が咲く。
確かにそんな話はしょっちゅうだが、俺は最後まで話に参加したことはない。だって恥ずかしくって・・・
中には女の子とHした事がある奴もいて驚いた。未知の世界の話に、顔が真っ赤になったのをいじられて「綾瀬おもしれえ、もっと教えてやろうか」なんて言われる。エロ本回したり、DVD鑑賞に誘われたり、果ては自分の息子を見せ合って誰が一番でかいか決定戦とかいうアホな誘いも受けたことがあった。

椎神達は、そう言うのを普通にやってるんだろうな、でも俺はパス。まだ興味ないし。高校生になったらがんばろう。(何を?)
この夏、青春を謳歌する友人達は童貞を捨てると息巻いていたが、夏休みももう半分終わっている。その野望を達成できたのは何人くらいいるんだろう。そして、2学期になったらまた、卑猥な話で盛り上がるんだろうな・・・




そんなことを考えながら風呂の脱衣所に入ると、素っ裸で風呂に入ろうとしていた椎神と出くわした。

「あ、、ごめん」

びっくりして目を反らし、脱衣所から出ようとした。

「コータも一緒に入ろう」
「え、あーーーでも」
「男同士恥ずかしいことなんて無いじゃない。それとも・・・・コータは何か意識してるの?」
「そ、そんなんじゃないし」
「じゃ、いいじゃん。ほらほら」

椎神は前をタオルで隠しもせず、俺の手を引っ張って花火の煙臭いシャツを脱がせにかかる。

「自分で脱ぐってば」
「はいはい、じゃ、待ってるね」

待たなくていいって。

ああ、、、最後は思いっきりのんびり風呂を楽しもうと思っていたのに。
ま、風呂は広い。人と入るのは嫌だけど仕方ないか。だいたいここ椎神達の家だしな。

平気で人に見せる自信はないので、腰にタオルを巻いて、浴室に入った。




「・・・・・・何で龍成までいんの?」



湯煙の中、体を洗い終えた様子の龍成が、広い風呂のど真ん中に両腕を浴槽にかけてくつろいでいた。花火の後、急にいなくなったと思ったら、先に風呂に来てたのか。

「ああ?あんだてめえ、ここは俺の家だ」
「はいはいそうでした。すいません」
「コータこっちおいで、背中流してあげるよ」

きびすを返して風呂場から出ようとした俺に、すかさず声を掛けてくる。椎神は桶やイスを準備してくれていて、ここで出て行くのも何か変なので、仕方なく浴槽に近づきイスに腰を下ろした。

「コータって日に焼けてない所は肌白いよね」

洗いながら椎神はスベスベしてそう触っていい?なんておちゃらけている。別に腕くらいならかまわないと言うと、喜んであちこちさわり出す。
そしてついでだと言って、スポンジで腕や背中を洗い始めた。

「も、そこまで・・・あとは自分でやる」

あいつ調子に乗って胸とか腹まで洗おうとするからそこは死守。
パパッと洗って風呂に入ろうとすると、腰に巻いていたタオルをはぎ取られた。

「何すんだ!」

だいじなところがあらわになり、隠すためにしゃがみこむ。

「風呂エチケットだよ。タオル巻いて入るなんてそれこそ非常識なんだよ」

いつも非常識なことばかり言っている椎神に、逆に言われるなんて。
取られたタオルを諦めて、そそくさと湯船に浸かる。熱すぎず、ぬるすぎずいい湯加減だ。




広い風呂の中央に龍成、俺は奥の角っこまで進み、椎神は俺の前に、広い風呂の半分に3人固まって入っている。この図は何だかこの広い風呂にしてはもったいないだろ。

「コータって、乳首もピンクだけど、あそこもピンクでかわいいね」

「ぶっつ!!げっほ!!がほっつ!!」

こいつはまた、何のためらいもなくいきなりそんな事を。風呂のお湯飲んじまった。伸ばしていた足を胸に引きつけ、体操ずわりのように膝を抱え込んで、あらぬ場所を観察されないようにした。クソッ、広い風呂のだいご味が・・・なんで風呂の隅っこで縮こまらないといけないんだよ。椎神め!

睨んだ先のあいつは、足を延ばして俺の足のつま先をツンツン触ってくる。



「コータってさ、先まで全部かぶってんの」
「は?」

「剥いたことある?」
「何が?」

ニッコリ笑って俺の腹の下を指差す。

「ペニスの皮」
「ぶっ!!おま、お前何言って、どこ見て!!」

「ペニスじゃ分かんない?おちんちん、陰茎、男根、局部、さお、一物、男性生殖器、肉棒・・・」
「アホか、そんな言葉くらい知ってる、恥ずかしいから口に出すな!」

椎神の羅列した恥ずかしい言葉・・・??知らない言葉も混じっていたけど、どうせ知らなくても生きていける類の言葉に決まってる。

「だからね、ペニスの皮、剥いたことないでしょう」
「だから、剥いたって、何をさ」
「本気で言ってるの?」

俺はいつも本気だと、攻撃的に言ってのける。そんな俺を信じられない、龍成信じられる?と、話に加わっていなかった龍成にまで話を振った。そして案の定「タロはガキだな」とバカにしたように鼻で笑われた。

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あきゅろす。
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