そして、どこに行っても攻防(2) (完)
そしてご飯を食べた後、病院に行ってその機嫌が再び下降。
「あれ?酷くなって帰って来た患者さんは珍しいですね」
ふさがりかけていた怪我がなんと9針も縫う大けがに変わっていたことに、病院の担当医は驚きカルテになにやら追加事項を書いている。そしてもう1人・・・
「なんだ・・・これは・・・」
僕の手を医者から奪い取り、裂けた傷口を見る目が烈火のごとく怒ってる。
「だからね・・・ケンカの結果・・・こんな感じになっちゃった・・はは・・・・・」
踏まれてグリグリされましたとか・・・言えない。もうケンカのこととか触れたくないし。これ以上調べられたりするのも嫌だし。エンペラーの仲間のことがばれたかどうかも分かってないし。迂闊な事は言えない。
「痛かっただろうに。傷は・・・残るのか・・」
その言葉は担当医に向けられたが、鷹兄に怒りの矛先を向けられた先生と後ろにいた看護師さん達は、顔面蒼白でガタガタ震えていて・・・お医者さん怖がらせてどうすんのさ・・・悪いのは・・・・・僕だ。
「あのさ、僕、別に傷が残っても気にしないけど」
「何を言う。体に傷が残るなど・・・・許さん」
「体って・・・手だよ?」
「指の先であろうと許さん」
そんな診察室の外にまで響きそうな大きな声出さなくても。周りに人いるんだよ。
はあ、もう・・・・・バカじゃないの・・・
整形手術だ何だと、大げさな事を言い始めたから、必要ありませんと先生にきっぱり言って鷹兄を診察室から引っ張り出した。大事に思ってくれるのは嬉しいけど大げさすぎるのがうざったい。部下の人に整形外科を調べろとか指示してる鷹兄にげっそりしながら、怪我のことは傷が完全にふさがってから改めて考えようとお願いして、やっと妥協してもらった。ただし・・・
「こんなに傷が酷くなっていたとは・・・」
「ごめんなさい。話すの忘れてて」
「それでは、不自由することが多いだろう」
「そうかな?結構なんでも出来ちゃいそうだよ。右手はもう普通だし」
「・・・・・・」
何か考えてる。眉間にしわを寄せて。そして、あ・・・ちょっと表情が緩んだ・・・そして僕を見て笑う。こういう顔をしたときの鷹兄の次の言葉はあまりよかったためしがない。
「夏休みが終わるまで、俺と住め」
「・・・・お断りします」
あとほんの数日だけどそれは嫌な話だ。
「お前の面倒はしばらく俺が見る。また夜中に抜け出さないとも限らないしな」
「そんなことしないもん。出たとしてもちゃんと11時には帰るもんね。そしたら違反にはならないんだよ」
「門限は6時だと言ったはずだ」
「だから、そういうところが横暴だっていつも言ってんの」
「お前は反省と言うものをちゃんとしろ」
「したもん!でもそれとこれとは話が違うじゃん」
数日前にもこんな言い合いをしたはず。
それが元で飛び出した結果、警察にお世話になったと言うのに。
帰りの車中。
口で鷹耶にかなうはずもなく、結局残りの夏休みを鷹耶のマンションで過ごすことになった静は一抹の不安を抱えた。
「もう絶=====対にお風呂に入って来ないで。あと、寝る時も一緒には寝ないんだから。キ・・キ・・・・キスとかも、ダメだからね!!」
と、今までの経験上拒否しなければならないことを叫んだが・・・・・・それが運転手に丸聞こえだったことにやっと気づき、あわわ・・・と身の置き所がなくなって穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった。
「分かった」
「や・・・約束破ったら、ぼ・・僕帰るから!」
「俺は約束を破らない」
静は破ったがな・・・とでもいいたいのだろう。澄ました顔で、じゃマンションへ直行だと運転手に指示を出し、これからの楽しい日々の計画などを口にし始めた。
ああ、帰りたい。2人でマンションなんて絶対いいことなんてあるわけないよ。もっといろいろと条件付ければよかった・・・・・触るなとか・・・
出だしは快調だった夏休みが、気がつけばとんでもない事件を起こし、監禁夏休みで終わりを迎えようとしている。自業自得。そんな言葉がピッタリ当てはまる静にとっての高校生最初の夏休みライフは、ある意味刺激的で、最悪な夏休みとなった。
高校1年生〜夏(完)
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