鋼の錬金術師(ロイ×エド ※死ネタ)
最期に気付いたのは…

「ちょうど良かった。これから食事なんだが、一緒にどうかね?」

定期報告の為、司令部に来ていたエドワードにロイが言った

「んー、いいぜ。もちろんアンタの奢りだろうな?」

エドワードの返事に一瞬ロイが驚いた表情を見せた

「なんだよ?奢りじゃねぇなら行かねぇぞ」

「いや、それは構わないが…君が私の誘いを受けるなんて珍しいな」

「たまにはな。それより行くなら早く行こうぜ」

いつもなら「野郎と茶飲んで何が楽しいんだ」と、ロイとの席を拒むエドワードだったが、今日は気が向いたのでロイと食事に行くことをOKしたのだった
 
 



「鋼の、何か食べたいものはあるかね?」

「別に。うまいもんなら何でもいい」

「そうか、なら私が気に入っている店が近くにあるからそこに行こうか」

店に行く間、エドワード達は他愛ないやり取りをしながら歩いていた

軍服を着た三十路前の男と(実際は童顔なのでそうは見えないが)赤いコートを着た十五の少年(こちらも別の意味で見えないが)が並んで歩く様は端から見たらどう見えるのだろう?

親子にしては歳が近く兄弟にしては離れすぎている。何より容姿も正反対だ

しかも、エドワードが敬語を話していないことからもそこそこ親しい間柄だと分かる

2人の接点を知らない者からすれば奇妙な取り合わせだろう
 
お店は昼時でもそんなに混んでおらず、2人が中に入ると人の良さそうな女将さんが奥から出て来た

「あらロイさん、いらっしゃいませ。奥が空いてるのでそちらにどうぞ」

奥の席に案内された2人はメニューを見ながら会話をする

「ここの料理は結構気に入っていてね、どれも美味しいから好きな物を頼んだらいい」

「へぇ。じゃあコレとコレと、あっこっちも、それから…」

その光景をロイは唖然として見ていた
 
 



食事を終え、店を出た2人は司令部へ向かって歩いていた

「ふー、食った食った」

「君は遠慮という言葉を知らないのかね」

ロイのエドを見る目が恨みがましくなってなってしまうのも致し方ないことだろう

「だって、大佐が何でも好きなもん食べていいっていったんだぜ?」

ニヤリとして答えるエドワード

そんな会話をしながらエドワードはふと何かの気配を感じて建物の影に目をやった
 
そこにいたのは笑みを浮かべながらロイを見つめている1人の男だった

そいつの手に握られている銃が真っすぐ大佐を狙っているのに気付いた俺は、咄嗟に大佐の前に飛び出した

「大佐!危ない!!」



ドンッ――‥



銃声と共に身体を強い衝撃が襲って、俺は逆らえず後ろに倒れた

しかし、地面に倒れる寸前に俺の身体は誰かの手によって受け止められた
 
「鋼の!!!」

目を開けると大佐が俺を覗き込みながら必死に叫んでた

それをぼんやり眺めながら「良かった、無事だったんだな」と思い、俺は口を開こうとした

途端に下腹部に焼けるような痛みが走り息を詰める

「…ッ…ガハッ」

それを見た大佐が一瞬目を見開いて辛そうな顔をした

「…んて…顔、してん、だよ…っ」
 
 



私はそんなに酷い顔をしているのだろうか


鋼のが、私を庇って銃で撃たれた…


私の腕の中で血を吐いて苦しそうにしている彼は、もう――‥





「なぜ私なんかを庇ったりしたんだ!!君にはやらなければならないことがあるだろう!弟のアルフォンスはどうする!?」

「なんか…んて…言う、なよ…ハァハァ…っ…アル…には…ごめん、って…」

「ふざけるなっ!!そんなこと自分で伝えろ!私は伝えんからな!」

なぜ私はいつも怒鳴ることしか出来ないんだ、掛けたい言葉は他にあるのに
 
「大…佐…子供、みてー…」

そう言いながら鋼のが伸ばしてきた手を、私がしっかりと握ってやると彼は小さく微笑んだ

その顔を見て、私は胸が締め付けられる思いだった


何故、君が撃たれなければならない…


何故私を庇ったりしたんだ…


君にとって私はただの後継人、命を賭けて守る相手では無いはずだ
 

撃たれるべきは私の筈だった…


そもそもあの時、私が食事に行こうなどと誘わなければ――‥



押し寄せるのは後悔ばかりだ



そんな私の気持ちが伝わったのだろうか、鋼のが手をぎゅっと握り返してきた

「大佐…飯…うまかった、ぜ…」

そう言って笑った彼を見て幾分か心が晴れた
 
 



そうか、と微笑んだ大佐の顔を見て俺は少し安心した

きっと大佐のことだから自分が食事に誘わなきゃ、なんて考えてるだろうし…

でも俺は楽しかった。大佐とご飯食べるのも悪くないな、って思うぐらいには

歩きながらでも会話が途切れることは無かったし、飯も本当にうまかった

それに、誰かとおいしいって笑い合って飯食ったのなんて久しぶりだった――‥

だから誘わなきゃ良かった、なんて後悔してほしくない
 
(あー、やべ…眠くなってきた)

なんか、大佐の腕ん中って温かくて安心する

最後に見るのが大佐の顔ってのも、案外悪くないな…







ああ、そっか





      俺…





大佐のこと、好きだったんだ――‥





fin.



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あきゅろす。
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