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土方部屋
接吻(山南×土方)
名門お玉が池の千葉道場で学んだ剣。

その剣でも頭脳でも誰にもひけをとらぬと思っていた。

事実近藤ら試衛館の面々をこの京に導いてきたのは他ならぬ山南敬介であった。

その矜持を崩していくのは目の前の女のような美しい男。

ひそかに近藤とできているのではと侮っていたこの男が今自分の前に大きく立ちはだかっていた。

その美しい顔で近藤を誑かしているのか。

京の町でこの男が何人もの女を誑かしているという噂は聞いていた。

その役者のような面に騙されどんな女も目の前の男と懇ろになっていく。

だが女ばかりか男までも誑かすのか、この男は。

密かに剣の天才とその才を認めた沖田とは剣の切れが違う。

こんな男を自分は認めはしない。

山南はその胸の奥で眠っていたものがむくりと起きだすのを感じた。

女のような男など力でねじ伏せてしまえばいい。

そう何かが囁く。

白いその肌は女のように甘いのだろうか。

その唇はどんな味がするのか。




「・・・土方・・」

その白い面はそれでもじっと自分を見つめている。


ピキーン


山南の中の何かが切れた。

目の前が一瞬白くはじけたのを感じた。

そしてその瞬間山南は土方の唇を奪っていた。






殴りかかられる!


そう感じたのに痛みは襲ってはこなかった。

だが・・・

土方は目の前の男が自分の唇を貪るのを信じられぬ想いで眺めていた。

男、山南は土方の唇に蛭のように吸い付いて放さなかった。

さらに茫然自失の土方が動かないのをいいことにその襟元から手を忍び込ませてきたのだ。

さわさわと蠢くその動きにやっと我に返った。

だがその時、土方の唇を貪りつくした男の舌先が歯列を割って入ってこようとしていた。



ガリッ



その痛みに山南も我に返ったのであろう。

自分がしでかしたことに信じられないといった様子をみせる。

口内に錆臭い血の味が蔓延する。




「土方歳三・・・・・君のせいだ」

唇からツツーっと伝う血を拭いながら山南はそう言う。



「君が私を狂わせる!」

山南は後ずさりながら狂ったようにそう叫ぶ。

その姿は常の彼からは考えられないものであった。







優しく親切な男、そう評される山南敬介とは思えぬ姿。





その背を夕日がさらに照らす。



真っ赤に染まったその後姿。




土方はその後姿を呆然と眺めるだけであった・・・・・





片翼飛行
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あきゅろす。
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