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平穏最後の日(完結)
7



とりあえず明日も朝が早いので眠くなくとも眠らなければ。
エアコンもつけず冷え冷えした自室の中で毛布をがばりと被って無理矢理目を閉じた。

「おい、歯磨いたか?」

「あ!は、はい!」

――忘れてました。









「坂本君、相談があります」

「はい。って、え、遼ちゃん?何かしこまって」

翌週思い切って坂本に相談を持ちかけることにした。
当然相手が男、まして久遠だということは秘密だ。遼介に対し心配性な坂本なので、軽蔑されるより卒倒されかねない。

今日はたまたま昼食を中庭で食べており、近くに人もいないから好都合だ。

「裕太がもし誰かと付き合ったらさ」
「何その質問!遼ちゃん付き合ってるの!?」
「いや例えばの話で……まあ付き合ってる、けど」
「ま、マジ!!!」

ここが教室でなくてよかった。そしてやはり遼介は嘘が下手らしい。

「そんな素振り無かったし!つーかもっと早く言ってよー!」
「ああ、ごめん。学校の人じゃないし」
「他校か!バスケ繋がり?」
「いや……年上で」
「うわあー年上!お姉さん!信じられないっ」

驚き過ぎて変なテンションの坂本が、遼介の話を聞いて妄想を膨らませ始める。

きっと脳内でエロお姉さんが遼介に絡んでる姿でも思い浮かべているのだろうが、残念ながらお付き合い経験ゼロの坂本はそこから先は想像不可能だった。

そもそも坂本は知らないので仕方がないが、エロお姉さんではなく強面お兄さんだ。

「続けていいですかね」

「うお!そっか、どうぞどうぞ」

手を高速で差し出して遼介へ話の主導を譲る。
よく見ると坂本の瞳がこれでもかときらきらしており、興味の度合いが窺えた。

「んで、俺誰かと付き合ったことないから、どうすればいいか分からなくて」
「おお……っふ、未だお付き合いゼロの俺に聞いちゃったと」
「ご、ごめん。裕太しか思いつかなくて」
「ッ!いーよいーよ」

自分しか頼れないというフレーズがツボにはまったので、坂本は一気に上機嫌になり相談に乗ることにした。
特にアドバイス出来る自信はないが、話を聞くくらいなら可能だろう。

ふんすっと鼻息荒く気合いを入れ、何故か正座までして遼介へ向き直った。


「俺はさ」
「うん」
「付き合ったら何をするって考えたら」
「うんうん」
「手、繋いでみたいとかだったんだけど」
「うんう、……(ピュアァァア!)」

ピュア過ぎる思考に新しい扉を開きかけるが、全力で閉じて理性をフル回転させる。

――何だこれ、遼ちゃん可愛すぎだろ!

相手に騙されないか心配になる程のピュアさで大丈夫か不安になってきた。

「相手は大学生?OL?変な人じゃないよね?」

自分が守らねばと変な使命感に襲われた坂本は、がしっと遼介の肩を掴んで質問責めする。

遼介は人に恵まれているし、付き合うとまで決めた相手だからきっと良い人に違いない。
それでも友人として、またトラブルに巻き込まれたこともあるため心配になってしまうのだ。

坂本の様子を見て遼介は嬉しそうに笑う。

「心配してくれてありがとう。大丈夫、すごい優しい人だよ」



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