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平穏最後の日(完結)
3



恭介の業務は紫堂会での急な仕事が無い限りはフロント企業内でのものが多い。
今日も残業で続々と届く書類にサインをしていく。
最近忙しく遼介と一緒にご飯を食べるということも出来ておらず、どうしているか心配になる。

「あー、繁忙期もそろそろ終わりか?」
「そうですね……あとは年末に少々大きい案件がある程度です」
「じゃあ明日は定時に帰る」
「かしこまりました」

相馬が手帳に書き込み一日のスケジュールを調整する。
元々細かい真面目な性格のため、こうした事務作業は間違いも無くとても有能な部下だ。

それに感謝をしつつ遼介の様子をとメールを打つ。

『もう少しで帰る。明日は定時に上がるから一緒に夕飯を食べるぞ』

『分かった。お疲れ様、気を付けて。明日楽しみにしてる』

すぐさま返信が着て疲れた体も癒される。

『最近遅くて悪いな。先寝てていいから』

了解の返信を確認して携帯を机に置く。
それにしても本当に忙しかった。夕飯は友だちと食べたり買ってきたりしていると聞いているが、明日は美味しいものを家でゆっくり食べようと思う。

「お疲れ様でーす」

そこへ神田がやってくる。
適当に返事をして残りの書類を仕上げていると、何やらよろしくない単語が耳に入ってきた。

「そういや、今日坊と久遠さん見ましたよ。はい、今日の分の書類。ほなこれでー」
「ちょっと待て神田」
「何か?」
「今不吉な単語発しなかったか」
「え、もしかして久遠さん……ですか」
「もしかしても何もそれしかねえだろ」

敵に向けるような目で見つめてくる恭介に思わず視線を逸らす神田。しかし恭介はそれを許さない。

「何処で見たか言え」
「何処?あ、えーと確か若のマンションの近くの大通りだったかな」
「そうか」

聞くや否や最後の書類を乱暴に机に放り上着を羽織る。

「それで終わりだ、俺は帰る。神田マンションまで頼む」

「はっ了解しましたー!」

自分が余計なことを言ってしまったことに気が付いている神田はすぐさま車のキーを受け取り駐車場へ向かう。
残された相馬は諦めの表情でちらかった書類をまとめて一人で帰ることにした。
明日出社した時の恭介の様子が不機嫌でないことを祈るばかりだ。





「くそ、俺がいない間によりによってあいつといるなんて」

GPSを確認する限りでは今は家にいるようだ。
もしこんな遅い時間に外にでもいたりしたら、それこそ久遠を問い詰めなければならない。

「たまたま会ったんやないですか?」

「たまたまでもダメなものはダメだ」

久遠が遼介を大切にしていることは知っているし、体を張ってくれたことには感謝をしている。
しかし個人的に仲良くされるのを許すかはまた別の話らしい。



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あきゅろす。
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