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平穏最後の日(完結)
2



久遠はこれ見よがしに遼介の肩を組み自分の胸の中に引き寄せた。

「あんま睨むな。遼介が怯えるだろ」

「遼介君、本当か……?」

「……はい」

園川が絶望顔を見せながら最後の望みとばかりに遼介に問うが、時間を掛けて返ってきた言葉は全く希望しないものだった。
遼介の反応的に無理矢理言わされていないことも確かで、園川はその場に崩れ落ちそうになるのを堪えるので精いっぱいだ。

「悪ぃな」
「恥ずかしいんでもういいですか……」
「じゃあそっちのソファにでも座っててくれ。斉藤が茶入れたしな」
「有難う御座います」

誰かに関係を言うのは初めてで照れくささから居心地の悪くなった遼介はそそくさとソファに座る。

それを見つめていた園川だったが、一つため息を吐いて席に戻った。
目の前のパソコンを見つめるが考えがまとまるわけでも気持ちが落ち着くわけでもない。
ふつふつと何か黒いものが湧き上がるようだ。

「もしかして騙されてるのか?」

「あんな純粋な子に久遠さんなんて合うはずないし……」

見た目は真面目に仕事しつつも穏やかでない独り言が続き、向かいにいる斉藤が怯え始める。


「園川さん怖ぇよ……小宮山助けろ」
「ほっとけ」
「ほっとけって俺近いから独り言がもろ聞こえなんだよ」
「じゃあ耳栓でもしてろ」

ぽい、と本当に耳栓を投げられたので、もう誰も救ってくれないと素直に耳栓で蓋をする。

弟のように感じていた遼介がまさか鉄の心の上司とどうこうなるとは考えていなかったが、幸せそうなのでとりあえず今この事務所の異常な状態を気にしないことにした。

耳栓をしているので幸い聞こえなくなったが、ちらりと一瞥すると園川はまだ何かぶつぶつと口を動かしていた。

それでも仕事はいつも通りのスピードでこなしているので恐ろしい男である。

斉藤はかちかちとパソコンでメールを打つ。
宛先は隣の小宮山だ。

『今日飲み行こうぜ』

すぐさま小宮山から返信が来る。

『了解。さっさと仕事終わらせろ』

今日は気の済むまで飲み明かそうと誓い、やっと仕事に意識を向けた。





「うし、急ぎの仕事もねぇし終いだ。お前らもキリのいいところで帰っていいぞ」
「あ、はい!じゃあ終わりにしようぜ」
「お疲れ様です、お先に失礼します」
「おーまたなー」

それから一時間もしないうちに久遠が立ち上がり遼介がそれに続く。
一言言って二人が事務所から消えたので、斉藤と小宮山も急いでパソコンの電源を落とした。

幸い鍵の施錠は園川の予定なのでもう上がって問題無いだろう。

「お、先にお疲れ様でーす」



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あきゅろす。
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