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平穏最後の日(完結)
7



「「大学?」」

「はい、園川さん受験の時どうしてたのかなと思って」

「あ?何で俺に聞かねぇんだ」
「俺も大学出てる」
「げっ俺だけ仲間外れ!」

斉藤が何でだよーと叫ぶのを遼介が申し訳なさそうに見ている。
別に大学を出ているか出ていないかでその人の価値など変わるものでもないが、今は大学の情報が欲しいのでこんな形になってしまってタイミングが悪かったかと反省した。

「すみません、あ、じゃあいつから勉強始めたとかありますか」
「俺は推薦だったからなぁ」
「俺は三年から」

園川と小宮山が答えている間にソファに座っている遼介の横に座る。すると遼介が一瞬目を見開くのを久遠は見逃さなかった。
そしてさり気なく目線を外すのだ。

これは今日は初めてではなく、久遠が入院している時の見舞いでも思ったことだ。

「なあ遼介どうした」
「どうしたって……」
「俺が気付かねぇとでも思ってんのか?」

ずい、と顔を近づけて言えば遼介の顔がぼんっと音が立つのではないかと思う程赤くなる。

「あ、あ、すみませんっ。あの、俺が何も知らない時に久遠さんに教えてもらったのを思い出しちゃって」

「あ?俺が教えた?一体何の――」

斜め上に視線を向けて遼介が赤くなるようなことしたかと考えてみると、何となく原因が思い至ってしまった。


「もしかしてフェ「うわあああ!」んぐっ」

久遠が何でもないことのように言い出したので遼介が大声を上げて久遠の口を両手で押さえる。
その二人の様子を見ていた他の者たちは理由が分かってしまい気まずい顔をした。

「言わなくていいです!俺が知らなくて親切で教えてくれたのも分かってますし、もう言わないでください」

「む……おお」

何か勘違いをしているが、丸く収まりそうなので黙っておくことにする。


「そういえば冴子さんは」

園川がそれに反応した。

「ああ、若……堂会長のことが急に決まったからね。冴子さんも元のところに戻っていったよ、こっちに来たのも臨時だったし」
「そうだったんですか、じゃあ紫堂の家に帰る時は会えるかな」




「おお来たか」

月曜日、約束通り放課後指導室へ向かえば山崎が出迎えてくれた。
ぺこりと会釈だけして指導室のドアを閉めて中へ入れば、山崎は調べてくれたのかいくつかの資料を机の上に広げている。

「とりあえず都内の大学で興味ありそうなとこピックアップしてみたぞ」
「有難う御座います」
「国立私立どっちでもいいよな?国立だけだとかなり狭まるから」
「はい」

実のところついこの間まで小学生の精神で通っていたため、全くと言っていい程大学に対する知識がない。
資料をちらちらと見てみると聞いたことのある大学が何校かあった。

「この辺なら聞いたことあります」
「ああ、マーチな。難関校だからちょっと難しいけど」
「マーチ?」

マーチとは大学のイニシャルを文字って付けられた難関校の通称のようなものらしい。
他にもここはこの学部が人気だとか教えてもらい、メモを必死に取るも知らないことが多すぎて付いていくのがやっとだ。
その様子に気付いた山崎がさり気なく話題を変える。

「そういや家族には言ったのか?」
「はい、兄だけですけど自宅から通えるならいいって」
「やっぱそうなのか……まあこっから通えるとこに絞っても結構あるしな」



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あきゅろす。
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