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小説お兄ちゃんの手編みマフラー
お兄ちゃんの手編みマフラー

「奈緒ちゃん、そのマフラーぼろぼろじゃん」
「いいの、これで」
―――お兄ちゃん、もうすぐ貴方が逝って12年が経ちます。元気ですか?
   私は高校生になって、そろそろ大学受験が始まりますよ。

『こんにちは。小坂奈緒です』
その時私は小学校に上がったばかりの頃だった。何年か前に私の父親が死んでシングルマザーだった母が晴れて結婚した。それは娘の私にとっても嬉しい事だった。再婚した男の人には私と10歳も違う「子供」がいた。それが私にとってのお兄ちゃんになる人だ。1人っ子だった私には兄弟は憧れだった。
『渡会浩平です。よろしくね、奈緒ちゃん』
『よろしくお願いします』
そう言って私が頭を下げると、お兄ちゃんは笑って頭を撫でる。
『俺、妹って憧れだったんだー』
『私も、お兄ちゃんってアコガレだったんだよ!』
私は笑うと、お兄ちゃんはもっといい笑顔を見せてくれた。
私たち兄妹の誕生の日だった。
それから私はお兄ちゃんにくっ付きっぱなしだった。
『お兄ちゃん!何作ってるの?』
『んー、秘密ー♪』
お兄ちゃんは笑ってはぐらす。手にしていたのは金属の細い棒と青色の毛糸だった。その時の私の知識は浅く、それが何か解からなかった。
私たちはコタツに足を入れて向かい合って笑っていた。

「なーおちゃん!」
「わぁぁ!!」
「ボーっとしちゃってどうしたの?もうすぐ試験はじまるよー」
「えっ!?もうそんな時間!?」
「行くよー」
「お、おすっ!!」
首に巻いた青色のマフラーを握り締めた。
その時『いってらっしゃい』とお兄ちゃんの声が聞こえて後ろを振り返った。
だが、当たり前のようにそこにはお兄ちゃんは居ない。
―――いつもの私のことを見守っていてくれてありがとう。これからも私のことを見ていけください。長くなると思うけど、また貴方に合える日を夢みています・・・。

私は思いっきり微笑んだ。


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あきゅろす。
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