†黒執事+黒猫†
†黒執事+黒猫 act.117†
「アナタ…何か理由があって人を殺したんでしょ?」
「そりゃあ…理由なく殺さないわよ。悪魔じゃないんだから」
「でも、死神らしくない殺し方だわ」
「そうね。死亡リストに載ってない奴がほとんどだから」
「どうして?」
「…一人の女に惚れ込んじゃったってトコかしら」
一人の…女。
コツ…コツ………
!?
「セバスチャン…アナタは分かってたんでしょう」
「……マダム…」
その姿に坊ちゃんはセバスチャンの手を取り、前を見据える。
「計算ちがいだったわ。まさかグレルの正体を見破れる奴がシエルの傍にもいたなんてね」
眉を下げおかしそうに笑うマダムに私は目を逸らした。
辛い坊ちゃんの現実にいたたまれなくなったのだ。
「最初の容疑者リストにはもちろん貴女もいた。
けれど…マダムのアリバイは完璧だった」
「酷いわねシエル。身内である私まで疑ってたの?」
「ジャックになりえるのなら血縁であろうが知り合いであろうが関係ない
だけど、どの人間にも無理だった
もちろんマダムにも」
そして坊ちゃんは息をつき、強い眼差しでマダムを見つめた。
「だが、死神が共犯だと言うなら話は別だ」
切り裂きジャックでありえるのは…………
お前たちしかいない。
「残念ねシエル。気付かなければまた一緒にチェスが打てたのに…
だけど
今度は譲らないわ!!」
バンっ
ギュルルルルッ
「セバスチャン!」
坊ちゃんを狙ったグレルの鎌をセバスチャンが両手で塞ぎ止めた。
その大きな音に私は耳を塞ぎたくなった。
‐act.117‐
†赤い女に惚れた死神。
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