†黒執事+黒猫†
†黒執事+黒猫 act.109†
坊ちゃんが去った後に残ったのは沈黙と…
「…どうしてあの子が…」
マダムの悲痛にもよる声だった。
悲しげに紡がれる言葉に私はチラッとマダムを見やる。
そんなマダムに目もくれず資料をめくっていたセバスチャンがふと口を開いた。
「…主人はご自分が決められたことは必ず全うされる方………
たとえその道のりが長く暗く…冷たいものだとしても」
そこでセバスチャンはいったん私を見つめ目を伏せた。
「だからこそ私やティナは
坊ちゃんのお傍でお仕えすると誓ったのです」
その言葉に私はセバスチャンを見つめて小さく頷いた。
「きっと私が止めてもあの子は止まることはないんでしょうね…」
優しくそれでいて何かを決意したかのようにマダムは私を見つめた。
「あの子が一番辛かったときに私は傍に居てあげられなかった」
微笑んだマダムに私は目を逸らさず息をのむ。
そんなマダムの視線が私とセバスチャンを交互に見やったあと…ゆっくりと閉じられた。
「セバスチャン…ティナ…
どこの誰とも知れないアンタ達に頼むのもおかしいけど
どうかあの子の傍を離れないで頂戴。
道をはぐれて独りで迷ってしまうことがないように」
そんなマダムに私は微笑み、セバスチャンは跪いた。
「…ええ、必ず
最期までお傍でお護りいたします」
スッ…………
………パタン
セバスチャンが跪く姿を見届け私は部屋をあとにすると、セバスチャンも私を追うように部屋から出てきた。
ゴロゴロ…
酷い雷に思わず外を眺め空を見上げる。
ザァァ……
「……どうかしましたか?ティナ」
セバスチャンの優しい声に私はゆっくりとセバスチャンを見上げた。
‐act.109‐
†誓う執事に同意する猫。
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