†黒執事+黒猫†
†黒執事+黒猫 act.104†
「ロンドンの人口だけで450万人。
社交期にはもっと人が増える…
条件をゆるめただけで容疑者の人数は膨れ上がる」
ハアっと小さく紡がれる溜め息に私は苦笑する。
もちろんその間も視線は資料へ向けたままだが。
ガチャ………
「まだやってるの?」
「マダム・レッド」
静かな部屋に現れたのはチェスセットを抱えたマダムと執事のグレルだった。
明るく笑うマダムに私も安心したように小さく笑う。
「あんまり根詰めてもイイことないわよ
息抜きにコレやらない?」
そう言いチェス版を小さく掲げニッコリと笑うマダムに坊ちゃんはフゥっと息をつき呆れていた。
「坊ちゃん…私も息抜きは必要だと思いますよ」
「…ティナ?」
呆れていた坊ちゃんに私は小さく微笑む。
すると坊ちゃんは諦めたように席を立ち、マダムの待つ場所へと移動した。
その様子に私は優しく笑うとセバスチャンを見やったが、どうやらセバスチャンは息抜きはしないようだ。
資料を見つめたまま何か考え込んでいる。
コツコツ……
「夜ですので…
ローズヒップのハーブティーをご用意しました」
そんな私の前をグレルはティーセットを両手に横切る。
その様子を私は眺めつつ、ふと疑問が浮かんだけれど…セバスチャンに名を呼ばれその疑問は消え去ってしまった。
‐act.104‐
†静かな夜の一時。
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