それは幸福
7
※NL行為あり。
部屋中に響く喘ぎ声。それは自分の掠れた低い声なんかじゃない。
壊れてしまうんじゃないかと思うほどに細く柔らかい体。それはあいつみたいなゴツゴツとした男らしい体なんかじゃない。
ホテルに着いてすぐ、2人は性急に体を重ねた。呼び出した時間も夜遅く、春海はこうなることを予想していたのだろう喜んで股を開いた。
服を脱がせ豊満な胸に吸い付けば、感じやすいのか春海はすぐに下半身を濡らした。
セックスをする為に春臣は機械的に動く。誠太に散々犯された体であったが、性器は軽く扱けば勃起して濡れて蠢く春海の中を犯した。
怒張したものは温かい肉に包み込まれ動かせば快感は高まっていく。
腰を振りながら上下に揺れる乳房を揉み、乳首を舐めれば穴が締まり思わずイってしまいそうになった。
しかし、熱く脈打つ性器とは打って変わって頭はやけに冷静だった。目線は春海の顔から下半身へと向けられる。
快感で虚ろになる視線、開いた唇から垂れる唾液、腰の動きに合わせて揺れる乳房、あまり経験がないのかピンク色の綺麗な性器。
― あぁ、女ってこんなだったか。
漠然とそう思った。――― そして何故だか物足りないと感じてしまった。
快感とは無縁なはずの幼い顔。もっと華奢な小さい体。発育途中の薄い胸板。小さいながらに主張する性器。
「...っ、」
一瞬にして脳内を占めたのは昔の記憶。
あの時は冷静さのかけらもなく獣のように興奮してセックスを楽しんでいた。
それに比べて今まさに行われてるセックスはまるでただ尊厳を保つだけの為に行われる性処理に感じてならなかった。
― どうして、どうしてどうしてどうして。俺はあいつらの言う通りおかしくなってしまったのか。
思えば女とのセックスは久し振りなことであった...というよりも、寧ろ幼い頃の誠太とのセックスを最後に誰とも交わっていなかった。
“少年愛者の変態”
この場にいないはずの千晶の言葉が耳に響く。
「ひっ!あ、あっ、あぁっ、はげ、し...ひぃ、あっんん、ん」
春海の乳首を強く摘まんで穴の締まりをきつくさせると誤魔化すようにしてガツガツと腰を振って中を抉った。空いた手で膣の熟れた尖りを摘んでグニグニと擦ってやればより一層穴の中は濡れ怒張したものの滑りが良くなる。
そうして激しさを物語る水音と嬌声が耳に響く千晶の言葉を打ち消した。
そうして春海の中にあった性器を抜くと手で扱き春海の腹に吐精した。流石に嫌がるだろうかとぼんやり思ったが当の本人は嬉しそうに春臣が出したものを手で掬い舐めた。
そして起き上がると春臣の性器を舐めて愛撫する。反応して勃ち上がる性器を愛しそうに見つめ、春臣の体を倒すと今度は上に乗り再び自身の穴の中へ怒張したものを挿れた。
繋がった部分を見せつけるようにして大胆に腰を振る春海は春臣の興奮を煽ろうと自身で豊満な胸を揉み乳首を弄る。
それに合わせて膣の尖りを弄ってやれば今度は春臣の腹の上が滴る春海の愛液で汚れた。
― 女って勝手に濡れてくれるから楽なんだよな。
そう思った自分の思考に一瞬ゾッとした。――― 一体自分は今何と比較した。
男、少年、アナルセックス。抱いて、抱かれて、そして――― 感じて。
「ち、あき...」
ふと、ベッドのサイドテーブルに置かれている自身のスマホに目がいく。着信により光る画面に映し出されているのは“千晶”の2文字。
― 考えるな、考えるな考えるな考えるなっ
「きゃっ、あっ、あ、ひぁぁっ!や、ふか、深い...あ、あん、ぁあっ、あっ」
上に乗っていた春海の腰を掴み押し倒してうつ伏せにすると再び穴に怒張したものを挿れた。そうすればより奥にあたり、春海は快感の波に揉まれ苦しそうに喘いだ。
強過ぎる快感に逃げようとする腰を強く掴みパンパンと音が鳴るほど乱暴に穿つ。
その度にどちらのものかもわからない愛液の水飛沫が春臣の体を汚していく。
その間春海は何度もイっては中を締め付け、春臣は2度目の吐精をし今度は春海の尻を汚した。
― もう、呪縛からは逃れられないのだろうか。
何故だか、女の象徴を見ていたくなくて最後は後ろから犯した。
全てが終わり脳内を占めるのは忘れていたはずの少年の体であった。
――
――――
――――――
「それじゃあ、今日のことは2人だけの秘密だよ」
気怠い体に鞭打ってシャワーを浴び終えると、2人は周りの目を気にして日がでないうちにホテルを後にすることにした。
時刻はもうすぐ日が昇る頃。名残惜しそうにする春海であったが静かにキスをして部屋を出た。
「それじゃあ、また。送ってあげられなくてごめんね」
「いいえ...それじゃあ、また。」
ホテルの入り口で春海と別れる。腰に力が入らないのか春海は僅かによろけながら歩いて行った。
その後ろ姿を見送り春臣もタクシーを拾うため国道の方へと歩いて行く...――― しかし、その歩みはすぐに止められてしまった。
「千晶...っ、」
ホテルの前で待っていたのだろうか、目の前に立つ男はこちらを見て悲しそうな、酷く歪んだ笑みを浮かべた。
その目には涙が浮かび頬を濡らす。
春臣は何もいうことができず口を戦慄かせるばかりであった。背中には嫌な汗が流れる。
初めて見る千晶の涙から目が離せない。
「春臣...あんたを殺してやりたいよ」
消え入るような声のはずなのにその言葉は耳に響き渡った。
口が乾き喉が鳴る。手は途端に汗で濡れた。
― どうして、体が動かないんだ。
そうして踵を返す千晶を春臣は追いかけることもできず、ただただ立ち尽くしてその背を見つめていた。
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