■「おかしいですわね・・・・・・」 最初に異変に気づいたのは華桜麗姫その人だった。 聞いた事のあるナレーションの次に始まったその緊急コンサート。 来賓席に居た麗姫はそれに違和感を感じてたまらなかった。 「あぁ・・・なんかおかしいな。変な空気がピリピリしてやがる・・・・」 隣に座っていた戒も何かに気づいたのか周囲を見渡す。 そうするうちに奥の方で動く人影が見えた。 「あれって・・・」声を上げたのは戒の方だった。 「確かあいつ・・・演劇部の部長じゃなかったか・・・・・?」 それが見知らぬ生徒の手を引いて走っていく。 人目につかないようコソコソとしていたが逆に彼には目立ったようだ。 「何かあったのかしら・・・・・」 そう言って口元に扇子を持ってくる麗姫・・・・ だが俺達は今回の公演に呼ばれた来賓の一部。勝手に抜け出して外の様子を見に行くわけには行かない・・・・ 仕方なく彼らは舞台が終わるのをずっと演奏を聴きながら待っていた。 そしてラストシーン。 素足をさらす笹目の姿。それに麗姫は驚いた。 ”何かあったのでしょうか・・・”それでも生き生きと演技する彼女は今まで以上に輝いて見えた。 その帰りのことである。 ・・・・・「おい・・・アレ何だ・・・・・・?」 先にソレに気づいたのは戒だった。カトリック科側の校舎。数人の神父のような格好をした人影が何かを見つめている。 「あなたたちは・・・・・・・どうしてまたこの神聖な学院に火をつけようとなさったのですか・・・・・?」 ヒモで男が二人縛られている。 「けっ。・・・シラネェな・・・・・!」1人の男がそう言った。 しかし 「変な男とに頼まれたんだよ・・・!!!!この学校に問題を起こせば大金をくれてやるって・・・!!!!」そう言い始めた男。その発言に神父たちの目の色が変る。 「この学園に問題を・・・そうですか・・・・・・・・ではこの事件のことは警察沙汰にはしないでおきましょう・・・その代わり・・・・」 なんだか物騒な目の輝き具合だったので戒はたまらず間に入った 「おい・・・!ちょっと待てよ・・・!!!」 不穏な気配が辺りをよぎる。この人達はこいつらに何をするつもりなんだ。 戒がそう思った瞬間だった。 「そのお話。詳しく聞かせていただきたいので。彼らの身柄をこの華桜高校生徒会の方に任せてはもらえないでしょうか」 後ろから麗姫がやってきた。 「華桜高校・・・・・?」神父たちの目の色が変る。 噂ではあるがこの学校と華桜校は今生徒の取り合いで少々もめているらしい。”来賓”として舞台には呼ばれたが実際教師同志のほうはあまり交流が無い。 部活の県大会などでも同じく有能なスポーツ選手の取り合いでいつも双方目を光らせている。 そんな中に起きた事件。もしかすると・・・・・・ ”うちの校長。荻野厳武の差し金かもしれないわ・・・・” 麗姫はそっと戒に耳打ちした。 もしかすると彼がその大金で彼らを操り邪魔な桜聖学院に問題を起こそうとしたのかもしれない。 「すみません・・・・・・・・・・・その事件の真相。私達の手で探らせていただきたいと思います」 そう言って麗姫が名前を名乗るとさすが”理事長”の娘。その名前が説得力を与える。 そして男達の身柄は彼らの手にゆだねられる事になった。 そしてその先の出来事は誰も知らない・・・。 そしてその数日後の出来事である。 「え・・・・家族旅行?」 蘭姫がいつもの公園に笹目に会いに来ると笹目は次の公演の練習が始まるまで少し準備期間があるから・・・と次の休日に祖母と犬を連れた家族旅行の計画を立てており。それに蘭姫も一緒に来ないかと誘ってきたのだ。 「でも私・・・・」 家で弟の世話とかしなきゃ・・・・そう困り始める蘭姫に「なら一緒に行きましょう?」 ダイナさんもお休みでしたら一緒に誘って運転士の役をしていただきたいですわ。 笹目がそういうので蘭姫はダイナにメールを送ると二つ返事で返信が帰ってきた。 そして彼の運転により彼女達の楽しい家族旅行が始まる事となる。 「ていうかなんでお前がついてくるんだよ戒・・・・!!!!」 そう言うダイナ。大き目のレンタカーを借りたので人数的には大丈夫であったが。 それに加えて「私も宜しくお願いします。」にこにこと助手席に座る麗姫。本来なら”カセン”も誘いたいところだったが人数オーバーのため連絡は入れなかった。 8人乗りの車の中に犬のテツもなんとか入り車はゆっくり走り出す。 「行き先は決まってるのか?」そういうダイナに 「えぇ・・・・・・・一年生の”旅好きの女の子”にあたかも人魚が出てきそうな聖地があると聞いて行きたくなりましたの」 そういう笹目。 「人魚が出そうな聖地ねぇ・・・・・・・」 ”人魚”はもう乗っているような気がするが・・・・・・ 「あとでその”主演”の人魚姫の録画品見せろよ」と。ダイナはそれを報酬に運転士をやる事にした。 「んだんだ。笹目の出だ演劇っちゃぁわだすも見でぇべ。」 いつも思うがこの婆さんは何語を喋ってるんだ・・・・ そう思いながらもそれもレディとして扱うつもりでダイナはアクセルを踏んだ。 「隣がお前じゃ口数が少なそうだが宜しく頼むぜ・・・・!」麗姫にそう言うと「それはどうでございますかね」とにこにこと微笑み返される。 まさか自分の主人の連れの娘と一緒に小旅行になるとは思わなかった。 実の娘の蘭姫を連れて。ダイナはそのまま車を走らせる。 人魚姫の聖地・・・・それは山の奥にあるらしい・・・・・・・・・・・。 「海じゃねぇんだ」 戒がそう突っ込んだ ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |