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再会しました。

「えと……、あの…………?」

上から見下ろすように視線を向けられ、怖くなって俯く私。

初めてヤンキーに絡まれた事に恐怖しか感じなかった。


「………お前。」


やけにゆっくりと話す口調が、凄く怖いです。





「名前、か………。」



「……へ?」


確かめるように、けれど確信を持って呟かれたのは私の名前。

恐る恐る視線をあわせればどことなく覚えのある鋭い瞳。



「………仁くん?」



疑問系に返せば


「帰んぞ。」



突然腕を捕まれ強制的に帰宅ルート。
仁くんってわかったら、もう恐怖はなかった。


「せんごく先輩っ、えと、色々どうもでした!!
これからお世話になりますっ!!!!」





腕を引きずられながら頭を下げて、呆気に取られた千石先輩を残したまま私達は家路に着いた。
















仁君に引っ張られながら、慣れない東京の町を進む。
沢山の建物、沢山の人。
山吹の制服を着た、入学式帰りの子とすれ違う度に皆驚いたように私達を振り返る。



強引に掴まれた腕はやんわりとした力がかかり、不器用な仁君の優しさを感じた。
中央通りを抜け、裏道に入ると先程までの都会な風景とは違う閑静な住宅街が広がる。
私たちは、何も話す事なく一つのアパートに辿り着いた。

仁君はそこで腕を離し、ギシギシと音を立てながら階段を登った。
私も慌てて着いて行くと、203と言うプレートの前に、二つの大きめの段ボール。
『津軽りんご』と書かれた二つの大きな段ボールを自分の物だと認めた時、仁君は家のポストに手を突っ込み、鍵を取出して開ける。
それをボンヤリと見ていると、突然目の前に何かが飛んできた。
びっくりしながらも慌てて受け取ると、それは先程仁くんが使ったばかりの家の鍵。

見れば、鋭い目と視線がかち合い


「お前が使え。」

「仁くんは?」


何事もないかの様に言う仁くんに私が返すと、仁くんが取り出したのは、一本の針金。
もとはヘアピンだったと思しきそれは、伸ばされ複雑に曲げられている。

「まさか……?」


呟けば、仁君は妖しく笑い、


「そのまさか、だったらどうする?」







…………聞くのが怖くなりました。

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