仁Side 『わたしね、お父さんと新しいお母さんと遠くに引っ越すの。』 『ハンッ………それがどうした。』 『ちゅーがくせーになったら帰ってくるから、じんくん、いい子にして待ってるんだよ。』 『バーカ、俺の方が年上だって事忘れたのかよ? ガキ扱いしてんじゃねぇ……。』 『そうだよね、じんくんはお兄ちゃんだもんね……。 じゃあ、またね!』 嫌な夢を見た。 忌まわしくもある過去の夢。 それもこれもあの馬鹿のせいだ。 「ッチ、あの野郎……マジで帰って来やがんのかよ?」 突然家に舞い込んだ電話は、かつての思い出を甦らせた。 過去なんて捨てた自分には、疎ましいとしか思えない存在が戻って来る。 それでも、逢いたいと思う自分が確かにいた。 初めて自分と真正面から向き合った存在。 変わり果てた自分の姿を見て、アイツはどう思うのだろう……? [次へ#] |