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時々僕のパパは恋に落ちた。そのお相手はワニの抱き枕だったり血のように赤いテディベアだったり、小さなホワイトタイガーのポーチだったりと様々だ。恋に落ちたパパは決まって、普段のお喋りが嘘みたいに黙り込んで、ふらふらと恋の相手の元へ行く。じっくり見て手で触って確かめて、たっぷり二分間はギュッと抱き締める。何度か抱き締めては眺めるのを繰り返して、レジへと向かう。勿論、値札何て見ちゃいない。今日のお相手は水族館のお土産コーナーに居たでっかい鮫のぬいぐるみ。きっと奴も家に帰れば、他の恋人と同じように、ベッドの上を泳ぐに違いない。パパのベッドは、随分昔からぬいぐるみで溢れている。黙っていれば、大人しくしていれば、まるきり普通の人なのに、と、僕はパパが残念でならない。なのに、ママは何時もうふふと笑って、それを見ている。どうして?と訪ねたら「だって、パパが選ぶのは何時も、肉食動物でしょう?凶暴なものばかり可愛がりたがるの、面白いと思わない?」成る程、確かにそうだ。パパのお供は、ワニ、熊、虎、鮫、ライオン、それから狼にアナコンダ。パパは凶暴なぬいぐるみを抱き締める。って事は、パパにハグされるママや僕もそうなのかな?わかんないや。










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あきゅろす。
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