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アフリカの荒野で、アメリカのスラムで、中国の農村で、日本の病院で、インドネシアの海で、ブラジルの交差点で、イギリスの路地裏で、カナダの森で、死んだこどもが居ました。こどもは皆、軽く、空気のように軽くなって、柔らかく暖かいものに包まれました。ゆやゆやと暖かい中で揺れてたゆたって、こどもはとても良い気分でした。そして、ある日突然、真っ赤な光が見えたかと思うと、とてもとても寒い場所に落とされました。お母さんのお腹から出てきました。お母さんはふわふわで真っ白な毛皮と、真っ黒な目と鼻と、ぴんと立ったピンク色の耳を持っていて、笑っているような顔をしていました。お母さんは舌でこども達を舐めて綺麗にしてくれました。その内こども達はお母さんと同じように真っ白でふわふわでピンク色の耳がぴんと立つと新しい家族に貰われてゆきました。産まれる前のこども達は、思い切り走れない体だったり、家族に捨てられてしまったり、飢えて渇いたり、他の人に酷い事をされたり、帰る家がなかったり、帰れなくなってしまったりして、死んだのです。ですが、今は走り回れる健康な体と毎度のご飯暖かい寝床と、優しい家族が居ます。こどもは幸せでした。とてもとても幸せでした。






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