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魅力的な物を見るとどうしようもなく堕落させたくなるのです。それは物ではなく者でも構わないのですが、それこそが問題であり僕の悩みでもあるのです。幼い頃は夜空にぽっかりと浮かぶあの黄色い満月が欲しくて欲しくてたまらなかったのです。武骨で厭らしいあの黒々とした電線で絡め取って捕まえたら、祖母に頼んでベイクド・チーズケーキにして貰おうなどと妄想を膨らませていたのです。だから僕はそんな風に高尚というか高潔というか要は純粋な存在が好きで好きで仕方がないのです。それがそれであるが故に純然たるそれ自身であるという事の重要性にこそ魅入ってしまうのです。だからまるで小学校三・四年生の子供のように物事の正誤善悪などについて絶対的な信仰を持つ人間に近付くのです。そして引っ掻き回してその人が溺れそうに葛藤する姿を見るのが堪らなく好きなのです。しかし人間とは柔軟な生き物のようで、彼若しくは彼女らは直ぐに大人になってしまうのです。そうなると僕はとてもとてもつまらなくてむくれてしまうのですが、玩具を取り上げられた子供のようなのは寧ろ僕ではないかという事に気が付いたのです。周りの誰かを大人にしてしまったのは僕なのに、とてもとても退屈なのです。






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