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本というのは酷く男性的な物体だと思う。寧ろ感じる。どことなくざらついた、無味乾燥の、というフレーズ。フィジカルな意味でもアン・フィジカルな意味でもそれは言える。間違いがない。どんなに活き活きとした瑞々しい鮮烈な文章であったとしても、遠目から見ればそれは紙面を這う不気味な蟻の行列に過ぎないのだ。本は老廃物の塊だ。過去の歴史や知識、他人の風化した思想の澱だ。そこからは何も産まれはしない。誕生とは文章と相容れない存在だ。将に筆舌に尽くし難いというものだから、不可能なのだ。不妊のものは女ではない。そもそも能力如何より前に、その臓器を備えようなどとは微塵も考えていないのだから。故に、読書家の女性とは特殊な生き物ではないかと僕は考える。彼女らは多かれ少なかれ男性的で、しかし男性ではない。即物的な意味とは別に、彼女達は無性体に近い生き物のような気がする。それだけではない。僕は読書家という人種を観察する。読書量や読書家である自分、などを誇るような人間に興味はない。本物は誇る必要などないからだ。ごく普通の落ち着いた雰囲気の人が重度の読書家であったりする。その不思議に首を捻る僕は決して読書家ではないが、既に文字の毒を浴びている。










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あきゅろす。
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