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「それは誰に向けた想いなのだろうな」
「っ!仙蔵くん…」
私は不意に声をかけられ驚きそれに振り返ると本人がいた。
彼方は涼しげに微笑んで私を見る、その眼差しに惹かれ怖さを覚える。
「サボりとは名前を入れてねも案外やるな、優等生かと思っていたが」
そう言って軽い嘲笑を作る彼方、私はズキリと痛む胸を悟られまいとする。
「…そう?私は優等生じゃないから、仙蔵くんは判るでしょ?淫乱な私を」
「それもそうだな」
クスリ、また彼方は笑う…それに魅入るのに何処かで虚しさを感じてしまう。
私も作り笑いを浮かべた、彼方に嫌われたくないから。
「用があったのだか良いか?」
「珍しいね、何?」
「ふん。学園長から文を預かっているのだ、これを知人に渡してくれとな」
そう言って彼方はその文を私に見せてまた懐に戻した。
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