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持て余す身体
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そうして居心地の悪い状態のまま私は彼方から逃げる様に口を聞かずにいた。
日も暮れ、夜になり私は汗を流す為に風呂場に向かった。

すぅ、と軽い寝息を発てる音が聞こえたので仙蔵くんは寝ているのだろうと思っていたがそれは過ちだった。


――ザバンッ、

「忘れたい……」


私は身に纏っていた衣服を脱ぎ去り浴槽に入っている湯を身体に浴びせていた。
身体の汚れが落ちる様に彼方への想いも落ちて欲しい、そうすれば辛くないのに。


「何を忘れたいと言うのだ…?」

――ガララ、

「なっ…寝てたんじゃなかったの?」

寝ていたと思っていた筈の彼方が風呂場に入ってきて私は驚きを隠せない、今更身体を見られるのに抵抗はなかった。


「…私が熟睡していたとでも言うのか?それより答えろ」

「っ、それは…」

「名前を入れてね。私はお前を離さない」
「んぐぅッ?!!!」

私が答えずにいたのが気に食わなかったのか彼方は苛立ちを含ませた顔で私の手首を掴むと唇を塞いできた。
立たされた状態で壁に押しつけられ背中はひんやりとするのに頬は熱くて堪らない。



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あきゅろす。
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