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「そろそろ帰るか」
「…うん」
「……いや、帰らんでも良いな」
私は少し乗り気じゃない声で答えると彼方はそう言った、それはどういう意味なのだろうか?
「何言ってんの?」
「このまま帰るのも味気無いだろう、何処か宿に泊まって行くとしよう」
「ふざけないでよ。明日どうすんのよ?」
「体調が悪くなったからとでも言っておけば良いだろう、ほら行くぞ」
私の了承を得ずに彼方は勝手に決めてしまう、そして歩いて行ってしまうから私は見失う前に急いで後を追った。
――タッタッタッ、
「仙蔵くんってば何でそんな身勝手なのよっ?!」
「己が為に生きて何が悪い?」
「悪いって…私は何なのよ、仙蔵くんのなんなのッ…!」
宿泊する宿はすぐに決まった、私達は部屋に案内され畳に座って今にいたる。
堪えていた何かが私の中で弾けていく気がした、頭では判っているのに心は深く彼方をもとめてしまう。
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