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「おはよう、クリスタル。今日はまた一段と美しいな」
「あら、相変わらずお上手なのねパンサー。ところでどうやって入って来たのかしら?」
「男なんてものは、君に逢うためなら少しの危険も厭わないものさ」
「つまみ出せよその侵入者」

 第4惑星、コーネリア。ライラット星系屈指の大都市であるこの星に、物資調達のため一時的に滞在していたグレートフォックスの元へやってきたのは、スターウルフのパンサー・カルロッソだった。強くて美しくて賢い女性の味方であると自らを豪語する彼が、敵軍であるスターフォックスのクリスタル・プラネットに熱をあげていることは両チームともに公認である。
 今日も元気に堂堂たる不法侵入を果たし、クリスタルを口説きにかかっているパンサーに水を差すファルコという図式は、昔からそのようなフォーマットが存在していたかのように型にはまり、安定している。ファルコはもはや一瞥をくれてやることもせず、ゲーム機に向いたまま後ろで繰り広げられる会話劇にオチをつけてやるという器用な真似をやってみせた。
「どうだい?これから一緒にお食事でも」
「お心遣いありがとう。でもね、先約が居るの」
 ごめんなさいね。彼女はそう言ってフォックスに向き直る。律儀と誠意で出来た男は申し訳なさそうに会釈すると、程なくしてクリスタルを連れ、グレートフォックスを出た。
 なるほど先約がそれならば太刀打ちできる術も無いと、見るからにがっくりと肩を落とすパンサーを尻目に、ファルコの集中が一心に向けられた画面の中ではかつてないほどのハイスコアが叩き出されていた。
 事実上トリ頭である彼が唯一記憶力をフルに活用するのがこのシューティングゲーム。どのタイミングでどこからどのような敵が現れ、というのを全て完璧に覚え、エース・パイロットの名に恥じない腕前でもって駆逐する。いわゆる「覚えゲー」は基本的に不得手とする彼も、職業柄妥協は許せないらしい。
 いける。今日はいける絶対いける。高揚感に身震いすら覚える。あと数基、パーフェクト目前!!

 ブツン

「は」
 最後の走査線が消えたところで漸く吐いて出た一声は、余りに間の抜けたものだった。俺のパーフェクト、あれっこれ、どういう?
 うんともすんとも言わなくなってしまった携帯型ゲーム機の、右上の角にある電源ボタンを凹むほどに抑えていたのは、誰がどう見ても爪を引っ込めた真っ黒な指。そこから腕、肩、顔と視線を移せば、謂れのない不機嫌丸出しの眼がこちらを見ていた。

「メシ行くぞ」
「……ぁあ?」



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