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小説
かなしみ<<<しあわせ+
□縁寿+絵羽
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「だからさっきから言ってるでしょッ!!解雇よ!」

絵羽の怒鳴り声で目が覚めた縁寿は、寝間着姿のまま自室の扉を開く。
少し距離のある廊下の向こうで、絵羽と、その護衛の天草がいるのが見えた。
縁寿はため息をつくと自分の姿などお構いなしで二人の元へ向かう。

「何、どうかしたの?」
「お嬢。…おはようございます。最悪な目覚めのようで。」
「あんたは黙りなさい!……おはよう縁寿。…いいからあなたは部屋に戻っていなさい。」

天草はいつものように飄々としていて、絵羽の怒りを買うと知っているはずなのに軽口を叩く。
縁寿が軽く天草を睨むと、少しだけ頭を下げて申し訳なさそうに笑った。

「…解雇とか聞こえたんだけど…。……、天草、母さんに何かしたの?」
「とんでもねぇですって。何もしちゃいないですよ。」

怒りを抑えつつ絵羽が、もう行っていいわよと天草に告げる。
それは可愛い娘を護衛如きに渡すものかという母の思いからだった。

「……で、本当は何かされたの?」
「違うわよぅ。………。」

絵羽はそれ以上は言わず、着替えてきなさいと告げて長い廊下を一人で歩いて行ってしまった。
その後ろ姿を縁寿は心配そうに見つめる。
絵羽はいつも一人で何かを抱え込み、そして体調を崩す事が多々ある。
随分昔に二人で誓った。
私たちは笑顔を少しずつ取り戻そう。
苦しみや悲しみを忘れて、支え合って生きていこう。
縁寿は普段着に着替えながら、昔の事を思い出していた。
母と呼ぶには少し時間がかかったが、今では普通に呼んでいる。

「…………。」

きついベルトを締めて縁寿は鏡に映る自分をじっと見る。
絵羽がもし生きて帰ってきてくれなかったら自分はここまで生きてこれただろうか。
もし、絵羽が生きていなかったら、見た事もない親戚に引き取られて、財産も人生もめちゃくちゃにされていたかもしれない。
そう思うとやはり絵羽には感謝するべき事がたくさんある。
その感謝を今まで直接伝えた事はなかった。
縁寿は顔をぺちっと叩くと部屋を出て行く。
もうすぐ朝食だから絵羽は食堂にいるだろう。
カツカツと足早に廊下を歩いていると、横目に絵羽の姿を捉えた。

「……母さん?」

食堂にいるはずの絵羽は、廊下を静かにゆっくりと歩いていた。
その姿は、捕まえないと消えてしまいそうで、縁寿は焦る。
そしてすぐさま駆け寄って後ろから絵羽に抱きついた。

「きゃっ!……??…、え、縁寿?」
「………母さん。」
「やだなぁに?…甘えん坊さんねぇ。」

少しムスッとしながら、突き放さない絵羽に甘える。
絵羽は疑問を浮かべつつも縁寿と同じように腕を伸ばして抱きしめる。

「……あの、言いたい事があって…。」
「…………何?」

縁寿の言葉に絵羽は少しだけ怖くなった。
やっぱり母と呼べないなんて言われたら、そんな考えが過る。
不安からくる速い鼓動に気付かぬフリをして、絵羽は優しく問いかけた。

「……言った事なかったと思うから。………生きててくれて、ありがとう。」
「縁寿………。」
「娘と思ってくれて、ありがとう…。」

絵羽は下唇を噛み締めて、瞳から零れそうなものを堪えた。
どうやら自分の考えは杞憂だったらしい。
不安に思っていたなんて、縁寿に対して失礼だ。

「……私もよ。縁寿。………母と呼んでくれて、ありがとう。」

にっこりと笑って、縁寿は絵羽の肩に顔を埋めて涙を流す。
しばらく二人で抱き合った後、朝食を摂るため、食堂に向かう事にした。

「………さっき、何で天草を解雇するなんて言ったの?」
「だってぇ、……何度言っても縁寿に話掛けるんだもの。」
「くす、何それ。」
「……天草に、縁寿はもったいないわぁ。」
「え?」
「……………可愛い娘を、あんな男には渡せないって言ってるのぅ!」

ふん、と絵羽は恥ずかしそうに顔を背け、すたすたと歩いていってしまう。
縁寿は一度足を止めるが、すぐに嬉しそうな顔をして、絵羽の隣に並ぶ。

「な、何よぅ。」
「…別に。……ねえ母さん。」
「……なぁに。」
「大好き。」







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(そ、そんな事言われなくたってわかってるわよぅ!)
(いつまでも母さんでいてね。)






☆☆☆

書き直しどころか、全然違う話ですねorz
リクと本当に違うなぁって色々考えていて、色んなパターンを上げて行きました。
そして行きついたこのssを考えついて、「あれ、リク、これが近いんじゃ?」
そんなわけでうpしました。

まったくもって異例ですが、リクしてくださった方には、
前のブツと今回のssを二つプレゼントいたします!!
受け取ってくれなくても押しつけちゃいますね!(最低だよ

2009.12.29

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あきゅろす。
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