お題SS小説 9000HIT企画第二段 9000HIT企画小説、 第二段目。 『仕事先(会社とか)で恋愛』です。 これはパソコンより更新しているため携帯では見えにくいかもしれません。そしてSS小説の割りには長いかも。 携帯よりもパソコンで見ることをオススメします。 ちなみにいつもの純愛よりは大人っぽく頑張ってみました (いやでもぴくるすはキスが限界です) 下より『仕事先(会社とか)で恋愛』が始まります(´∀`) ―仕事先(会社とか)で恋愛― 『三鷹、お前今日空いてるか?』 メールが届く。私は携帯を周りに見られないように鞄の中から返信をする。 『空けときます』 絵文字もましてや顔文字もない淡々とした返事を送る。ただ私に言えることは、私がこの人に拒否をする権利なんて最初からないということだけ。そしてすぐにまた返事が来る。 『だからお前は好きだ』 私は静かに自分の携帯を閉じるとパソコンに体を向けた。そして両手でカチカチと資料を打ち込み始めた。 千晴さんのメールに深い意味はない。どんなに相手が期待をしようと千晴さんの『好き』という言葉には愛情とか言う感情はこれっぽちも含まれない。今まで千晴さんと関わってきた女性達はいつだって千晴さんに溺れては這い上がれないで波に飲み込まれる。千晴さんに溺れた女性達が伝える『好き』と言う愛の言葉と千晴さんが言う『好き』は字だけは一緒で重みが違い意味すら異なる。この人を夢中にさせる事なんてこの世には居ないんではないかと、そしてどんなに絶世の美女も千晴さんなら見向きもしないで立ち去りそうだ。 千晴さんが私に目を付けたのには特に意味なんてものはないのだと思う。 余り感情を表に出さない私なら利用するのも遊ぶのも簡単だと思った…理由なんてものを付けるとしたらそんなところだろう。別に付き合っているわけでも好きあっているわけでもない。 むしろ私は睨むように見つめる千晴さんが苦手なくらいだ。出会いと言えば私がお茶を入れているとき、ちょうど千晴さんが通った、それが全ての始まり。 「お茶入れてるの?」 「早く来たので」 「ふーん」 それだけ言ってこの人は立ち去ったのだと思った。まだ入りたてだった私は千晴さんの顔も見たことが無く名前なんて全く知らなかった。だけど視線を感じて後ろを見るとまだ彼は立っていた。…特に何をするでもなく私の背中をただ切れ長の少しきつめな瞳で見ているだけ。ただそれだけなのに私は居心地が悪くなって「あの、何か用でしょうか?」と聞いてみた。千晴さんは「別に用なんて最初から無かったけど」と言うと私の横に並んだ。 「でも今用が出来た」 そう言って千晴さんは私の頬にキスをした。そして「名前は?」と耳元で聞いた。 名前もちゃんと知らないでこの人はキスをするのかと頭の中で整理をしながら私は無表情で千晴さんの顔を見た。噂くらいなら聞いたことがある。手が早い、捨てるのも飽きるのも早い。気を持たせるのが上手な男。千晴という中性的な名前の頭の良い男。 この人がその千晴か、一瞬で思った。名前と顔が合っている。 「ちは、る…」 「俺の事知ってるの?君だけ知ってるのは不平等だな。名前は?」 私の隣に立ったまま千晴さんは聞いた。私は首を横に振ると「三鷹です」と呟いた。噂を聞いたことがあるが貴方を見たことはない、の否定の意味と聞かれた質問に対する答えを首と声で一気に伝えた。 「三鷹か…」 低い声で千晴さんは呟くと私に紙切れを渡した。 「命令。これにメールして、メールしなきゃ首にする」 「…貴方にそんな権利っ…、」あるんですか?と聞く前に千晴さんが私の言葉を遮る。 「どんな手を使ってでも首にするよ?俺。…大丈夫、これ、俺の携帯のアドレスだから。絶対すぐにメールしろよ。あとこのことは誰にも言うな」 ほとんど後半は命令口調で、私が思わず黙ると千晴さんはまた私の頬にキスをした。 「絶対だから」 それだけ残して給湯室から出て行く。私はしょうがなく紙に書いてあるアドレスを登録すると『三鷹です』とだけ打って送信ボタンを押した。 5分後くらいに返事が来て『今日の夜、飲みに行くぞ』とだけ書いてあった。 意味がわからず話す内容も無いので無視をしたらしばらく経ってから千晴さんが私のデスクまで来た。皆が一斉にこちらを向く。やはりこの人は有名人らしい。そして千晴さんは無表情で私の腕を掴んで椅子から立たせる。「来い」と低く呟くと歩き出す。私も周りの視線が痛くて後ろを静かに、逃げるようについて行くと給湯室に着いた。 「行くよな?」 着くなり千晴さんが私の顔を見る。 「まだ入ったばかりで仕事もいっぱい残っていますし今日は残業したいので申し訳ないですがお断りさせてください」 「三鷹に拒否権なんて最初からない」 「え」 そう言われるなり顔が近づいてきた。思わず唇にキスをされるのかと思い下を向くとまた頬にキスをされた。本日3回目のキス。 「あまいんだよ」 そう言うと千晴さんは「迎えに行くから」とだけ言って給湯室から出ようとした。私は飲みに一緒に行っても喋る内容などないとわかっていたので思わず千晴さんの手を掴んだ。 「待ってください」 「なに?これから言う言葉によっては唇にキスするから」 こちらを向かないまま千晴さんが呟く。その言葉に驚いて私はすぐに掴んだ手を離した。千晴さんがこちらに体を向きなおす。そして初めてわらった。 「大丈夫、何もしない。ただ一緒にいたいだけだ」 今日初めて会った人に言う言葉じゃない。一目ぼれしたとか…?それはありえないだろう。普通すぎる私にこんなにかっこいい人が惚れるわけない。 「…お酒を飲むだけなんですよね?」 「ああ」 「…ならわかりました」 「素直になったな、可愛い」 そう言って頭を撫でる。私に拒否権なんてない。でも恋愛でもない?じゃあ何でこんなに近くまで土足で入ってくるのだろう… お酒を飲みながら千晴さんが言う。 「お前を離す気はないよ」 初めて会った人が言う台詞ではない。でもどこか魅力的な響きで私は黙りこんだ。 「またメールするから、社内では人に見られるなよ」 そう言って頬に千晴さんはキスをする。4回目のキス。 何もしないと言ったのに…この人は嘘吐きなんだなと知った。 END. +前*+次# |