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【直感】BLゲーを四人でやってみた。
BLゲームをやってみた。 3

プレイヤー3:近藤


「俺が思うに、これは試されているんだ」

 格闘ゲームでもやりそうな顔で、コントローラーを持った近藤は言った。
「試されているって、何をだ?」と、東野が訊く。

「門を突破できる実力があるか、試されているんだ。だから俺は、四番の『門を力技でこじ開けて進む』を選ぶ」と言って、近藤は選択肢を決定した。

「無理だろ、着地に失敗した鈍臭いやつだぜ」と、真田は恨みがましげだ。

『僕は、門をこじ開けることにした。やや骨が折れるが、僕の筋力なら出来そうだ』

「もう骨は折るなよ……」と近藤は祈るように呟いた。

『格子に手をかけ、徐々に力を込めていく……うおおおぉ、ひらけぇごまぁー!
――ギギギ、と鉄が捻じ曲がる音がして、ついに門扉は左右に大きく開いた。
学園の敷地に、茨田は最初の一歩を踏み出したのだった』

「すごいな、色太郎は」名付け親の倖田は、我が子のように褒めた。「鉄を素手で曲げるのか……」と東野は呆れたように言った。

『そのまま進もうとすると、目の前に、やたらと顔が格好良い生徒が現れた。
ネクタイの色で、僕よりも上級生だと解る。案内してくれる人だろうか?』

「なんだ、ちゃんと働いていたのか」と、東野は妙に安堵して呟いた。

『あなたが、編入生の茨田君ですね。私はこの学園の――副番長です』

「えっ、誤植?」と真田。「副会長じゃないのか……」と、がっかりしたように東野。

『あなたを「お出迎え」に来ました――副番長が合図すると同時に、彼の背後にずらりと不良達が並ぶ。
彼らは挑発的に指を鳴らし、既に臨戦態勢だった』

「お出迎えって、そっちの意味かよ!?」と真田は驚愕する。
「やはり、こういう物騒な学園か……俺の読みは正解だったようだ」と近藤。

『そう易易と、この学園に踏み込めると思ったら大間違いですよ。
そのださいカツラを脱いで、早く正体を現しなさい。一匹狼の族潰し、血濡れのバラダ!
――そう言い、副番長は拳を振り下ろすも、茨田は鮮やかに身を躱した』

『僕の正体はバレているようなので、ただ蒸し暑いだけのカツラを取ることにした――あー、すっきり。
銀色に染めた髪を、俺は風になびかせた。「おい、一人称が変わっているぞ」
前髪で隠していた目で一睨みすると、副番長を始め学園の不良たちは途端に恐れをなし、顔色を青くした。……はっ、雑魚どもが』

「精神まで偽装していたのか、プロだな……」

すっかり変貌した主人公に、近藤はムダに感心する。

『俺はいつものように、不良を一人残らず地面にねじ伏せた。
手応えが今ひとつだったのは、彼らがしょせん、頑丈な檻に守られている獣であるせいか――
俺の振るった拳に惚れたらしい副会長を従え、ひとまず食堂に向かった。飯はもちろん副番長に奢らせた。
俺の二つ名にふさわしい、ケチャップまみれのオムライスを食べたが、あれは美味かったな。……だが、しばらくすると周りの連中がうるさく騒ぎ出しやがった。
学園の支配者である、番長が現れたせいだ。奴は、俺に何か因縁を感じたらしく、出会い頭に一発かましやがったので、俺は三倍返しで番長をボッコボコにした――これが俺達の運命的な出会いとなり、長き戦いの始まりを告げる、ゴングになったのだ』

「なんつーバイオレンスな食堂イベントだよ……」と、真田は呆れ返っていた。

『それからの日々は、俺と副番長の新連合軍と、番長率いる旧一派との、激しい抗争が続いた――
歓迎会と言う名の乱闘、体育祭という名の合戦、学園祭という名の天下一武闘会……怪我は耐えなかったが、なかなか面白かった。
頂上決戦で、俺はついに番長に完全勝利し、その地位を奪い取った。元番長は、すっかり俺の腕っ節に惚れたようで、今では忠犬のように従順だ。
学園は、今や俺の手中にある。……だが、俺の覇道はまだ始まったに過ぎない。
――拳で築き上げた玉座で、茨田は不敵に微笑む――GOODEND;ボコボッコラブ』

「なるほど。BLは、喧嘩好きの略称だったのか」

最後まで誤解したまま、近藤はBLゲー初プレイを終えた。


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あきゅろす。
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