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【直感】BLゲーを四人でやってみた。
BLゲームをやってみた。 2

プレイヤー1:東野


スタート画面に表示されたタイトル、「僕らの∞王道学園!」を見て倖田は言った。

「ふむ、どうやら学園ものらしいな」

「ファンタジーものが良かったな……」

コントローラーを持っている東野は、ぼそりと呟く。
耳聡くそれを聞き取った倖田は、ちょっかいを出すように訊いた。

「剣や魔法を使いたかったか?」
「いや、別に……」

恥ずかしそうに俯いた東野を、倖田が楽しそうに覗き込んでいる――
ゴシップ担当の真田は、二人を撮りたくてうずうずしていたが、カメラを持っていなかった。

スタートボタンを押すと、主人公の名前入力の画面に移った。

「苗字と名前、両方決めなければいけないのか……面倒だな」

「よし、俺が代表して決めよう。貸してくれ」

東野からコントローラーを受け取った倖田は、迷わず入力していく。

『主人公の名前は――茨田(ばらだ)色太郎(いろたろう)に決定しました』

倖田は「よし、いい感じだ」と満足げだったが、妙な変態臭がする名前に、他三名は渋い顔をしていた。
彼のネーミングセンスの無さは、相変わらずである。

再び東野がコントローラーを持ち、オープニングが始まった。

『――僕の名前は、茨田色太郎。元気さだけがとりえの、高校一年生だ』

「名前からして、只者じゃないけどな」と、真田が早速ツッこむ。

『僕はこれから、全寮制の名門男子校、BL学園に行こうとしている。
とある事情で、僕は一ヶ月入学が遅れてしまったから、少し不安だけど……でも、その何倍も楽しみだ!』

「BLってどういう意味だ?」と、東野は首を傾げた。
近藤は「わからんが……野球が強そうな、格好良い校名だな」と、更なる誤解を膨らませる。
倖田は「色太郎はポジティブ思考だな」と妙なところで感心していた。

『学園は、かなり山奥にある。入口である正門に到着するまで、最寄りの駅から何時間も車に乗らなければならない。僕はちょっと乗り物酔いしやすいタイプで……なんか、気持ち悪くなってきた。気を紛らわせるために、学園の話をしようかな。
BL学園は、小中高一貫の男子校で、そこに通う生徒は、有名人や富裕層の子息が多いんだ。学費がとんでもなく高いからそうなるんだけど、部活動の実績や偏差値もすごい……うっぷ、つまり、才能を持った未来のエリートたちが集う、すごい学校なんだ』

「大丈夫かこいつ、一瞬吐きかけていたぞ……」と東野。

「この学園、うちの学校に似てないか?」「モデルにしたのかもしれないな」
近藤と倖田は、いわゆる王道の設定に注目したが、まだBLの真意には遠かった。

『僕は高校から編入するわけだけど、そんなに頭も良くないし、親がお金持ちというわけでもないんだ。叔父さんが学園の理事長だから、そのコネで、うらみち……うっ、ちょっと運転手さん、車止めて! も、むり……うっぷ、けろけろけろ』

「とうとう吐いたか……」と、哀れんだ眼差しを向ける東野。
「それよか、吐き気に任せてとんでもない裏事情漏らしたぞ、この主人公!」と真田。

『あー……すっきりした。あ、待たせてすみません、発進させてください。 
あと、ちょっとした事情で僕は今、正体がバレないように変装しているんだ。
ダサいカツラのせいで根暗そうな少年になっているけど、本当は脱ぐと、すごいんです』

「ただの高校生が、変装までする世界なのか……何か、きな臭いな」と、近藤はシワをきつく寄せ、ムダに深読みしていた。

『とうとう正門が見えて、僕は意気揚々と車を降りた。
びっくりするくらい大きな門だ。まるで中世のお城みたい……でも閉まっている。さて、どうしようか?』

「おお、最初の分岐だな」と、倖田はワクワクして身を乗り出す。
画面にずらりと並んだ選択肢を見て、東野は戸惑った。

「多いな……正門を通過するだけだろ、こんなに必要か?」

「たかが正門、されど正門――この最初の難関をどう突破するかで、主人公の基本性格が決まるのさ。こいつはかなり重要だぜ、東野屋」

と、真田は知ったように口にする。真に受けた東野は、しばらく考えてから、

「なら、俺は一番の、『誰かが門が開くまで、大人しく待つ』を選ぼう。こういう臨時の編入生は、生徒会が迎えに行くはずだからな」と、自信満々に選んだ。
「なるほど」と、倖田は頷く。

『僕は待ち続けたが、迎えは来なかった……門は、固く閉ざされたままだった。
 ――茨田は、BL学園に入学することはできなかった――BADEND:無情の門』

ブラックアウトした画面を、東野は呆然と見つめていた。
真田は腹を抱えて笑っていた。

「あっひゃっひゃ、入学すら出来てないじゃん!」

「何故、誰も来ない……この学園の生徒会は、無能集団なのか……!」

憤りで肩を震わせている東野を、相変わらず笑い続けている真田は、バシバシと叩いた。


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