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作者でも分かるとまと同人誌情報コーナー
ドキたま/すたんぷ第2巻&幕間第24巻経過報告(サンプルあり)(2014/07/27)



古鉄≪というわけでドキたま/すたんぷ第二巻が二〇一四年七月二十八日に販売開始したします。
メロンブックスDLS様の方で1080円――みなさん、ぜひよろしくお願いします≫

恭文「そんな今回は、着地点とか言ったのにバトル真っ盛り。でも許して? どうしてもこう、収録したお話的にね」

古鉄≪サブタイを見てもらった通り、今回はあのお話に突入です。でもその前に≫


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


果てしなく広がる宇宙空間、無限に等しい数交わされる火線。幾つものガンプラ達の中で、デフォな初代ガンダムがいた。

それはどんなガンプラよりも軽快に飛び、どんなガンプラよりも正確に攻撃を繰り出す。

何度挑んでも、絶対に勝てない高き壁。くすぶっている熱を叩きつけるように、左腕のマーキュリーレヴを稼働。


ガトリングを展開し、上方から襲撃。こちらとは別方向にいるガンプラを、あのガンダムは右手で持ったライフルで撃ち抜く。

その隙に迫るガトリング弾――本来なら対応も難しいタイミング。だが彼は反時計回りに大きくローリングしながら、あっさり回避する。

軌道を先読みし、発射する弾丸を進行方向に置いてもそれすらすり抜ける。それは普通なら信じ難い光景。


外見だけならただのHGUCの初代ガンダム。このνガンダムヴレイブより前に出ているキットだから、可動範囲やパーツ分割も少々見劣りする。

それだけであのガンプラの完成度、及びファイターの腕前が分かる。ガンダムはリアスカートにビームライフルを設置し、右手をランドセルへ伸ばす。

そこに装備されるビームサーベルを抜き、流星が如き右薙一閃。咄嗟に右腕のソードユニットをかざし、ビームサーベル展開。


ビームの刃が正面衝突し、激しい火花を暗い宇宙空間でまき散らす。


◆◆◆◆◆


イメージの中でνガンダムヴレイブが破壊され、ハッとしながら目を開く。そこは見慣れた教室……ただし日本ではない。

髪どころか肌の色さえ違うが、同じ学びやで学ぶ同級生達。左側の窓から見えるのは、こんこんと降る雪達。

ここはロンドン郊外にある私立学校。僕は……ユウキ・タツヤは、ここでくすぶっていた。


「どうしたタツヤ、またMEISOUか?」


右側から同級生が話しかけてくる。金髪を短めに刈り上げた、とても気持ちのいい男だ。転校当初からお世話になりっぱなしだ。


『なおロンドン郊外なため英語が基本ですが、作者の英語能力が著しく低いため全編通訳状態となっております。ご了承ください』


……謎の声は気にせず、彼にあやふやな笑いを送る。


「そうだ、頭の中で戦っていた」

「おぉ! しかし……日本人は変わってるつーか、凄いな。しかしそれで成績優秀なんだから、オレも日本に生まれればよかった」

「やめとけって。個人の資質と努力さ。な、タツヤ」


別の同級生にもあやふやな笑いを送っていると、休憩時間は終了。僕達はまた静かに授業へ入る。

あの夏の日から――トオルと恭文さん達と知り合ってから、多くの月日が流れた。

プラフスキー粒子の発見に端を発したガンプラバトルは、今や隆盛を極めている。


ガンプラ自体も数年前からは考えられないほど進化し、しかも幾度となく世界大会が開かれるに至った。

けれどあれから、僕が再びトオルと会う事はなかった。……恭文さんとはちょくちょく絡んでいるというのに。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「まずは特別書き下ろし――はい、ガンダムビルドファイターズAです」

古鉄≪中学生編ですね。ただ最近この続きが単行本として出たばかりなので、二巻移行のお話は載せていませんが≫

恭文「それで僕やアルトが大暴れしている横で、どういうお話が展開されていたかは分かるかなと。それで僕達はというと」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


≪でもあなた、集中して作ってましたね。ティアナさんの練習を見ている間に仮組みしたとはいえ≫

「やっぱF91、カッコいいしねー。それに今回のHGUCは、待ちに待った百四十四分の一スケールだし」

≪あぁ、ガンプラでは初めてでしたっけ、十五メートル級MSが出るの≫

「そうそう」


ちなみに名前は……ガンダムF91ナハトかな。特別な機能は『アレ』以外ないけど、その分素の良さを突き詰めてみました。

作る時意識したのはやっぱりイオリ・タケシさん。現在はガンプラを広めるため、世界中を行脚しているらしいけど。

とにかくあの初代ガンダムはマジで凄かったからなぁ。テレビ見てて、興奮しまくりだったもの。


特殊武装もなく、ガンプラの良さをとことん引き出す改造。そうして上げた限界値を生かす操縦技術。

全てにおいて奇跡。又はそれすら超越するオーパーツレベルだった。僕も日本人だし、やっぱり意識しちゃうんだ。


「……アンタ、私がせっかくきてるってのにおもちゃの相手は」


そこで不満そうに話しかけてきたのは、後ろで控えているティアナだった。


「おもちゃじゃないよ、ガンプラだよ。映像見せたでしょうが」

「あー、そうだったわね。でも凄いわね、プラフスキー粒子。あれ、魔法とかじゃないのよね。誰かが技術を持ち込んだとか」

「うん。前にちょっと調べたら、反粒子同士の結合でできてたから」

「はぁ!?」


ティアナがぎょっとしながら僕の隣を取り、頬を寄せてくる。


「ね、それマジ? 危険性は」

「ない。まぁオーパーツ同然だけど、楽しいし特にツッコんでないんだ」

「また軽いわねぇ。なら局にも報告してないと」

「するわけないでしょうが、こんなブラック企業になんて」

「反論できないわ、それ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「まぁこんな感じです。最近Vivid編で登場したF91ナハト、前倒しで登場です」

古鉄≪一応劇中時間だと、もう出てるんですよね。F91イマジンとかもできますよ≫


(ゲロビームはどうしよう)


古鉄≪そう言えばこのシーン、ツンデレコンビなんですよね≫

恭文「は? ツンデレはティアナだけでしょ」

古鉄≪なに言ってるんですか。あなたも読者にちょくちょくツンデレって言われてるでしょ、めんどくさいツンデレと≫

恭文「うるさいよ! だから僕ティアナじゃないし!」


(『だから私もツンデレじゃないって言ってるじゃないのよ! なに代名詞みたいになってんの!?』)


恭文「まぁオリジナル描写も組み込みつつ……本編の方はというと」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


はぁ、憂鬱だぁ。今年もこの時期が……バイト先から帰る道すがら、出てくるのはため息ばかり。

クリスマス近辺はバイト三昧、更にデートする彼女もいず……親からも嫌みを言われる始末。

その上、またサンタのコスプレでティッシュを配れと言われた。ふざけるなっつーの、あの馬鹿店長。


去年それやって、なんのキャンペーンにもならなかったじゃないのさ。ほんと、馬鹿みたいな目で見られてさ。

サンタなのに、ティッシュがプレゼントって。去年あれだけ言ったのに、意味がないって。

ただしょぼいだけだって。なのに馬鹿店長、俺達に真心が足りないだけとか……!


俺だけが言ってるならともかく、他のバイトだって同意見なんだぞ。なのに……腹立たしくて足を止め、近道のため裏路地へ入る。

やや薄暗くて狭いけど、ここへ入ると家へかなり近くなる。……そんな道の中、光が見えた。

濃い紫色の……とても小さな光。暗い道だからすぐ分かった。それに近づき、光に手を伸ばしてみる。


それはとても奇麗な、宝石だった。なんだろう、これ。なんだか……見ていると安心する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「お願いーシンデレラーふぅー!」

古鉄≪あなた、ワンフェスのモバマスステージ見てるからって……テンションおかしいでしょ≫


(ニコ生楽しい)


恭文「というわけで前巻の予告で言った通り……なおこちらの方は、かなり前になりますが頂いたアイディアを参考にしています」

古鉄≪アイディア、ありがとうございました≫


(ありがとうございました)


恭文「その結果が」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『――あ〜ん♪』


一瞬視界が暗くなる。でもすぐに、体中から力が溢れた。それで視界が元に戻ると、店長が僕を怯えた様子で見上げていた。

でも意味がよく分からないので、左手で持った袋の口を向けた。


「キャラなり」


すると店長の周囲にあるものが、次々と口の中に吸い込まれる。


「サンタ・ドリーム!」


筆記用具、電話、パソコン、デスク……ついには店長すら引き寄せられる。でも店長は床をみっともなく這いずり、必死に抵抗する。


「なんで僕が、そんな事を言われなきゃいけないんだ。サンタのまね事すらできないのはお前じゃないか」

「う、うちや……! お前達、助けろ! 早く……おい、逃げるなぁ!」

「役立たずなのも、消えなきゃいけないのも……死んでしまった方がいいのも、お前じゃないかぁ!
そうだ、サンタとなった僕からお前にプレゼントをやろう! お前へのプレゼントは……死だ!」

「や、やめ……やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


◆◆◆◆◆


「なんだ、忍者までサンタになってるのか! だったら消え去れ! 僕が……僕だけがサンタなんだ!」

「おのれ、そうしてまでどうしてサンタになりたいの!」

「決まっている! プレゼントを受け取ってもらうためだ!」

「人のプレゼントを奪って、同じサンタを消し去ってまでか! そんなのサンタのやる事じゃない!」

「黙れぇ! お前になにが分かる! プレゼントを受け取ってもらえないのは……悲しいじゃないかぁ!
僕だって一生懸命やったんだ! 例えティッシュでも、喜んでくれる人がいるかもしれない!
そう思って……なのにアイツは! そんな僕の努力なんて見向きもしない! クビだと……ふざけるなぁ!」


うわぁ、相当溜まってるなぁ。しょうがないんでソードガンをガンモードに変えて、何発か連射。

でも弾丸は全て風圧に流され、あの口へと吸い込まれてしまう。くそ、ならシューティングストライク……駄目だ。

中にいる人達がどうなるか分かったもんじゃない。しかも弾丸を吸い込んで破れないところを見るに、中は異空間状態。


だったら……一旦アルトのセットアップを解除し、右拳を強く握り締める。


≪ご主人様、どうするの! これじゃあ近づけないし、遠距離でも攻撃が吸い込まれるの!≫


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


古鉄≪というわけで早速ピンチです。あなた宇宙海賊にもなっておいてこれって≫

恭文「しょうがないでしょうが、例によってチートなんだし」


(なおサンタ・ドリーム、アニメに出てきたあのキャラです。とまとのなぞたま編では時期外れなため、できませんでしたけど)


恭文「そしてサンタの話が終わってもまだ」

古鉄≪あなた、運悪すぎるでしょ≫


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あれから寒空の下――フェイトさんがおろおろしまくってたので、一旦蒼凪家へ戻る。

年末年始をゆっくり過ごしてたシャーリーさん達にも事情説明――終了。それでりんさんが頭を抱える。


「アイツはなんでこんなに運が悪いの!? 今度はイマジンに取りつかれるなんて」


でもテーブルに突っ伏してたりんさんは、ぱっと起き上がり目を見開く。


「あれ、でも待って! アイツ特異点なんだよね! だったらイマジン取りついても跳ねのけられるんじゃ!」

「えっと……あむちゃん、フェイトさんもその辺りは。私はその、ヒーロー番組って専門外で」

「うん、りんちゃんの言う通り……特異点なら取りつかれても完全支配は無理だよ。でもイマジンにも個体差があるから」

「力の強いイマジンなら一時的にでも完全支配できちゃうんだ。
実際良太郎さんも、リュウタロスが目覚めた直後は全然抵抗できなかった」

「そうだった……! てーかさらば電王でも同じ事起きてたじゃん!」

「そういう、イマジンが取りついてるんだね。……りん」


納得してくれたらしいともみさんは、そっとりんさんの背中を撫でる。だよねー、りんさんはもう、顔面そう白だもの。


「でもそれも一時的、だよね。あむちゃん」

「うん。だからある程度時間が経てば、恭文から跳ね返してくるかもだけど」

「放置はできないよー! そうじゃなかったら恭文、ずーっと体奪われたまんまだしー!
ねぇシャーリーさん、こてつちゃんやジガンちゃんとは連絡取れないのー!?」

「無理だった。あとサーチも駄目……イマジンが取りついているせい? モモタロスさん達がきてくれたら楽に探せるだろうけど」

「……よし、僕達で蒼凪君を探そう」


それしかないよねー。元旦から世話が焼けると思いつつ、テーブルから立ち上がり伸び。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「はい、サブタイ通りあのお話です。そして例によって戦闘シーンはほぼ手直し」

古鉄≪今回は手直しだけで済みましたね、その分追加のシーンがありましたけど≫

恭文「どの辺りが追加かは、ぜひ本編をご覧になっていただければと。もちろん」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


風はいろんなものを運んでくる。悲しみ、喜び……本当にたくさんのものをだ。

過去には俺達自身が風に運ばれ、大騒ぎになった事もあるが遠い昔の事。ただまぁ、アレなんだよな。

シックな色合いが自慢の探偵事務所――奥のデスクに座りつつ俺は、頭を抱えた。


「なんじゃこりゃ!? どうしてまたこんな事になってんだよ!」


結論から言おう。ここ風都じゃねぇ。風都自慢の風都タワーとかそういうのがさっぱりなくなってんだよ。

てーかなんでこうなんだ? 年が明けて四人で新年の挨拶してたら、いきなり外がピカーと光ってコレだしよ。


「いやぁー、竜くん怖いー。助けてー?」

「所長、大丈夫だ。俺がついている」

「きゃー、竜くん素敵ー」


亜樹子とイチャついているのは赤い革ジャン・革パンに黒インナーがデフォな男。ちなみに夫婦だ。


「こらこらそこのバカップル! 結婚したばっかだから熱々なのは分かるが、この状況でイチャついてんじゃねぇよ!
あと照井、お前もうハードボイルドじゃねぇわ! なんかすっげー甘いわ!」

「翔太郎くん、もしかして独り身で寂しくてヤキモチー? きゃー、男の嫉妬は醜いわー♪ 竜くん助けてー」

「左、絶望が……お前のゴールだ」

「お前らはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


そう、照井と亜樹子だ。なお二人はつい最近結婚し、亜樹子の名字も照井になった……信じられないだろ?

そしてフィリップは右手を口元に当て、興味深そうに二人を見ていた。


「なるほど、これがバカップルか。実に興味深い」

「おいフィリップ、興味持ってる場合じゃねぇだろ! どうすんだよ、これ!」

「そこについては既に検索済みさ」


フィリップいつも持ってる分厚い洋書を、俺に見せつけるようにかざす。


「これはまた時間の歪みに巻き込まれたみたいだね」

「時間の歪み!? じゃあマジであの時と同じかよ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「翔太郎さん達も予定通りに登場。……元旦からまた」

古鉄≪やっぱりカブタロスさん、罪深いですね≫


(『ゆ、許してもらえると……あ、お知らせだー!』)


恭文「カブタロスも見てるんだね、モバマスイベント」

古鉄≪そう言えばヤンデレで有名な佐久間まゆさん、ガンダムビルドファイターズトライに出るんですよね≫


(ホシナ・フミナ役ですな。主役三人の一人……なんという)


恭文「うん、中の人だね。でも感慨深いなー。ツバサクロニクル見てたし」

古鉄≪実はここで火野なこの人が出る案もあったんです。同人版だと出てきた翔太郎さん達、OOO・Remixのみなさんですから≫

恭文「あー、巻き込まれてと」

古鉄≪ただ出番などを計算した結果、出しても意味がなさそうなのでボツに≫

恭文「まぁ翔太郎さん達もいるしなー」


(その分追加シーンで密度を濃くしています)


恭文「そしてこのお話があるという事は、当然」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


家に戻って、部屋へ入った早々。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』


あたし達が叫び声を上げたのは無理もない。だって……ベッドの中にまた野良猫が入り込んでたんだから。

ソイツは髪と同色のロングシャツ&ジーンズ姿でベッドへ入り込み、不敵に笑いながらこっちを見ていた。


「イ、イ……イクト! アンタなにしてる!?」

「なにって……寝てるんだが。見て分からないか?」

「そうにゃー。いやぁ、このベッド良いベッドだにゃー。ふかふかで柔らかくて」

「分かるわけないし! アンタうちの人間じゃないよね! あとヨルもヨルで堪能するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


いや、確かに少し前は泊め……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! あたしの黒歴史がまた疼くー!


「あむちゃーん」


あ、ヤバい! ドアの前から声聴こえて……あの時の再来!?

イクトの左手を掴んで、一気にベッドから起き上がらせクローゼットへ。


「実は言い忘れた事があって」


クローゼットの中へ押し込む前に、部屋のドアが開いてママが入ってきちゃいました。

あ、あははは……どうしよ。またイクト連れ込んだとか思われたらどうしよ。てゆうか、コイツ、マジ懲りてないし。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「アカン、また唯世の守護霊が荒ぶる」

古鉄≪そう言えばコトノハサマでしたっけ≫


(恐るべし、新八の眼鏡)


恭文「よし、被害が及ばないよう旅に出るわ」

古鉄≪どこ行くんですか≫


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……なんとも言えない悲しい事件だ。そんな痛みをかみ締めた翌日、僕達は予定通り東京へ戻る。

新幹線に乗って、現在あずささんと一緒に……弁当コーナー前でしゃがみ込み、唸っています。


「ヤスフミ、もういいんじゃね? ほら、カツサンドとかでさ」

「だから待ってよ。酢豚弁当酢豚弁当……!」

「どこにもありませんねー」

「えぇい、もういい! 私はこのステーキ弁当にするぞ!」

「お姉様は黙っていてください。結局駅でも散々食べていたというのに」


ほんとだよ! おのれ、少し前までモザイク吐きまくりだったのをもう忘れたの!? てーか食べ過ぎだっつーの!


「あの、お客様……こちらに酢豚弁当というのは」

「おかしいわねー。スタッフさんが名物だって教えてくれたのにー」

「味心ではないんですよね。少々酢豚が入っているのですが」

「えぇ。酢豚がたっぷりと……プロデューサーさん、諦めましょうか」

「まぁ、ないんじゃどうしようもないしなぁ」


楽しみにしてたので残念に思いながら、他のお弁当をチェック。すると左側から鹿賀丈史さん似の男性がやってくる。

背筋を正しスペース確保すると、男性はさっ爽と棚上に置かれたみかんをゲット。ネットに六個入っているやつだよ。

それをカウンター内の女性店員へ差し出し、更にゴールドカードもさっと出す。


「六百円です」

「これでお願い」


あの六百円のみかんをゴールドカードで……感心しながらも、しょうがないので竜田揚げ弁当を手に取る。

あずささんはロースカツ弁当を取り、二人でさっと会計を済ませた。


◆◆◆◆◆


ヤスフミとあずささんは、今日帰ってくる。向こうでいきなり殺人事件が起きて、びっくりしたけど……同時に嫌な予感がした。

ニュースでは既に解決したっぽいけど、嫌な予感がして昨日ニュースを見た直後に連絡。そうしたら、ドンピシャだった。

まさかヤスフミとあずささんが泊まったホテルで、しかもお部屋の近くが殺人現場だったなんて。


あとはヤスフミが軽くヘコんでいたから、フィアッセさんと励まして……そして現在。


「なぎ君……! お願いだから無事に帰ってきてー! なぎ君だけならともかく、あずささんもいるんだから!」

「お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします」

「ギンガ、落ち着くのですよ。ていうかティアも神に祈りすぎなのです」


うちのみんなは無事にヤスフミが帰ってくるようにと、祈りながらもそわそわしています。

私もちょっと落ち着かない感じ。それだと危ないから、ソファーでどっしり構えているけど。


「でも恭文さん、つい最近ザンギャックっていうのを倒したばっかりなのに」

「まぁいいじゃん、事件は解決してるんだしさ。ていうか逆に恭文がいてよかったよ」

「……確かにそうだね。恭文さんが付き添いしなかったら、あずささんはそんな状況で一人ぼっちだったわけで」

「あ、そっか」


ともみちゃん達の言葉に納得し、拍手を打つ。そうだよね、同じホテルの、すぐ近くで殺人だもの。

ある程度戦ったりとかできるならともかく、あずささんはそういうわけじゃないし……そこは私も安心かも。

あ、だけど安心できない。ついもやもやして、両手を胸元でもぞもぞさせる。


「でもそれだとヤスフミ、あずささんとは……うぅ、せっかく結ばれた直後にこれなんて」

「はぁ!? なに、アイツあずささんとそうなったの!? お嫁さん増えたんだ!」

「違うよりんちゃんー、それフェイトちゃんが勝手に考えてるだけだよー」

「か、勝手にじゃないです。だって同じ部屋なんだから、それはその」

「……恭文くん、あずさちゃんとは部屋別々って言ってたよ?」


え、そんなはずは……でもフィアッセさんが呆れ気味なので、まさかと思い手足をバタバタ。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! そ、そうなんですか!?」

「……フェイトさん、また作文書くですか? ともみさんをペットと言った時から成長してないですし」

「うん、そうしてください。妊娠中だから正座はしなくていいので……さ」

「どうしてー!」


あれ、ともみちゃんがなんだか怖い! ギンガ達まで呆れた様子で見てくるー!


「わ、私はペットなんて嫌ですから。うん、嫌……です。
もっとこう、優しくしてほしいなと。今はまだお友達状態だけど、そうなるにしても」

「……あのね、お願いだからフェイトさんと同じエロい空気出すのはやめて? なんかもう、辛い」

「シャーリーなに言ってるの! 私はエロくないよ!」

「仕事の付き添いだって言ってるのに、エッチしたって考える時点でエロいですから! そんなのフェイトさんだけですよ!」

「嘘だよー! ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「おのれだけよ馬鹿! 別の部屋だって確かに言ったよね! ちゃんとお話したよね!」

古鉄≪というわけでこちら、前巻起きた米沢八段の事件直後……またまた巻き込まれます。死神ですか、あなた。行く先々で事件って≫

恭文「やめてー! 実はちょっと気にしてるんだから!」


(『真実はいつも一つ!』
『じっちゃんの名に賭けて!』)


古鉄≪ほら、死神の先輩が手を振ってますよ≫

恭文「やめてー! ……そういやコラボゲームの実況が以前ニコ動でやってたけど、それのサブタイ『2人の死神』だったなぁ」

古鉄≪じゃああなたも≫

恭文「だから違うって! てーかそれ言ったら、旅先で事件に巻き込まれるタイプは全てアウトでしょうが!」


(そのタイプ、割りと多くあります)


恭文「そうそう、幕間の最新刊も準備を始めています。今回はちょっとだけ……できた分を」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


前回のあらすじ――英霊と真正面から喧嘩する事になりました。てーか徹底的に邪魔しまくってやる。

これが勝利……! その歓喜に震えながら、アイリさんに連れられ倉庫街を離れる。

そして現在……山道でカーチェイスが如く、走りまくるビートルに乗っていました。ごめん、僕嘘ついた。


歓喜じゃない……今は恐怖に震えてるよ! 戦争とか抜きで死ぬかもしれない恐怖に!

その恐怖ゆえに助手席のセイバーまで顔が真っ青。なおそんな暴走車を運転しているのは……アイリさんだった。

なおランサーは霊体化したままだんまり。それは正しい選択だったと今なら分かる。


「ア、アイリさ……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


どう見てもオーバースピードで、車が右に曲がる。そうして隣に座るキャスターの胸元へ顔面ダイブ。

慌てて離れようとすると、今度は左――さっきとは逆方向にGがかかり、キャス狐に押し倒された。

な、なにこれ。どうしてこんな頭文字Dみたいな状況に。峠だから、下手したら車ごと谷底に……!


「ふぎゃー! ちょ、あなたなにやってるんですか! もっと抑えて! スピード抑えて!」

「ア、アイリスフィール……その、速すぎでは」

「楽しいわねー、車を運転するのって! 今まではキリツグから教えてもらって、アインツベルンの邸内を走らせてたの!
だから外を走らせるのは初めて! ああもう、最高ー! 冬木にきてよかったー!」

『え……!』


その言葉で僕達の顔から血の気が引く。キャスターの胸がめちゃくちゃ押し付けられてるのとか、そういうのも全てすっ飛ぶ。

外での運転、初め……じゃあ免許は!? 教習所は!? やばい……これ絶対止めないと!


「アイリスフィール、おやめください! あなたは私と違って騎乗スキルはないんですから!」

「アイリさん、とにかく止まって! ブレーキ……ブレーキ!」

「えぇーい♪」

「話を聞いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


――暑い夏の夜、僕はこの日からしばらく車が嫌いになりました。具体的には無免許とかが許せなくなりました。

三半規管がミキシングされながら辿り着いたのは、冬木市山中にあるアインツベルンの城。ここがアイリさん達の前線基地らしい。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



古鉄≪アニメで言うと第六話の辺り。密度としてはDOG DAYS編と同じくらい……でもここからは大きく変わります≫

恭文「原作のキャスター達もいませんし、ランサーも八神のあの人がゲット。
ただその分、拍手ではできなかった各陣営描写が増える感じで。ここはアニメを参考にしています。なので」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


我が師、並びに父は今日の有り様に頭を抱えていた。意昧なんでもイレギュラーな事が多すぎる。

全サーヴァントが一堂に……まぁ私のアサシンは隠れていたが。ロード・エルメロイの敗退。

しかも彼を破ったのは、魔術師でもなんでもないただの子ども。そのため我が師との通信でも、彼の話で持ちきりだ。


『では璃正神父、彼はやはり』

「魔術師ではありません。アサシンの『死』を確認していなかったのも、そのためかと」

『では彼の異能はなんだ。明らかに魔術らしきものを使っていたが』

「我が師、それなのですが一つ思い当たるフシが。……HGSではないでしょうか」

『HGS? 聞いた事があるな、確か生まれついての遺伝子病だと』

「はい。ただし重度のHGS患者は遺伝子変異によって、超能力のたぐいが使えると聞き及んでおります。
例えばサイコキネシス、テレパシー、テレポートの類です。実際彼はロード・エルメロイを確保する時、テレポートを」


そこで我が師が感嘆の息を漏らす。恐らく興味があるのだろう、テレポートは現代魔術でも不可能な『魔法』なのだから。


「綺礼、間違いないのか」

「アサシンが確認いたしましたので。バーサーカーを突き飛ばしたのも、彼のサイコキネシスではないかと」

『もしそうだとして、どれほどの脅威がある』

「あくまでも一般論としてお聞きください。……過去とある組織が、HGS患者のクローンを違法生産。
クローン達を『武器』として売り出すつもりでしたが、香港警防隊によって壊滅した事例があります」
『つまりHGS患者の力は、現代兵器では及ばないほど高い』

「下手をすれば我々の魔術など、問題なく蹴散らせる可能性もあります」

「不愉快だな」


父は眉をひそめ、十歳にも満たないであろう少年へ嫌悪感を向ける。隠そうともせず、それが正しい事であると誇ってすらいた。


◆◆◆◆◆


「聖杯になにを望む」

「私には……別段望むところなどない」

「それはあるまい。聖杯は手にするに足る者のみを招き寄せるのではなかったか?」

「そのはずだ。が、私には分からない。理想や悲願もない私が、なぜこの戦いに選ばれたのか」

「理想もなく、悲願もない。ならば愉悦を望めばいいだけではないか」

「馬鹿な! 愉悦など……そんな罪深い堕落に、手を染めろと言うのか」

「罪深い? 堕落だと? これはまた飛躍だな。なぜ愉悦と罪が結びつく」


そう返され、言葉に詰まる。確かに飛躍だ、愉悦が罪に繋がるばかりか? 愉悦は簡単に言えば楽しい事。

だが楽しい事など世界には幾らでもあふれているだろう。そこで自分の中にある、歪みのようなものを突きつけられる。


「確かに悪行で得た愉悦は罪かもしれん。だが人は善行によっても喜びを得る。愉悦そのものが悪などと……一体どういう理屈だ」

「……愉悦もまた、私の内にはない。求めてはいるが見つからない」

「言峰綺礼……俄然お前に興味が湧いてきた」

「どういう意味だ」

「言葉通りだが」


そう答え英雄王は、さっと起き上がり居住まいを正す。


「まぁ座れ」


私の部屋なのだがな。主のように振る舞うのは一旦置いて、ソファーの一つに着席。


「愉悦というのはな、言うなれば魂の形だ。あるかないかではなく、知るか知れないかを問うべきなんだ。
綺礼、お前は未だ魂のあり方が見えていない。愉悦を持ち合わせんなどと抜かすのは、ようするにそういう事だ」

「サーヴァント風情が私に説法する気か」

「粋がるなよ雑種、この世の贅と快楽を貪りつくした王の言葉だぞ?
まぁ黙って聞いておけ。……綺礼、お前は娯楽というものを知るべきだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「金ぴかカウンセリングも実施です。でも……これアカンやつや」

古鉄≪このままだと確実に一人は死に、二人は精神崩壊するかもしれませんね。早めになんとかしないと≫


(着々と進むフラグ)


恭文「そんなフラグも現在構築中ですが……おまたせしましたみなさん、フルボッコタイムです」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


王様は拳で酒樽の蓋を割り、柄杓で酒をすくう。それをセイバーにすっと差し出すと、セイバーは訝しげにしながら受け取った。


「王様、豪快だね。僕もいつかできるようになろう」

「「「いや、その感想はおかしい」」」

「ほんとですよ! ご主人様、もっとツッコむところありますからね! ちょっとあなた、どうしていきなり飲み会なんですか!」

「聖杯はふさわしき者の手に渡る宿命にあるという。それを見定めるのが聖杯戦争――この冬木に置ける闘争だ。
だがなにも見極めをつけるだけならば、血を流すには及ばない。英霊同士、お互いの格に納得がいったなら、それで自ずと答えは出る」


セイバーは柄杓の酒をぐいっと飲み干す。また豪快な飲みっぷり……まるで真雪さんやリスティさんみたいだ。


「まずはセイバーやキャスターと格を競う?」

「その通り。あとはお前ともな」

「待て。ヤスフミは英霊ではない、ただの子どもだ」

「だが王だ。我らお互いに王を名乗って譲らぬとなれば、捨て置くまい。いわばこれは聖杯戦争ならぬ――聖杯問答。
どちらがより、聖杯の王にふさわしい器か……酒杯に問えば詳らかになるというものよ」


なるほど、大体分かった。セイバーが不満そうだけど、まず右手を挙げて止めておく。


「王様、ちょっと待った」

「ん、なんだ恭文。怖気づいたか」

「そうじゃなくて、言いたい事が二つ」

「よろしい。申してみろ」

「まず僕は……まだ十歳未満なのでお酒が飲めない」


そこでなぜか全員がズッコけた。僕は至極まともな事を言っているというのに。


「おま、まずそこかよ!」

「あー、それは大事ね。これでアルコール中毒になっても困るし」

「それでもう一つ……その問答に参加しなきゃいけないのが、もう一人いる」

「ほう、気づいてたか」

「ここ数日、キャスターやずっと霊体化してるランサーと一緒にいるから。てーか……僕に殺気向けまくるの、やめてほしいんですけど」

『抜かせ、雑種が』


僕達の後方三十メートルほどの位置で、あの金色の粒子が生まれる。それが実体化し、金ぴかサーヴァントへ変化した。


「アーチャー!」

「うひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


すたすたと歩いてくるアーチャーを警戒し、アイリさん達が両脇にズレて道を譲る。アーチャーはそれが当然だと言わんばかりにこちらへ近づき、僕をぎろりと睨みつけた。

それでもハッタリかまして平然としていると、アーチャーは僕の真向かいへ静かに座る。


「ちょ、どうしてここに! ……あ、まさかご主人様を狙って!」

「あー、違う違う。街でコイツの姿を見かけたんで、誘うだけ誘っておいたのさ」

「どんだけフレンドリーなんですか、あなた! しかもここ人の家なのに!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「聖杯問答――そしてエフェクトがいちいち眩しい金ぴか」

古鉄≪とにかくこんな感じで、一気にアニメ一期の後半戦まで……キャスターの大暴れがない分、進みますね≫

恭文「暴れてるじゃないのさ、八神の僕達が」

古鉄≪それもそうですね≫


(というわけでドキたま/すたんぷ第二巻、どうかよろしくお願いします。
本日のED:藍井エイル『MEMORIA』)





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あきゅろす。
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