頂き物の小説 第1話『始まりはいつも突然・・・ホントに突然だよなぁ・・・』(加筆修正版):1 ーこれから語られる物語は、古き鉄を受け継ぐ少年がある少女たちとなんやかんやで楽しく過ごすお話ー ーそこにに偶然巻き込まれてしまった、ある少年達の物語ー 魔法少女リリカルなのはStrikers 外伝 とある魔道師と軌道六課の日常・外典 第1話『始まりはいつも突然・・・ホントに突然だよなぁ・・・』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・というわけですので、嘱託魔導師・蒼凪恭文さん。 あなたに時空管理局・古代遺物管理部対策部隊『機動六課』への出向を依頼します」 今、僕にそう告げたのは一人の女性。 翡翠色の長く潤いのある髪を、後ろに一つに束ねてる。 外見はとてもではないけど二人の孫がいるとは思えないほどの美貌。 この人の名はリンディ・ハラオウン。 さっきも言ったけど、管理局・本局務めの提督さんという偉い人だ。 僕が公私共に長年お世話になっている人になる。 世間様で言う所の保護者というか身元引受人というか・・・・・・まぁ、そんな感じ。 で、自己紹介しておきますと、僕の名前は蒼凪恭文(あおなぎ やすふみ)。 時空管理局で仕事をしている、フリーの嘱託魔導師です。 魔導師ランクは空戦魔導師A+。年は18になりたて。 彼女は無し。あ、でも片思いしてまーす♪ ・・・・・・8年ほど。 さて、そんな僕がなぜにここに居るかを説明することにする。 僕の仕事はさっきも言ったけど、嘱託魔導師。非常勤なんていう言われ方もするね。 簡単に言っちゃえば、今のように何かしらの仕事を局から依頼されてそれを遂行する事である。 僕は捜査スキルとかはないからもっぱら荒事を手伝うというのが多いかな? それにそれに、やっぱ暴れて悪党ぶっ潰すの楽しいし〜♪ つまり、僕はリンディ提督直々に仕事を依頼されているわけだ。 しかも、内容もなかなかすごい。正しく、聴いて驚け見て驚けですよ。 内容は、ある部隊への出向命令。ようするに『その部隊で働いてね』ってお願いである。 そして、その部隊の名は、『時空管理局・古代遺物管理部対策部隊 機動六課。 今年の4月に発足され、つい先日起きた『JS事件』を解決へと導いた奇跡の部隊である。 さて、ここで少しだけ、この部隊について説明しておく。 この部隊は、局の中で五課まであった古代遺物管理部機動課の、6番目の部隊である。 古代遺物というのは、別に落し物探しとかではない。いや、ある意味それだけどね。 機動課が探すのは・・・・・・ロストロギアと呼ばれる、オーバーテクノロジーで作られた古代遺産・・・のようなもの。 なお、ロストロギアというのは総称で、その能力や形状、種類などは、多岐に渡る。 それらを詳しく説明していくと非常にめんどくさいので、簡潔に済ませると・・・・・・危険物ということだ。 ロストロギアは、大昔に文明が発達しすぎた故に、争いが起こったり、場合によっては破滅を迎えた世界の遺産。 ものによっては、世界一つを滅ぼすだけの力を秘めたものを存在している。 そして、そんなもんがそこら辺に転がって、好き勝手に使われたらとんでもないことになるのは明白。 つーか、そんな世界は僕は嫌です。怖いもん。真面目に怖いので、管理局もそう考えた。 なので、管理局は発足当初から、このロストロギアの保守・管理を使命の一つとして掲げている。 だけど、それを狙うやつらもいる。自分達の欲望を満たすために。もしくは、密売して巨大な利益を得たりとか。 そう、ここまで言えば分かると思うけど、機動課というのは、それの防止が仕事。 ロストロギア関係の事件を捜査そて、解決する部隊なのだ。それは六課も同じ。 あそこは、JS事件を引き起こしたジェイル・スカリエッティが、大きな要因担っている。 レリックと呼ばれるロストロギアを狙っていたことから、事件に関わることになった。 ・・・・・・いや、一つ訂正。レリック対策が、色々な諸事情から局ではうまく取れてなかった。 そのために、その対策専門の部隊として、設立されることになった。 まぁ、六課の話はここまでにして・・・・・・とにかくですよ。 JS事件の事後処理やらで、六課の通常業務が少々滞っている。 それを解消するために、そこに出向しろというのだ。 ・・・・・・一応、あの部隊には知り合いもいるのでそこそこやりやすいと思う。 実際、先ほどリンディさんから提示された報酬金額もかなりのもの。これで引き受けない手はない。 まぁ、そういうのを抜きにしても、リンディさんには魔導師になってからずいぶんお世話になっている。 なので、その辺りも考えると答えはひとつだった。 「お断りします」 その瞬間、世界が凍りついたのは言うまでもない。リンディさん、お願いだからそのフリーズした顔はやめてください。 そして、ため息を吐かないでください。でもね、聞いてください。僕の話を聞いてください。 5分だけでもいいから聞いてください。断るのにはちゃんと理由があるのよ。 こっちは、あの楽しい楽しい祭りが終わるまで、これまた某提督さんの依頼で仕事してたのよ。 休み無しでね。うん、今はね・・・・・・・大体一ヶ月くらい休みなし? まぁ、その中で関わった人達はいい人たちばかりで、正直楽しかったし仕事もすごくやりやすかったのは事実。 で、いざ現場で鉄火場っていうのも、普段はお目にかかれないような連中とやりあえた。 ・・・・・・半強制的に。まぁ、これまた勉強になったと考えるなら、こちらは大満足なわけですよ。 しかしっ! それと休みとはまた別次元の話っ!! お願いですから、しばらく休ませてください。いや、ホントに。 買って開封してないゲームとかもあるんですから。 そういうのは抜きにしても、しばらくは平和に過ごしたいのよ。 戦いを終えた戦士には休息って必要でしょ? ほら、仮面ライダーしかり、戦隊物しかり、プリキュアしかり。 ちゃんと休まないと、戦えないのよ。 なんでぶっ続けで、そんなイワク付きな部隊に突っ込んでいかなきゃならないのさっ!? おかしいでしょどう考えてもっ!! ・・・・・・いや、仕事するのが嫌とかじゃないの。うん、そこは本当。 ただ・・・・・・部隊に常駐って、好きじゃないの。なにより『今行く』のが嫌なの。 あれだよ、どうしてもって言うなら、年明けからとかならいいよ? 充分休めるだろうし。 つか、嘱託魔導師ってどっかのカラス傭兵ばりに自由なのよ? そのくせして、福利厚生の対象にも何故かなっているのよ? なので、あんまり休みとか取ってなかったり、有給も消費していないと、まずいの。 人事の人とかに、怒られるし。と言いますか、ついさっき顔見せたら泣かれたし。 なので、僕としては是非今日からその辺りにしっかりと協力を・・・・・・。 「それで、六課への出向の日程ですが」 シカトする気かい。 「すみませんが、今回はお断りさせていただきますので」 「向こうは出来るだけ早く来てほしいとの事で」 「行きませんから」 「とは言え、あなたの都合ももちろんあると思います。なので」 そして、まだシカトする気かい。 「無理ですって」 「遅くとも、二週間後には向かってもらうことに」 「では、そういうことなので失礼しましたっ!!」 そう言うと、180度回れ右して早足で部屋を立ち去ろうとする。 人間、話しても無駄な時ってあるよね。うん、それが今なのよ。 「だから、待ちなさいっ!!」 ガシッ!! 「話は、まだ終わってないのよっ!?」 ドアが開いて部屋を出ようとした瞬間、誰かに肩を掴まれた。 ・・・・・・って、誰かなんて考えるまでもないけど。 「話もなにも、行かないって返事したじゃないですか。 『依頼の承諾の判断は、各個人に委ねられる』って局のマニュアルにも書いてますよね?」 「ただ行きたくないと言われただけで、納得できると思う? ちゃんと理由を言ってください」 「部隊に常駐なんて嫌です。めんどくさいの嫌いなんです」 「却下します。仕事に忌避は持ち込んではダメよ」 あぁ、なんつうもっともらしいことをっ! そう言われたら反論できないじゃないのさっ!! ・・・・・・仕方ない、マジな話をしよう。 「・・・・・・休ませてください」 「・・・・・・・・・・・・はい?」 いや、『はい』じゃないから。マジな話、僕の今の気持ちをようやくするとこの一言になるのよ。 「ほんとに休みたいんです。リンディさんも知ってるじゃないですか。 僕この数ヶ月ほんとに頑張ったんですよ?」 必死ですよ? 全力全開ですよ? そしてスルーですよっ!? 「それは関係ないでしょっ!? フェイトに言ってちょうだいっ!!」 「気にしないで下さいっ!」 「するに決まってるでしょっ!?」 むむ・・・・・・相変わらず、注文の多い人である。 「・・・・・・まぁ、そことか目立ったところは、憎たらしいことに全部六課のあやつらに持っていかれたこととかはいいですよ」 だったら、最初から六課に入っておけってお話だもの。・・・・・・一応、誘われてはいた。 友達が中心になって、作った部隊だしね。でも、断った。そういうの、趣味じゃないし。 「僕が言いたい事は・・・・・・ただ一つだけです」 思いっきり頭を下げる。というか、泣く。 「お願いします、休ませてください。本当に休ませてください。 つーか、これ以上未開封のゲーム増やしたくないんです」 軽く涙目になってきた僕の様子にため息を吐きつつ、リンディさんはこう言った。 「わかりました」 「え? いいんですかっ!?」 やったー! これでゲームが出来るし貯まったアニメや特撮も見れる〜♪ あ、さらば電王、もう公開されてるし、地球に行ってくるかな? よし、けってーい♪ 「六課部隊長には、定期的に休みを出すように私からお願いしておきます。 向こうはレリック事件が解決して、24時間体制も解除になると思いますし、大丈夫でしょう」 えー、その言葉に見事に崩れ落ちました。そりゃもう誉めて欲しいくらいに。 そういうことじゃないよっ! 頼むから一ヶ月とか呑気に隠遁生活を送らせてくれって言ってるんですけどっ!? そして、それだとさらば電王見れないじゃないかよっ! モモ達の最期のクライマックス見たいんだよこっちはっ!! 「ですから、二週間後に出向してくださいと言っています。 ・・・・・・それだけあれば、休みとしては十分でしょ?」 ええい、そんな魅力的なウィンクしても今回は騙されんぞっ!! 幾度となくそれに振り回された経験が告げてるのよっ! 絶対に引き受けるなとっ!! 「どこがですかっ! 大体、僕の方だって自分の後処理やらがまだ済んでないんですよっ!? しかもあの人・・・・・・! 空気読まずに、遠慮なしに追加の報告書の作成とか命じるしっ!!」 時空管理局は、とても緩く若干お馬鹿な組織だ。それは、JS事件を見ればお分かりになると思う。 ただ、それだけじゃない。KYな人間が提督になれる時点で、組織としてどうかと思う。 「それ終わらせて、準備して・・・・・・なんてやってたら、完全に休みなしじゃないですかっ!!」 アンタ死ねとっ! 僕に死ねというのかっ!? こっちは現時点で書類に溺れて溺死しそうなんだよっ!! 「なら仕方ありませんね。提督権限で強制的に出向してもらいましょうか。今日からお願いしますね」 「・・・・・・リンディ提督、人間、権力を盾にかざすようになったらおしまいですよ」 真面目に思う。そこは真面目に思う。なお、僕はそんな人間が嫌い。なので、こうする。 「つか、僕は言いましたよね? 『そんな真似したら、暴れますよ?』と。 ということは、現段階で交渉決裂ですね。うし、いくか」 「・・・・・・あの、お願いだからその眼はやめてくれないかしら? というか、セットアップしようとするのはやめてほしいわ。さすがにそんなことしないから」 気にしないで欲しい。つーか、そんな真似はぜひ止めて欲しいです。 はい。権力者として超えちゃいけない一線ですよ? 「お願い。出向の話を、受けてくれないかしら? 私個人としても、あなたが一番適任だと思うの」 ・・・・・・そんないきなりお仕事モードオフにしないでくださいよ。戸惑うじゃないですか。 と言いますか、色々おかしいから。 「僕が居ても、そんなに役に立ちませんよ?」 そう、おかしいところの一つは、これ。僕が行く理由がないのよ。 「事件は解決してるわけですし、なのは達だったらなんとかするでしょ。 まだ鉄火場があるとかなら、また話は別ですけど」 六課は相当のエリート部隊な編成になっている。 なんか反則気味な最強チート部隊とも囁かれているくらいだ。 実際、部隊が設立されたときには、それはもう期待度が凄かった。 世界の一つや二つは救えるんじゃないかって噂が飛び交うくらい位のノリで、戦力が整えられていた。 確かに機動課というのは、ロストロギアなんていう物騒なもんを扱うので、任務の危険度も大きい。 だからこそ、部隊員はエリートやら、特殊な能力持ち揃いというのが定説。 だけど、それすらブッチギリな勢いだったのだ。そんな噂が飛び交うのも当然と思った。 というか、本当に救って見せたし。冗談混じりで救えるんじゃないかって言ってた奴は、驚いたさ。 というか、きっと何人か腰を抜かしたのは、間違いないね。うん、僕が言うんだから絶対だ。 とにかく、今はゴタゴタしていて仕事が滞っていると言っても、問題ないはずなのよ。 それくらい優秀な人間がどっさりいれば、近い内に業務は通常どおりになっていく。 戦闘要員だけじゃなくて、バックヤード・・・・・・事務的なことを請け負う人間も、当然居る。 それまで未来のエリート揃いなんだから、なんの問題があるのか分からない。 つまり、そこにフリーの魔導師一人をよこしてどうするのかがさっぱり分からないのだ。 いや、現在進行中で事件が起きてるとかなら分かるけど、解決直後だよ? ありえないって。 もっと分からないのは、いくら長年の友人だからと言って、僕を寄こす事にここまで拘るのかが正直分からない。 「そんなことないわ」 リンディさんは首を横に振りながらそう言い、さらに言葉を続けた。 「あなたは確かに、ちょっとアレなところがあるけど」 さて、帰るか。書類片付けなきゃいけないし。よし、すぐに地球に行くか。 ・・・・・・時間の波を捕まえて〜♪ たどり着いたね♪ 約束の〜場所♪ 以心伝心♪ もうま〜てな〜い♪ 「お願いだから待ってっ! そして話は最後まで聞いてっ!?」 「答えは聞いてないっ!!」 「なに言ってるのあなたっ!? ・・・・・・そうなのね、私のことが・・・・・・嫌いなのねっ!!」 「そうですが、何か?」 あ、なんか蹲った。・・・・・・あー、これフォローしなきゃいけないの? うん、いけないんだね。分かってた。 「お願いですから、泣かないでください。さすがに罪悪感が沸いてきますから」 「・・・・・・とにかくよ。あなたの実力は私も、そしてなのはさんにはやてさん、フェイトもよく知ってる。決して彼女たちに見劣りするものじゃないわ」 「魔導師ランクAですけど」 なのはもフェイトもはやても、あと師匠達も、強いでしょ。 みんなSランクor二アSランク魔導師じゃないですか。足元にもおよびませんって、私。 「それは、あなたが昇格試験を受けないからでしょ? 実際はそれより上なのは皆知っていることよ」 ・・・・・・そう、でした。 「なにより・・・本当にAランクレベルなら、そのSランク魔導師を相手に互角の戦いなんて、出来るわけないもの。いえ、実際勝ってるわよね。何度も」 だって、魔導師ランク上がっても嘱託魔導師の仕事にはあんま関係ないし。 つか、互角って言うな。かなり苦戦するんだから。あと、勝ってるのは勝たなきゃ死ぬからだよ。 人間死ぬ気になれば、炎も出せるしオーバーSにも勝てるもんなの。 「と言いますか、六課に行くのは事務仕事やるためってことですよね? それなら、なんでいきなり魔導師としての実力の話になるんですか」 正直、それならどっか本局付きの事務員数人送って欲しい。 ゴタゴタしててダメとかぬかすようなら『提督権限』使えばいいわけだし。 それで僕の休みが確保されるならきっと素晴らしいことだと思う。 「・・・・・・そうね。その通りだと思うわ」 「だったらそれで」 「でも、そういう訳には行かないの」 「だから、なんでそうなるっ!?」 ・・・・・・そんな僕の疑問をリンディさんは答えてくれた。ただし、表情は重い。 それだけじゃなく、暗いものへと変化させてから。あー、ひょっとして地雷踏んだ? 失敗したかこれは。 「あの子たちは今、とても傷ついているわ。『奇跡の部隊』なんて周りは持て囃す。 だけど、実際はそうじゃない。この勝利は本当に・・・・・・ギリギリで勝ち取ったのよ」 傷・・・・・・ついてる? ぎりぎり・・・・・・まさか。 僕はその言葉の意味を考える。そして、ひとつの結論に達した。そして、頭が痛くなった。 「・・・・・・リンディさん、正直に答えてくださいね? なのは達、そんなにヤバかったんですか」 JS事件で管理局側の中核を担った六課は、当然のように相当な激戦を潜り抜けた。 一応知り合いなので、その辺りはメディアなどで広報されているよりは・・・少しは詳しい形で知ってる。(機密に触れない程度に) みんなは、その戦いのダメージがまだ抜けきってない。そういうこと? でも、みんなからのメールでは、大丈夫って・・・・・・いや、信用出来ないか。 みんなのことだから、そう言うに決まってるか。例え・・・・・・身体がどんな状態でも。 「その通りよ」 「特になのはですか?」 僕の知る限り一番無茶するのはあの横馬だ。スペック勝負しか出来ないバカだもの。 あとは・・・・・・うわ、全員疑おうと思えば、バッチリだし。 「えぇ。あとヴィータさんも・・・・・・って、あなたは知ってるわよね」 「なかなか派手に怪我したけど、もう退院したから心配ないって本人から連絡来ました」 そう、師匠だ。入院って聞いてちとびっくりしたよ。ま、事後連絡で有無を言わせないのが師匠らしいよ。 おかげで、見舞いにもいけないと来たもんだし。いや、いける余裕すらなかったけど。 「あの子らしいわね。言っておくけど、派手どころじゃないわ。危うく死ぬ所だったわ」 「はぁっ!?」 なんでも、敵地内部に突入した師匠は、そこの動力炉破壊のためにハッスルしまくったとか。 で、相当数の賊を、たった一人で相手したそうだ。結果・・・・・・。 「大ケガしたと。それも・・・・・・瀕死の重傷」 「えぇ。完全回復するまでにはもう少しかかるそうなの。 ただ、今はもう現場に復帰しているそうだから安心していいわよ?」 そこまでかい。それならそうと言って欲しいんですが。・・・・・・ったく。うし、会ったら一言言ってやる。 なんで黙ってたのかと。知ってたらアイス作って見舞いに速攻で行ったのにと。 「とにかく、もしレリック事件のような事に六課が対処する事になった場合、まずいの。 現状がこれだから、なのはさん達が本調子で対応できるかどうかは、微妙なのよ」 いや、対応できないでしょそれじゃ。そもそも本調子かどうかすら、考えるまでもないいし。 ・・・・・・というか、そんな状態なのにまた何か起きたらあのチート部隊に頼るつもりですか? 局の上層部は、マジで何を考えてる。もう解散して、開放してあげてよ。ゴールさせても、問題ないでしょ。 ・・・・・・まぁ、仕方ないと言えば仕方ないのか。 六課はなのはやフェイト、はやてに師匠達守護騎士さんも居るわけだから。 現状で言うと教導隊みたいな特殊なのを除くと、局内で一番戦力が整っている部隊。 しかも、JS事件解決してミッド救ってるしなぁ。 また何かあったら、どこもかしこもなんとかしてくれると思うに決まってる。 勝手な期待と信頼を押し付けて、傍観者に徹するわけですよ。反吐が出るね。 ・・・・・・いや、みんなだったら、そんなのとは関係なく、なんとかしようとするに決まっている。 なんていうか、お仕事大好きワーカーホリック的なんだよね。 局員としての使命感とか、そういうのに燃えてるのよ。それはもうすごい勢いで。 マテマテ、そう考えると今の六課って、そうとう危ない状態なんじゃないのっ!? ただでさえレジアス中将の一件で管理局の威厳ガタ落ち。 そのせいで、犯罪率も少し上がっているって言うし。 「その通りよ。・・・・・・あの子達、本当に無茶するから」 あー、そうですね。僕も人の事言えないですけど。 なんていうか・・・一般人が止められないレベルで無茶しますからね。 正直アレは迷惑なんで止めて欲しいですよ。 特に今だよ今っ! 主に僕に迷惑かかってるしっ!! 「まぁ、今ので理解出来ました」 ぶっちゃけ、したくなかったけど、してしまった。 「・・・・・・万が一に備えて戦力補強のために、増援が必要」 で、そこで白羽の矢が立ったのが、今回の件で特にその手のダメージが残ってない僕。 「だから、僕を六課に仕向けるってことでいいですよね? で、この話は他の部隊員には、当然内緒・・・・・・と」 ようやく意図を悟った僕の言葉に、リンディさんが頷く。 なるほど、後処理の手伝いってのは表向きの理由ってことですか。 この話が六課の部隊員にバレると、色々と面倒そうだし。 でも、それなら僕より強いやつを何人か送るとかしたほうがいいんじゃ? 正規の局員で居るでしょ。あとは、ちょい無理だけど教導隊とかならゴロゴロと。 「それでね、正規の局員を増援として送るのは今は難しいわ。 あなたも知っていると思うけど、まだどこの部署も事件のせいでゴタゴタしているもの」 「してますね。自業自得なのに」 「・・・・・・そこは、言わないで欲しいわ。それで特に地上部隊は、実質のトップが居なくなった事が大きいの」 それは知っている。実際、今の僕がかなり大変な事になっているのだ。 特に、地上部隊の実質的なトップであったレジアス・ゲイズ中将が亡くなった事。 そして、中将が今回の一件に一枚噛んでいたというスキャンダルによって、地上部隊の大半はガタガタだ。 ・・・・・・確かに、そんな状態で各部隊から腕利きの人間を呼んで仕向けるっていうのは、厳しいかもしれない。 ここまでの状況だと、きっと運営体制やら戦力やらの見直しも行われる。 その時に、そういう人間がその見直し計画の一部に入らないわけがない。 「その通りよ。それに、あなたの言う通りに何人も『事務仕事の手伝いのために来ました』なんて・・・・・・送れないでしょ? いくらなんでも無理がありすぎるわよ」 まぁ、そうですよね。つまり、対外的に強いのが有名なのは送れないってことか。 だって、送ったらバレるし。どっかあきれ気味なリンディさんの言葉に、僕は一応同意しておく。 休み・・・無しなのかな。いや、まだだ。 「その点あなたなら、立場上すぐに動けるし、あの子たちとも知り合いでやりやすい。 そこにさっき言った通り、実力はあるときているんですもの」 そうして、リンディさんの顔が近くなる。というか、まっすぐに見つめてくる。 「恭文君、お願い。あなたの事情も理解はしてる。正直、また面倒事を押し付けてるとさえ、思う。 だけど今、なんとか出来るのはあなたしかいないの。あの子達の力に、なってくれないかしら」 「いや、だから僕は仕事が・・・・・・あの書類の海は、どうしろと? 放置すればいいんですか?」 「それなら問題ないわ。実を言うと、あなたの今の依頼主・・・というか、クロノの方にはもう話していてね。 許可ももらってるの。書類の方も、多少だけど大目に見てくれる話になってるから」 「・・・・・・しっかりと退路を断つのは止めてほしいんですけど?」 リンディさん、舌をぺロっとだしても騙されませんよ? 可愛いとは思いますけど。 奥の手・・・・・・あっさり潰されたしっ! くそ、放置もダメだって暗に言われてるよね、これっ!! くそ、いざとなったらクロノさんに、ここ数ヶ月の労働基準法無視な僕の働き振りとかを盾に休みを要求しようと思ったのに。 もしくは、あの告白してきた女性局員の事とかですよ。 それを、市井の人々やエイミィさんやアルフさんにバラすとか言って、守ってもらおうと思ったのに。 あれですか、そんなに僕を働かせたいのかハラウオン家はっ!? 「だって、あなたはこうでもしないと動いてくれないでしょ? ・・・・・・もちろん、休みについては貴方の要望に、出来る限り応えられるようにするから」 僕の事をじっと見つめ、そう言ってくるリンディさん。 瞳と表情に、懇願するようなものが見えるのは気のせいじゃない。というか、辛い。 ・・・・・・あぁもうっ! 結局またこのパターンかいっ!! とりあえず、スペック勝負に走るなのははシバいてやる。 今回のこと、話を聞くにアレの無茶が大きな要因になってるのは明白だし。 「リンディさんってほんとにずるいですよね」 「ちょっと、いきなりひどいわねっ!?」 「だってそうじゃないですか。そんな話をされて、根回しまでしっかりとされて、僕が断れると思います?」 「・・・・・・なら、六課への出向。受けてくれるの?」 ・・・・・・ぶっちゃけ、嫌です。単発ならともかく、六課は解散まであと半年近くある。それまでずっと常駐だよ? 行動に制限は付くだろうし、自由は効かなくなるに決まってる。気が重いのも、事実。 「この状況じゃあ、もうそうするしかないでしょう? それに・・・・・・そんな状態のなのはは、まぁいいや」 「ちょっとっ!?」 「いいんです。もう何したか、大体予測つくし。てゆうか、リンディさんも後見人なんだから、注意しません? いい加減、アレとかコレみたいなスペック勝負で行くのはやめろって。なんで変化球投げないのかって」 「・・・・・・安心して。それはシャマルさんやみんなでしっかり話すそうだから。ただ、無駄よ」 「・・・・・・でしょうね」 とにかく、なのははどうでもいい。どーせ一人で突っ走って無茶したに決まって。 ぶっちゃけ、自業自得もいいとこだよ。というわけで、もう一度言う。なのはは、どうでもいい。 ・・・・・・あ、どうでもよくないか。絶対フェイトに心配かけたに決まってるし、会ったらいじめておこう。 あれだよあれ。魔王呼ばわりしてやる。そして泣かせてやる。 僕の休みが無くなったという悲しみの涙に、溺れさせてやる。 「フェイトや師匠は、絶対に放っておけないですし」 「・・・・・・なのはさんは放っておいてもいいのね?」 「いや、そんなことしませんよ? フェイトと師匠に怒られるに決まってますし」 ・・・・・・リンディさん、なんでそんなに呆れたような顔するんですか? 「いえ、あなたとなのはさんがそういう付き合い方しているのは知っているの。 だけど、怒られなければ・・・・・・放っておいていいの?」 「まぁ、信頼関係にヒビが入らない程度に。第一、別に彼女ってわけでもないじゃないですか。 なのに、深いとこまで面倒見切れませんから。そういうのはユーノ先生に丸投げですよ丸投げ」 さて、頭を抱えたリンディさんは放っておくとして、これでいよいよ引けなくなった。 どこまで出来るかは分かんない。あんまり気が進まないのも事実。でも、だからって・・・・・・ねぇ。 「やれるだけのことはやります。でも、リンディさんも六課へのフォローよろしくおねがいします。 ・・・・・・僕一人に全部押し付けたら、本気でしばらく行方くらませますからね?」 モモ達の劇場でのクライマックスを、見逃すのは決定したのだ。 それくらいのことはしてもらわなきゃ・・・・・・ごめん、泣いていいかな? 「わかったわ。こちらもできる限りの事をします。・・・・・・恭文君。ありがと」 「いいですよ別に。その代わり」 僕は、右手の人差し指を一本、上にピンと立てて、言い切った。 そう、これで確定。後戻りなど出来なくなった。 「これが終わったら、たっぷりと休暇をもらいますから」 ・・・・・・思えば。いや、思わなくてもいいか。これが始まりだった。 ようやく手にしたつかの間の平和を享受する暇なんて、僕には無かった。 そう、僕はまた新しい戦いに、遠慮なしに赴くことになった。 そう、勝利を勝ち取った次元世界の女神達と共に戦う道へと・・・・・・僕は足を踏み入れた。 ・・・・・・あ、女神ってのはなのは以外ね? あやつは魔王であり冥王であり若○ボイスの似合う女ですよ。うんうん。 ピリリリ、ピリリリ すると、僕の通信端末から着信音が流れる・・・まったく、空気の読めない・・・って、マナーモードにするの忘れてたや。 「・・・すいません、とりあえず話も終わったんで出てもいいですかね?」 「えぇ、構わないわよ?」 リンディさんに確認をとると、僕は端末を開いて通信に出る。 『お〜、やっと繋がった・・・って、仕事中だったのか?』 ・・・そこに映っていたのは、ぼさぼさの赤みがかった茶髪に青い瞳の男性。 このお兄さんの名前は、ジン・フレイホーク。年は僕と同い年。現在の職業・嘱託魔導師。ようするに、僕の同業者。魔導師ランクは陸戦魔導師のA−。 僕と知り合ったのは・・・あぁ、結構前だ。まだミッドへの引っ越し前の時の話。 「いや、一応話もまとまったとこだし大丈夫だよ。それで、何のよう?」 『あぁ、お前ここんとこゴタゴタしてたんだろ?ある団体から巡礼の護衛の仕事が入って、ほとんど旅行みたいなものだから休暇も兼ねて一緒に・・・って、なんで大泣きするんだよお前はっ!?』 ・・・・・・うん、その気持ちは嬉しいんだよ? でも・・・・・・ 「・・・リンディさん、やっぱ仕事キャンセルしていいですか?」 「駄目よ。」 ですよねー♪うぅ、なんでこんなにタイミングが悪いのさ?どこかの提督さん達と違って実に友人想いのいい奴なのに・・・・・・ 『・・・・・・つまり、先約がはいっちまったと。』 「そうだよ。なんであと10分・・・いや、5分はやく連絡してくれなかったのさっ!?」 『何八つ当たりしてやがるテメェっ!!?ついでに言っておくと、俺だってついさっき知ったばかりで、そのままお前に連絡してるんだがっ!?』 それはありがたいけどさぁっ!!話が終わった後でそんな事言われても後ろ髪引かれるだけなんだよっ!! 「・・・・・・ところで恭文君。そちらの方はあなたのお友達?」 「そうですけど・・・」 『お前、依頼者の前で俺と話してたのかよ・・・あ、ジン・フレイホークと言います。一応、コイツと同じ嘱託魔導師です。』 「はじめまして。時空管理局本局所属、リンディ・ハラオウンと言います。 ・・・・・・フレイホークさん、単刀直入に申しますがあなたに時空管理局・古代遺物管理部対策部隊『機動六課』への出向を依頼します。」 『「・・・・・・・・・・・・はい?」』 僕とジンの声がハモったが、別に怒られはしないはずだ。 だって、なんでそんな話になるのかが全くわからないもん。 「あら、あなたのお友達なのでしょ?なら、多少は腕に覚えがあると思って・・・あら、あの『栄光の流星』のお弟子さんなのね。ますますお願いしたいわ。」 待て待て待て待て、今の話の最中にそんな事調べたのっ!?どんだけマルチタスクなのさっ!? ・・・・・・でも、ちょうどいいや。ここまで来たら盛大にジンも巻き込もう。 『いや、話の流れが全くわからないんですけどっ!?というか、機動六課ってあのJS事件のっ!?』 「リンディさん、彼の実力は僕が保証します。なので、さきほどの依頼に同行者として推薦したいのですが・・・」 「受理します。ちょうど書類の予備を作っていて助かったわ。フレイホークさん、今から本局の方に来てもらえますか?後はあなたのサインだけなので。」 『ってヤスフミッ!!さり気なく俺を巻き込むんじゃねぇよっ!?そっちの方も、なんで受理してんですかっ!?』 ・・・・・・ジン、君は言い友人だったが、タイミングが悪かったのだよ。 『だからっ!!誰か説明してくれぇぇぇぇっっっっ!?!?』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『・・・・・・はぁっ!? 機動六課に出向って・・・・・・マジかいっ!!』 「マジですよ。うぅ、すみません。普通に電王見れそうにありません」 自宅に戻って、ちょっとだけ友達・・・・・・まぁ、年上なんだけど、連絡。 僕が、この書類の海を2週間で片して、部隊出向しなければならないと。 『なぁ、やっさん。普通にお前関わる義理立て、なくないか? 今の話を聞く限り、完全に尻拭いもいいところだろうが』 『そうだよ。大体、アンタだって・・・・・・ダメージ、あるよね?』 まぁ、そこはなぁ。そこは・・・・・・なんだよなぁ。全く否定出来ないのが、辛い。 真面目な話をするとさ、今後の部隊運営に支障が出るまで無茶しまくるって、ありえないよ? 一般的な会社組織で考えて欲しいのよ。例えば、すっごい締め間近な仕事があるとするよね。 それを超えるために、いつまでに復帰可能になるか読めないダメージを蓄積するのは、意味がないのよ。 それも、明日明後日でどうにかなるって話じゃない。僕の出向だって、解散までって話になってるんだから。 後見人であるリンディさんの目から、部隊長であるはやての目から見て、問題だと言える爆弾を抱えてるのが、今の六課。 そしてこれが、目の前で苦い顔をしている二人が『尻拭い』とまで言った理由。 もちろんさ、JS事件で六課は中核とも言える働きをしたし、仕方ないとも言える。 ただ、逆を言えばたった一つの部隊の人間を、酷使させた局には相当問題があるのよ。 ・・・・・・うん、マジでイライラしてきた。ただ、表に出すのはやめておこう。 だって、僕は六課に居なかったんだから。誘われて、入るチャンスはあったのに、断った。 だったら、言う権利なんてない。イライラは、適当にやけ食いでもして消化する事にする。 「僕のダメージは・・・・・・まぁ、フェイトの笑顔と天然ボケにでも癒されてますよ。 あ、そうか。普通に落とせばいいんだ。それで、R18コース行けば・・・・・・かつる」 『お前、結局そこかっ!? てーか、マジでハラオウン執務官は可能性ないだろうがっ!!』 「分かってませんね。可能性は自分で切り開くものなんですよ?」 『かっこつけてどうにかなる問題っ!? というか、例えどんな神様でも、その可能性は絶対切り開けないからっ!!』 ・・・・・・こうして、夜は更けていくのだ。そう、更けていく。 背中に感じる、書類からのプレッシャーを、今だけは忘れる。 いや、お願い。今だけでいいから現実から逃げさせて。というか、逃げたいの。 だって・・・・・・普通に辛いの。これ、二週間で片付くかなぁ。まぁ、明日になったらジンが来て手伝ってくれるし・・・なんとかなるでしょ。 『・・・でも、不思議な事もあるもんだな。俺達の知り合いも、機動六課に出向が決まったんだよ。さっきメールが来てた。』 『そういやそうだったね。なんでも、友達に巻き込まれたとか・・・・・・いやぁ、あの子もずいぶん災難だよね。』 ・・・・・・その言葉に、僕は首をかしげた。なんでだろう?どこかでそんな状況を見た様な・・・・・・ 『やっさん、六課で会ったらよろしく言っといてね。やっさんと似たような生い立ちの奴だからすぐに気があうよっ!!』 『そうそう、そいつも師匠からデバイスと二つ名を受け継いでいるんだよ。』 ・・・うん、ちょっと確認してみよう。さっきから頭の中に浮かんでいる人物と一致する点が多すぎる。 「・・・・・・その人って、名前なんて言うんですか?」 ・・・・・・そして、通信相手から出た名前に驚き、相手側も驚いていた。 世界って広いようで狭いんだねぇ・・・・・・ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・やっと、帰ってきました」 ここは、時空管理局所属・機動六課隊舎のロビー。 部隊員は、前線もロングアーチもバックヤードも、みんな並んで整列しとる。 うちはそれを見て、泣きそうになる。でも、今は我慢や。 「あの襲撃事件から2ヶ月が経ちました」 隊舎は丸焼け、人員は怪我しまくり。そして、攫われた人間まで出た。 マジで、負け戦やったなぁ。ほんま・・・・・・辛かった、なぁ。 「今日、私たちはようやく自分たちの居場所に帰ってくる事が出来ました。 この2ヶ月の間、アースラに乗り込んでくれていたクルーを始め、みなさんには本当に苦労をかけました」 あの事件で隊舎が壊滅してから早2ヶ月。ようやく隊舎は復旧して元通りになってくれた。 だけど、全部が全部元通りゆうわけやなかった。例えば、前線メンバーや。 なのはちゃんとヴィータはゆりかご内部での戦闘が原因でまだ本調子やない。二人とも、相当無茶したしな。 完治するのにも、時間がかかるやろうというのは、シャマルの談や。 ヴァイス君やザフィーラ、ロングアーチやバックヤードのスタッフも負傷。 ほんまやったら、ここに来て通常業務するだけでも厳しい人間も、多い。 でも、みんな来てくれた。・・・・・・ありがとう。ほんまにありがとうな。 「私のような未熟者にここまでついてきてくれたこと。ただただ感謝するほかありません。 ほんとに・・・・・・今日ここに来てくれて、ありがとうございます」 そんな訳で、機動六課はまだまだ完全復活には程遠い状況や。 でも、リンディさんのおかげで人を借りる事が出来た。 うちとうちの子達になのはちゃん、それにフェイトちゃんの昔からの友達。 ちゅうか、幼なじみやな。嘱託として、あちこちの現場を渡り歩いてきた優秀な魔導師。 実力はうちらがよく知っとる。もう8年の付き合いや。あんなことからこんなことまでよう知っとる。 アイツが居てくれたら、うちらは相当に楽になる。長年の友達でやり口や性格は熟知しとるもん。 そのために、うちら隊長陣とも連携も取り易い。あと、気持ち的にも楽になれるしな。 ・・・・・・まぁ、事件中はアイツも大変な目に遭ってたわけやし、呼ぶことに躊躇いが無かったわけやない。 ただ、緊急事態やし、どうしても手段を選べなかった。今回の一軒で、アイツはほぼノーダメージやったのも大きい。 ただし・・・・・・精神関係と、後処理以外な? 嬉しいのは、うちらの現状を聞いて、休みも返上で準備して来てくれたっちゅうことや。 まぁ、返上させられたと言うのが正解かもしれん。ただ、最期は自分で決断してくれたそうや。 アイツは、ホンマに嫌やったら雲隠れしてでも拒否ろうとするやつやから、それは本当に嬉しかった。 自分の後始末かてまだ済んでなかった言うに・・・・・・ほんまに、ありがとうな。 ついでに、その友達まで借りることができた・・・・・・事情を聞くとアイツに巻き込まれたらしいんやけど、それでも引き受けてくれた事に感謝や。 「さて、湿っぽいのはここまでにしましょう。・・・・・・実は、今日という日を祝うように、めでたい話があります。 今日から、この機動六課で私達の新しい仲間として、一緒に仕事をしてくれる方達がおります。では、こちらに」 うちがそう言うと、後ろに控えていた彼らは緊張しながら壇上に上がる。・・・・・・アンタでも、緊張するんやな。 襟の立った陸士制服が映える。アイツは持ってへんかったから、うちがプレゼントしたものや。卸し立てやから綺麗やなぁ〜。 ・・・・・・一応、いつも着ているアンダーウェアがいいと言ってたんやけど、当然却下した。 これからはうちらの同僚なわけやし、そこはちゃんとせなあかん。 まぁ・・・・・・あれや。確かにアンダーウェアの方がかっこいいと思うで? 特にあれや、青色なんてあんまないし、そこはうちもマジで思う。 でもな、『地上部隊の制服・・・・・・ダサいもん』とか言うのはやめとき? いや、ほんまにや。 うちも、海とか空とかのと見比べるとたまに思うけど。 なんていうか、色合い・・・・・・がな? こう・・・・・・アレやし。組織改革、ここからやないかと思うもん。 それはさておきや。2ヶ月ぶりくらいに会ったけど、ホンマにアレや。 『男子、三日会わざればかつ目して見よ』とはよく言うたもんや。 ほんのちょっと会わん間になかなかにいい男に成長し・・・とらんなぁ。 全く・・・・・・しとらんっ! 誰やっ!? こんな適当な格言言うたアホはっ!? 三日どころか、数年単位でも全く変わってへんでアイツっ!! 結構長い付き合いやけど、昔から全然変わってへんしっ!! 主に身長や。髪の長さは普通やけど、体型は小柄な女の子で通るで? 顔立ちもそんな感じやし。あぁ、声も同じやな、3オクターブ出るし。 つかあの身長・・・・・・下手すると、うちより小さいんやないか? 「・・・・・・と」 ドタン 『え?』 ・・・・・・あ、コケタ。考えた事、伝わったんやろうか? ・・・・・・一瞬の痛い沈黙が、場を支配する。 その後、それでも、なんとかヨロヨロと起き上がって、挨拶しようとする。あー、そないに早足で前に行こうとしたら危ないで? 「あわわっ!!」 ドーンッ!! 『・・・・・・え?』 案の定、前に行き過ぎて、壇上から足を踏み外して落ちた。 こんな日に、なんつう縁起の悪い落ち方するんや。いや、そういう問題やないか。 みんなそれを見て、どうしたらええんかわからん顔しとる。アイツの隣にいた人も、頭を押さえて対応に困っとる。 いや、シャーリーとルキノ・・・・・・グリフィス君は笑っとるな。 あー、シグナムは睨んどる。シャマルは・・・・・・そのキラキラ目はやめような。 うん、マジで怖いから。それで、ザフィーラはいつも通りやし。 リインは、やれやれって顔しとる。まぁ、凄く嬉しそうやけど。アイツが来るのを、一番喜んでたしな。 なんとも相変わらずやなぁ。変わらんってどういうことや。ま、だからこその古き鉄か。 しばらくシリアス続きやったし、バカ騒ぎのひとつやふたつは期待してるで、恭文。 というか・・・・・・ありがとな。来てくれて、ほんまありがと。うち、マジで嬉しかったんやから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 期待してるでじゃないよこのチビタヌキっ!! うぅ、みなさんの視線がチクチク痛いんですけど。 もっと言うと、オレンジとピンクの視線が痛い。 話が話だったから、引き受けて出向してきたけど、しょっぱなから大ポカやらかすし・・・これから先、一体どうなるのっ!? すっごく不安なんですけどっ!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・やっと朝礼が終わった・・・空気が痛々しすぎるぜ・・・ で、その空気を作り出した本人はというと・・・全力で逃げ出そうとしていた。 ・・・なんで止めなかったのかって?アレを見れば分かるさ。 「・・・どこへ行くつもりだ。蒼凪」 ヤスフミの後ろに立っていたのは、隊長用の制服をつけた女性。 ピンク色の髪をポニーテールにしており、凛々しい顔立ちをしている。クール&ビューティーってのはあの人をさす言葉だなきっと。 「いや、その・・・ちょっとトイレに」 「・・・ここにもトイレはあるぞ?」 「嫌だなぁシグナムさん、まるで僕が逃げようとしてるみたいな言い方しないでくださいよ」 ・・・どうやら、女性はシグナムというようだ。・・・たしか、この部隊ってヤスフミの知り合いが多かったっけ・・・ あとヤスフミ、俺にはお前がその後に言いそうな言葉が想像できるぞ。 「残念ながら、君の行動は予測済みですよ」 「そうそう。きっとなぎ君のことだから・・・」 「『自宅のですが』・・・とか、考えてたでしょ?」 うん、知らない人がさらに増えた・・・いや、部隊の人員は確認したんだよ?ただ、まだ覚え切れてないんだよ・・・ 「・・・とにかく、帰ることは許さん」 「いや、だから僕はただトイレに行きたいだけで」 「グリフィス、シャーリー、ルキノ。すまないが蒼凪を部隊長室まで連行してくれ」 『はいっ!!』 「無視ってわりとヒドくないですかっ!? そして連行ってなんですかっ!!」 「シャーリー、ルキノ」 ・・・気が付いたら、ヤスフミは女性二人に腕を組まれて捕獲されていた。・・・二人とも結構美人なんだが、うらやましくないのはなぜだろうな? 「・・・これで大丈夫かと思われます」 「上出来だ。蒼凪、両手に花で楽しいだろう。そのまま部隊長に挨拶してこい」 「え? ・・・あの、二人ともそんなにガンガン進まないでっ! お願いだから助けてー!!」 「シャーリーっ!!」 「なに?」 「・・・ガンダ○VSガ○ダムの新型PS○同梱版で手を打たない?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・打たない」 「シャーリーさんっ!? なんで揺らいでるんですかっ!!」 「ルキノさん、元々シャーリーはこういう子だから。仕方ない、そこに年末に発売されるF○の・・・」 「なぎ君も買収しようとしないっ! シャーリーさんも本気で考えて込まないでくださいよっ!!」 ・・・そうこうしているうちに、ヤスフミは連行されていく・・・シャーリーさんはヤスフミと同じオタクの匂いがするなぁ・・・俺も片足突っ込んでるけど。 すると、男の人がこっちに近づいてきた。たしか・・・グリフィスさん、だったな。 「フレイホークさん、あなたも一緒に来てもらえますか?八神部隊長が挨拶をしたいそうです。」 やれやれ、いきなりのご対面か。どんな人物なんだかなぁ、八神部隊長・・・さっきのじゃ想像がつかねぇ・・・ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ さて、強制連行されたヤスフミとそれに付き添った俺は八神部隊長の目の前に居る訳だが・・・ 「いやぁ、いきなりやらかしてくれたなぁ〜。やっぱ恭文に来てもらって正解やったわ。これから楽しくなりそうやなぁ」 ・・・しょっぱなからとばしてきやがった。あ、ヤスフミが悶えてやがる。あれは恥ずかしいからな〜 しかも、目をつぶってるし・・・あれか、現実逃避しているのか? 「でも、それはただの現実逃避や」 「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 部隊長室に、ヤスフミの悲痛な叫びが響いた。 あれは確かに痛々しいよな・・・ 「すみません部隊長。今日はこのまま帰って自宅警備員のバイトに勤しみたいんですがよろしいでしょうか?」 待ちやがれテメェ。人を巻き込んでおいて、自分だけ逃げる気か!? 「あかんで♪」 「大丈夫ですよ。ほんの半年程行ってくるだけですから。マグロ漁船よりは短期間ですよ。うぅ・・・」 「あぁもう。別に泣くことないやろ? うちは面白かったし。大丈夫や。あれで自分は愛すべきキャラとして認識されたはずや」 「・・・そう思うなら、お願い。僕と目を合わせて。なんで微妙に合わないの? 僕の髪とか耳とか見てるよね」 目の前で繰り広げられる八神部隊長とヤスフミのやり取りを、俺は眺めることしかできなかった・・・もしも〜し、お二人さん俺のこと忘れていませんか? 「相変わらずわがままやなぁ。そんなんやと彼女できへんで?」 「いや、別に欲しくないし。」 「嘘つき。フェイトちゃんにゾッコンLOVEやんか」 そうなんだよな〜。ヤスフミの奴、あの有名なハラオウン執務官に片思いをしているのだ・・・8年間ずっと。 いや、正直そこまで思えるのはすごいぞ?あと、八神部隊長の言い回しがどことなく古臭いのは気にしないでおこう。 「待て待て19歳っ! 絶対年齢詐称してるでしょっ!? いつの時代の言い回しだよそれっ!! なんで平成じゃなくて昭和の匂いがするのっ!? おかしいでしょうがっ!!」 「そないなこと気にしたらあかんよ。つか、それを抜いても前にうちが遊びに行った時に、あんなところにあんな本が・・・」 その時、ヤスフミの身体がビクッと震えた。 ・・・というかこの人、印象が一気に変わるなこれ・・・素はこっちか。 「マッテ。その話は止めにしませんか?」 「えぇやんか。恭文かて男の子なわけやし、うちは別に軽蔑したりとかはせぇへんよ? というか、一緒にその手の同人本読み漁った仲やんか。何を今さら・・・」 「・・・聞こえなかったかな? その話は、止めに、しようって言ってるんだけど」 「・・・なぁ。久しぶりに会ったんやから、そんな怖い目で睨むのはやめてな。うち、これでもか弱い女の子よ?」 「やかましい。僕の中でお前は女性の欄には入ってないのよ。つーかたった今除外した。」 「自分酷いなっ!!」 「酷くないわっ! 事ある事にちくちくからかいやがってっ!! さっきの事で僕がどんだけヒドイ目に遭ったと思ってるんだよっ!?」 ・・・なんか、二人の会話がヒートアップしていやがる・・・ダメだ、まったくついていけねぇ・・・ 「そんなことする暇があったら、あのワーカーホリックな砲撃魔導師を見習って仕事しろ仕事っ! 仕事に溺れろっ!! もちろん倒れない程度にっ! 倒れられたら僕が困るからっ!!つか、そんな余計なこと考えるからチビタヌキなんて言われるんだよっ!!」 「そういう事言う・・・? せやったら、出向祝いにフェイトちゃんのドキドキスクリーンショットをプレゼントしようかと思ってたんやけど、やめと」 「嫌だなぁ。ほんの出会い頭の小粋なジョークじゃないですか八神部隊長。私はあなたほど素敵な女性と出会った覚えがありませんよ。 タヌキなんてとんでもないっ! 誰ですかそ んな事言ったの? 信じられませんよそいつの神経を疑いますね〜。 まさにあなたは現代のジャンヌ・ダルクっ! ミロのヴィーナスっ! 小野小町か楊貴妃か、さてはクレオパトラかっ!! もう、こうして貴方の前で立っているだけで胸の鼓動は切なく高鳴っているんですよ?」 ・・・あっさり・・・あっさり態度変えやがった!! 「まさにあなたは現代のジャンヌ・ダルクっ! ミロのヴィーナスっ! 小野小町か楊貴妃か、さてはクレオパトラかっ!! もう、こうして貴方の前で立っているだけで胸の鼓動は切なく高鳴っているんですよ?」 そして、ヤスフミは口から心にもない事をベラベラと喋りまくる。 ・・・・・・そこまでして欲しいのかよハラオウン執務官のスクリーンショット!? 「・・・・・・自分、プライドないな」 「フェイトと自分のプライド、どっちが大事かって言われたら、僕はフェイトを選ぶよ」 ・・・・・・俺は、お前のその決断に涙が流れているよ。なんてしょうもない・・・・・・ 八神部隊長はため息を吐きつつ、ヤスフミに握られていた手を離す・・・あきれているよなアレ。 「まぁ、ちょっとだけえぇ気分になれたから許したるわ」 あれでなれるんですか。なんて安上がりな・・・ 「お望み通り、選りすぐりのをメールで送付しとくわ。楽しみにしとき?」 「・・・恩に着るよ」 「まーそれはそれとして、冗談抜きで自宅警備員はホントにやめたほうがいいと思うで? フェイトちゃんやなのはちゃんが悲しむよ。 二人とも今日はおらへんけど、恭文が六課に出向してくるって聞いて、やっぱり嬉しそうやったもん」 「そなの?・・・・・・そうなんだ、二人がそんなことを。あぁ、なのはは別にいいけど、フェイトが・・・・。」 「・・・・・・相変わらずなのはちゃんに対する扱いがひどいな」 「気のせいだよ。だって、リリカルなのはの中でなのははこういう扱いがデフォでしょ?」 なのはって、あの「高町なのは教導官」だよな・・・ヤスフミ、いくら幼馴染だからってそれはなくね? しかし、俺はもっと自己主張しないとダメなのか?このままだとナレーション化が進むんだが・・・・・・ 「うん、それは絶対勘違いやな。つか、覚悟しといた方がえぇよ?」 「なんで?」 「フェイトちゃん、『いい機会だから、部隊の仕事を覚えて、局に入る気になってくれればいいな』・・・・・・とか言うてたし」 「・・・・・・マジですか。僕にそんな気は無いのに。」 「マジや。ま、家族としては心配なんよ。アンタの気持ちは分かるけど、少しは理解したり?」 「・・・だね。あー、またゴタゴタするのかな。よし、覚悟はしておこう。」 「まぁ、それはヴィータやシグナム達もそうやし、うちも嬉しかったよ。・・・来てくれてありがとな」 そう言って、いきなり頭を下げる八神部隊長。 ヤスフミはというと、なんとも言えない表情をしている。 「・・・・・・別にいいよ。めんどくなったら、全部放り出すつもりだし」 「うん、それでえぇ。アンタ、そういう冷たい奴やし」 なんて言いながら、八神部隊長はニコニコ笑う・・・なんか、二人ともツーカーというか・・・息がけっこう合ってるな。 「あと、もううちの事はいつもどおり『はやて』でかまわんで。 恭文に八神部隊長なんて言われたら、なにか気持ち悪くてかなわんわ〜」 「どういう意味だよ」 「そういう意味や。まぁ、これからよろしくな恭文」 「・・・あの〜、俺のこと忘れてませんかね?」 なにやら握手を始める二人に、俺はそっと声をかける。すると、八神部隊長は慌てたようすでこちらに顔を向ける。 「あ、すいません。ついつい話し込んでしまって・・・フレイホークさん、あなたもよろしくお願いします。」 そういうと、八神部隊長は俺にも手を差し出してきた。俺はその手を握ると、返事を返した。 「いえ、こちらこそよろしくお願いします。八神部隊長。」 そしてこの瞬間から、俺の機動六課の生活は始まる。 ・・・なんとなくだけど、ヤスフミの奴勝手なナレーション入れてる気がするな・・・ 「違うですっ! なに失礼なナレーションつけてるですかっ!?」 「そうよっ! みんな貴方が来るのを楽しみにしてたのにっ!!」 「蒼凪、相変わらずだな」 「・・・いきなり前フリも無く出てきて、揃いも揃って地の文につっこまないでください」 すると、後ろからちっこい妖精サイズの少女にショートカットの金髪美女、それに青い・・・犬?が現れる。 「狼だ」 あぁ、狼だったのか。これは失礼。 「恭文さんがいけないんですよっ!! せっかく久しぶりに会ったのにいきなりこれですかっ!? ・・・ひどいです」 「頼むからそんな恨めしい目で見ないでよ。僕が悪かったから」 「反省してますか?」 「もちろん、海よりも深く」 八神部隊長は、反省してないだろって目で見てるなぁ・・・俺も同感だけど。 「なら、許してあげるです。気を取り直して・・・・・・恭文さん、ようこそです〜♪」 そんなことは気にせずに、少女はヤスフミの胸に飛び込み、抱きつく・・・そうか、あの子がヤスフミの言っていた・・・ 「うん、久しぶりだね。リイン」 ヤスフミはそういうと彼女を優しく抱きしめる・・・やべぇ、なんか涙が出てきそうだ。 「シャマルさん、ザフィーラさんも久しぶりです」 「お久しぶり、恭文くん」 「元気そうで安心したぞ。」 「それと、フレイホークさんでしたね。はじめまして、シャマルといいます。」 「ザフィーラだ。」 「リインはリインフォースUっていうです。よろしくです〜♪」 「こちらこそ、よろしくお願いします。」 すると三人はこちらに挨拶をしてくるので、俺も返事をする。・・・ようやく話に入ってこれた気がする。 しっかし、ヤスフミの奴リインさんとずいぶん長くハグしてるなぁ・・・ 「あら、イヤだ。恭文くんったら、少し会わない間にずいぶん上手になって。 ・・・・・・うん、いいわよ。あなたがその気なら、私はいつだって受け止めるわっ!!」 「・・・・・・『次元世界でナンバーワンの呼び声も高い、自意識過剰な変なお姉さん』と」 「ひどーいっ!」 ・・・・・・いきなりだが、シャマルさんの印象がぶっ飛んだ。 「それはこっちのセリフだよっ! なにしょっぱなから色んなものをぶっちぎってるのっ!? おかしいでしょうがっ!!」 「なに言ってるのっ!? あなたの主治医兼現ち」 「その呼称はお願いだから、今すぐ次元の狭間に捨て去れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 ・・・あぁ、ヤスフミの本命以外にフラグを立てる性質は治ってないのか・・・ ちらっとザフィーラさんをみるとため息をついている・・・そちらも苦労しているようですね。 「蒼凪、気持ちは分かるがあまり言ってやるな。シャマルは、お前のことを相当心配していたのだからな」 「そうよ。私・・・本当に心配で・・・」 「だからといって蒼凪に抱きつこうとするのはやめろ」 「あら、いいじゃ・・・って、なんで恭文くんも逃げるのっ!?」 ・・・失礼なことを言いますが、危険を感じますよ?主にヤスフミが。 「・・・というかザフィーラさん」 「なんだ?」 「元気そうってのはこっちのセリフですよ。リンディさんからみんなズタボロだって聞いてたんで。」 ・・・そうだな。俺も一応リンディ提督から話を聞いている。だって、機動六課に俺はおろか、ヤスフミが行く理由も見当つかなかったから質問したんだ。 説明を聞いて、自分の意思でここに出向を決めたんだけどな。ヤスフミだけじゃ危なっかしいよまったく。 「ジン、今失礼なこと考えなかった?」 ・・・気のせいだ。 「そうね・・・日常生活には問題ないレベルには、みんな回復してるわ。ただ・・・」 「我やヴィータ、そして高町など一部の人間は戦闘となると、まだ本調子で行けないのが現状だ」 「・・・そうですか」 「・・・せやな。リンディさんから聞いとるとは思うけど、今の六課主要メンバーの・・・言うよりは、隊長陣の大半はこんな感じや」 全員が全員じゃないってことか。けど、隊長陣がこうって事は隊員達に負担が大きいって事でもある・・・俺は隊員のサポートに回りますかね。 「万が一に備えて、恭文とフレイホークさんには休み返上で来てもらっとるし、残り半年近く、何がなんでも何とかしていかないとあかん」 「はいですっ!!」 「恭文くん、フレイホークさん、あなた方にはそう言う事情で来て貰っているわけだけど、もちろんあなた方に全てを押し付けるような事はしないわ」 「もし何か起こったとき、我らにお前達の力を貸してほしい。頼みたい事はそれだけだ」 「別に構いませんよ。そのためにここに来たわけですしね。 ・・・ただしっ! なんにも起こんなかったら、定期的に休みはきちんともらいますからねっ!?」 「こだわるところはそこなんですね」 「本当に変わっていないな・・・」 ・・・あぁ、まったく変わっていない。初めて会ったときも、こいつはこんな感じだったな・・・ 「俺も構いませんよ。こんな話を聞いて、断るわけにはいかないじゃないですか・・・精一杯お手伝いさせていただきます。」 これは、俺の本心だ。今まで六課に関わっていなかったからって、それがこの依頼を引き受けない理由にはならない・・・あの人の言葉が胸の中に蘇る。 『どんなに小さくてもいい・・・・・・自分が護りたいって思ったものを、護れるような人になってね・・・・・・』 ・・・俺が目標にしていて、未だに追いつけない人・・・ダメだな、少し感傷的になってる・・・すると、八神部隊長が口を開いた。 「それはもちろんや。リンディさんからもストライキとか起こされたくなかったら、そこはちゃんとするようにと言われてるしな」 「・・・あの人、僕のことを何だと思っているんだろう・・・」 「可愛い問題児ってところかしら?」 「蒼凪なら実際ありえるしな」 「です・・・」 悪いがヤスフミ、俺もそう思う。 「まぁ・・・ストライキ起こせるなら起こしたかったけどさ」 『えっ!?』 「・・・さらば電王、見に行けなかった」 ヤスフミの言葉で、俺はあの地獄を思い出しす。 なぜかヤスフミの書類整理を手伝わされ、どうにか1日休みを確保したと思ったら・・・・・・追加書類の作成を命じられた。 昨日? 転送ポートの使用許可がとれなかったんだよ。おかげで昨日はヤスフミの愚痴もひどかったさ。 「・・・あぁ、自分ら好きやったな」 「ね、提督潰しても罪にならないよね? ジャスティスだよね?」 「お願いやからそれはやめてーなっ! 間違いなく罪になるからなっ!? ジャスティスちゃうからっ!!」 「嘘だッ!!」 「嘘ちゃうからっ! なんでいきなりひぐらしっ!? そしてちょっと涙目はやめてくれんかなっ!! ・・・とにかく、休みは善処していくし、さらば電王もディスクでたらプレゼントするから、元気出してくれへんかな?」 ・・・ヤスフミの発言にちょびっと共感しながら、俺はヤスフミが頷くのを眺めていた。・・・あれはないって。 クロノ提督はユーノさんと知り合いらしいし・・・あんな感じで資料請求されると大変だろうな・・・ 「はやて」 「なんや?」 「通常版とディレクターズカット版、両方ね? もちろん、初回限定。あと、劇場公開記念のイベントDVDも」 「自分何気に要求レベル高いなっ! てーか、それやったらクロノ君に要求せんかっ!?」 そして、お前は少し自重しろ。クロノ提督にも頼んでいただろうが。 「・・・それはそうと。三人はどないしたん?」 「はいですっ! フフフっ!!」 八神部隊長の言葉に、突然リインさんがニヤニヤと笑い出す。あの、怖いですよ? 「恭文さん、フレイホークさん! あなた方を生まれ変わった機動六課隊舎見学ツアーにご招待に来たです〜♪」 「「「・・・はい?」」」 ・・・つい、声がハモってしまった・・・なんだそれ? 「はいですっ! 私、祝福の風・リインフォースUが責任もってガイドするですよっ!!」 「あぁ、つまるところオリエンテーション言うわけやな?」 「ですです♪」 自信満々に胸を張って、そう高らかに宣言するリインさん。 ・・・ヤスフミがなんか睨まれたけど、どうせへんなことでも考えたんだろ。 「まぁ、確かに部隊で仕事するなら必要やしなぁ。うし、アンタここはもうえぇから行って来てえぇで」 「そして英断だねオイっ!! ・・・・・・でも、必要か。ちなみにおいおい慣れるってのは」 「出来れば、早急に慣れてくれると助かるんよ。結構仕事溜まってるしなぁ」 「了解。んじゃリイン、お願いね」 「はーいです」 ・・・そういや、シャマルさんたちもツアーに同行するのか? 「いいえ、私たちは違うわよ」 「別の用件だ」 「別の?」 「二人への挨拶ですよ」 リインさんがそこまで言うと、シャマルさんとザフィーラさんが俺たちの方を向いて、柔らかい表情でこう切り出した。 「恭文くん、フレイホークさん、機動六課へようこそ。あなたを新しい仲間として歓迎します。そして、来てくれてありがとう」 「まさか休みを返上してまで来てくれるとは思わなかったぞ。 これから色々とあるとは思うが・・・なにかあればいつでも言ってくれ。必ずや我らが力になる」 「・・・こちらこそ、また面倒かけるとは思いますがよろしくおねがいします」 「・・・俺もヤスフミと同じです。よろしくおねがいしますね。」 そうして、まず最初の挨拶を無事に済ませた俺とヤスフミはリインさん先導のもと、機動六課隊舎見学+挨拶参りツアーへと向かった。 「・・・リイン。」 「はいです?」 「これからよろしくね。で、もしなにかあったら・・・がんばろ」 「・・・もちろんです。リイン達が力を合わせれば、どんな理不尽も、きっと覆していけるですよ」 「うん」 ・・・二人の雰囲気がいいムードになっているんだけど、気にしないでおこう・・・ [次へ#] [戻る] |