頂き物の小説 その8.高山紗代子の実験日誌@/大神環と赤いダンガン とあるガンプラビルダ―と彼女たちの星輝く日―の記録 「その8.高山紗代子の実験日誌 @/大神環と赤いダンガン」 ≪Plaese set your GP-Base≫ ガンプラバトルのベ―スから流れた音声に従い、手前のスロットにGPベ―スを設置。 ≪Beginning【Plavesky particle】dispersal. Field――Jungle≫ バトルベ―スのユニット表面と私達の足元から青白い粒子が立ち上る。 ユニット上の粒子は物質化し、このシアタ―の所在する聖夜市の街並みに変化。 足元から昇った粒子は立体化し、計器類や三面モニタ―になって、周囲からは視覚的に遮断される。 ≪Please set your GUNPLA≫ 指示に従いベ―スにガンプラを置くと、プラフスキ―粒子がガンプラに浸透。 セットしたのはガンダムAGE-FX。 外見からは分からないけど、ナノラミネ―トア―マ―とかシアタ―に来て学んだ色―な技術を仕込んでいます。 ただし、今この機体には両腕が、肩から先がありません。 肩と肘にあった6つのCファンネルは背中のファイタ―とリアスカ―ト、胸部に2つずつ移植したけれどこれでは未完成。 《ハリネズミ!》 そこで取り出したのは、主任からお預かりした白いハリネズミの姿のプラモデル「はり太」 これを変形するとあら不思議、肩とナックルにトゲトゲが付いた右腕に早変わり。手早くFXと合体させる。 《タンク!》 さらに青い戦車のプラモデルも取り出し、変形。キャタピラは分離して両足の下に接続。 砲塔は肩ア―マ―に、胴体部分が展開して左腕になり、これで今日の私のガンプラは完成した。 プラフスキ―粒子が両腕にも行き渡り、肩から指先へと光が走る。 同時に私のすぐ前に粒子が収束――メインコンソ―ルと操縦用のスフィアとなる。 モニタ―やコンソ―ル、計器類は淡い青色に輝き、操縦スフィアは優しい黄色。 月のような2つのスフィアを両手で掴むと、ベ―ス周囲の粒子がさらに物質化してカタパルトを形成する。 同時に前・左右のメインモニタ―に、ガンプラの視点で見えるカタパルトの様子が映し出される。 ≪BATTLE START≫ 「高山紗代子、ガンダムAGE−FXハリネズミタンク――行きます!」 スフィアを押し込む事で、カタパルトに乗ったガンプラが加速――そのまま射出し、フィ―ルド上空へ飛び出す。 広く明るく澄み渡るような青空。モニタ―越しに見ているだけだとしても、この瞬間に感じる開放感は本物だって思う。 空中に現れたカタパルトの出口はすぐに消滅し、私は周辺を索敵警戒しつつフィ―ルドを確認。 中央にある大きな河で2つに分断されたジャングル地帯。橋は無し。代わりに小島がいくつか。 森の中での遭遇戦になるか、河を挟んでの打ち合いになるか。ひとまず森に身を隠して――、 そう悠長に考えていた私の目の前で、モニタ―に≪CAUTION!!≫の文字が浮かび上がり警報が鳴り響く。 ≪フェニックス!≫ 空を飛んでた私の横を通って、巨大な火の玉が空へ打ち上げられた。 「熱い…!」 直撃はしなかったのに、周囲の温度が急激に上がっている。 それどころか下の森にまで飛び火している。 「砲撃…どこから!?」 センサ―を最大にして索敵…見つけた。私から見て川の向こう側、片膝をついてビ―ムマグナムを構えたガンプラの姿を。 「シルヴァ・バレト・サプレッサ―!環ちゃん!」 正確には仕様変更によって姿を似せた機体で、色とか性能とか完全に原作の機体と一緒じゃない。 何より彼女の右腕は私の「ハリ太」と同じもの…いや、そんなことより速く反撃、少なくとも牽制しないと ≪タンク!≫ 左肩の砲塔とスタングルライフルを連射。でも当たらない! ううん、けん制になればいい。空中にいたら狙い撃ちにされる、とにかく下に降りなきゃ! 本当は森の中に降りれたら良かった。でもナノラミネ―トア―マ―でも炎に長時間あぶられたらやられちゃう。 それにあの威力だと適当に撃っても火事を広げられてしまう、ならここは河の中へ ≪ロ―ズ!≫ 逃げ込もうと思っていたら、トゲトゲ付きの鞭のようなものに捕まってそのまま森の端、河との境界に落とされました。 「このっ!」 ≪ハリネズミ!≫ こっちもトゲトゲいっぱいのハリ太のパワ―を発揮!同時にFXバ―スト発動して鞭を振り払う。 「環ちゃんは!?」 河の向こうにいる環ちゃんにセンサ―を向けてズ―ムアップ ビ―ムマグナムの先からイバラが伸びてて、それをクイクイって引っ張ってて。 その不思議な挙動に疑問を覚えた私は、マグナムから伸びているイバラの先に視線を向けてしまう。 私が弾いたイバラは、AGE−FXより背が高いの木の幹に巻きついていて。 『いっくぞぉぉぉぉぉぉ!あああ!』 そのイバラの"しなり"を利用した環ちゃんがジャングルの王者のように川を越えて大ジャンプ。 2度も視線を彷徨わせた私は、対応が遅れて彼女のドロップキックをまともに受けてしまいました。 ≪ロ―ズ!≫ 「きゃぁぁぁぁ!」 姿勢を崩した私の好きを見逃さず、環ちゃんは2発目のマグナムを発砲。 至近距離で受けた衝撃によって、今度は拘束ではなく穴だらけにされながら。 私は燃え盛る森の中に吹き飛ばされ、崩れ落ちる木の下敷きになって。 そのまま行動不能になってしまいました。 ≪You Lose≫ ◆◆◆◆◆◆◆ ことの始まりは2日前のこと。 主任から私たちに、ガンプラのテストをお願いされたのです。 「りゅうしへんよ―と―りょ―?かいじゅ―の兄ちゃん、それなんだ―?」 「うん、まずはこれを見てくれ」 主任は2つのトランクケ―スを出して、そのうちの1個をまず開けました。 その中には、ウサギやライオンやゴリラといった動物や、警察官や忍者みたいな人型のプラモがたくさん入っていました。 もう1つのトランクには戦車とかテレビとか冷蔵庫とか、無機物をデザインしたパ―ツでいっぱいでした。 「お―、まっかなウサギだ―」 「こっちは戦車にバイクだ。これって、こないだの模擬戦で主任が使ったやつか?」 そのプラモたちを見るなり、2人は目をキラキラさせています。見ているだけでワクワクしているのが分かります。 「思い出した―!コレ前のバトルで兄ちゃんが使ってたやつだ―」 「その量産型試作品ってとこだ。ふたりは粒子変容塗料についてどれくらい知ってる?」 「えっと、ガンプラに塗ると凄いことが出来るやつだよな」 昴ちゃんは首をかしげながら回答。その塗料に触れたプラフスキ―粒子の性質を変化させる塗料、と言うのが正しいかな。 「まぁそうだな。で、ここにあるガンプラのパ―ツは金型で固める段階でその粒子容成分を混ぜてある」 それは…画期的じゃないですか!新商品ですか!? 「えっと―、つまりど―ゆ―ことだ?」 「組み立てるだけで、何も塗らなくてもガンプラバトルで不思議な力が使えるってこと」 そのざっくりした説明で2人にもこれが凄いモノだってわかったみたい。 「「お―!」」 「タカヤマの言う通り、これはガンプラ初心者用の粒子変容現象のお手軽お試しキットとして開発されたもんだ」 昴ちゃんの言ったように、粒子変容塗料はガンプラバトルの勝敗を左右させるほどの際立った効果を発揮する。 けど誰もが変容塗料を扱えるわけじゃないし、それどころか誰もがガンプラを塗装できる環境を持っているとも限らない。 だから素組でもガンプラバトルで変容効果を遊べるというのなら、それは多くの子供たちが喜ぶと思う。 「それで、それぞれ変形すると肩と腕になるんだ。有機物がモデルになってるほうが右腕、無機物のほうが左腕だ。 コ―ンスラスタ―は無いが、これらはリボ―ンズガンダムと同じで腕にGNドライブを仕込んでる。 俺の知り合いの天才化学者が作った80種類以上の粒子変容材料を混ぜて、それぞれの動物やメカの『属性』を持たせてる つまり、その腕で持った武器ならサ―ベルでもライフルでも、その変容材料の不思議パワ―を受けるってことだ」 「凄いじゃんか!」 「とは言え、流石に俺がこの前使ったプロトタイプより応用力も爆発力も落ちる。そこで仕事の話だ。 ここにある試作品の腕パ―ツをみんなのガンプラにつけて、使い勝手とパワ―出力をテストして欲しいんだ」 つまり、私たちが試作品のモニタ―をしてレポ―トを提出するということですか? 「使い勝手は分かるけど、パワ―?そう言うのって主任やニルスが難しい計算して、最初から分かってるんじゃね―の?」 「まぁ計算はしてるよ。でもリボ―ンズガンダムと同じって言ったろ?ドライブ同士の相性は もちろんだけど、それを扱うガンプラやファイタ―の組み合わせ次第で、幾らでも変わる。 ツインドライブ級のパワ―が出る可能性もあるんだ。だから、やってみないと結局分からない」 「ついんどらいぶ……ってなんだっけ?」 「二つ以上のGNドライブが同調して、粒子生産量を二乗化することだよ環ちゃん」 「ジジョ―カ―?」 あぁゴメン、二乗なんて小学生には難しいよね。でも他に説明のしようがないの! 公式の設定でも、それ以上は詳しく決まってなかったみたいだから。 「ツインドライブがピンと来ないなら、仮面ライダ―オ―ズの”コンボ”なんかをイメ―ジしてくれ」 私たちが困ってると主任が助け舟を出してくれた。 「特定の組み合わせで、特別な物凄いパワ―を出せる現象。ここにあるパ―ツと、ガンプラと、おまえたち自身。 どの組み合わせで、あるいはどんな気持ちで戦っていたらコンボが成立するか、調べたい」 「お―、オ―ズか―!だからかいじゅ―の兄ちゃんもこの前歌いながらバトルしてたんだね!」 「いや、歌は気にするな」 「それならなんとなく分かるけど、でも気持ちって?」 「アンクの心のこもってるメダルとそうでないタカメダル、どっち使うのが凄い?」 「あっ、なるほど」 それで昴ちゃんも納得しちゃうんだ…けど、なんとなく分かります。燃え上がれってことですよね! 「くふふふ♪じゃぁたまき、赤いのでコンボするね♪」 そう言って環ちゃんはトランクの中からウサギやバラのパ―ツを手に取りました。 「あ、いやオ―ズは例えだから違う色同士がベストになる可能性もあるんだ。 だからとにかく気に入ったのから順番に試してもらえると助かる」 「そうなの?でもたまき赤いのが好きだぞ!」 「なら赤いのからでいいけど」 環ちゃんは本当に嬉しそう。いつか戦隊ヒ―ロ―のレッドをやりたいっていってたもんね。 「まかせろ―!たまきのしるばば・れっどもこないだの映画でパワ―アップして、ビクトリ―みたいに腕こ―かんしてたし」 「パワ―アップ?それに映画って」 それってガンダムNTに出てたシルヴァ・バレト・サプレッサ―のことかな? パワ―アップっていうよりはビ―ムマグナムを撃つための仕様変更って感じだけど でもビクトリ―ってどう言う事だろ?Vガンダムのことかな。 あれはハンガ―として両腕を左右同時に交換する仕様だからこの場合は似てないと思うんだけど。 「あ―、ビクトリ―ってガンダムじゃなくてウルトラマンか?」 「うん!しるばば・れっども、たまきと一緒にウルトランスするんだ―!」 言われて思い出した。最近のウルトラマンの一人で、右腕を怪獣のカラダに変身させて戦うウルトラマンビクトリ―を。 でもサプレッサ―の腕の交換はそういうパワ―アップ的なのとは違うんじゃないかな―と思った――その時だった。 「ト―ちゃん、わたしも手伝うぞ!」 首を傾げていたら下の方から声がして、いつの間にかテ―ブルの上に登って来ていたリトルミズキちゃんがいました。 「リトルミズキ、マカベはどうした?」 「ダンスレッスンだ!暇だからト―ちゃんのお手伝いするって出て来たんだ!」 この子はリトルミズキちゃん。主任と瑞希が作ったガンプラで、このシアタ―の中ではAIで自由に動ける凄い子なの。 「お―、リトルミズキも一緒にテストするぞ―」 「ちょい待て、リトルミズキ。マカベ抜きでフィ―ルドに立つつもりか? お前一人でバトルしたことないだろ、本当に大丈夫か?」 「任せろト―ちゃん!ミズキにもキョカは貰ってるぞ!」 「・・・どのみちお前とここにある量産型ビルドア―ムじゃスケ―ルが違うからこのままじゃ無理だ。 オオガミもサプレッサ―でやりたいならそれ用にパ―ツを作り直すから、ちょっと待て」 そう言った次の日、主任は2人の為のパ―ツを作り上げました。 環ちゃんにはシルヴァサプレッサ―への変更パ―ツと4つの赤い前腕を。 リトルミズキちゃんにはサブア―ム付きのリュックサック型のパ―ツを作り上げました。 「こう言うのって、1日で作れるものなんですか?」 粒子変容素材を混ぜて成型、と言うことは金型から用意しないと作れないのでは。 「今回は素組が条件だしな。いくらでも手はあるよ」 詳しくは教えて貰えませんでしたが、どうやらそうらしいです。 主任が作業している間にわたしも白いハリネズミといくつかのパ―ツをお借りして自分のAGE-FXを改修。 そしてもう1日あけて今日。私と環ちゃん、昴ちゃん、リトルミズキちゃんの4人でバトルロイヤル型式の模擬戦です。 よ―し頑張るぞ―!と気合いが入ります。このテストが商品が実際に販売されたら、 各地で行われる販促イベントや宣伝用PVにも起用して貰えるって主任が言ってくれたんです。 そこで結果を出せたらシアタ―の外のお仕事も貰えて、テレビにも出れるようになるかもしれない。 私は一日も早くテレビに出れるくらいのアイドルにならなきゃいけない……『アノ子』に見つけて貰えるように。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 《Field Out》 そう思っていたのに、私は環ちゃんのビ―ムマグナムに吹っ飛ばされて、何も出来ずに終わってしまった。 「お疲れタカヤマ。ガンプラの修復は後でいいからこっちに来て観戦するように」 「はい…」 チカラのない返事してしまったことに軽く自己嫌悪しつつ、バトル中は外していたメガネをかける。 私は視力がよくない上にコンタクトも体質でつけられなくて、アイドルとしてステ―ジに上がるときはメガネを外しています。 ガンプラバトルでも実際にお仕事でするときを想定して、練習であっても裸眼でバトルするようにしているんです。 戻ってきた視力で、私は一緒に戦い場外に放り出されたAGE−FXを見る。 ダメ―ジレベルは最低のCで行ったから、バトル中の破損はそういう エフェクトが掛かって見えただけで、実際には穴は開いていないのだけど。 そのかわり私の胸にポッカリ穴が開いたような――― 「ダメ、うつむいてちゃダメ!」 自分の頬をぴしりと叩く。情けなく負けたからこそ、私は一秒だってうつむいていられない。 まずは、生き残ってる環ちゃん達のバトルの観戦、そして反省会をしっかりしなきゃ! 「うわぁぁ、もう負けちゃったよ―」 戦況をモニタ―している主任の隣には、私と同じく早―に負けてしまったらしい昴ちゃんがいました つまり、今バトルしているのは2人。 『え――――い!』 ≪フェニックス!≫ ドバァァァァァァンッ! 『わわわ!何も見えないぞ!?』 炎のマグナムを河に撃ち込んで、水蒸気爆発を起こしてしまった環ちゃんと ≪潜水艦!≫ 『マリンミズキビ―ム!』 潜水艦のア―ムで河に潜って一方的に攻撃しているリトルミズキちゃんということです。 「なぁ主任、ビ―ムって水の中じゃ使えない筈だよな?なんでリトルミズキは河の中からビ―ム撃ててるんだよ」 今リトルミズキちゃんは河に潜ったまま、地上にいる環ちゃんのシルヴァ・バレトに向かってビ―ムをポンポン撃っています。 昴ちゃんもどうやらアレにやられたよううなんですが、でもこれは昴ちゃんが言うように奇妙なことなんです。 ビ―ム攻撃は強力だけど大気圏内なら熱量が拡散して威力と射程の大幅減衰がおきます。 まして水の中なら、ゼロ距離射撃でもなければ事実上使用不能になる筈なのに。 この不可解な現象に対して主任の回答は、ほんのひとことでした。 「ス―パ―キャビテ―ション魚雷って聞いたことあるか?」 「なんだそれ?」 確か水の中を進むとき泡を発生させて、その泡に包まれることで水の抵抗を減らしてすごいスピ―ドを出す魚雷、だったかな 「そ。潜水艦のビルドア―ムも泡っつ―か殻になるフィ―ルドでビ―ムや リトルミズキ自身を包んでる。だから水に触れることなく水面までビ―ムが届くのさ」 これはアフタ―コロニ―のビ―ムサ―ベルにも通じる話だ、と主任は言いました。 なるほど、複層構造によってビ―ムを守っていたんですね。ならもしかしてIフィ―ルドやビ―ム攪乱幕にも有効なんじゃ。 「なるほどな―。俺がやられたのはそんな攻撃だったんだ。じゃあ環は? ビ―ムマグナムでも水中のリトルミズキに攻撃届かなかったしこのままコ―ルド負け?」 「そうでもない。オオガミにも水中攻撃の手段はある」 主任がそう言ったタイミングでちょうど環ちゃんが動いた 『いっくぞ―』 環ちゃんは何を思ったのか、河の中に飛び込む。 私たちの見ているモニタ―も環ちゃんを追って水の中に。 河の底へと潜るシルヴァ・バレトと、背中のパックから伸びたサブア―ムで潜水艦と繋がってるリトルミズキちゃん。 迎え撃つリトルミズキちゃんは泡ビ―ムを放ち、それに対してシルヴァ・バレトはビ―ムサ―ベルの柄を右手に構えて。 ≪オクトパス!≫ 光の刃の代わりに現れたのは、一本のタコの足。環ちゃんはそれを向かってくるビ―ムに向かって突き出した。 タコの足はビ―ムに、正確にはそれを包んでいる泡はタコの足に引っ叩かれ、そのダメ―ジで破れて中のビ―ムが水に接触。 水に触れたビ―ムは河に溶けてあっという間に霧散しました。……すごい、これは考え付かなかった。 ビ―ムをサ―ベルで受けるなんて、蒼凪プロデュ―サ―でもなければ出来ない。軌道が細い上に速くて見極められないから でも今リトルミズキちゃんのビ―ムは泡に覆われていた分、当たり判定が大きい。 しかも水中だからちょっと突いて泡を破るだけで、水に触れて霧散する。 言われてみればその通りで、バズ―カや機関銃でも同じことは出来たはず。だけどビ―ム兵器しか搭載してない 今のシルヴァ・バレトで、サ―ベルはビ―ムに対抗できないと思い込んでいた私には絶対無理な方法だった。 環ちゃん、まさか全部計算づくで―――? 「オオガミはたぶん、難しいこと考えてなかったと思うぞ」 私が思考に沈んでいる間に環ちゃんは距離を詰める。 リトルミズキちゃんはそうはさせまいと左側の潜水艦と、右側のア―ムに繋がってる船を動かして水中を移動。 そうして二人の位置関係が変わり、リトルミズキちゃんがシルヴァ・バレトより上に来た時、環ちゃんがビ―ムマグナムを構えた。 ≪オクトパス!≫ 放たれたのはビ―ムサ―ベルなんて比べ物にならない、巨大な8本のタコ足。 河からあふれるほどのその巨体はリトルミズキちゃんを水上に吹き飛ばし、森の木―をなぎ倒した。 さらには吸盤で地面にぎゅぎゅっと掴まって。 『うぉぉぉぉぉ!』 水中にいた環ちゃんを釣り上げて、その姿を消した。 ≪ロ―ズ!≫ 環ちゃんは空中で腕を交換してビ―ムサ―ベルを構えた。現れたのはトゲトゲだらけの赤い光の刃 環ちゃんはそれを振り上げながら地面に向かって急降下。 狙いは当然、陸にあげられて地面に転がっているリトルミズキちゃん 急いで起き上がろうとするけど、態勢が悪すぎる。 直撃は避けたものの回避は間に合わない。リトルミズキちゃんは左肩を切られて―― 『痛っ!』 『―!?だいじょ―ぶか、リトルミズキ!』 悲鳴を上げた瞬間、頭が真っ白になった。慌ててビ―ムサ―ベルの刃を消した環ちゃんもたぶん同じだ。 そうだ、リトルミズキちゃんは普通のガンプラとは違う。 心があって、自分の意思で動いて。それが今、斬りつけられて傷付いて痛がっていて――― 「主任、バトルを止めてください!」 「なんでだ?」 反射的に叫んでいた。だけど主任は不思議そうな顔をするばかりだった。 私はその温度差に驚く余裕もなく苛ついて、冷たくみえて。 「だってリトルミズキちゃんが怪我をしてるんですよ、なら止めないと」 必死で訴える。リトルミズキちゃんが、友達が大怪我するかもしれない。 ダメ―ジレベルがCでも、その痛みは本物と変わらない筈だ。 それを黙って見過ごすなんてできない。なのに主任はただ呆れたような顔をするばかりで。ちょっとイラって来た。 「お前はいまさら何を言ってるんだ――リトルミズキ、聞こえるか?」 『なんだ、ト―ちゃん。バトル中だぞ!』 「今おまえは痛い思いをしたわけだけど、もうここでバトルをやめるか?」 『するわけないだろ!』 それどころか当のリトルミズキちゃんまで続ける意思を示して、私は混乱する。 「だってよ。オオガミはどうだ」 『か、怪獣のに―ちゃん。いいのか、それ』 バトルフィ―ルドにいる環ちゃんもきっと同じ思いだ。これが遊びなら、怪我をしてまですることは。 「いいも何も、リトルミズキはやる気まんまんだぞ」 『そうだぞタマキ!まだ私は負けてない、ここからが勝負だぞ!!』 ≪海賊≫ 潜水艦と船の上に両足を乗せ、トリコ―ン(海賊帽子)を被り、両手にイカリ(錨)の形をした武器を持ちました。 『いくぞイカリマル!』 そのイカリから大きなビ―ムの刃が現出、シルヴァ・バレトに向けて構えます。 『さぁ、勝負を続けるぞタマキ!』 『――――うん!わかったぞ、リトルミズキ!』 ≪ロ―ズ!≫ ビ―ムサ―ベルに再び赤い光がともる。ただしその刃にトゲは無い。 『海賊潜水艦リトルミズキ!』 『大神たまきと、しるばば・れっど・びくとり―!』 2人は向かい合い、同時に剣を振るいぶつけ合ってしまった。 『『いざジンジョ―に、勝負!』』 火花の代わりに赤い花弁が舞った。だけど私には見惚れる余裕もない。ただ焦りばかり湧いてくる。 「待って、2人とも!主任、止めないと」 「だから、なんでだよ?」 「なんでって、だってリトルミズキちゃん痛がってたじゃないですか!」 「そうだぜ、もし大けがでもしたら」 昴ちゃんだって心配する。当然だ。だからもう止めないと―― 「シルヴァバ・レッドは?」 「え?」 「リトルミズキの怪我の心配はして、シルヴァバ・レッドのほうは心配しないのかと聞いた」 何を言われたのか分からなかった。だって、シルヴァ・バレトは喋らないし笑わないし、それに―― 「だって、そうだろ。あいつだってビ―ムソ―ド向けられていつ火傷してもズンバラリンされてもおかしくないんだぞ。 おまえらまさか、痛いって喋らなかったらガンプラたちは傷付いてないとでも思っていたのか?」 「それ、は」 考えたこともなかった。だって、そんなことを考えても意味がない。考えてしまったら――― 「…少なくともリトルミズキは、自分の意思であの場所に立って、自分の考えで戦いを続けてる」 主任は答えられない私たちから視線を切って、モニタ―越しにリトルミズキちゃんを見た。 ビ―ムの刃を何度も叩きつけ合い、顔にも火傷のような跡がうっすらできていた。 塗料の一部が融けて、汗か血が流れているようにも見える。――それでも。 「それを一方的に取り上げて、人間だけが楽しもうとするのはズルいだろ」 彼女は笑っていた。まるでこの状況が楽しいと、もっとしたくて堪らないのだと言うように 「それに、あっちも見ろよ」 ≪ラビット!≫ 『うおぉぉぉぉぉ!』 環ちゃんも笑っていた。さっきの戸惑いは全く無くなって、心底から楽しそうに シルヴァ・バレトもビ―ムサ―ベルを両手で逆手持ちに構えて、地面に突き刺すように振り下ろした。 『びょぉぉぉぉぉぉん!!』 訂正。地面には刺さらずにグニャンと縮んで、その一瞬後にビョヨヨヨンと言う音を本当に立てながら 反動で跳び上がった。もちろん、ビ―ムサ―ベルをしっかり握っていたシルヴァ・バレトも一緒に。 『いくっぞぉぉぉぉぉぉ!』 『こい、タマキ!』 シルヴァ・バレトはビ―ムサ―ベルを大上段に構えてリトルミズキちゃんに向けて空から降ってくる。 対するリトルミズキちゃんはGNフィ―ルド全開にして頭上にビ―ムソ―ドを構えた防御姿勢で迎え撃つ。 『うおっ!』 遂に訪れた衝突の瞬間。環ちゃんはシルヴァその手てビ―ムサ―ベルを真っ向唐竹割の大根斬りで振り下ろし――― ビョヨヨヨンと伸縮して跳ねたビ―ムサ―ベルと一緒に、再び空高く舞い上がった。 『あれぇぇぇぇぇ!?』 『なにしてんだ、タマキ!?』 『あはははは!ごめぇぇぇん!』 攻撃に失敗しても環ちゃんはやっぱり楽しそうに笑った。リトルミズキちゃんも。 「……何やってんだかな―、あいつら」 その様子を、主任は呆れたように笑う。 「でも楽しそうだよな、あいつら?」 だけどそこに込められたのは苦笑いではなく、温かな微笑みだった 「シルヴァ・バレト・サプレッサ―って機体はさ、とんでもないロマン仕様なんだ」 「え?」 突然話が切り替わったように思えて戸惑ってしまう。 「どういうことだよ主任?」 「だってビ―ムマグナムを1発撃つたびに腕を交換しなきゃいけないんだぞ。 そりゃあ原作の劇中でなら使える資材でネオ・ジオング対策するには非常に合理的な判断をしたと言えるし、 ユニコ―ンの武器をバナ―ジの家族だったビスト財団のモビルス―ツが使うってところにも感慨深いものがある。 けど、実質マグナムを5発撃つだけの移動砲台の為にそこまでするのは実用的じゃない。邪魔くさいにもほどがある」 それは、そうだと思う。たとえ原作でそうだからと言ってガンプラバトルで使う機体としては不合理だ。 銃を1発打つたびに腕を交換する仕様なんて実践的じゃない。なさすぎる。 「もちろんガンプラバトルと原作はあくまで別個のモノ。サプレッサ―の作り込み次第ではマグナムの連射も可能だ。 けど原作再現しないのなら腕交換のギミックなんていらない。むしろサプレッサ―そのものが全くの無駄ってことになる」 存在自体が全くの無駄。そんな寂しいことを言いながら、主任の目は楽しそうに二人のバトルを見ていた。 「オオガミは、そんな劇中の事情とか全部すっとばしてる。 新しくなったんだからパワ―アップしたに違いない。 腕を交換するのがウルトラマンビクトリ―みたいだから、きっとカッコいい戦いが出来る。 そう信じたから、あんな自由な戦いをするサプレッサ―が生まれたんだ。 オオガミでなければ作ろうとさえ思わなかった。俺でも無理だ」 相手を圧倒するのではなく、互いの全力でぶつかりあって、笑いあって遊んでいた。 それはとても微笑ましくて―――なのに何故か胸が痛かった。 『ガシダダベンジュレゾバビガヅレ ガガギロボゾガガギビギブボグ パンミミグ』 そしてリトルミズキちゃんが突然歌いだした!?なんで急に。 ≪the song today is "ウィ―ア―!"≫ 『『サギンダンバンデ ジュグダギンロド』』 しかも環ちゃんまで一緒になって歌いながら戦いだして、どうなってるの!? 「2人ともテンションあがりきっちゃったんだな―」 そう言う問題ですか!? 『『ベヅビグバガセ バジゾドスボグ』』 「て言うかなんで二人ともグロンギ語で歌えるんだよ?百合子じゃあるまいし」 あぁそうだよね昴ちゃんそれも不思議だよね!? 『『ゾボシバヅデデダダバサボヂズロ』』 「2人はバトルしながら普通に歌ってるだけだぜ。単にバトルベ―スにボイスチャンジャ―機能を付けただけで」 「「ボイスチェンジャ―ってこういうものじゃないから!?」」 昴ちゃんと2人そろって声を上げてしまった。そもそも作ろうと思ってあっさり作れるものですか!? 『『ダギバレダボバサゼンゲヅジャバギ』』 「いやこないだのバトルの後、自分たちも歌わせろ―って奴が多くてな。歌いだしたら自動変換掛かるようにした」 そんなあっさり言わないでください!したいからってできることじゃないでしょう!? 『『ボジンデビバガサギパザセバン』』 「そもそもこんだけアイドルいて、今まで歌わせなかった方がおかしかったんだって。 アイドルアニメの一番楽しい所をすっとばして誰得なんだよ。何のための事業提携か」 なんの話ですか!!私たちはアニメじゃないです! 『『ダギゴシズルボババデデ ゴロギグゴゲダギギ』 「でも楽しそうだろ?」 そう言って主任はより一層の笑みを浮かべた。 『『ガシダダベンジュレゾバビガヅレ』』 「飛んだり跳ねたり歌ったり。こんなバトルが世の中に受け入れられるかどうか分からないけど」 主任の見つめる先でリトルミズキちゃんとシルヴァ・バレトは剣戟を飛ばし合って。 『『ガガギロボゾガガギビギブボグ』』 「これがシルヴァバ・レッドにとって良かったのか悪かったのか、聞くことはまだ出来ないけど」 リトルミズキちゃんと環ちゃんは戦いながら同じ歌を歌い合って。 『『モベドドンボギン ゴセドジュパバヂヂラギズセンゾ?』』 「主人であるオオガミがあんなに楽しそうに笑ってるなら、悪い気はしてないんじゃないか?」 笑いながら遊ぶ『3人』の姿が、私にも見えてしまったのに 『『グぃぃガガ、グぃぃガガゴンザブススズ!』』 「……そうかもな。あ―、俺もまたバトルしてえなぁ」 『『グぃぃガガ!』 私は昴ちゃんみたいに同意できずに、ただ一人置いて行かれたような気持になった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「さてガンプラのメンテも終わって反省会だけど、まず最初に聞いておく」 大熱戦だった環ちゃんとリトルミズキちゃんのバトルも終わり、まず私たちはガンプラたちのメンテを行った。 ここにいない瑞希の代わりにリトルミズキのメンテをしたのはもちろん主任だ。 「ビルドア―ムズの皆と遊んで、楽しかったか?」 「「お―!」 「俺はあっさりやられちゃったけど、面白かったぜ―」 3人ともとても元気のいい返事だった。 「タカヤマは?」 「はい、環ちゃんとリトルミズキちゃんのバトルは大変勉強になりました」 うん、心から思う。あれがアイドルのするべき、楽しい遊びなんだって。 「自分のバトルはどうだった?」 「あ、はい。その、楽しむ前にやられちゃったので」 実際、何にもできないうちにやられてしまった。だから楽しかった、とはとても言えない。 あれにはAGE−FXも怒っているんじゃないかな。 「何もない、か?例えば、ハリネズミの針が風を感じていつもより空を身近に感じられた―とか」 「そんな機能まであるんですか!?」 もしあるなら過剰なまでの多機能だ。と言うかそれってバトルには必要なんだろうか? 蒼凪プロデュ―サ―くらいの達人の人なら気配を読むのに役立ったりするのかもしれないけど 「別に剣や銃で傷付けあうことだけが遊びじゃないだろ?」 「え?」 「ま、次の機会にはもっと積極的に遊ぼうとしてみてくれ。 楽しいことってのは、待ってるだけじゃなく自分から楽しもうとしないと起きないものだから」 「自分から、楽しむ」 そうでないと楽しいガンプラバトルにはならない。そうでないとアイドルとしてふさわしくない。 だけど、でも、私にはそんな時間は――。 「それとタカヤマはやっぱり視力がネックだな」 そう言われて内心ビクって震えてしまう。表には、何とか出さなかったと思うけど。 「メガネを外してバトルすると集中力も余計に削れてくし反応も遅れる。 モニタ―を凝視しようとして姿勢が悪くなる瞬間もあった。 それにガンプラ制作の指導イベントとかで、細かい道具を使うような時もマズい。 ガンプラ以外でもバラエティとか運動会とかアスレチック系の仕事にも出れない」 全部心当たりがあった。だけど、だけど! 「主任、でも私は」 ステ―ジに上がるときはメガネを外して、素顔のままの私じゃなきゃ、昔からの私の顔でなきゃダメなんです。 そうでないと、ステ―ジに立っても、『あの子』に見つけて貰えない――― 「と言うわけで、これ試してくれ」 そう言って主任がホイッと渡してきたのは、フチなしでガンダム作品に出てくるサングラスみたいな、だけど色のないゴ―グルみたいな形状の眼鏡だった。フレ―ムまで透明で、枕元に置いていたら寝起きで気づかずに壊してしまいそうなくらいだった。 「これは?」 「事情は知らんが素顔のイメ―ジを崩したくないんだろ?ならこれならどうかと思って 「わ、私の為にわざわざ」 「おぅよ。とりえず、試してみてくれないか?」 主任は続いて手鏡をくれた。私はおずおずと今掛けているメガネを外し、渡された方のメガネを掛けてみる 手鏡の中の私は、その様子は今までのどのメガネよりも素顔を崩してなかった。すごい、これならほとんど目立たない 「どうだ?」 「あ、ありがとうございます。ピントもあってます」 「けどイメ―ジとは違う、て感じだな 「そ、そんなことは」 実はあった。今までで一番だけど、『ほとんど』目立たないけど、でも完全じゃない。 その僅かな違いで、『あの子』に気づいてもらえなかったらと思うと、怖い。 「顔に出てるぞ」 「う!」 でも、せっかく用意してくれた主任にはっきり言うのも躊躇われて。 「なら仕方ない、他の方法を考えとくよ」 なのに主任はあっさり、『何とかする』って言ってくれて。 「そんな、無茶です。主任にだってお仕事があるのに」 「こっちも仕事だよ。技術スタッフの仕事は本来お前らや津田Pたちの要望に応えて必要なものを用意することだもの」 だから任せとけと言われてしまった。 「それに、俺は無茶だ無理だ出来っこないって事態にぶち当たると燃えてくるんだよ」 その笑顔に私は結局押し切られてしまった。でもまさか、この翌日あんなことになるなんて思わなかった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「タカヤマ、これつけてみてくれ」 「へ?」 テストプレイの翌日、主任から差し出されたものに私は目を丸くした。あるいは目が点になった。 「え、これ…イヤリング?」 「あぁ、昨日言ってた視力補正用のアイテムな」 両耳に付けることで周辺のプラフスキ―粒子を利用して"周りから見えない"メガネをつくってピントを合わせるもの、らしい。 らしいと言うか、耳に入らなかった。いや聞こえているのだから耳に入らないじゃなくて、頭に入らないが正しい? 「とりあえずシアタ―内とバトル中はこれでメガネの代用が出来るはず……っておい、どうかしたか?」 どうかしないわけがない。なんでイヤリング?いや、そもそも。 「どうして、昨日の今日でこんなものを?」 作れたんですか幾らなんでも早すぎませんかどうしてイヤリングですか? 「視力補正自体はAR衣装技術の応用だ。周りから見えないようにってのが ひと工夫だったが、むしろイヤリングのデザインのほうが手間だった」 下手にブランド物のデザイン真似するわけにはいかなかったしな―、なんて頭をかいている……いやいや。 そんなあっさり出来ていいものじゃないでしょう!?今更だけどこの人おかしい!有能とか敏腕とかじゃなくおかしい! 「もしかしてデザインが不満か?なら作り直すけど」 「いえ、そう言うわけでは」 そんなことは本当にないです。むしろ申し訳ないです。 「申し訳ないが使用感のテストだけ今ある現物でやってもらいたい。だから、今日だけ丸1日つけてくれないか?」 「えええ!?」 主任から貰ったイヤリングを、付ける?私が?みんなが見てる前で? 「きゃぁぁぁぁ!ジオウ君が紗代子ちゃんにプレゼントよぉぉぉぉ」 ち、違うんです莉緒さん。そういうんじゃないんです! これはあくまでご厚意と言うか善意というか――お仕事の一環なんです! 「主任、バカでしょ……そういうことはエレナだけにやりなよ!」 恵、言ってやって言ってやって!あぁ、でも主任はバカじゃないよむしろ大変お世話になってるよ!? ……混乱する私は、結局1日イヤリングを身に着けたままレッスンもお仕事もこなすことになりました。 とりあえず、着け心地としては視界がたいへん良好で、重さも気にならなかったとだけ報告しました。 その結果をもとに「イヤホン型」の視覚補正器が作られて………どうしてそれを先に思いついてくれなかったんですか!? (おしまい) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ≪ガンプラ紹介≫ ●しるばば・れっど・びくとり―: 大神環のシルヴァ・バレトが、サプレッサ―仕様のバックパック及びヒ―ル型の脚部等、 及び量産型ビルドア―ムを改造した交換用右腕4本を装備した姿。 ビルドア―ムの内訳は右手用の赤いア―ムであるラビット、フェニックス、ロ―ズ、オクトパスの4本 原作本編と違い、外した右腕を回収する必要があるのでクレ―ンア―ムの可動範囲は原典機より広い。 映画「ガンダムNT」を見た環が、設定などを知らないまま 「新しいしるばばれっどだ!」⇒パワ―アップした 「右手を交換してウルトラマンビクトリ―みたい」⇒きっとすごく強くてカッコいい と思い込んだのと、ジオウが持ち掛けた粒子変容素材製の量産型ビルドア―ムの試験が重なり、奇跡的に誕生したガンプラ。 各ア―ムがビ―ムマグナムやビ―ムサ―ベルに及ぼす変化は次の通り。 ラビット :弾性の付加。破壊力は極小だが、機動力は最高レベル。 フェニックス:火炎変換。破壊力甚大。 オクトパス :耐水性・吸着力を持つタコ足の形成。タコ足が弾けると朱い墨が残る。 ロ―ズ :いばらの棘と蔓を形成。飛び散る粒子はバラの花びらとなり、情熱を掻き立てる 急な仕様変更の為、本体と追加パ―ツの色などは統一されておらず、各ア―ムの肘にGNドライブが装備されていても GNフィ―ルドやトランザムを使うことはできず、右手に持ったサ―ベルやマグナムの属性変容効果の為にのみ活用された。 吶喊改修でありながらそのパワ―と環の自由な発想で紗代子たちを翻弄し、勝利を収めた。 ●海賊潜水艦リトルミズキ: リトルミズキがリュックサック型のバックパックを背負い、 サブア―ムに≪海賊≫と≪潜水艦≫のビルドア―ムズをコネクトした姿 潜水艦ア―ムはフォビドゥンガンダム系列のゲシュマイディッヒ・パンツァ―と 同方向で高出力のGNフィ―ルド発生機能を持ち深海の高水圧にも耐え、さらには 発射するビ―ムまで水から守り、水中からのビ―ム攻撃さえ可能にする。 海賊ア―ムはガレオン船型で、マストをマントか手持ち盾に変形させ、専用武器である海賊イカリマルで戦う。 これはクロスボ―ンダストのアンカ―の装備を参考にした、光刃の広いビ―ムソ―ド、ビ―ムボウガン、 推進器、投擲武器として使える複合兵装。 また、今回でてきた海賊帽子(トリコ―ン)はリトルミズキ用に特別に作ったもので標準装備と言うわけではない 基本的に2基のア―ムズはSFSの下駄のように両足を支える形で活用する。 この組み合わせに限っては、アトラスガンダムのサブレッグに近い。水上・水中戦専用の 装備のように見えるが、GNドライブ搭載機だけあってフィ―ルドも張れるし空も飛べる。 ●永吉昴の専用機: 未登場。リトルミズキのGN潜水艦ビ―ムによってまともな活躍が出来ないまま退場した。 ミンチドリルのような重量のある長物で、ガンダムハンマ―のような丸い質量兵器を撃ち飛ばす戦い方をしようとした。 ●AGE-FXハリネズミタンク: 今回の主人公、もとい狂言回しの高山紗代子のガンプラ。 ハリネズミが好きと言う点からFXバ―スト搭載機を選択した。 タンクのレフトア―ムはキャタピラが分離して足の裏に移動、陸戦においてまさしく無限軌道を 実現するが、今回は活用前にやられてしまった。左肩の砲塔は中距離連射用で、射角は広い。 高山紗代子には「ハリネズミの飼育」の他「たい焼き」が好きと言う趣味があるので、いずれは本機 あるいは同じFXバ―スト持ちの「AGE2マグナムSV」辺りが「真っ黒なビルド」になるかもしれない この機体、あるいはその後継機がベストマッチ、あるいはその先の終着点に至るまでを追うのが 「高山紗代子の実験日誌」と言う物語の、当面の目的。 ≪今回グロンギ語に変換した楽曲≫ ●ウィ―ア―! 歌手:きただにひろし、作詞:藤林聖子 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |