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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
西暦2014年8月・軽井沢その4 『アメイジング・ビギンズ/いつか空に届いて』



魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

西暦2014年8月・軽井沢その4 『アメイジング・ビギンズ/いつか空に届いて』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


新作作成に必要な資材は見えているので、またまた近隣の大型ホビーショップへ。

お昼ご飯もきっちり食べて、元気いっぱいに足を進める。進めるんだけど、ただ……。


「……なに作ろうかなぁ」


舞宙さんも一緒なんだよなぁ。というか、合宿中のはずなのに……やっぱり確認しなきゃ。


「あの、舞宙さん……合宿は」

「大丈夫。移動初日でドタバタしているから、結構余裕はあるよ?」

「「「「全く聞いておりません!」」」」

「まぁ夕方からレギュラーラジオの収録だけど、それもユニットメンバーのラジオだしね。ここでさくっと収録できちゃうし」

「「「「全く聞いておりません!」」」」


いや、当たり前だけど! 本当に当たり前なんだけど!

だって僕、事務所の関係者じゃないし! あんなノリでPV出演の手はずを整えていくこと事態がおかしいし!


≪というかラジオ、収録するんですか? 軽井沢で?≫

「うん。スタッフさんが機材を持ってきているし、出先でどーんという感じに」

≪それはファンが喜びそうですねぇ≫


というか僕が喜びそうな感じだよ! 現地の空気とか、ラジオでも伝わるんだよ! そういう空気は声と音で送れるものなんだよ!

いいねいいねー! 楽しくなりそう。


「…………じゃない!」

「どうしたの?」

「のんびりしている場合ですか!?」


ラジオ収録!? 機材はあるけど収録!? それっていつ! 何時何分何秒から!?


「収録は何時からですか! というかどこですか!?」

「泊まっているホテルで、十九時からだから大丈夫だよ」

「なら最低でも一時間以上は早めにレッツゴー……というか失敗したぁ! 普通に予定を確認しておけばぁ!」

「だから問題ないってー。ちゃんと自分のスケジュール管理くらいできるし」

「今までの流れでそれを信じろと!?」

「そこまでのことを私、している!?
というか大人……私、大人だから! 君より年上! 淑やかな大人の女! OK!?」

「…………え?」

「なんで更に疑問を持つかなぁ! というかムカつくんだけど!」


駄目だ、これは僕がしっかりしないと! とりあえずお昼過ぎがリミットと考える! 今の時間は……腕時計を確認。


――AM16:27――


あと三時間を切っているし! く、時間の流れはこんなに早いのか!


「アルト、田上さんと絹盾さん達にメッセージを送って。GPSでの所在地認証コードも付けていい」

≪……送信完了しました。連絡先を交換しておいてよかったですねぇ≫

「特に絹盾さん、ビシバシ行く人だったしね……。
上手く立ち回れば、僕達だけは助かる道もあるでしょ」

「私は見殺しにするつもり満々!?
というか、勉強! これは勉強時間だから大丈夫! 許可もあるから!」

≪ガンプラ、作りたいんでしたっけ≫

「うん! もうひとまずガンダムOOとか……ガンダムXとかを見たし、さっきのも血が騒いじゃって!」


そっかぁ……なんだかんだで好き勝手やったし、楽しんでくれたか不安だったけど……それでも感じてくれたものがあるなら、やってよかった。

……僕も、舞宙さんになにか返していけるってことだもの。


「私もビームとか撃ちたい! サーベルとかでぶった切りたい!
こう……あのサテライトキャノンみたいなのを、どがーんってするのもやりたい!」

「…………舞宙、やっぱお前、淑やかな大人じゃねぇよ。大人の淑女が使う言葉じゃねぇよ、それ」

「なんでさー!」


ショウタロス、触れないであげよう? 舞宙さんはそれが淑やかって認識なんだし……修正は絹盾さん達に任せよう。


「でもそれならダブルエックスですか? どっちもできますけど」

「というか、ちょうどここにありますね」


HGコーナーの棚……その一角にある並び立つガンプラ。HGAW ガンダムダブルエックスはそこにあった。

うーん、やっぱりツインサテライトキャノンはロマンだよねー。火力があれだもの。


「……色は黒……いや、原作通りだしね。仕方ないよね」

「天原さん、青がいいんですね」

「それでこう、私のように……空へ羽ばたくことが似合うガンプラが」

「お兄様、天原さんはあれです。自分が世界一可愛いとか本気で思っているタイプの人です」

「天ちゃんじゃないよ、私!」

「そら……雨宮天か! え、そういうタイプなのか!?」

「小さいころはそういう感情が強かったんだって。まぁいろんな波に揉まれて、ネガティブキャラになったそうだけど」


それ、ラジオとかで聞いたなぁ。でも雨宮天さんも……舞宙さんと同時期にデビューしたけど、歌も素敵だし。実はすっごく推しです。

なにより……ううん、関係ない。素敵だなって思う気持ちだけでいい。


「まぁ色は塗装でってのもありますけど……空へ羽ばたくガンプラですか」

「やっぱないかなー。エアマスターも航空機って感じだったし。
あぁいや、でもエクシアとかOガンダムの光の羽は奇麗だったけど」

「それ以外でもあります」

「あるの!?」

「三つほど」

「三つ!?」


まずはガンダムWのコーナーに……アナザー系は近い列に纏められているから、移動も数秒。

そうして手にするのは、やっぱりこれだよねぇ……まさかサクッと次が出るとは思わなかったよ! さすがはガンプラバトルバブル!


「ウイングガンダムと、その原型機であるウイングガンダムゼロ。これなら羽根はあります。更にバード形態への変形も完全再現」

「鳥みたいになるんだ!」

「メイン武装のバスターライフルは、直系数百メートルの極大ビームを連射可能。ただしウイングは三発までです。
ゼロが持つツインバスターライフルはそれが連射できて、二丁に分けて使うこともできます」

「……サテライトキャノンみたいな感じ!?」

「あれより多少下がりますけど、それでも一撃必殺です」

「なるほどー! まぁ翼で言えばこっちのウイングの方が好みだけど……」

「パーツ交換で好みにカスタマイズって手もありますよ?」


そこで役立つのがグローバル規格。ちょうどウイングやゼロも、それがアピールされている最新キットだしね。


「最新型のガンプラって、AGP≪オールガンダムプロジェクト≫っていう最新規格に則って、関節やパーツの接続が一部共通化されているんです」

「共通化?」

「たとえばバックパック……どっちもバックパックの受けが、丸い穴二つに差し込む形なんです。
その大きさや位置も同じだから、ゼロとウイングのバックパックを付け替えるとか……肩や腕、足を交換するとか」

「え、そんな簡単にできるの!?」

「機体形状上、一部違うのはありますけど、基本はそんな感じです」

「そっか……じゃあトオル君のアレは」

「トオルのストライクがその”一部違うキット”なんです」


同時期に出てきたキットだし、そういうふうに思う……僕もちょっと思っていたよ。発売前はね。

でも違ったんだよ。まぁそれが欠点たり得ないというところも含めて、右指を立てながら補足。


「ストライカーパックの接続は、三ミリプラ棒一本を受け穴に差し込む形。
しかもその受け軸は胴体の後ろ半分で、スラスターとも合わせて一個のパーツになっています」

「じゃあ差し込めないと……」

「ただくっつけ方がかなり簡単ですから。それでオリジナルのパックを作ってーって人は、ガンダムSEED放映当時から多いです。
世界観設定的にも、ストライカーパックの技術が結構広まっていて……外伝とかで、結構破天荒なのも出ていますし」

「じゃああのデスサイズやクロスボーンも、そうやって……でもあれは楽しそうだったなぁ。
なんか衣装を変えて、イメージからがらっと変えてライブ開催って感じ」

「分かります」

「ああいうのもアリかぁ。ストライクもカッコよかったし…………ってあれ?」


そこで舞宙さんは気づく。

羽根を広げるウイングゼロと同じように、ツインバスターライフルを携えるガンプラがあることに。

なお、その隣にはやっぱり翼を持つウイングガンダムゼロ(EW)が……。


「恭文君、あれについて聞きたいんだけど……」

「ウイングガンダムゼロです」

「はぁ!? いや、でもほら、これ!」

「えっとですね、そこが結構ややこしいんですけど……」


とりあえず口頭じゃあ伝わらないだろうから、メモ帳を取りだしサラサラと書き込む。

舞宙さんも肩を寄せて、それを見つめてくれて……そのとき、ふんわりと優しい匂いが漂う。

やっぱり香水、とかかな。……こういうときは大人の女性なんだと思う。


それでドギマギするけど……解説表は一分も経たずに完成っと。


「まず一年放映されたテレビ版に出てきたのは、こっちの二機なんです。
で、その後にテレビ版から一年後の戦いを描いたOVA『Endless Waltz』というのが作られて、後に新規映像も加えて劇場放映されました。
そのEW版では、主役五機のメカデザイナーをテレビ版から変更して、よりキャラクター性を強めたデザインにしたんです」

「……それが、あっちの……白い羽たくさんなやつ?」

「たくさんなやつです。ただデザインが違うだけで、テレビ版で使われた機体とは設定上同じことになっています」

「いやいやいやいや……それは意味が分からない! アニメ業界にいる人間だけど、分からないよ!?」

「だったら今はまだマシですよ。当初は○○カスタムって言って、OVA用にパワーアップした機体だって認識が広まっていましたから。
それじゃあ誤解されるから、ある時期からテレビ版とEW版って分けて呼ぶようになったんです」

「……じゃ、こっちの……ウイングガンダムゼロカスタムっていうのは」

「EWが出た当初に、発売されたキットです。
二十年近く前のキットなので、初心者向けではないんですけど……」


舞宙さんは何度か頷き、この混乱する流れを飲み込もうと足掻き……次に刺したのは、より大きい箱。

そっちはHGじゃなくて、MG≪マスターグレード≫の方だね。


「こっちの、EWって描いているのは……」

「そういう呼称分けがされた時期のものです。なおマスターグレード……1/100なので、トオルのストライクよりずっと大きいです」

「どっちも作るの、大変そう?」

「まぁガンプラ合宿に切り替えてやるならまだ」

「さすがにその余裕はないかー!」


残念ながらHGサイズのウイングゼロ(EW)は、古い……旧キットと言って差し支えないものしかなかった。

AGP絡みで出たのはテレビ版だから、続く形での発売が望まれているところなんだけどね。


ただ……。


「年末なら、もうちょい勧められるものもあったんですけど……」

「どうして?」

「RG……HGと同じ1/144サイズで、より作り込まれたシリーズがあるんですけど、それでウイングゼロのEW版が発売予定なんです」

「なんか凄いの、それ」

「宝探し絡みで話した、”インサート技術”や”MSインジェクション”の発展ですよ。
フレームパーツから作っていくんですけど、それがランナーから切り離して、説明書通りに動かすだけですぐ完成。
あとはHGより細かく分割されたパーツを、そこに嵌めていけば完成って形なんです」

「あぁあぁ……あれか! でもいいなー! 年末なら休みもあるだろうし、買って作っちゃうかも!」


……まぁRGはまだまだシリーズとして熟成中で、バトルで使うならまた調整や維持の仕方があるけど……ここはいいか。

いきなり全部がーって説明しても、圧倒されて楽しんでもらえないだろうし。だから、必要になったらちょっとずつ……うん、それでいこうっと。


一番大事なのは、舞宙さんがこういう時間も含めて、ガンプラを楽しんでくれることなんだから。


「……じゃあさ、翼を持つガンダム……三つだってことだったけど、案外少ないの?」

「いえ、数はそれなりにあります」

「あるんだ……!」

「変形するタイプだと翼があることも多いですし、そうじゃなくても飛行するための装備とか」

「……そう言えば、エールストライカーにも翼、あったよね」

「ありました」


まぁその中でもEW版のウイングゼロは、有機的な翼を持ち込んだ転換期でもあるんだけど……。


「ただ舞宙さん的にはほんと、本物の羽根みたいにばさーって羽ばたく感じが欲しいと」

「うん!」

「キャラクター性の強いSD系もありますけど……今だったら」

「……ヤスフミ、まさか……アレか……!?」

「ショウタロスが思ったアレだよ」

「やめとかねぇか? そのまま原作とか見たら……」

「いつかは通る道だって……現にガンダムXやOOは見ているんだし」

「いや、それでもアレはヤベぇだろ!」


気持ちは分かると宥めながら、列を移動。アナザー系ではなくて、HGUC……本家ガンダム系列のコーナーに。

舞宙さんを引っ張って見つけるのは、二つのVを刻んだ機体。ガンダムらしいトリコロールカラーだけど、青の面積は大きい。

更に背中からはピンク色の≪光の翼≫を羽ばたかせて……うんうん、やっぱりいいねー。


「機動戦士Vガンダムに出てくる後半の主役機≪V2ガンダム≫。その最終形態である≪V2アサルトバスターガンダム≫。
劇中最新型の推進システム≪ミノフスキードライブ≫を搭載している関係で、機動力抜群。大気圏突破や突入も地力でできます」

「おぉ……本当に羽根が生えているし! しかもなんかいろいろ武装して!」

「その武装が最終決戦用のものなんです。
……この光の翼はすれ違いざまに敵を切り裂くビームカッターとか、羽ばたかせて攻撃を防ぐバリアとしても機能します」

「いいよいいよ、こういうの凄いよ! え、というか……HGUCってことは、ユニコーンガンダムとかからこれなの!? なんか凄いね!」

「あ、光の翼は想定外の欠陥ですから」


そう告げると、舞宙さんが派手にずっこけて……それは危ないので、軽くぎゅっとして支えておく。


「駄目ですよ。ライブ前なのに」

「いや、驚かせたのそっち! 想定外の欠陥ってなに!?」

「外宇宙への移動も視野に入れたシステムなんですけど、劇中時間では未完成なんです。
だから推進力にしきれないエネルギーが、ビームの翼として吐き出されてしまう。それがなくなって初めて完成なんです」

「外宇宙……それって、火星とか、木星とか」

「Vガンダム劇中ではやっていませんけど、外伝作品で搭載した戦艦などがやっていました」

「……空の更なる向こう……宇宙まで突き抜ける翼かぁ……」


……舞宙さんはキットを見て、一度だけ力強く頷く。


「うん、じゃあこれにしようっと! ……そういえば、これはバックパックとか付け替えは」

「ウイング周りが独自の作りなので、普通には無理ですね。でも腕や足は大丈夫です」

「なら、こっちの……武装していない普通のっぽいのは」

「それに武装を追加したバージョンがこっちです」

「じゃあこっちがお得だね! でも武器が一杯……ふふふふ、サテライトキャノンには負けないぞー! 翼で防げばいいんだし!」

≪……できますかねぇ。あの出力ですよ?≫

「夢を見るのは大事なことだよ」


それにほら、作り込みと発想次第でどうにかなるかもしれないし……でもV2ガンダムか。

自分で勧めておいてなんだけど、舞宙さんにはピッタリかも。こう、Vガンダム後期EDを思い出すっていうかさ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


僕達の中心となっているのは、やっぱりトオルとタツヤ。

……最初タツヤは結構な堅物かと思っていた。

だけど少しずつ作り上げていくガンプラを見て、どんどん表情が柔らかくなっていった。


トオルもそんなタツヤと一緒にいるのが楽しいらしく、僕はヤナさんと一緒に見守る側へ。ふーちゃんとフィアッセさんもそれに倣う。

別に距離を取っているとかじゃないんだけど、二人を見ていると微笑ましいというかなんというか。


ただそんな中、舞宙さんは少し壁にぶち当たっていて……これがライブ絡みであれば、まだよかったのかもしれないけど。


『撃て撃て撃てぇぇぇぇぇぇぇぇ! あははははは、やっぱこれ楽しいかもー!』


そう、壁にぶち当たっていた……当たっていたんだよ! 今は楽しげにV2アサルトバスターでフルバーストしているけど! それで突撃しているけど!

マトモには当たってはいられないので、ダークハウンドをストライダー形態に変形。右翼へと回り込むように回避する。

そうしてメガビームキャノンやライフル、ヴェスバーの射線を避けつつ、ロングレンジからミドルレンジに距離を詰めて……!

V2アサルトバスターの七時方向を取った上で、変形を解除して反転。右のアンカーショットを展開……一気に振り回し、即席シールドとする。


それでしつこく追ってきたマイクロミサイル一〇八発を全て受け止め、払い、爆散させる。

……その爆炎に紛れた上で、夕暮れの空を飛び上がる……再びストライダー形態に変形。

それを辿って撃たれるビームの奔流をかいくぐりながら、フィールド最上部へ到達。


そこからバレルロール……重力落下の勢いも加味して、一気に突撃!

更にランサーから放たれるDODS効果により、発生した渦巻くビームフィールドが向こうの砲撃を打ち据え、弾き飛ばしていく。


『当たらない……いや、当たっているのに弾かれたぁ!?』


原理はタイタスやらFXバーストとかと同じだ。そういうことができるよう改良したからねぇ。

舞宙さんは左腕のメガビームシールドも構えて、V型のビームプレッシャーを連続発射。でもそれもかいくぐり……時に貫くように虚を突いて。

そのまま脇を取った上で、変形解除と同時に急停止。ソニックムーブをまき散らしながら、機体も相応の衝撃で揺れる。


『……!』


直ぐさま翻される光の翼……それをバレルロールで回避し、左のアンカーショットを射出。

脇腹からアンカーを巻き付け、電撃を走らせながら引き寄せ……翻る翼を、V2アサルトバスターの股下をかいくぐりながら、素早く旋回。

サイドスカートのヴェスバーを、両腕を武装ごと縛り上げ、ドッズランサーを腹部に突きつける。


いや……寸前で止めて、こつんと装甲を叩く程度に留めた。


「まだ続けます?」

『こ……降参、です……!』

「はい、よろしい」

≪BATTLE ENDEAD≫


――消えていく粒子の中、僕は両手を払って一息。

そして舞宙さんは無傷だけど、縛り上げられたV2アサルトバスターを見て……膝から崩れ落ちる。


「…………また負けたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


――実は舞宙さん達が宿泊しているホテルにも、バトルベースが設置されていてね。そこにお邪魔して、舞宙さんのV2アサルトバスターとバトルしていた。

修復して、更にいろいろ思いついて改良したダークハウンドで……しっかり電撃を食らわせ、非殺傷での確保となりました。


「……もうなんていうか、闘牛士にあしらわれまくっている牛だよ」

「まいさん、突撃しまくり撃ちまくりだけど、当てられないから……接近戦だと大砲とか邪魔だし」

「言わないでぇぇぇぇぇぇぇ! 悔しい悔しい悔しいー! これ本気で悔しいー!」


いちごさんと才華さんも宥める中、ガンプラはしっかり改修してっと……。

しかしアンカーショットによる非殺傷は使い勝手がいいなぁ。ガンプラを極力壊さず鎮圧できるし。

…………これは、今作っている新作でも取り入れたいな。場合によってはって部分もつけた上でさ。


≪まぁでも、ハマってくれているようでなによりですよね≫

「だね、そこは安心」

「まぁ悔しがるのは、また部屋に戻ってからにしようか。
ほら、その辺りを改善しようかーって話でもあったし」

「うん……! 次は、絶対勝つ……勝つ!」

「……やっくん、頑張ろうか。
ほんと勝つまでやめないタイプだから」

≪だったら大丈夫ですよ。この人も執念深く追い詰めるタイプです≫

「そりゃあ仲良しになれるわー」


でも負けず嫌いなのは、強くなる足がかりの一つ……多分こういうところも、ユニット活動やアーティストデビューのキッカケになったんだろうなぁ。

だったらその舞宙さんの楽しさも萎まないように、一応の先輩として指導……というか、ちょっとしたアドバイスもしよう。

そう決意しつつ、三人と一緒に部屋に…………今更だけど、凄いことしているよね! 許可はあるとはいえ、宿泊部屋にさぁ!


しかもこう、いつの間にか名前で呼び合うように……いちごさんからも恭文くんってー! 才華さんからもやっくんってー!

これは、本当に気持ちを引き締めないと駄目だ。大人な感情を実感しつつ……少し広めのお部屋に入り、そこのベッドを椅子代わりにして講義開始です。


「――そもそもV2アサルトバスターは≪高機動強襲重砲撃支援形態≫……扱いそのものは難しい部類です」

「難しかったの!?」

「だから素のV2やアサルト、バスター……各形態のテストから始めていったんですよ。ウッソもそれでアレです」

「確かに、原作だと最後はなんかずーっと戦っていた感じだし。戦艦もばちばち落として…………うぅぅ……オデロォ」

「……まいさん、ヘコまないの。いや、あれ相当陰惨だったけど。
というかさ、あれが夕飯どきに放映していたの?」

「えぇ。それはもう堂々と」

≪黒富野さん全開でしたねぇ…………舞宙さん、あなたカテジナさんの方が合うんじゃないんですか? ほら、ちょうどこの人との年齢差も含めると≫

「あの流れはさすがに嫌だよ!」


そもそもV2ガンダムは、ミノフスキードライブもそうだし、当時としては最高レベルのジェネレーターによる出力も持ち味。余剰出力・推力も膨大。

これで精密な可変合体機体なのだから、もはやバグかなにかかと言う他はない。

なおHGはさすがに完全変形とかできません。……RGが出ればワンチャンあるかもだけど。


とにかく舞宙さんも非変形で剛性をしっかり取り、それで二種のオプションパーツを装備するという解釈で製作した。

が……最終決戦仕様なわけだから、当然扱いはそれなりに難しいわけでして。

そのオプションが、バスターとアサルト。しかもどちらも相応の高出力兵装込みで、フルアーマー形態によくある追加スラスターを有しない。


これもVガンダムから発展した拡張性と、ドライブとジェネレーターの余剰による恩恵があればこそだった。


そんなオプション装備の一種目はバスター装備。いわゆる重砲撃支援オプション。それでもパワー・ウェイト・レシオは変化なしなのが怖い。

まずは機体配部右側に装備する、ロングバレルメガ粒子砲≪メガビームキャノン≫。

遠距離から戦艦のビームシールドすら撃ち貫く、威力・射程においてV2最強の武装。


ただしこのキャノン、機体の全長近くある上に射角も狭い。上か下にしか動かないからね。

その分V2の高機動を生かしてって手もあるけど、その長さ故に中距離戦より近い場所では邪魔になる。

実際劇中でもバスター装備で出撃すると、まずはこれを破壊される。接近されるとこれが破壊される。


そんなビームキャノンの真向かい……機体背部左側には、スプレービームポッド。こちらもジェネレーター内蔵の拡散ビーム砲。

マルチロックオンが可能で、中……近距離まで接近を許した際の迎撃武装となる。


リアスカート、フロントスカート、両足外側のハードポイントに装備するマイクロミサイルポッド。

一基辺り十八発のミサイルを内蔵していて、中近距離の迎撃や防御を行う……っと、ここまでがバスター装備。


それに対して、リーンホースJrのメカニック陣が現地開発したアサルト装備。

高機動により、敵陣不覚に切り込む戦術目的を達成するため、一定の被弾を想定しての防御性能向上が計られている。

金色のパーツが特徴的だけど、これは耐ビームリアクティブアーマー。


更にIフィールドやビームバリアも搭載されており、ビーム攻撃に対しては正しく要塞級。

それを十五メートル級モビルスーツで、デメリットや制限なく使えるのは本当に脅威だよ。これも余剰出力があればこそだ。

では攻撃力は素の状態かと言われると、そうでもない。


右手に装備するメガビームライフル。メガビームキャノンと近い装備だけど、片腕……それも前腕だけで支持する武装だから、射角と取り回しに優れている。

左手には……アサルトの専用装備ではないけど、三基のバリアビットを搭載したメガビームシールド。

艦載用ビームシールドにも引けを取らない広域防御もできて、戦艦の主砲以上の火力だろうと弾き返す。


両サイドスカートにはヴェスバー。ガンダムF91にも搭載された可変速ビームライフルで、小型ながら火力は相変わらずの一線級。

なおインコムのようなオールレンジ攻撃も可能な設定があるので、ガンプラバトルではそこを生かすこともできる。


で……そんな全オプションを余剰もなく装備したのが、V2アサルトバスターなんだけど。


「――文字通りの戦略級機動兵器。数で勝る軍を、個で突破してかき乱す装備ですからね。
エネルギー管理やら適正レンジでの装備の使い方やら、わりと難しいんですよ」

「それ、初心者のまいさんに勧めちゃったの?」

「キット的にはこっちの方がパーツも多いし、お得なんですよ。
それぞれの拡張パーツを、オリジナル解釈でセッティングする人もいますし」

「そういうことならまだ納得だけど……でもあのメガビームキャノンは、ちょっと合わない感じだと思うなぁ」

「まいさん、考えなしでぶっ放すしね。それも滅茶苦茶笑いながら、全速力で飛び込みつつ乱射だよ。
もはやトリガーハッピーを通り越して、ただ大砲が撃ちたいだけのバーサーカーだよ」

「…………太田を思い出すんだよなぁ、その描写」

「もしや親戚じゃないか? コイツ」


ショウタロス、ヒカリ、さすがにそれはないよ……。というか太田先生が親戚なら、普通に特車二課絡みでまた違う反応になっているって。


「太田? え、誰かなそれ」

≪太田功……特車二課第二小隊の初代メンバーで、イングラム二号機のフォワード担当≫

「「え……」」

≪TOKYO WAR以前に特車学校……ようするにレイバー操縦を教える警察内の学校教官として赴任。
で、そこで……この人に現在警察で使われているAVシリーズの操縦を〇から叩き込んだ恩師です≫

「ちょ、あの二号機!? いろいろ破壊しまくり撃ちまくりで有名な!」

「それが、恭文くんの恩師……!?」

「はい! 太田先生にはたくさん鍛えてもらいました!」


そうじゃなかったら、イクストルと揉み合いなんてできなかったし……僕が生き残れたのも太田先生の教授があればこそ。

でも太田先生の活躍はやっぱり知れ渡っていたんだね! まぁ第二小隊自体有名だから当然かー!


≪なお、TOKYO WARにも第二小隊メンバーとして大暴れしましたけど、いろいろな流れで現在……その第二小隊の隊長になっています≫

「え、待って……それでなんで、なれちゃったの?」

≪特車二課は元々レイバー事件の推移絡みで、再編成が決まっていたんですよ。同時に結成当初から蓄積してきた、レイバー運用ノウハウの継承も。
ただ南雲さんや後藤さん達初期メンバーが辞めた上、他に部隊を纏め、その継承もできる人がいなかったんですよねぇ……悲しいことに≫

「太田先生、面倒見はいいし現場判断を大事にしてくれる方ですけど……八十年代からタイムスリップしてきたような熱血漢ですからねぇ。
そもそも付いていくのが極めて大変で……だから北沢さんも苦労しているようです」

「北沢さんっていうと、まいさんをやっくんと一緒に助けてくれた、警察官の……第二小隊の人で」

「北沢さんは二代目小隊メンバー。そのまま上司に初代メンバーが返り咲いたので……まぁ後は察してください」

「「うわぁぁぁぁあぁぁ…………」」


あれ、なんかどん引き? というか二人揃って舞宙さんを見て……。


「そりゃあまいさんと気が合うよ……」

「似た者同士だったんだね……」

「いや、危ない奴みたいに言わないで!? そこはほら、淑女的な……こう、格がね!?」

「天原さん……淑女はあんなぶっ殺してやると言わんばかりの声を上げながら、武装を乱射などしません。あれは太田流です」

「ニュ、ニュータイプな淑女……だから……!」

「お前、一度ニュータイプに土下座しろ」


……まぁそんな決戦兵器なので、エース級とタイマンとかだと……これがなかなか難しい。

ただ、今もいちごさんに言ったように、材料は揃えられるんだよ。だからお得なわけでして。


しかも、これがまだマシだからなぁ……。


「まぁ舞宙さんが淑女かどうかはさて置き……V2はいわゆる全部載せ系統の中で、一番分かりやすいと思います」

「あれで一番……?」

「普通は武装や装甲の追加で、また面倒な問題が出てくるんですよ。
……重くなったからスラスターと推進剤を増やそう。でもそうすると機体の負荷が大きいから、補強して……そういう際限のない手入れが。
しかも重量増加は、モビルスーツにとって最大の武器である運動性を捨てる結果になりかねない。
だから大体の全部載せ機体は、適当な妥協案を付けておくんです」

「例えば?」

「一番多いのは、使い切った武装や破損した装甲はパージして、元の機動力を取り戻せるようにする方式です。
燃料の問題は、プロペラントタンク……燃料タンクを同じ方式で増設して、まずはそこから使用ってコースもありますし」

「……そういやVガンダム劇中でも…………ネネカ隊……う、頭が」


あぁ、舞宙さんが精神汚染を患って……というか、ネネカ隊はやめて。あれは僕も辛かった。


「……まいさんはもう……一気見なんてするからー」

「恭文くんも警告していたのにね。きつい展開も多いから、ちょっとずつがお勧めですよーって」

「だって見始めたら止まんなくてー! 阪口大助さん、どんどん上手くなっていくし! 私も頑張らないと駄目だなーって!」

「舞宙さん!?」

「自分と重ねてやがったのか、お前……!」

「職業病ですね」


いつか舞宙さんが、どこかのタイミングでガンダムに乗る日も近いかもしれない。そんな未来が見えた瞬間だった。


「……でも、それで……V2アサルトバスターは分かりやすいの?」

「そこでミノフスキードライブなんです。
大推力・推進剤不要・慣性制御の三本柱で、そんなジレンマを真正面から殴りつけ、これでもかーってやらかしているわけで。
だから武装の特性とその本領を発揮できる扱い方、場合によってはパージも辞さない気構えあれば、簡単には勝てない機体です」

「もはや理不尽だね……。
あぁ、でもそっか。だからプロペラントとかもないんだ」

「……するっていうと、なんでしょうか。やっぱりあたしが……下手というか……!」

「いやいや……見ていて思いましたけど、舞宙さんは僕より上手ですよ」

「「「えぇ!?」」」


それは違う……それだけは違うと、首を振る。お世辞かなにかと言いたげな顔だけど、そういうわけでもないんだ。


「僕は実戦経験やら、これまでガンダムを見てきた知識も生かせるから、上手くしのげるわけで。
そういうの抜きで考えると……僕が舞宙さんと同じくらいの初心者だったとき、もっともたついていました」

「原作再現じゃないけど、それで武器の使い方とかも分かるならと。しかも恭文くんは、実際の戦闘も手慣れている側だし」

「というか、レイバーの操縦もできるしね! ロボットに乗って動かす感覚ならバッチリ!」

「トオルとのバトルでもやりましたけど、異能力戦のノウハウにも通じるところがあるんですよね。敵機体の能力や作戦を看破して、打破するっていうのは。
……なので課題としては、武器の使い方を理解できるかどうかですね。特にああいう多武装のてんこ盛り機体は」


なので舞宙さんは、初心者としては技量が高い方だよ。ただV2アサルトバスターくらいの機体を使うなら、課題があるだけで。


≪一見すると武器がたくさんで強そうって考えがちですけど、実は”全てをまんべんなく、フルパフォーマンスで使いこなせれば”って条件が付きますからねぇ……≫

「じゃあ、実際の戦闘でも、そういうの難しいの?」

≪一人の人間が一つの機械に割り当てられる作業量≪リソース≫は限られている上、腕は二つで脳も一つです。
だから幾ら機体・武器の数が多くても、動かせる限界数が少なかったら大半がデッドウェイトなんです。
……数の有利を取るということは、質の不利を取るということなんですよ≫

「そういう意味では、舞宙さんのトリガーハッピー癖はまだいい方かもね……」

「あれで?」

「初手から最大火力で圧倒する戦法と考えれば。
使い切った武装は即座にパージすれば、現時点での限界数が少ない問題も多少は誤魔化せます」

「…………それ早く言ってよ……!」


舞宙さん、そんな恨めしそうな顔をしないでください。そこを教えても、評価は変わりませんから。トリガーハッピーなのは変わりませんから。


「ただまぁ、それは今後徐々に積み重ねるものですし、ひとまずは……舞宙さん、どういう戦い方がしてみたいですか?」

「どういう、戦い方?」

「近づいて斬りたいとか、火力を乱射したいとか……いろいろ動かしてみて、やりたい戦い方があるかなーって」

「そっか……トオル君のあれだって」


あのデスサイズパックやクロスボーンパックも思い出し、舞宙さんは両手を見やる。

その中には、きっちり修復も施したV2アサルトバスターがいて。


「…………私はやっぱり、思いっきり羽ばたきたい」

「はい」

「それで、近づいていく……飛び込んで、ビームサーベルとかでせめぎ合うのが楽しい。そういう戦い方をもっとしてみたい。
あとはメガビームシールド! あれのビットも地上で使えるようにして、上手く……もっと連携させてみたいの!」

「あれを?」

「だってほら……三つで踊って、いろんなことをするって……ユニットみたいだし」

「「……」」


舞宙さんの……少し照れ気味な言葉に、いちごさんと才華さんも頬を緩める。でも……うん、そういうことなら。


「ならセッティングも決まってきますね。機動性を生かした近接特化……アサルトベースかな。
とするとメイン武装をどうするか」

「刀や短刀一本でざしゅっとか? 往生せぇやーってね!」

「あたしを極道かなにかと勘違いしていらっしゃいますか!?」

「サイちゃん、さすがにないって……」

「ありますよ」

「「「あるの!?」」」


タブレットを取りだし、ささっと検索……。


「例えばガンダムXに出た白い奴≪コルレル≫……」

「あぁ……そうだそうだ! あれ、ビームナイフ一本だけだったよね!
機動力を限界まで突きつめて、エヴァみたいな細い身体でぴょんぴょん飛んで!」

「SEED外伝にはロストテクノロジーで作られた日本刀も出てきます。こちらはモビルスーツで打ち上げて、ビームも容易く斬り裂きますから」

「そんなのまであるの!?」

「三十年近い歴史がある関係で、いろいろ幅ができたんです。でもV2に近いのなら……」


…………はい、出てきたよー。光の翼を生やした武者が。だからそれを三人に見せてあげる。


「V2モチーフの武者ガンダム≪武者飛駆鳥≫です。
LEGEND BBというカテゴリーでちょうどリメイクされて、金色の羽衣っていう強化武装もきっちり付いているんですけど」

「金ぴかだ! というか刀がビーム!?」

「SDでも珍しい、クリアパーツでできた刀ですね。
それで、この武者飛駆鳥のパーツを使って……リアル武者に仕立てたのがこちらになります」

「「「こちら!?」」」


さすがに実物はないので、家に置いてきた愛機の画像を見せる。

角飾りはプラ板などから調整し、ネオジム磁石などを使い、合体機構も組み込んだ……僕特製≪リアル武者飛駆鳥≫だよ!


「え、これなんか凄い! どうやっているの!?」

「HGのV2をベースに、LEGEND BBのパーツを組み込んで……いろいろ調整したんです。
実は昔からこういう、SD出典のキャラをリアル体系で再構築っていう手法、改造ではポピュラーで」

「あぁあぁ……だから刀一本と。君も刀を使うし、ちょうどいいんだね。
というか恭文君、この金色の羽衣って、オプションパーツが元?」

「えぇ。それが合体して、鋼鉄迦楼羅≪メタルガルーダ≫っていうサポートメカにもなるんです」

「それ便利だなぁ!」

「SDガンダムはこういう合体・可変ギミックが楽しいんですけど」


…………こういう状況になるとは思っていなかったから、つい画像を見て……懐かしむように苦笑。


「……これだけでも持ってくればよかったなぁ」

「確かに……トオルくんとこれで戦ったら、すっごく楽しそう」

「必殺技もいろいろあるし、それでビックリさせたかった……!」

「まぁトオルくんも東京なんだし、チャンスはあるって。もう友達なんだしさ」

「……そうですね」

「恭文くん?」

「いや……会って一週間程度なのに、友達なんだなぁって」


……一瞬、依頼のことが引っかかった。でもそれだけじゃなくて……なんというか、不思議な感覚で。

少し心配そうに首を傾げたいちごさんには、大丈夫だと笑って返す。


「ん……でもまぁ、いいんじゃないかな。仕事は仕事できっちりすれば」

「……はい」


多分舞宙さんに絡んだ話でもあるから……その少し重たい言葉は、しっかり刻み込むと首肯。


「いちさんの言う通りだよ。わたし達だって……まぁ仕事から知り合った仲だし、最初はオーディションで勝ち残りを奪い合ったライバルだけどさ。
それでも友達になれたし、一緒の部屋で……ねぇ! もう今は凄く幸せだよ!」

「……恭文くん、春山と入れ替わってくれない? 時々身の危険を感じるんだ」

「なんで!?」

「いや、言いたいことは分かるよ……。サイちゃん、時折目つきがヤバい」

「なにもしていない……わたし、何もしていないよ!
今日もいちさんは……魂も含めて素敵だなーって見ているだけで! 時折ハグするだけで!」

「いや、駄目だよ。私はほら、恭文くんの彼女だし」

「「は…………!?」」

「とんでもないホラを平然と吐くの、やめてもらっていいですか!?
ないですないです! というかそうなるタイミングもありませんでしたよね!」


なに、そこまで嫌なんですか!? だから平然と、きょとんとしながらそういうことが言えるんですか!?


「あのね、もしかしたら信じてくれないかもしれないけど……私、そういうお付き合いとかないの。高校の頃も女子校だったし。
お仕事始めてからも……なんか、周りの人が凄くガードしてくれて」

「……それはね、いちさんが電車にも乗ったことがないって言ったからだよ? 大分県の別府だっけ」

「うん。ただ海じゃなくて、山の方……湯布院とかそっち」

「あぁ……だからなんですね。僕も興味があって調べたことがあるんですけど、電車はありましたし」

「海沿いの別府駅とかだよね」

「はい」


別府は温泉地として有名だけど、山が入り組んだ関係で新幹線とかも通っていない。特急はあるけどね。

それで山間にある温泉地……いちごさんの実家がある湯布院近辺は、車で行くのが基本。というか、全体的に傾斜がきついから、車移動が基本。

でも車が……バスとかの乗り換えをきちんとできるなら、たくさん遊べるいいところらしい。いつか行ってみたいなーっと。


「だから、魂理論に乗っても……私の胸に触れた男の子は、君が初めてになるわけだよ」

「そ、それでもあの、お付き合いというのは! いや、お互いまだ知り合ったばかりですし!
僕もいちごさんのお仕事とかにはちゃんと配慮したいですし!」

「うん、恭文くんはやっぱり優しい子だね。だから……サイちゃんが気持ち悪くなくなるまで、守ってほしいなぁ」

「それお付き合いって言いますか!?」


というかほらほらほらほら……舞宙さんと才華さんが、凄い目で僕を見てきて……!


「どういう、ことかな……! 話をしようよ! 私とのことは遊びだったの!?」

「わたしも話がしたいな! なに、やっぱり巨峰がいいの!? 平原に興味はないと!」

「だからタイミングー! というか、いちごさん!」

「……ほんとお願い。サイちゃんがこう…………大人になるまで」

「無理がありますよ、それ! というか僕と付き合っているってことにすると、いちごさんも恋愛できませんからね!? 浮気になりますからね!?」

「……どうかな、恭文くん……NTR趣味があったって話にしたら。それで私を本当に取られちゃったって感じに」

「なにとんでもないもん突きつけてくれてんだぁぁぁぁぁぁ!」


というかあの……駄目! 絶対駄目!


「駄目です駄目です! そんなこと駄目です!
というか、お付き合いってやっぱり……結婚前提で、相手のこともちゃんと大事にして!
なのに……駄目です! いちごさんは応援してくれるファンの人達もいるのに、そんな傷つくことをさせるなんて駄目です!」

「……そっか。じゃあ、まいさんやフィアッセさん、風花ちゃんにもそう言える?」

「言えます!」

「即答かー。なら、私も本気じゃないと駄目になるけど……どうしようかなー」

「おい、ヤスフミ……どうすんだよ! やぶ蛇ツツいたぞ!」


あ、これは……いや、でも譲れない! 譲ってしまったら駄目!

創作物……表現としてならともかく、リアルは駄目! 忍者的にも、ファン的にもアウトー!


「…………いや、待って」


すると才華さんが挙手……とても真剣な顔で挙手! まさか、この状況を打破する何かが!?


「その取られた相手が私なら……なんの問題もないのでは!」

「才華さんも馬鹿だったぁ!」

「大ありだよ馬鹿がぁ! だったらヤスフミはいらねぇだろうが! 関わる必要はねぇだろうが!」

「……サイちゃんのことは好きだよー。でもほら、お互い別居って形にしておこうか」

「つまりわたしが帰るうちを選んで、いちさんに飛び込んでOKってことだね!」

「独自解釈が強すぎない!?」

「TRPGならこれくらい普通!」

「春山さんも強いですね。……というか、なんの話でしたっけ」


本当になんの話……いや、そうだ! 武器の話だ! どうしたら……舞宙さんが不機嫌だし、元に戻さないと!


「……ふーん、いちさんは結婚前提で、大事にするんだ。そういうこと言っちゃうんだ」


というか、頬を膨らませて、ずいっと詰め寄って……あの切れ長な瞳で、軽く睨まれる。


「私のことはまた会うのを避けていたのになぁ」

「あ、あの……舞宙さん……」

「まぁまぁ。まいさんもそこまでで……冗談だし」

「それでここまで混乱させたの、いちさんだけどね!? ……でも、刀……短刀」


舞宙さんは右手で何かを握る仕草。そこから何もない場所を、ドスドスと突く真似……やっぱり極道の類いだ。


「でも射撃も楽しいんだよなぁ。
というか、CPU相手ではちょいちょい当たるようになってきているし」

「……まいさん、やっぱりトリガーハッピー……」

「というかそれ、乱射して偶然じゃないの?」

「当たれば百発撃とうが、一発だろうが変わらないって!」

「いやいやいやいや……!」

「近接で、射撃も含めてかぁ。
ただ舞宙さんは、瞬間的な武器の使い分けには課題が残る」

≪それだとやっぱり長物は持てあましますね≫


近づいて斬っていくなら、どうしても取り回しがなぁ。メガビームライフルも結構大きいしさ。

それなら……いや、駄目だ。これは僕のガンプラじゃない。舞宙さんが考えて作っていかなきゃ。そういう楽しさを奪っちゃいけない。


だったら……。


「よし、それなら改めて各武器の扱いを説明していきます。
あとアニメとか映画で、参考になる武器もあるかもしれないですし」

「あ、そうだね。それで使い勝手とか考えたら、改造も進むかも」

「私が実際使ったものなら……うん、分かっていけると思う。恭文君、お願いね」

「はい」

「あ、でも君も自分の新作作っているのに……」

「いいですよ。僕もおさらいってことで」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


相変わらず笑顔が可愛い。それに……好きなことになると、目を星みたいにキラキラさせてさ。

やっぱりこういうところがいいなぁって…………カテジナさんは見習えないけど、すっかり心を許している自分がいるのに気づく。


「――アサルトバスターで言うと、やっぱりまず特筆すべきはバスター装備……長距離支援を目的とした、重火力砲撃装備です」


恭文君はタブレットでサラサラと図解…………模写を心がけるよう言ったので、クトゥルフ的なのではありません。


「作中設定を語っていくと長いので、そこはサクッと飛ばして……戦術的な意義だけに触れます」

「うん、それは有り難いかな。わたし達もライブ前なのに一気見前提になっちゃうし」

「特にチーム戦に絡んだところを」

「……チーム戦?」

「劇中だとエースとして遊撃も多いですけど、同等以上の機体とチーム戦をやる場合、一番特化した部分を組み合わせるのが本領です」

「……あ、なるほど! その特化するのが、まいさんのやりたいこととも重なるから……いろいろあぶり出していこうと!」

「そんな感じです」


それに自分の経験から……だけど答えにばしっと触れることはしない。

私が楽しく遊べるように、自分で進めるようにって、いっぱい気づかってくれてさ。

……それなりに大人だから、この子の真っ直ぐな感じ、やっぱり凄く心地いいな。


大変なこともたくさんあるだろうけど、この感じ……キラキラした瞳が陰られないでいてほしいって、本気でそう思う。

でもそう思うってことは私……あたしは、もう首ったけってことなのかなぁ。


(いや、今更か)


だって、そうじゃなかったら追いかけないし。いちごさんと付き合っているって聞いて、むっとしたりしないし。

だけど、私だって大人だから……ん、やっぱりゆっくりでいいよね。答えは二人で出すんだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


才華さん、本当に察しがいいというか、頭の回転が速いなぁ。

正しく一を聞いて十を知るというか、考えが深いというか……これで高校生とか信じられない。

というか僕、高校生になったとき……才華さんみたいに振る舞えるかなぁ。ちょっと自信がないかも。


「……戦術的なポジションで言えばバスターは、チームの中央で誰よりも早く中・長距離を制する中衛役。
必要なのは足を止めて、視野を広く持ち、あらゆる相手に正確な弾丸を選んで、命中させる判断速度と命中精度です」

「……うん、よく分かった」


あれ、いちごさんまでも一を聞いて十を知る人みたいに……というか、割り切った様子で舞宙さんを見て。


「まいさんに中衛は無理だ」

「いちさんがヒドい!」

「飛び込むって言ってたじゃん。切りたいってさぁ」

「で、でもほら……なにかこう、私向きなやり方とか!」

「……一応このポジは、前衛や後衛、遊撃役への指示を出す場合が多いんです。
なので前線では戦術レベルの指揮能力も求められます」

「ほらー! 年長者な私にピッタリだよ! サイちゃん、高校生でしょ!? いちさん、一歳年下でしょ!? 指揮だよ指揮! 年上の仕事でしょ!」

「…………ポプメロのセンター、私」


いちごさん、そこ強く出るんですか! というか神刀を抜いて、ずいーっと迫ってー!


「わーたーしー」

「なんだよー! いちさんだって無理でしょ!? 指揮とかさぁ!」

「とにかく砲撃とかミサイルで、味方を支援するのが本領ってわけかぁ。
足を止めてとなると、まいさんのやりたいこととは少しズレるね」

「流さないでくれる!?」

「というか、前に出る人……恭文くんも刀とか使うよね。
そういう人は何が仕事なのかな。やっぱり敵をばっさばっさ?」

「最前衛全体で言えば、それも仕事の一つって感じですね」


まぁ僕もソロが多いけど、チーム戦ではまた違う振る舞いが求められるわけで……。


「単身で敵陣に切り込む……今才華さんが触れたようなことをしたり、最前線で防衛ラインを守るんです」

「防衛ラインを?」

「敵に抜かれた場合、後ろで支援してくれる後衛や中衛が襲われて、仕事ができなくなりますから。
……同時に攻撃の持続時間を増やし、サポートの必要性を減らすため、防御能力と生存スキルが重要になってきます」

「長く生き残って、できるだけ叩いて守れと! そりゃ厳しいわ!」

「ただ僕は見ての通りなので、そこまで防御能力が高くないんです。マトモな殴り合いも今は苦手項目に入ります」

「「「あぁ……」」」


右手で小柄な身体を差すと…………みんな、納得した顔をしないで。もっと未来に期待して?


……ただここは、単純に身体能力だけじゃない。魔導師……魔術師としても同じだ。

魔力量は平均的だし、特に魔法の攻防出力は平均以下。並列処理も苦手だから、フルバックが一番の適役。

魔術方面だったら……魔術家系じゃないけど、そこそこ多い魔術回路本数のおかげで、まだ何とかなるんだけどね。本数二〇本らしいし。


ただそれでも出力任せの放出とかな苦手なので、上手く精密制御で補う必要があるんだけど……ぐす。

いいもんいいもん。きっと……大人になったらもっと魔力も上がって、身長一八〇とかになるんだ。


「だから最前衛より一つ下がって、機動力を生かして一撃必閃……攻撃は切り払うか避けるの基本二択で、敵陣をかき乱す方が多いです」

「うん、まいさんはこっちだね」

「いちさんがなんか辛辣!」

「というか、駄目ですよ……。舞宙さんが自分で作るガンプラなんですから」


言いたいこともよく分かるけど、いちごさんはちょーっと抑えておく…………が。


「でもさ……まいさん、武器の変更も面倒臭いとか言う人だよ?
服とかも突っ込んでそのまま洗濯できるかどうかで選ぶ人だよ?
刀一本で放り出した方がいいんじゃないかなぁ」

「……それもそうですね」

「諦めないでぇ! そのすんなりした納得はやめてぇ!」


この世とは非情なんですよ、舞宙さん。僕にはなにも言い返せないもの。無理だもの。


「でもまぁ、アサルト装備とかの意味も……その説明で何となく分かってきたよ。
だから対ビームアーマーとかが生きてくると」

「最終回もパワーダウンしちゃったけど、最後まで致命的な壊れ方はしなかったしなぁ、V2」

「あとはヴェスバーですね。それなら外しても問題ないでしょうけど……余計にメイン武装が大事になってくるなぁ」

「戦闘力に直結してきますしね。メガビームシールドとの兼ね合いも考えると……」

「……光の翼を手に持って、ザシュッとかできればいいんだけどなー」


舞宙さん、それは………………いや、あった! あったよそれ!

だから慌ててタブレットを操作して、また検索……検索!


「まいさんがまた雑に……」

「そんな呆れないでよー。というか、さすがにそれはないよね?」

「あります!」

「「あるの!?」」

「え、本当に!? ガンダム自由すぎるんだけど!」

「あるんです! ――これです!」


そこで出すのは、V2に似たガンプラ。色はパープルで、顔立ちはザンスカール系の猫の目に近い。

両肩は上部が襟のように張り出しており、独特なラインを作っていて。


「ザンスパイン……SDガンダムのゲームで生まれたオリジナル機体。
V2を参考に、ザンスカールで作られたって設定なんです」

「え、なら羽根、外せるの!?」

「外して、手持ち武装のビームファンとして振るうんです。
その間は腰部のミノフスキードライブで飛行します」

「ドライブも三基なんだ!」

「だから飛ぶときはYの字が描かれるんですよ」


これもゲームではカッコいいんだー。残念ながら立体化はされていないんだけど。

両肩のティンクルビットとか、両肘のビームストリングスとか……敵方のV2として説得力が強くて。


「でも……それ、まいさんに使える? 作れるの?」

「ちょっとー!?」

「ザンスパインは今のところプラモ化されていないので、再現するならそれなりの改造は必要ですけど……」

「え、プラモ化されていないの!?」

「ゲームや漫画出典の機体って、なかなかチャンスに恵まれないんですよ……」

「いや、でもそれなら……武器が光の翼を出すって感じでもよくない?」


…………そのとき、電流がビビッと走る。


「まぁそこまで技術があるとは言えないし、それなら別個で考えた方が早そうだし」

「舞宙さん、それですよ!」

「……うん……やっぱりアリだよね! なんか凄く今、見えてきたよ!」

「はい!」


レコードブレイカー……まぁ実験機だけど、ドライブ四基搭載型は前例がある。

だから特化した形のドライブ搭載武装があってもおかしくはない。まぁ滅茶苦茶コスト割高になりそうで、試作すら危ぶまれるけど……問題ない!


≪でもその辺り、劇中設定的には説明つきます? コストとか……それとも自由で押し通す感じですか≫

「いや、試作機もないペーパープランとしてーって感じでもいいし、シミュレーションデータだけは作ったーとかでもいいでしょ。
そういう機体の前例ならあるし」

≪ありましたねぇ。だったら舞宙さん、忘れないうちにアイディアを纏めましょうか≫

「だね! ほら、やっくんも絵を描いたりしてさ!」

「そうする!」


舞宙さんは自分のタブレットを取りだし、対応ペンでぽちぽち操作……画像編集ソフトを立ち上げ、サラサラと書き込んでいく。

そちらを見ると……おぉおぉ、これはなかなか。一気にイメージが爆発している感じだ。


「………………複数回の清書が必要だなぁ、これは」

「天原は画伯だ」

「なんだとお前らー!」

「いや、これはよくできていますよ。とくに銃と剣が合体したガンブレードに纏めているのが」

「「「ガンブレード!?」」」


舞宙さん、やっぱり凄いかも。というか、これなら射撃とかの問題も解決できるし……かなりいい具合に作れそうだぞー!


「え、待って! あたしが意図しない機能がでてきたんだけど! どこからそれが読み取れたの!?」

「ヤスフミ、落ち着け! それ半分狂気だ! つーか舞宙のアイディアに侵食するな!」

「え、侵食ってなに?」

「「自覚がない……!?」」

「……お兄様、センスが独特なのも程度があるかと」

「お前、もしかして一度繋がってないか!? こう、クトゥルフ的なのと!」


え、シオンとヒカリまでなんで呆れるの? というかみんなもガタガタ震えないでよ……。


「……サイちゃん、この子……怖い」

「なにを今更……いちさんが見込んだ彼氏だよー? ほらほら、ハグくらいしないとー」

「なにその仕返し!」

「……そうだね。ハグして……それでキスくらいは、ねー!
ほらほら、恭文君なら紳士にしてくれるよー? なにせハーレム頑張る子だしー」

「まいさんはいいからアイディアを纏めなよ! じゃないともっと繰り広げられるよ!? 狂気の真眼が!」

「だ、駄目です! そんな……万が一赤ちゃんとかできても、責任が取れないじゃないですか!」

「「「さすがにそれはない!」」」


――こうして舞宙さんのガンプラもアイディアがまとまり、パワーアップのときを迎える。

それもアサルト装備やらと極力被らない形で。被ってもパーツの付け替えで対応できるように。

V2が生み出すもう一つの可能性……自分でそれを作っていく楽しさに、舞宙さんも笑顔がどんどん増えていてて。


その姿を見て……今楽しんでいることが、それを燃え上がらせるお手伝いができることが、嬉しいなと……凄く刻み込まれて。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――二〇一四年八月一〇日 午後九時二十八分

サツキ家別荘客室




そして八月十日――タツヤの努力が一つの実を結び始めた頃、僕もまた一つの挑戦を……その壁を越え始めていて。


「でき、た…………」


はははは……プラ板でのパーツ新造、削り出し、ディテール作成……人間やればなんとかなるもんだなぁ。

ここまでガッツリ手を入れて、オリジナルガンプラにできるなんて。僕、思っていたよりもやる奴かもしれない。


≪集中しましたねぇ……しかもまぁ奇麗に塗っちゃって≫

「だがいい出来じゃねぇか!」

「うん、私はそこまで詳しくないけど……凄く頑張っているのは伝わるよ」


すると脇にいた舞宙さんが、また優しく頭を撫でてくれて……これ、駄目。なんか、頭がふわふわして……凄く幸せに。


「いい子いい子」

「あ、ありがとうございます……」

「いや、その前になぜ天原さんがこちらに……」


……幸せになっている場合じゃなかった! 集中してすっ飛ばして、自然と受け入れていたけど……どうしてここに!

ホテルに泊まっていたよね! 練習スタジオも併設しているところ! もうそこで休んでいていい時間なのに!


「PVの立ち回りも決まったし、ちょっと自主練したくて。
……で、そのままお泊まり予定」

「はい!?」

「夜道も怖いし、もうその方が早いかなーって」

「いや、だったら僕が送りますよ!」

「いいからいいからー」


舞宙さん、なんでにっこりと笑うんですか。その止めてーって……いや、ヤナさんやトオルがOKなら。

…………後で確認しておこう。もう一つの用件もあるし。


「だが、”これが”舞宙モデルってのはなんでだ?」

「……最初にぽんって思いついたのは、MS少女やフレームアームズ・ガールみたいなのなんだよ」

「あぁあぁ……あのラフか!」

「Ez8……というか陸戦型ガンダムも好きな機体だから、自然と……劇中のイメージに縛られすぎていたんだ」



いろいろ戸惑いを噛み締めながらも、ショウタロスの言葉を合図に……仕上がったばかりの愛機を見やる。

まだまだ荒削りだけど、全力を尽くした機体。それでもきっとここから、もっと強くなれるという期待感もあった。


「でもそうじゃない。目の前にいるのはガンプラで、僕の知らない表情がたくさんあってさ」

「ならお兄様、この形状……どちらかと言えばサンダーボルトのS(スパルタン)型になっているのも」

「あれも見ていたらかっこいいし、欲しくなっちゃって」

≪贅沢ですねぇ。まぁ遊びだからいいですか」


バックパックと両太股外側の装甲は、≪GNクラフト≫という汎用型推進装置に換装。

ビームサーベル二基は、ホルダーに纏めて左サイドスカートにセット。

リアスカートに装備された新型太陽炉。鋭い尻尾のようなパーツと一緒に備え付けられていた。


バックパック右側には、実体・エネルギーの砲弾を状況によって使い分けるメイン武装≪GNヴァリアブルバズーカ≫。

上部には高感度マルチセンサーと、それに連動した≪センサードローン≫。


「だったらもっと自由に、やりたいようにやっていいんじゃないかと思って……」

「だからヒントでもあって、そこから通常のモビルスーツデザインを逆算したのですね」

「舞宙さん、想像以上にクレイジーだったしね……!」

「「「確かに……」」」

「え、ちょっと待って! 私は普通……普通だよ? そこんとこ……揃って顔を背けないで!?」

≪あなた、軽井沢にきてからの行動を思い返してくださいよ……。もう奇麗で優しいお姉さん像は戻ってきませんから≫

「なんでぇ!?」


両前腕部にはシールドも兼ねた≪GNボルトナックル≫。手甲型の近接戦闘装備だ。

ナックルとセンサー&ドローンについては、トオルとのバトルを通し、必要だと感じた装備だ。

各部装甲は稼働を邪魔にしないよう、一部を変更し、対弾性を向上。フェイスも”ベースモデル”に近い顔にしている。


二色の濃淡を付けた青に、オレンジの差し色。黄色く輝くツインアイが、僕達を見据え続けている。


「で、もう一つのヒントはレッドウォーリア」

「あれか!」

「レッド……なにかな、それ」

「えっとですね……」


舞宙さんが知らないのも……いや、本当に仕方ないのよ。

なにせ僕は愚か、舞宙さんだって生まれていなかったときにやっていた漫画……そのお話なんだから。


「昭和時代に漫画連載していた≪プラモ狂四郎≫という作品で、主人公が作った……アニメにも出ていないオリジナルガンプラの一機」


なのでタブレットを取りだし、画像検索……はい、出てきたー。

一つの夢であり、目標でもあった……伝説のガンプラが。


(その5へ続く)






あとがき

恭文「というわけで、次回こそタツヤとトオルのバトル。きっとタツヤなら派手に暴れてくれることだろう」

フェイト「プレッシャーをかけるのはどうなのかなぁ! 本当に初心者だよね、このとき!」


(まだ覚醒する前ですから)


恭文「で、実は手を入れまくった結果、陸戦型ガンダムS型ベースにも見える罠。というか、実際に作るならそっちベース」

フェイト「ふぇ!? で、でもこの段階だと発売されてないんじゃ!」

恭文「というか、Ez8でやると……ホビーの虜さんでやっていたEz-SRのレッドウォーリア化を無断使用する形になるので」

フェイト「それでなんだ……!」


(HGBF改造 ガンダムEz-RW『http://hobbynotoriko.yumenogotoshi.com/hgbf-ez-rw.html』
でもこのEz-RWもかっこいいので、また個人的に……出典は明らかにした上で、手元に置いておくためだけに作りたい)


恭文「そのためにEz-SR、プレバンのオンラインショップで買ったしねー。再半分のガンダムEz-ARMSも二個買ったし」

フェイト「だけど陸戦型ガンダムS型、どう改造するの……!? バックパックはほら、ユニバーサル規格じゃないし」

恭文「まぁなんとかなるよ。というか、前にダブルオーのレッドウォーリア化もアイディアもらったし……そっちでもやってみたくはあるし」

フェイト「派生機体が量産されていく……!」


(アイディア、ありがとうございます)


フェイト「でもV2アサルトバスター、強そうに見えるけど……やっぱり相応に求められちゃうんだね」

恭文「だからトロワ戦法が役立つわけだよ」

フェイト「弾切れは気にするべきだって思うな!」


(それを気にしないのが技量なのです。
本日のED:島爺『フィクサー』)


恭文「……もしかして、リアル武者飛駆鳥をもう一体作ればよかったのでは。そうすれば新機体で頭を悩ませる必要はなかったのでは」

あむ「いや、それ今更じゃん!」

恭文「V2アサルトバスターやLEGEND BB版武者飛駆鳥を用意していたのに……これが孔明の罠」

あむ「自分でハマっているからね!? でも……もう十二月だよ!」

恭文「雪歩の誕生日も近くだし、また……ソーシャルディスタンスを保ちながらだけど、お祝いしないと」

あむ「そのときはクリスマスだしね。というか、アンタはほんと千早さんも大事に……!」

恭文「……あのウェディングケーキ騒ぎから、頑張っているよ」

あむ「頑張っていたの!?」


(あとがき)





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