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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
第41話 『勝利者などいない/PART3』

全ては僕の不徳が、傲慢が招いたことだった。

僕達なら……この仲間達ならなんとかなると甘く見積もり、行動し、取り返しが付かない状況を呼び起こした。

オーリス三佐が仰る通りだった。みんなはもう、出会った頃のような子どもじゃない……守るべき立場も、部下もある立場だというのに。


「……はやてちゃん、教導官としてもシステム導入には賛成できないよ。幾らなんでも怪しすぎる」

「それも大丈夫やから! ちゃんと監督する……ちゃんと、うちがみんなを守る!」

「こっちはね、今証拠が欲しいんだよ……! 行動でどうこうとかいらないの」

「なのはちゃん!」

「待ってください!」


そこで……片腕を三角巾で覆いながら飛び込んできたのは、シスター・シャッハだった。


「シャッハ……あなた、医療施設の方は」

「混乱は収めたので、ご心配なく。
それより……恭文さん、ギンガ陸曹……なのはさんもお願いします。
我々にチャンスをください。疑いを、汚名を払い、信頼を取り戻す一時の猶予を」

「だからぁ……!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


どうやらかなり盛り上がっているらしいねぇ、例の会議。

そこに108の連中もいるとなれば、それはもうオレ達としては明るい話題なわけで。

……あ、でも地球のモデルとか言う女もいるんだよなぁ。しかも滅茶苦茶美人!


「ヤバいなー。いい女は殺したくないんだけど。そういうのは愛を語らう方が楽しいし」

「ロビンさん」

「分かってるってー。私情は交えないよ♪」


右隣の肉だるまには笑って……愛用の44マグナムを右手で取りだし、撃鉄を引く。

距離二百、高さ三十ってところかな? でも問題ない……この程度なら。


「……」


……っと、ハゲ肉だるまことムールは、懐から黒いチケットを取りだす。

束ねられたそれの一欠片を口に含み、ゴックン……って、ちょっとー?


「念のためです」

「信用ない……とは違うか。殺しちゃいけない奴もいるし?」

「えぇ」


仕方ないとスーツの内側から、同じチケットを取りだし、俺も一欠片ぱっくんちょっと。


――Hells Door(地獄への扉)――

「……!」


一発決めれば、血が沸騰し、蒸発するんじゃないかと思うほどの高揚感。

全ての世界が、全ての現実が、オレ達から剥離していく。いや、オレ達が加速し、それを置いてけぼりにするだけか。

自分の身体が細胞から作り替えられ尖りまくった感覚があの部屋にいる奴らを捕らえる。


……これなら、レディを殺さずに済みそうだ。

だから――躊躇いなくトリガーを連続で引く。


放たれた弾丸は熱いキスを交わしながら、派手に踊ってくれるだろう。そう……死のダンスだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


全くこの人は…………ちょっと待って。


「……」

「不満があるのであれば、この私の首を賭けましょう。
裏切ったと思うのであれば……いつ、殺していただいても構いません」

「そんな程度で払える問題じゃないんですよ!」

「いいえ、払います! 払えなくてはおかしいんです!」


改めて周囲の気配を探知。まずはこの部屋、そこに続く廊下。更に屋外。

よく見知った場所だから、探知自体は問題なく行える。


「たとえ八神部隊長や我々が嘘を吐いたとしても……それを取り戻すことは! それを真実に変えることは、できるんです!」

「もういいから黙っててくれないかな! あなたが最低なのは分かったから!」

「いいえ、黙りません! 私は声を上げ続けます! その閉じた心が開かれるまで、何度でもこの思いをぶつけます!」

「そうやって押し込み強盗を働く人間を、誰が信じられるって言うんですか!」

「ならば勝負を! 騎士の刃に乗せて、この思いを……この正義をあなた達に伝えます!」


外の往来、熱心な信仰者の人達……そんな気配はなかった。それ自体は問題ない。一応管理職のオフィス近くだしね。

でもそんな中、直立している気配が二つ。それも、殺気が……!


「そして、正義が勝利を持って証明」

「全員伏せろぉ!」


楓さんと風海さん、更にギンガさんとリインもなんとか庇いながら、テーブルの下に潜り込む――その瞬間銃声が響く。


そして窓ガラスが破砕し、部屋中に跳弾の音が響き渡る。

それもただ調度品や天井、床を撃ち抜いただけじゃない。金属同士が擦れ、火花を走らせ、千鳥のように鳴き続ける。


――そしてその銃弾が肉を捕らえ、鮮血を刻みながら停止する。


「ぁあぁ……あぁあぁぁぁあぁぁあぁう……?」

「あ――――!」


テーブルの下で見えたのは、クロノさんが胸元や腹から血を流し倒れる姿。

それにカリムさんも頭や背中から鮮血を走らせ、同じように倒れる。


「……騎士カリム!」

「クロノ君!」

「恭文くん、これ……」

「見ないで!」


楓さんの手を顔で押さえて、見せないようにする。その間に更に気配察知……うん、間違いない!


「レイジングハート!」

≪探知は全くできませんでした。まさかステルス……?≫

「狙撃……いや、跳弾≪リフレクショット≫も利用した銃撃!
距離二百、四時方向! 数は二人! 銃声から判断するに44マグナム!」

「なんやと……!」

「転送で退避するよ! このままだと狙い打ち」

「――――ああああああああああああああ!」

「このぉ!」


でもそこで、シャッハさんが片腕を振るいながらセットアップ。フェイトもそれに続き、二人とも光に包まれて窓から飛び出し……このアホがぁ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……あららら……あの古き鉄、マジヤバいわ。直前で察知して、俺の跳弾を避けてきたし」

「……噂通りに化け物ですね」

「まぁでも、いいんじゃない? ”生かしておくべき人間”の一人だったしさ」


軽く返しながら……なんか向かってくる光二つに対して、つい笑っちゃう。


「遅いなぁ……」


――44マグナムの弾丸を、リローダーで素早く再装填。


「ハエが止まっているみたいだ」


そのまますっと構え……黄色い閃光に乱射。

なんか片腕の弱っちそうなやつは……まぁムールに任せておけば大丈夫だろ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


全く見抜けなかった……サーチも、なにも分からなくて。ただの銃だけで遠慮なく蹂躙されて。

でもこの距離なら、私の距離……向こうは左手に黒い回数券みたいなのを持って、銃を撃ってくる。なので鋭く左回りに回避。

……だけど、右側でまた……鳥の鳴き声みたいな音が響く。


そちらを見ると、やっぱり跳弾が……でもすぐにバルディッシュがオートバリアを展開。

だから、弾丸はそれを容易く貫き……私の左肩や脇腹、足へと激突する。


「あ……」

「……うーん、弱いねぇ……」


そこでゾッとする。あそこで銃を撃っていたはずの男が、私の背後に回り……左手で、あの回数券を持ったまま……短刀を突き立ててきて。


「がぁ!」


そのまま地面へ雪崩込むように墜落し、私は男に……忠誠を誓うように、這いつくばって……!

なに、今の……魔法もなしで、私の……バルディッシュの反応速度を、超えてきた……!? それも、十メートル以上の高さもクリアして!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


許せない、許せない、許せない、許せない、許せない――!


騎士カリムは、クロノ提督達は、正義のために行動していた! それを卑劣にも襲い、傷付けるなど!

なぜ六課が否定されなければならない! なぜ我々の正義が踏みにじられなければならない! 正義とは勝利するものでしょう!

ならば、その勝利を認められず、悪辣な手に走る存在は悪! 敗北して然るべき悪です!


だから振るいましょう……正義の刃を! 勝利をもたらす、絶対法則の刃を!

そうだ、私は剣道娘などではない……殺人剣に負ける弱者ではない! 私は正義の騎士! 勝利が私の正義を示す!

ゆえに、この悪鬼達も私が切り伏せる! 正義が私を勝利へと導く……そうでなければおかしい!


そうでなければ、私は……私は……誰も守れないのだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


カートリッジをフルロード。隻腕のヴィンデルシャフトを高速回転させ……あの肉塊が如き男に逆風一閃。

騎士の決意と、正義の尊さを込めた一撃に対し、奴は避けることもできず、肩で受けて…………砕け散った。

私のヴィンデルシャフトが……ガキンと派手な音を立てて、砕け散った。私の顔に、その破片がまき散らされて……。


「え…………」

「……自分は不器用でね。芸のない男です」


そして肉塊は、スキンヘッドを夕焼けに輝かせながら、丸太のように太い腕を突き出し――。


「――!?」


展開したオートバリアも、装備したバリアジャケットも無意味だった。

私の腹は、私の皮は、私の肉は、私の背骨は……その拳一つで潰され、穿たれ……全身の感覚が一気に消え去る。


「だが、身体の頑丈さには、ちっとばかり自信があります」

「ごぶあああぁ…………」

「お眠りください、お嬢さん」


拳が抜かれる……血まみれの腕が、私の身体を解放する。

それに伴い、私は崩れ落ちる。もはや痛みや苦しみはなかった。

ただ睡魔のような……柔らかいベッドのような誘惑だけが、私を包み込んで。


こうして私は、また敗者として……なぜですか。なぜ……正義は、勝つものでしょう。

ならば正義を謳う私が、勝てないはずがない。私が……悪だとでも……言うの、ですか…………。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「シスター、シャッハ…………!」


そんな……魔法能力もないただの腕力で、魔法防御どころか肉体を”穿った”?

あんな傷、受けたら……死んじゃうよ! ううん、なんとか蘇生できても、もう戦えない……そんなことができる身体じゃない!


「駄目だよ? 君達みたいなか弱いレディがこんなことしちゃ……いや、それも駄目か。うん、駄目だね。
仕事を頑張る君達も素敵だ。でも自分達の手に負える相手かどうかくらいは、見定めないとね」

「お前、達は……スカリエッティ……の…………」

「それについては、108のナカジマ親子や古き鉄に聞いた方が早いんじゃないかなぁ」


アイツは、そう言って……笑いながらあの回数券を見せつける……私に刺さった短刀を、踏みつけ……より身体を抉りながら……!


「あがああぁあぁぁあぁぁぁぁぁ!」

「ヘブンズドアー……それに覚えがないかって聞いてみてよ。そうしたらすぐ分かるだろうか」


――――その瞬間だった。男の頭が”弾けた”。


「ら……」


血しぶきが走り、頭蓋が穿たれ、派手に転びながら、私から離れて……。

しかもそれとほぼ同時に、あのふとましい人の頭頂部にも弾丸が撃ち込まれる。そこからも鮮血が走り、その身体が派手に崩れ落ちた。


痛みに呻きながら、窓の方を見ると……ヤスフミが、スナイパーライフルを構えていて……。


”このアホが……!”

”ヤス、フミ……”

”すぐ救出するから、ちょっと待ってて!”

”……ごめん”

”油断するな! まだ終わってない!”

”え……”


それを示すように、私の脇から銃声が響く。

それは……ヤスフミが再び放った銃声と重なり、その中間距離で火花を走らせる。


「いたたたたたた……躊躇いなく頭を狙うとか、ほんと容赦ないねぇ」


……嘘、でしょ。


「しかも狙撃で俺の跳弾≪リフレク≫をキャンセルとか。能力はともかく、技術では負けているって? 情けないねぇ」


あの男が、倒れたままヤスフミを撃って……というか、起き上がって。

しかも撃たれて抉れたはずの傷が、まるで回復魔法でもかけたみたいに、すぐに治って……傷が、塞がって!


「……仕方ないでしょう。自分達はしょせんチンピラです」

「お前さん、それでなんでマフィアになっちゃったの」

「自分、不器用なので」


それはあのむきむきマッチョマンも同じだった。揃って立ち上がって、私達から離れていって……。


≪Divine Shooter≫


そこで空からなのはの誘導弾が放たれる。でもあの人達は悠々自適に……それを避ける必要もないと次々受けてる。

だけど揺らがない……魔力ダメージも込みで、ヘッドショットもあるのに。全く揺らがないの!


「くそ……!」


いつの間にか空に上がっていたなのはが……部屋から飛び出し、セットアップしたはやてが、二人の身体に厳重なバインドをかける。

でもそれを、幾重にも絡まった桜色と白色のバインドを、二人は身震い一つで砕いてしまって……!


「なんなのこれ!」

”麻薬だ”


それでヤスフミは、やっぱり答えを知っていた。あの……垂れ目で泣きぼくろの、黒髪な男が言うみたいに。


”ヘブンズドアーは、108が三年前に摘発した新型ドラッグだ。
紙に染み込ませたそれを口にしたが最後、単なる陶酔や幸福感に留まらず、人間の肉体を強化する性質があった”

”肉体を、強化……!?”

”でもそれは火事場の馬鹿力みたいなものだ。あんな……馬鹿げたパワーアップや再生能力なんてあり得ない!”

「ところがあり得るんだなぁ……それを改悪しちゃったから」


念話が聞かれている……!? まさか、何らかの傍受が……ぞっとしていると、男達の前に銀色のカーテンが展開する。

これは、あのボルデント・サムイラも使っていた魔法。でも魔力反応はない……どこかにバックヤードが!?


『だからさ、ちょっと試したくなったんだよ。麻薬と銃、短刀……オレ達はオレ達らしく、魔導師やマスター級を殺せるかってね』

「そんなことの、ために……あの男に……!」

『だからだってー。この世界を支配するようなどでかい男と仲良くしておくのも、マフィアのお・し・ご・と♪』

「…………抜かせぇ!」


そこではやてがブラッディダガーを高所から連射。それがカーテンを幾度も叩いて……でも、全く通じなくて。

……でもそれは目くらましだった。なのははカートリッジをロードし、ディバインバスターの準備を……!


「覚悟せぇ!」

『……はぁ』


それで男は呆れながら、はやてを指差す。銃をわざわざ仕舞って、ただ指差して……。


「アンタ達にはスカリエッティの居場所を」

『ばん!』


――そんなお遊びが走った瞬間だった。

はやての髪が、身体が、光をすかしたような淡い輝きを放つ。


「あ……あぁあぁあぁぁぁああぁぁぁあ……!」

「はやてちゃん、どうしたの!?」

「ああぁあぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ! あいやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


はやては頭を抱え、絶叫し、顔面蒼白になりながら……ついには吐瀉物までまき散らす。

その上で真っ逆さまに……自分から、地面に落下して……頭から打ち付けられた。

……はやては倒れ込み、頭から血を流して……ぴくりとも、動かなくなって。


『ばん!』

「――!」


それは、なのはにも発生した。なのははふらつき、身体を発光させて、もがき苦しんで……!


「これは、なに……なんなの……!」

『あらま、ナノマシンの脳内分泌物操作で、普通に立つことすらできなくなっているのに……さすがは不屈の魔導師。エース・オブ・エースか』

「分泌物、操作……!?」

『そうそう。……ゲームが一方的過ぎてつまらないから、ヒントをあげるよ。
フォーミュラのナノマシンは、治癒能力の向上や体内環境の整備も行う。でもそれは……脳内分泌物をいい方向に操作しているからだ。
つまり逆を言えば、やり方次第では悪い方向に分泌物を出したり、出さなかったりもできるわけ』


じゃあ、やっぱり……ヤスフミが言った通り!? 私達は、ナノマシンのせいで……自分達が選んだ選択のせいで!


『ロビンさん、その辺りで……』

『おっと、そうか……じゃあ、悪いけど中にいる美人さんには謝っておいてよ。
素人さんなのに怖がらせて済まなかったーってね』

『お邪魔しました』


――そして、男達はカーテンに包まれながら消えていく。

後に残ったのは、あの黒い回数券……まるで調べて、対抗しろとでも言わんばかりに。


「――はやてちゃん!」

”動かすな! フェイトの短刀も抜かないように! 傷がかえって広がる!
……リイン、今すぐ協会騎士団の医療班に連絡!”

”はいです!”


私達は、無力だった。

正義を信じる、信じてもらう以前に……無力すぎた。

相手がどれだけ悪辣で、最低でも……その暴力を弾圧できないのが、今の私達だった。


「…………くそぉ…………」


それが悔しくて、情けなくて……。


「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


私は敗者として地べたに這いずりながら、嘆き……ただ叫ぶしかなかった。



魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


新暦七十五年(西暦二〇二〇年)七月三十一日 午後七時二八分

機動六課隊舎・大会議室



そうして嵐のような一日は夜を向かえ、私達は機動六課に戻ってきた。

それで隊舎の会議室に前線メンバーを集めて、改めて……事情説明をして……。


というか、敗戦報告と言うしかなかった。


「――今日襲撃してきたのは二人。ロビン・ナイチンゲールと、ムール・ランドリー。
それは戦闘映像だけじゃなくて、フェイトに突き刺した短刀の指紋からも確認できた」


それでヤスフミも致し方なく六課に戻って……例の、二人の顔写真をスバル達に見せる。


「どちらもアングラ中心で活躍していた、マフィアの重役だよ。それも自ら実戦に出て、人を引っ張っていくタイプのね。
でもどっちも、三年前……ヘブンズドアーの一件で、所属組織は壊滅したはずなんだけど」

「じゃあ、恭文さんや……捜査に関わったギンガさんと108への復讐に」

「アイツらが一度収監されているときに、根こそぎぶっ潰したからねぇ。そりゃあ恨まれもするかも。
あと、例の麻薬……ヘルズドアーも108に持っていって解析を進めているけど、担当が初見で”あり得ない改悪”と言い切るほどだった。
服用すると脳内分泌物の異常活性で、人間の限界を超えた化け物になるわけだ。その身体能力も、攻防能力も……再生能力すらも含めてね」

≪対人用の狙撃弾丸とはいえ、それですからねぇ。脳を潰さないと多分止まらないでしょ≫

≪でもそれが、会議に……遠慮なく乗り込んできたってことは……≫

≪……完全に警告ですね。六課の企みも丸わかりだし、潰すことも簡単だと≫

「なのに、不用意に飛び込む馬鹿三人がいたわけだよ……」


ヤスフミはとても深く……深くため息を吐いて、私を見やる。


「シャッハさんは腹を中心に”消滅”と言って差し支えない傷を負った。再生治療も含めて現在対処中だけど、助かる見込みは三割だそうだよ。
はやても首の骨が折れかけたし、カリムさんは弾丸が頭蓋を掠めて意識不明の重体。
無事だったのは、幸いどこもかしこも急所を外れていたクロノとフェイトくらいだ」

「……私達は、治療魔法でなんとかなったしね……」

「アタシと同じか……。だが、アイツらどんだけ戦力を抱き込んでるんだよ!」


……いや、それ以前の問題として! なんかヴィータが……ヴィータが普通にいる! 普通に会話へ加わってる!

いや、エリオも戻ってきてはいるんだけど! でも怪我の具合はヒドかったはずなのに!


「というか、あの……ヴィータ……!」

「一応許可は取ってるよ。エリオと同じくな」

「ただヴィータちゃん、三週間は戦闘禁止よ? なのはちゃんのお手伝いで、教導スケジュールを組むとか、アドバイスするとか、そういうのならOKだけど」

「……シグナムもアレだし、そこは体調最優先で頑張るよ」

「お願い。だけど……実際にフォーミュラシステムへ干渉してくるなんて……!」

「ある意味最高の身分証明でしたけどね。……しかもヘルズドアーも……フェイト、以前話したよね。
地球では携帯火器の火力が上がった関係で、誰でも相応の戦闘力を得られるようになったって」

「あ、うん。少年兵とかの話……え、ちょっとそれは……!」

「そうなんだよね……ついつい銃器関係だけで考えていたけど、麻薬も立派な”兵器”なんだよ」


ヤスフミはこれも大きな見過ごしだったと、またため息を吐く。


「麻薬を使用したことによる高揚感や身体能力の変化を利用し、危険な作戦で最大成果を挙げる。非合法な戦闘組織がよく使う手だ」

「あの、だったら……私も考えるべきだったことだよ。ヤスフミだけが悪いんじゃない。
……あそこまでいくと、もはやインスタントな人体改造装置だよ。それが非合法組織とかに広まったら……」

「オーバーSクラス魔導師すら脅威にならない、戦闘集団のできあがりだ。
もちろん非殺傷設定の攻撃で効果がなかったのは、今日のことで立証済み」

「……つまり、管理局の理念を否定している。だから彼らも、スカリエッティに与する理由がある。ヤスフミ、倒す手段は」

「殺すこと前提で、戒めを幾つか解けば……ムール・ランドリーに限れば瞬殺できる」


……つまり、スバル達には対処できない。しかもヤスフミが制限を解除してまでなんて……!


≪でも完全に舐め腐っていますねぇ。
おかげで部隊員達のストライキ、相当加熱していたんでしょ?≫

「バックヤードの連中は特にな……。もう逃げている奴らも相当数いる」

「そりゃそうだ。僕だって逃げたくなるし……とにかく連中については中央にも報告済み。
まずは考えを切り替え、その辺りの調査を待つしかない。六課単独で追いかけるのは絶対にやめた方がいい」

「……アタシもそこは賛成だ。なのはとはやてが”このザマ”なら、フェイトだって……スバル達もどこまで対抗できるか」

『――――それも、大丈夫……やから……』


あれ、通信画面が……というか、はやて! 病院のベッドをバッグにして、苦しげに話してるんだけど!


「はやてちゃん! 何しているんですか!」

『大丈夫や……本局のみんなも、ちゃんと手を伸ばしてくれる。そやから、恭文も六課に残るんや。
それでスバル達と一緒に協力して……ちゃんと、チームをやって……』

「……よっと」


ちょ、ヤスフミ!? そこでスピーカーをオフにするのはどうなのかな! はやての声、届いてないんだけど! ガン無視なんだけど!


「アンタ、せめて話くらい聞きなさいよ……!」

「お前らは、頭がおかしくなっているんだよ? だからね、何を言っても信じちゃいけないの」

「ふざけんじゃないわよ! だったら……どうおかしくなっているのか説明してもらおうじゃないのよ!」

「だって、はやてがこの期に及んで信頼できる人間って曰ってるんだよ? それはもう異常だよ」

「どういうことよ!」

「僕も……せめて、ティアさんの気持ちは分かってほしいです!」


うん、そうだよね。エリオの言う通りだよ。だから……何か、がさごそと探らないで? 話に集中して、ほしいなー。


「僕だって嫌です! 恭文さんが友達である部隊長と、諍いを続けるのは!」

「えっと……リイン、例のデータは持ってきているよね」

「バッチリなのですよー」

「話を聞いてくれませんか!?」


ティアナやエリオ達ガン無視で、何かノートとか取り出しているんだけど! ヤスフミ、ちょっと自由すぎないかな!


「というかね、僕は楓さんを送る必要もあるし、頭を下げに行かなきゃいけないのよ」

「誰に下げるの!?」

「346プロだよ。所属タレントを二日ほど連れ回した上、こんな面倒事に巻き込んだもの。
メリルみたいに襲われないとも限らないし、ちょっと手はずを整えておかないと」

「恭文くん、それなら私の自業自得でもあるし、あまり気にしなくても」

「気にしますよ。というか、僕が気にしなくても346プロが気にしますって。
風海さんは……まぁいいや。頭がおかしくなったら、拷問で意識をハッキリさせよう」


義姉に対して容赦がなさすぎる! しかも全く手を止めていないんだけど!


「そういうのはもっと、こう……目覚めのキスとかじゃないかな!」

「ふーちゃん達からも頼まれているんですって」

「風花ー! というかお父さん達ー!」

「それに765プロやダイバーエージェンシーにも顔を出さなきゃいけないし……忙しい忙しい」

「765プロは分かるけど、ダイバーエージェンシー……? ヤスフミ、それって」

≪この人が一時期通っていた声優養成所……そこの運営事務所ですよ≫

『えぇ!?』


声優さん!? え、まさか……例のゆかなさんに近づくため!? まさか……まさかそこまで大好きだったなんてぇ!


「恭文、マジっスか……!」

「いじめやら講師によるパワハラがないかどうか、養成所の方から内偵を依頼されたのよ。
それで別のクラスから移動しましたーって体で入り込んで、週一で演技レッスンを……三か月くらい受けてさ」

「内偵……え、忍者の仕事っスか!?」


かと思っていたら、いろいろ色が変わってきて……。


「実は結構あるんだよ。養成所は珍しいけど、学校とか……会社とかに入り込むって仕事。
SNSの発達で、関係者でも暴力や恐喝事件をなかなか見つけられないからさ」

「ご時世で需要が高まったと……それは厳しいっスねぇ」

「わりと大変だよー。レッスンの課題はちゃんとしないと、クラスの人に迷惑もかかるし……その輪にも上手く溶け込まないと内偵できないし」

「いや、アンタには不向きでしょ! 現に六課には溶け込んでないし!」

「なんでおのれらに……メリルどころかディードという天使すら殺そうとした快楽殺人者どもに、そんな気を使う必要があるのよ」

「…………」


ヤスフミ、堂々と言い切らないで!? ほら、ティアがショックを受けて……ガタガタと打ち震えて! さすがに可哀相だよ!

というか、ディードを天使扱いしないで! 特別扱いしないで! そこだけ守る気構えはおかしいよ!


「え、どんなことするっスか? やっぱりこう、マイク前に立って可愛い感じで演技とか! 歌とか!」

「あ、やった……だから余計に大変だったの。みんな二年くらい養成所に通って、演技の基礎とかある程度認められた人ばかりだからさ。
そんな中で中途に入って、違和感がないようにしなきゃいけないから……もう毎週涙目で資料を勉強して」

「マジっスか! 夢に近づいているじゃないっスか!」

≪……でもあなた、全部女性役だったじゃないですか≫

「あ、外見と声からっスか……」

≪そうなんですよ。男性役がどうも合わなくて……少年役とかもやったんですけどね?
それで試しに女性役をやらせたらピッタリはまって、以来それしかさせてもらえず≫

「しゃらぁぁぁぁぁっぷ!」


なに、その苦労! そんなことまでして内偵しなきゃいけないの!? というかウェンディ、凄いね! この流れで普通に話ができるんだ!


「でもあのときは大変だったよ……内偵をやっていますーとはバラせなかったから、ふーちゃんやお母さんの悲鳴が突き刺さる突き刺さる……」

「というか、私も泣いたよ。ゆかなさんが好きだとは知っていたけど、がちに目指し始めるとは思わなくて……!」

「……まぁ、お近づきになりたいからって本職目指すとか、クレイジーすぎるっスよね」

「というか、恭文さんとゆかなさんって、親子くらい年が離れているんじゃ……」

「くきゅ……」

「下手をすれば孫だよ……!」


それも分かります! だってリンディ母さんより年上ですし! それでも美人だから、凄く驚いたし!


「しかも内偵を進めている最中に、講師の一人が怨恨で殺されてさ! 結局正体をバラして大走査線だよ!
それであれでしょ!? なんか、その養成所の大本の事務所さんとか、所属している声優さんと何人か親しくなって!
というか、入り込んでいたクラスの子とも親しくなって! もちろん女の子だよ!」


え、なにそれ! つまりその……ふ、不純だよ! なんでそんな、近づけるルートを開拓しちゃったの!?

いや、でも……殺人事件を解決したとかなら、ヒーローみたいなものだし!


「というかその子、デビューしたんだっけ!? 真知哉かざね(まちや かざね)ちゃんだっけ!」

「できましたよー。あ、最近某ラノベのヒロイン役で注目されて……本人絶賛修行中ですよ」

「というか、それが縁でちょいちょいガードの依頼も来るって聞いたよ!?」

「防犯指導なんかも請け負っています。お得意先の一つですよ」

≪だから顔を見せる必要もあるんですよ。夏はイベント関係で仕事も増えますからねぇ≫


あ、それは喜ばしいことで……って、そういう話じゃなくて!


「いや、その前に……話が逸れて」

「じゃあ戻そう。……今回のことを部活のディベートゲームとするなら、はやても、クロノさんも、カリムさんも、おのれらも情けなく負けた。
誰一人、潔白を……SAWシステムの疑わしさを払うこともできず、目を伏せて受け入れることしかできなかったからね。
だったらまずそれに対して、きっちり罰ゲームを施すべきだと思わない?」

「……そうね。確かに……えぇ、そうだった。部活メンバーに信じさせたいなら、方法なんて一つだったわ」

「勝った者が正義……だね!
なら、罰ゲームについては私も……発展的にするなら賛成だけど、どうするの?」

「こうするの」


そう言いながらヤスフミは、何か……スケッチブックらしきものを取り出して、中を見せてくる。


「まぁ準備に四か月ほど必要だけど」

「いや、あの……どう見てもアウトな絵は」

「あ、これはラフね?」


それは…………半裸なはやてと母さんが、男の人に囲まれている絵で……!

もう一枚は、これまた半裸なクロノが、なんか……よだれを垂らして、三白眼で顔を赤らめている絵でー!


「十二月にあるミッドのコミックコミュニティ……通称コミコミと地球のコミケで、二人を題材としたR18同人本を出す」

「なんでそうなったぁ!」

「なおはやてとリンディ・ハラオウン提督は出世のため、高官二十名と(ぴー)して……。
その横でクロノさんも男性高官と(ぴー)する本となります。
あ、これは続刊して、クロノさんとリンディ・ハラオウン提督は(ぴぃぃぃぃぃぃぃぃ)って感じに。
カリムさんとシャッハさんもついでだから放り込んで、壊れるくらい(ぴー!)」

「やめろ馬鹿ぁ! つーかそれは名誉毀損だろ! それは完全にアウトだろ!」

「……そんなことを言う権利が、みんなにあったとは知らなかったなぁ」


うわぁ……ヴィータが止めても、完全に脅してきたよ!

認めろと! これを表現の自由的なサムシングで認めろと! それくらいしないと許せないって……もはや殺した方がマシってレベルだよ!


「まぁ大丈夫だよ。さすがに管理局を舞台にするといろいろバレやすいから、一般会社って設定にして、名前も変えておくから」

「何一つ安心できねぇんだよ! 家族として!」

「シャッハさんはハッシャ・エヌラでいいかな。あと会社の名前はクージ統率局」

「もうちょっと力入れて変えてやれよ! アナグラムとかあるだろ!」

「でき上がったら本局やエイミィさん達にも広めるから。
あ、もちろんリンディ・ハラオウン提督にも……聖王教会の主要スタッフにもね?」

「最悪のテロもやめろ! 当人けが人なんだぞ! こんな状況で出したら、とんだ恋愛トラブルだと思われるだろ!」

「あ、ヴィータはほら、例の教え子彼氏さんがいるよね。なので一切登場なしにしたから。そこも安心して」

「それはありがとな! でもよ、その気づかいの上で狂気的な祭りが繰り広げられようとしてるんだよ! やっぱり何一つ安心できねぇんだよ!」


そうだよねー! さすがに……しかも地球でも発売するって! とんだ名誉毀損になりそうなんだけど、大丈夫なの!?


「いやいや……待って待って待って待って! それを漫画にして、売れるの!? 売り出せるの!?」

「あ、おのれらは今回平社員ということでモブ的に出てもらうから。でも次作でスピンオフ的にばーんと」

「計画を練るな馬鹿ぁ! というかこの世界のどこに、こんなおぞましい計画に協力する奴がいるっていうのよ!
いたとしたらソイツ、スカリエッティより凶悪でしょ!」


ヤスフミは荒ぶるティアナにふっと笑って、両手をぱんぱんと二回叩く。


「……シャーリー」

「はーい」

『い!?』

≪はい、紹介しますね。スカリエッティより凶悪なシャーリーさんです≫

「いぇーい♪」


ちょ、シャーリー……どこから出てきたの!? ヤスフミが呼びかけただけで、にょきっと机の影から生えてきたんだけど!


『あーははははははは! みんな、ちょっとだけ久しぶりだね!』

『……って、魅音(さん・ちゃん)!?』


更に通信画面で魅音ちゃんまでー! なんで!? どうして!? どうして魅音ちゃんが!?


「で、計画だけど……私が密かに打ち立てた同人サークル≪NTR同好会≫にて販売すれば、各主要世界にもこの本は広まるよ。そこは心配しなくていい」

「しかもなんつう名前のサークルを作ってんだよ、てめぇ!」

『地球ではこのわたし、園崎魅音が会長を務めるサークル雛見沢で配布するよ! こちらも問題なっしんぐ!』

「え、待って! 魅音ちゃん、同人サークルを作っていたの!? あの雛見沢で!?」

『最近はネットとかいろいろあるからねー。上手くやらせてもらっているよ』


ふぇー! 魅音ちゃんも作家だったんだ! しかもなんだか腕利きっぽいし! 凄い胸を張っているし!


『やすっち、シャーリー、時間がないからリモートワークで上手く調整していこう。事件対処にミスって地獄に落ちないでよー?』

「失礼な。僕が行くのは天国に決まっているでしょ。……まだまだ予定はないけどね」

「私も同じく!」


え、どうしてシャーリーは……面識はあるかー! 合コン絡みで、シャーリーも雛見沢にきていたもの! 有休も使ったし!


「あの、ねとられ……ってなんっスか」

「ボクも聞き覚えが……」

「簡単に言うと(ぴーぴーぴー)って感じ」

「「い……!?」」

「それを、シャーリーさんは……好みだと……? 同好会を、作っていらっしゃると……!?」


あの、ディード……ごめん。救いを求めるように見られても、私にはなにも言えない! だって初めて聞いたもの!


「でもなぎ君、協力する代わり、エイミィさんも登場する(ぴーぴーぴー)な番外編も描くから! 本編の後数ページでいいから!」

「シャーリー、乗り気にならないで!? それはあの、ハラオウンの末妹として……駄目だよ! えっちぃよー!」

「いいじゃないですか! だって好きなんですから!」

「シャーリー!」

『そうだね! そういう気持ちが同人には必要だよ!』

「魅音ちゃんー!」


盛り上がらないで! 意気投合しないでー! ああああ……圭一君も毎日、こんな思いをしているのかな! お父さん達が作家だって言っていたし!


「……なんて歪んだ性癖を、私達の前で暴露してくれているんですか……! ちびっ子達もいるのに」

「ティアさん、大丈夫ですよ。自然界ではよくあること」

「そんなわけないでしょうがぁ! というかアンタは一体何を見てきたのよ!」

「キャロがまた達観してる……!」

「どうかな……これなら、笑って許せそうじゃない?」


ティアナが涙目でキャロにツッコむ中、ヤスフミはぼう然とするギンガに笑いかける。

それに対してギンガの返答は……。


「……これ、本当にお仕置きになるの?」


疑問を持っている!? これじゃあ足りないと! あり得ないと! マズい、ギンガ、本当に怒り狂っている!


「そこは安心して。それに……焼肉も奢るよ?」

「え……?」

「売り上げ、結構いいところまでいくと思うんだよねー。だから、奢るよ? 上カルビ……タン塩、ザブトン」

「……八神部隊長、お互い憎み合う道は捨てて……赦しを与えていきましょう。本が出た上での話、ですけど」

「ギン姉!?」


ギンガが買収された! 安心した矢先に買収された! さすがにどうかと思っていたのに、肉で買収された! それもとてもいい笑顔になってぇ!


「恭文くん、さすがに……倫理的にどうかと思うわよ?」

「大丈夫ですよ。この狸だって、リアル題材でいろいろ描いてくれてたんですから」

「それもそうだね。うん、なのはも許すからやっちゃっていいよー」

「「「はーい」」」

「なのはちゃん……え、いいの? これで本当に」

「一向に構いません!」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』


というか、これでいいの!? 本当にいいの!? さすがにあり得なくないかなぁ!


「あ、シャマルさんも出演予定だよー。よかったですね、結婚式が上げ放題で」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! どうしてぇ! 私は恭文くんの秘書なのにぃ! せ、せめて純愛路線とかで!」

『あ、そっちはレナと羽入が相手役でやる予定だから、アンタの出番はないよ』

「がふぅ!」

「え、待って……なのは、ちょっと引っかかったんだけど。それはレナちゃん達も」

『承知しているよ。我が部活に泥を塗ってくれた狸に、キツいお仕置きを据えるためならーってね』

「……ふぇ……」


話が伝わっているんだ……! あぁ、でもツッコめない! だって、ツッコんだら掘り下げて、問題になってー!

しかもこの場合罰ゲーム!? いや、今履行されているのか! 一応でも支部メンバーなのに、情けない姿を見せたから! というかそこが主軸なんだ!



「さて……はやての様子はと」


そこで音声を戻すの!? はやて、画面を見るだけでも相当おののいているのに!


『あ、ああぁあぁ……あぁああぁぁぁ…………!』

「はやてちゃん、しっかりしてくださいー! 怪我に触りますから!」


やっぱり混乱していたー! 話ガン無視にされた上で、そんな計画を立てられたら……それはね!?


「あの、なのはさん……これは本当に」

「……スバルにもきっと分かるよ。
自分がドMで、強烈SMプレイをしている絵を……そんな本を見せられたら」

「ガチでやらかしていたんですか!? さすがに冗談の類いだと思ってたのに!」

『そ、それは……あくまでもモチーフで! そのものを描いていたわけではなくてぇ!』

「モチーフでもアウトですよ!」


スバル、それでも今回は問題ないみたいだよ……少なくともなのはは笑顔だもの! とてもいい笑顔だもの!


「ちなみに、コイツのデスクと私室、更に端末のデータをガサ入れした結果……おのれらの分も出てきたよ」

『え!?』

「まだプロットだけどね」

『ちょ、待った! なんでそんなことしとるんよ! というかいつの間に!』

「ギンガがシャマルに治療されて、隠し芸を封印している間になのですよ」

『リイン、アンタかぁ!』

「伊達に部隊長のお付きはしていないのですー♪」


お、恐ろしすぎる……平然と部隊長の部屋やデスクを調べるって!

でも家族同伴だから言い訳されるし! お仕置きだって言い訳されちゃうしぃ!


「というか、感謝してほしいなぁ……。ストライキについては”これ”を交渉材料にして、上手く止めたんだから」

『へ!?』

「僕はねぇ、弱い人達を勝手に巻き込まないの。おのれらと違ってね」

「そうなのですよ。感謝するのです」

「え、そうなの!? そうなの!? ……シャーリー!」

「だから私も趣味に走っているんですよ。
しかも主導で描くのが、部隊長とそれはもうどっぷりななぎ君ですし」

「ふぇー!?」


なにそれ! 模写みたいなのを期待されているってこと!? でもだめだよ! 変態だよ!


「というか二人揃って、そのためにはやてちゃんの私室まで漁ったんだよね……!」

「「もちろん」」

「堂々と認めないでくれるかな! OKを出したなのはが言うのもあれだけど!
……ちなみに、どこに隠していたのかな。部隊長室はデスクだって分かるけど」

「自室はタンスの右側二段目。下着入れになっていたんだけど、全部フェイク」

「フェイク!?」

「明らかにはやてのサイズとは違うものが入っていたからねぇ。更に箱には工作の跡もあった。通常サーチでは中が探れないようなコーティング加工も含めてね」


恐ろしいよ! だとしても恐ろしいよ! そう見抜ける程度には漁ったの!?

しかも迷いや恥じる感情が一切ないんだけど!


「しかもその底が二重底になっていてね……開ける手順を間違えると、石灰が発火して本ごと燃える仕組みだ」

「デスノートなの!?」

「まぁ見つけられたら、本人が社会的に死ぬって意味ではそうだね」


その解釈、回りくどいと思うんだけど! というか、それを分かっていながらこの場で出す時点で、殺意度が高すぎてどん引きだよ!


『ま、マジか……マジなんか! あの仕掛けを解除できたんか! どうやって!』

「しかも当人否定すらしないし! そんな馬鹿なと殺人トリックを暴かれた犯人みたいにおののいてるし!」

「それで主立ったものだと……」


……って、何か始まってる! ヤスフミがノートとかメモ用紙を取り出して、ぺらぺら確認してる!


『ちょ、それ……うちのネタノート! マジモンやんかぁ!
しかも保存していたラフまでー! パスワードまでなんで分かったんよ!』

「ヤスフミ、少し落ち着こう!? さすがにやり過ぎじゃ」

「まずスバルとティアナが恋愛関係で、毎夜毎夜同室なのをいいことに愛し合う百合本」

「「い!?」」

「続編構想としては、その関係を知られて男性部隊員も加わる陵辱ものがいいかーって書いているね。
ただあえて純愛にして、最終的に三人でハーレムというのもありか……それとも穢されながらも百合を貫くのがいいか……相当悩んでいるなぁ」

「八神、部隊長……!?」

「ティア、落ち着いて! あるある……訓練校でもそういう噂とか、よくあったでしょ!? ステイステイステイ!」

『あったの!?』


あぁ、でもちょっと分かるかも! 私となのはもそういう、女の子同士で恋愛ーって感じに見られたことがあるし!

でも、そういうのないよ!? いや、同性愛を否定するわけじゃなくて、少なくとも私達は違うから! それもそれぞれの内だから!


「ちなみにその男性を部隊員ではなくて、僕に宛がうって案もあるよ?
あとはギンガさんも交えてハーレムプレイ」

「部隊長……あなた、うちの妹とティアをどういう目で見ていたんですか……!」

「冗談じゃないわよ! アンタとは一緒にお風呂をするだけの風呂フレで、そういう関係じゃないのよ!」

「だから落ち着いてー! 風呂フレはさすがに意味分からない! それはもうセックスフレンドと同意義だよ!」

「……それ、ちょっと詳しく聞きたいわね。いや、リインちゃんから聞いてはいたんだけど。
やっぱり恭文くん、大きい子が好きなのかしら。でも私は身長が……それじゃあ駄目?」

「あ、楓さん……ちょっと力強い。痛い痛い……今は痛い」


ヤスフミ、そこで怯えるのはおかしいよ! 明らかに違法なガサ入れをしているんだよ!? 楓さんに腕を捕まれたくらいで辛くなるとか!


『あ、やすっちは大きいの大好きだよ? おじさんや詩音の胸も奇麗だなーって滅茶苦茶見ていたし』

「それは……だって本当に奇麗だし。魂がよく現れている奇麗なオパーイだ」

「アンタも平然と返すな……! しかも彼氏持ちなのよ!?」

『あはははは! 気にしないってー! やすっち、最初からこんな感じだったしさ!
……それよりほら、他のデータは? もっとないかなー』

「あとは……僕は混じるけど、その合間合間に三人には百合プレイをさせたら栄えるだろうなーとも書いているよ」

「恭文も冷静に読み上げないでぇ! 殺意が大量生産されるだけだからぁ! 部隊長、明日の朝日を見られなくなっちゃうからぁ!」

「豆柴ェ……だからやってるんでしょうが」

「最悪すぎるよ!」


これはマズい……現にギンガは拳をバキバキならしているし、ティアナも混乱しているし!

うん、ここは私が……婚約者としてしっかりしないと。


「ヤスフミ、その辺りで……後はシャマルさん達に任せて家族会議に」

「エリオがフェイトにより、エッチを教えられる筆下ろしものとかもあるけど」

「ふぇ!?」

「はぁ!?」


ちょ、エリオと……駄目ー! エリオはまだ子どもなんだよ!? それに私だって経験ないし!

でもそれを、それを想像して……!?


「…………はやて……」

「フェイト、早い……まだ早い。ステイだよ?」

「ステイ!?」

「その続編構想もある」

「これも!?」

「これも。
……そのあとシャーリーやエイミィさん、リンディ・ハラオウン提督と身近な女性をエリオは落としていく。
その後ハーレムでエッチしているところをクロノさんに見られるけど、既にみんな自分のものだと勝ち誇り、みんなを悦ばせるエリオ……アリだなと」

「なしですよ! というか部隊長、僕達を見てそんなこと考えていたんですか!」


あはははは、あはははははははは…………本当に、最悪な方向に発展したよ!


「あ、それともう一つは……これもシャーリーが好きそうなやつだなぁ。
実はフェイトは僕なりクロノさんと付き合っていて、結果的にエリオの目の前で組んずほぐれつ。
エリオより僕達の方がいいと言いながら乱れるフェイト。それを見ながら泣き崩れ、それでもなお興奮を覚えるエリオ……第三部完」

「それはラブラブで上げておいて、地獄にたたき落とすいいシチュエーションだよ! 私は買うよ、その本!」

「シャーリーさんも食いつかないでください! というか鼻息……鼻息ぃ!」

「…………はやてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

『いや、それは……構想! 構想だけで……妄想だけでぇ! 新作の足がかりにしたかっただけでぇ!』

「「完全にアウトォ!」」


さすがに宥める気持ちも消え失せたよ! まさか、まさか……本気でやらかすとかぁ!

というかエリオやクロノも駄目ぇ! あの、ヤスフミとなら……まだ考えるけど。


「フェイトが散々吹聴していたスカリエッティとのアバンチュールも、ありかもしれないって練っているね」


なのに、ちょっとほわほわした頭が急に冷たいもので締め付けられた。


『いや、それは捜査官もので! アバンチュールしたら実は犯人でーみたいな落ちで!
決してフェイトちゃんをガチにカップリングさせたかったわけではぁ!』

「…………ねぇみんな、はやてって殺しても罪にならなかったよね」

「フェイト、おのれも正義が分かってきたね。やってきていいよー」

『ステイステイステイ!』

「だから……私はバージンなの! はやてやなのはと同じくバージンなの!
それに今は、婚約者のヤスフミがいるんだから! そういうのなら、ヤスフミとだけなの!」

「だから! なのは達を巻き込むなって言ったよね! 混乱するのは分かるけど落ち着いてよ!」

「落ち着けないよぉ!」


前にも叱ったのに! 前にも駄目だって言ったのにぃ! 更に悪化するってどういうことなの!?

分からない! 同人作家の人達が分からない! というか、圭一君もこんな気持ちを味わっているのかな! だったら大変だよー!


「……あの恭文さん、私はないんですか」

「くきゅー」

「「キャロ!?」」

「私らはないっスか!?」

「「ウェンディ(さん)!?」」


ちょっと二人とも、そこでどうしてツッコんじゃうの!? 立候補しちゃうの!? というかおののかないの!? この状況に!


「まずキャロはね……あー、スバルとティアナも交えたハーレムプレイ構想があるよ。
相手はエリオか僕のどっちがいいかーって迷っているけど」

「そんなのないです! スバルさんとティアさんに並んだら、私……負けちゃうじゃないですか!」

「あとはフェイトと一緒とか。疑似親子丼だね」

「ふぇ!? あの、親子丼って……まさか」

『創作界で使う用語の一つだね。恋人と、そのお母さん……または子どもも交えて、一緒にエッチなことをするの』

「ふぇー!?」


勉強したとおりだったー! まさか、まさかと思っていたのにー!


「エリオ達の前で、なんつう用語を説明してんだよ……! つーかはやてぇ!」

『そこはうちのせいちゃうやろ!』


つまりあの、えっと……あの……冷静に、考えて……ちょっと、聞いてみる……!


「じゃあ、例えば……ヤスフミと、私と……リンディ母さんが、一緒にエッチするとか……。
あの、魅音ちゃんや詩音ちゃんが、お母さんと一緒にするとか……それで、合ってる!? そう勉強したんだけど!」

『あー、うん。そういう感じでOK』

「OKじゃねぇよ! てめぇもなに聞いてんだよ! 興味津々か!」

「そういうのはアリなの!?」

『フェイトさん、同人にはいろんな表現があるんだよ……』

「ふぇー!」

「だったら私、フェイトさんと一緒も嫌です!」


キャロ、やめてぇ! その拒絶はやめてぇ! 字面だけ見ると反抗期がきたみたいで辛いのー!


「アンタ、その前に年齢を考えなさいよ……!」

「そうだよ! さすがに犯罪だよ! それは止めるしかないよ! いや、エリオもだけど!」

「というかそれなら、一対一がいいです。それならまだ……」

「キャロ、落ち着いて!? というかあの、誰と!? 誰となの!?」

「えっと、それは……」


キャロが、そこでちらちら見るのは…………ヤスフミで…………!


『あらら……やすっち、いつフラグを立てたのー』

「いつかです。……言ってくれましたよね。私が素敵なレディになったら、実地で教えてくれるって。……私の胸が素敵かどうか」

「あ、はい」

「恭文くん、言ったの?」

「言質は取っています」

「取られました……」


キャロが、いつの間にか大人に……! というかあれ、本当に言質を取って、待つ覚悟なの!?

でもどうして!? なんで!? キッカケはなにぃ!


「でもあの、さすがに……十才児にそういうことを言うのもどうかと思って、それでうまーくジョークですり抜けた感じなんですがー!」

「言質は、取っています」

「………………はい」

「素敵なレディになるので、待っていてください」

「………………はい」

「楓さんも、そのときはよろしくお願いします」

「……そうね。これは恭文くんがちゃんとしないと」

「………………はい」


話が纏まっちゃったよ……! 私を差し置いて纏まっちゃったよ! というかこれは親子丼!? 親子丼なのかなぁ!


「アンタ、本当に自重しなさいよ……! リインさんにも言えることだけど」

「そうです! そのリインについてが一切なかったのですよ!? 一体全体どういうことなのですか!」

「……いや、年齢を考えた方がいいと思うっスよ? さすがに引くっス」

「全員十八歳以上ですーって注約すれば問題ないのですよ!」

「マジっスか!」

「実はそうなんだよ……このネタノートにも注約を上手く使う秘訣をいろいろ書き込んでいる」

「完全に犯罪計画書っスね……!」


ウェンディの言う通りだった。もはや計画書……デスノートだよ。

まさかこんなものを用意しながら、私達に協力を頼んでいたなんて……! 三提督のことよりかちんとくるよ!


「あとは……あー、ヴァイスさんとティアナとか」

「なんでよ! ヴァイス陸曹はなんの関係もないじゃない!」

「ヴィータと彼氏さんはこんな感じかなーってのもあるし、ルキノさんとグリフィスさんというのもある」

「アタシとアイツにも手を出してやがった……って、ちょっと待て! ルキノとグリフィスってそうなのか!?」

「ルキノさんが片思い中って感じみたいだねぇ。まぁ密やかに進んでいるよ」

「それを同人誌のネタにするとか、悪魔の所業じゃねぇか!」


いや、その前にヤスフミはどうして知っているの!? 隊舎にもひと月いなかったのに! いつ察知できる要素が!?


「あ、なのはとトオル課長のもあったよ。ただ合コンがあの結果に終わったので、しばらくおのれのネタは思いつかないと結論づけられているけど」

「へぇ……へぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! それは知らなかったなぁ! なのは、そんな見切られ方をしていたんだぁ!」

「……横馬、それは逆ギレだって」

「ここまでされておいて!?」

「僕もこのクソ狸を庇いたくはないけど……あのときのおのれは! こう言われる程度にはヒドかったんだよ! そこは自覚してよ!」


なのは、ヤスフミも落ち着いてぇ! あの、合コンで大失敗して傷なのは知っているけど!

夜寝ているとき、魘されながらドジョウすくいがなんとか言っているのは知っているけど!

でも落ち着こう!? お願いだから落ち着こう!? 怖いの! 今すぐ全力砲撃撃ちそうで、本当に怖いの!


「あ、それと男性同士のカップリングもあるよ。僕とエリオとか、ヴァイスさんとか、グリフィスさんとか」

「どこまで手を出しているんですか!」

「どこまでもだよ、エリオ。現にふーちゃんと歌織、風海さん、楓さん……それにレナ達やすずかさん、美由希さん総出演のハーレムものも」

「それはもはやドキュメントじゃないですか!」

『あはははははははははは! エリオ、そのツッコミ最高! ツボに入った……とも言えないか。
楓さんってあの346プロ所属のタレントさんでしょ? 肖像権は大丈夫なのかねぇ』

「そうね……さすがに漫画化は想定外だし、ちょっと相談してみないと」


楓さん、駄目です! それは多分黙っていた方がいいやつです! 私、詳しくないけど分かります!


「あ、当然ながらカリムさんとシャッハさんもあるよ。
特にシャッハさんはオパーイが控えめなので、その辺りを気にする描写が可愛いのではーと……その前に腹から食物が漏れる隠し芸だろうに」

「その前に命の心配だろうが! つーかそこまで手を伸ばしていたのかよ!」

「クロノさんとの不倫物がありって描いているよ。ヴェロッサさんとの禁断の愛もある。
あと、僕の前で二人と組んずほぐれつさせて、それを慰める自分とかアリなのではないかとも書いているね。
なのでこのアイディアはそのまま使わせてもらおうと思います」

「使うのかよ!」


ヤスフミ、それはやめてあげようよ! ほら、騎士カリムも怪我しているし! こんなの見たら悪化するよ!


「でね、そんな大人の事情が絡みそうもないウェンディ達も……みんなに比べたら少ないけど、アイディアはあるみたいだよー」

「やっぱりっスか!」

「……ボクも、前々から察していました。
時折部隊長の視線が、鋭くなるので」

「そういうときに限って、何かメモをしておられますし……えぇ」


そうだったんだ! でもそれは私達に言ってほしかったよ! パワハラになりそうだし!


「とはいえ、大体が僕と仲良くする感じだね。
それで双子のオットーとディードは濃厚に絡ませたいと、被疑者は記録している」

『誰が被疑者やぁ!』

「はやてちゃんだからね! もう言い訳ができないくらい真っ黒だよ!」

「そうだよ! パワハラだよ!? これ、パワハラで訴えられるよ!?」

「……つーわけではやては、治療が落ち着いたら家族会議な? あとこのお仕置きについてはアタシらも全面協力を決めたから」

「なら私達もです、ヴィータ副隊長! ……恭文、資料が必要ならいつでも言って!
協力するのが、私達の罰ゲームってことでどうか!」

「ありがと」

『なんでやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』


こうしてはやてへのお仕置きは、自業自得ということが決定した……あれ、でも何か忘れているような。

……まぁいいか。


「でもなぎ君、クロノ提督とエイミィさんは私でなんとかするとして……八神部隊長はどうするの? え、やっぱりオフィスラブの経験を生かして」

「それすらなかったんだよねぇ。でもみんな、なんか期待しちゃってるんでしょ?」

「私やヴァイス陸曹が煽っちゃったからなー」


シャーリー、何やっているの!? それを煽るってまともな局員のやることじゃないよ! むしろテロだよ!


「八神部隊長にヌードモデルを頼むって手もあるけど、けが人になっちゃったし……ひと月は動かせないんだっけ?」

「頭と首をやっちゃっているからね。それまで……は、そうか! 僕が課長として頑張るコースもあるんだ! それなら残ってもいいよ!」

「悪い、それだけは絶対遠慮させてくれ……!」

「なのはもだよ! どうか、どうかそれだけはー!」

「ちぇー」


とても残念そうにしている……!? こ、怖い! というかシグナム…………まだ昏睡状態だったぁ!

だからみんな、押さえが効いていないのかな! そうなのかな!


≪でもNTR同好会でも出すなら……あ、はやてさんとクロノさんが不倫関係ってことにしましょうよ。
で、それを上司達への乱れた接待で引き裂かれて……≫

「「それだ!」」

「だからなんでこんなにノリがいいのよぉ!」

「まぁまぁティア……これは仕方ないって」


――――なお、この同人本は……コミコミ? そこで結構な売り上げを叩き出して、ヤスフミとシャーリー、魅音ちゃんはウハウハ。

それもギンガに焼肉を奢ってもまだ有り余るくらい儲けて、売れ続けて……確定申告とかちょっと大変になるとは、このときの私達はまだ知らなかった。


まぁ……今回のこととは、全く関係がないんだけどね!


「でもほんと、最初からハッキリ、お前達を道具扱いするから覚悟しろーって言ってやればまだよかったのに……そうしたらお互い後腐れなく一致団結できた」

「それをハッキリ言うのは最悪だと思いますよ!?
というか、まさかとは思うけど……それを正直とか考えていませんよね!」

「エリオ……僕、最初に言わなかった? おのれらは猟犬だって」

「そうだったぁ! この人、初っぱなからそんなボールを投げてくる人だったぁ!」

「ヤスフミ、お願いだからそれはやめて!? 完全に頭がおかしい人の理論だから!」

「フェイトさん……いえ、大丈夫です。同人誌で……ザブトン、食べ放題……食べ放題……!」

「ギンガも落ち着いて!? ザブトンって食べ放題にする部位じゃないから! 希少部位のはずだから!」


ギンガ、本当に駄目だよ!? あとよだれ……凄いよだれ出ているよ! 女の子としてアウトだからぁ1

ほら、ティアナやスバルも呆気に取られているし!


「ギン姉……あの」

「さすがに、スバルとこう……大人のコミュニケーションとか、あり得ないからね……!?」

「あ、はい」

「なにより」


そこで……ギンガは悲しげに失笑。


「特上カルビを食べる前に、みんなを許せって話かな……それは」

「…………そ、そういうことに……なって、しまいますが……!」

「無理だよ、ティア……それは、もう無理なんだよ」

「ギン姉……その、いろいろと台なし……!」


それでギンガもやっていられないと髪をかき上げ、テーブルを叩いて立ち上がる。


「ごめん、もう行くよ」

「ギン姉!」

「焼き肉屋、閉まらないうちに入りたいし……」

「早速行くつもりなの!?」

「なら僕も行くよ。
……天使ディードを道具扱いする人でなしとなんて、同じ空気を吸えないし」

「私も部屋に戻って準備しないと!」

『おじさんもリモートワーク頑張らないと!』

「私も……久々にガッツリ、いっちゃおうかしら」

「恭文君はディードへの認識がおかしいからね!? もちろんシャーリーもだけどさ!
いや、ちょっと待ってー! 楓さんもストップー!」


なのはが声をかけるも、無意味だった。


「はやて、代金はおのれとクロノさんにツケとくから頼むねー」

『へ……!?』

「ギンガさん、早速ザブトン食べ放題だよー」

「楽しみだね!」

『ちょ、ちょお待ってぇ! それはさすがにー!』


三人はそそくさと会議室から出ていって……。


「……どうしましょう。私……天使ではないのですが」

「……ディード、そこは気にしなくていいっスよ」

「ボクも同感……。でもこれ、完全にペースを捕まれたね」

「恭文お得意の扇動で、一気呵成に状況掌握。恐ろしいっス……!」


それで、後に残された私達は、何も……これ以上何も言えない。


――第41話


これが……私達の積み重ねた、夢の成果だった。


『勝利者などいない/PART3』


(第42話へ続く)



あとがき


恭文「というわけで、今後の六課にいろいろなプレッシャーをかけた会議も無事に終了。
そして……会議の場でも出さなかったネタで、更にはやてにはプレッシャー。いやぁ、これこそがハートフルエピソード」

あむ「どこが!? ただの絨毯爆撃じゃん!」

恭文「あむ……力こそパワーなんだよ?」

あむ「その物理最強節はストップ!」


(物理こそ最強)


あむ「作者までアホだし! ……でも、未来視とか……予測ってそんなに」

恭文「時間の法則はやっぱり面倒臭いってことだ。
まぁそれはさて置き……サタニクスガンダムのアーマーとウェポンが発売だよ。
あと30MMでもエグザビークルが出てくるし」

あむ「ラビオットの新色も出るし、また一気にって感じだよね。で、来週が……BEYONDのナナハチか。
なんかそれが出る直前に、ナナハチはまた凄いのが出るって発表されたけど」

恭文「エントリーグレードだね。こちらのRX-78-02はゼロワンなどと違って稼働。
30MMの技術も入り、色分けもほぼほぼ完璧。合わせ目も問題なしな仕様とか」


(まぁ合わせ目は画像を見る限りになりますが)


恭文「しかも七百七十円だからねぇ……。作るのも簡単で、手もぎでも問題ないタッチゲート方式で、しかも色分けもバッチリ。
価格も低価格だから、改造とかで失敗して壊れてもリカバリーしやすい。初心者用としては完璧に近い答えを、公式がダイレクトアタックでぶつけてきたよ」

あむ「アタシも驚いた……! Verカトキのウィングゼロ(EW)より驚いた。
……でもいくら四十周年だからって、RX-78出過ぎじゃん! それも三体!」

恭文「七月にはシャア専用ザクのReviveも控えているよ」

あむ「そうだった!」

恭文「というかあむ、今年もまだ半分なんだよ? それなのにウィンダムとかウォドムやらで盛り上がって……年末とかどうなるのか」

あむ「あぁ、ハサウェイの公開もあるしね」

恭文「その前にRe:RISEの完結が望まれるところだけど……まぁ再開も気長に待とうか」


(まだまだ少しずつ、油断なく日常が戻るのを待ちましょう。
本日のED:ぬゆり『フィクサー』)


恭文「さて、ヤバい新キャラや新要素も出たので、ここで一旦話は過去編に……その辺りをちょろっと描く二話構成のお話になります。
まぁそちらはまた隙間話として楽しんでもらうとして……本日(5/31)は望月杏奈の誕生日! おめでとうー!」

杏奈「ん……やっぱり、恭文さんとぎゅーっとしてると……温かくて、ドキドキして、杏奈……駄目になる……」(ぎゅー)

恭文「……まぁ、全く……離れてくれないんだけど……」

古鉄≪コロナ絡みでしばらく会えませんでしたからねぇ。今日も一応、いろいろ気をつけた上で濃密接触ですし≫

恭文「非常事態宣言、多少緩やかになったしね……」

杏奈「杏奈、駄目になるの……駄目……かなぁ……。
アイドルだから……みんなの、アイドルだから……」

恭文「……そんなことないよ。まぁプロデューサーというファン一号としては、杏奈の夢も大事にしたいから……いろいろ考えちゃうけど」

杏奈「ん……なら、杏奈……夢も、駄目になるのも……大事に……するね……」(ぎゅーぎゅぎゅぎゅー)

サラ・マルル「……ここは、譲る感じで……」

りま「そうね。相当寂しがっていたみたいだし……」

アブソル「私達はクールに去るのでした」

ラルトス「でも、明日は……ラルトス達と、だよ?」


(おしまい)



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あきゅろす。
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