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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
その21.5 『断章2017/忘我の中に修行あり』




魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

その21.5 『断章2017/忘我の中に修行あり』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


蒼凪の奴、そこまで徹底してボコったのかよ……!

というか、弟子としての左も全否定か。だがそこで……超人Wのコンビが生まれたわけか。


「一応会長には提案したんですけどねぇ。今すぐコイツの首を跳ねようと……でもなぜか却下されて」


……まぁそれを台なしにしかけたのが、蒼凪だけどなぁ! コイツ本気で殺すつもりだったのかよ!


「当たり前だよ馬鹿! それほんとに私刑だよね!」

「めーさま、違います。士道不覚悟による斬首です」

「その新撰組っぽいの、ちょいまったぁ!」

「信念を貫けなかった以上、生きていても、死んでいても惨めなものですよ。ならば引導を渡してやるのが優しさです」

「そんな優しさ聞いたことないよ!」


駄目だ! コイツ本気で分かっていない! ガチで武士として信念を貫く構えなのか! ヤバいな!


「それにコイツ、このときは戦略的価値もないので……首切りした方がずっと役立つんです。
ほら、突然生首が投げ込まれたら、みんな驚くでしょ? 隙ができるでしょ? だから殺せるでしょ?」

「落ち着こうか!」

「もちろん鳴海荘吉も更に追い込めるし、一石二丁です」

「冷静にそのプランを立てるのはヤバいの!」

「安心してください。残った胴体はゴーレム操作で操り、鳴海荘吉をボコるのに利用します」

「完全に悪党がやることじゃん!」

「もちろんメリッサさんが雌豚扱いで犯されている音声も聞かせまくります。どうせ娘のものと聞き分けはつかないでしょうし」

「地獄なの!?」

「あうああぁああぁああぁああ……!」


そして左は絶望して頭を抱えているよ! そりゃそうだな! 恐怖体験でしかないよな! 真っ直ぐ死を迫るモンスターだもんな!

現にそのモンスター、雨宮が声を上げても、全く通じていないからな!


「というかその音声聞かせるの、アウトだよね!」

「まぁまぁ雨宮さん……僕の拳には愛がこもっているんです。その愛が二人を正すと信じてください」

「そのブーメランは信じられないよ! 絶対恨まれて仕返しされるやつだよ!?」

「だったら殺すしかありません。そうして死の瞬間だけでも人に戻すんです」

「ブーメラン乱舞も禁止−!」

「でもほら、自分が街を泣かせる怪物になったのなら、自分自身もきちんと裁けなきゃ嘘ですし」


蒼凪、言いきるなよ! というか雨宮相手でも揺らぎなしか! 怖すぎるだろ!


「……よし、分かった! じゃああれバラすわ!
蒼凪くんがあたしに付き添って、お花摘みに行ったお話! というか君があたしのお花摘みを想像した話!」

「ちょ……それは駄目ぇ!」

「お花摘み? え、なに……雨宮ちゃん、やっちゃんとそんなファンシーなデートしているのかよ!」

「あ、トイレです」

「デートとして最悪だろ!」

「でも、蒼凪くんは想像したんですよー?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そう、それは3rdライブの一日目……そのリハ中。

ここで簡単に解説。会場でのリハーサルってのは、音響とか楽曲、衣装変更なども含めて、実際に、本番通りにやることが中心。

それまで練習していたものを現場の環境とかにすり合わせて、不具合があるなら修正して、よりよいものを目指すって感じ。


ただそれも当日にやるとか、スケジュールが割とタイト。あのときみたいに、泊まり込みでってことは……じつはあんまりなかったんだけど。


『……すみません! 音響のセッティングが入るので、十五分ほど休憩ですー! 休憩後は夏川さん、伊藤さんの出番から始めます−!』

『『はい! よろしくお願いします!』』


そんな中……蒼凪くんが目を覚ましてから、急ピッチで完全修復した舞台上で、軽く汗を払う。

いやー、前日リハできなかったから、実はちょっと緊張していたんだよね。今回はいちさんもが崩れ落ちたりで大変なところもあったから。

だけど……うん、大丈夫。昨日見たあの輝きを思い出したら……頑張らなきゃって着合いも入るから。


……っと、ヤバいな。それだけじゃなくて……ちょっと震えが。


「えっと、あたし……ちょっとお花摘みに、行ってくるので」

「あ、うん。行ってらっしゃいー」


衣装のままだけど、少し失礼して……あとは汚さないように注意しつつ、見送ってくれるまいさんには手を振る。

それで袖から廊下に出て、そのまま……というところで、ひょこひょことあたしに付いてくる影。


「蒼凪くん?」

「一緒に行きます」

「大丈夫だよ? 道なら分かるし」

「昨日の今日ですから」


うぅ……お仕事モードできっちりしているなぁ。これは行っても聞く感じじゃない。

いや、付いてくるのはいいんだよ。ただ怪我がまだ治りきっていないのに、無理させたくなくて。


「でもこんなところに、お花摘みできる場所があったんですね」


いや、それは当然だよ。というかそんな場所のない方が……ん……?


「いや、あの……ヤスフミ? 多分それは」

「ショウタロス君」


教えようとしていたショウタロス君には、しーのポーズ。

いや、悪いんだけどね? でもこれは……もしかして、面白いことかもしれないなぁ……って、思っちゃって……!


「……うん、あったんだよー。とっても奇麗な場所だからー」

「そうなんですね。……ちょっと楽しみかも」

「そっかー!」

「雨宮……お前……!」

「お兄様も知らなかったんですね……」

「まぁ別にいいだろ。死ぬわけじゃないし……もきゅもきゅ」


そうそう。ヒカリちゃんの言う通り……だからニコニコしながら、蒼凪くんを引っ張って……“女子トイレ”に到着。


「はい、ここだよー」

「え、でもトイレ……あ、寄り道ですね。じゃあ外で待っているので」

「ううん、ここでお花を摘むの」

「え?」

「ごめんね。蒼凪くんは、あたしがお花を摘むの、見たかったんだよね。
でも……さすがに中へ入れちゃうと、ね?」

「え?」


あぁ……きょtんとしている! 混乱している! 本気で分かっていなかったんだ! 悪い気もするけど、その戸惑っている表情が……凄くいい……♪


「……ぺんぺん草ってお花、生えていたっけ……」


ああぁああぁああぁあああぁあぁ! ヤバい! 更にきょとんとしている!

本当に知らなかったんだ! どうしよう、滅茶苦茶可愛い! 滅茶苦茶いい表情!


でもこれ以上は可哀想だし、そろそろネタばらしを……と思うと、首元のアルトアイゼンがちかちかと瞬く。


≪……お花摘みは、トイレに行くの隠語ですよ≫

「え……!?」

「そうそう、そうなの。……それであたしがお花摘む様子とか、想像しちゃったんだ」

「あ、あの」


知らなかったなど言わせない。少ししゃがんで、蒼凪くんと目線を合わせてから……ささやくようにトドメの一撃!


「えっち……♪」

「――――にゃあぁあああぁああぁああぁああぁあ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……顔を真っ赤にして、打ち震える蒼凪くん、もう最高だったぁ!
そんなにあたしがお花摘みするところを見たかったのかなーって!」

「ま、待ってぇ! あの、意味が分からなかったからぁ! わざとじゃなかったからぁ!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「謝らなくていいよ。蒼凪くんがそうやってさ? あたしに意地悪して、気を引こうとしているのはよーく分かったし」

「うにゃああぁああああぁああああぁあ!」

「でも……あたしも、そこまで見せちゃうとさ? やっぱり責任を取ってもらわないとなーって、思っちゃうんだぁ。
だって、そんなの……誰にも見せるわけじゃねぇし! というか、普通は見せるものじゃねぇし!」

「にゃああ!?」


蒼凪、本当に知らなかったのか! お花摘みがトイレの隠語だと! また意外……って、そうじゃない! 雨宮、ファインプレーだぞ! ようやく止まった!


「やっちゃん……知らなかったのかよ……」

「お前、雨宮には感謝しろよ? 普通どん引きだからな」

「うがああぁあああぁああぁああぁあ!」

「……蒼凪くんの、えっち!」

「にゃあああぁあああぁああぁああぁああぁあ!」


よし止まったぞ! 蒼凪が悶絶して止まった! このままちょっと掘り下げていこう! そうすれば冷静になるだろ!


「あ、でもただ付いてきただけじゃないもんね。いろいろあった直後だし、一人にしちゃ駄目だーってガードしようと頑張ってくれただけだし。
で、あたしがお花摘み終わる間、どんなふうなんだろうなーって想像しながら、外で待っていてくれたし」

「想像はしていませんー!
……あぁあああぁああぁあ! やっぱり僕じゃ駄目だぁ! 女性忍者さん達中心でガードしよう!」

「それは駄目!」

「なんでですか!」

「あたしは、蒼凪くんに頼みたいの! もちとナンちゃんも同じく! 意見取りまとめたし!」

「ん……もちろん学業もあるし、取りかかりきりは無理かもだけどさ。
でもわたし達みんな、この間のライブではとっても安心できたもの」

「というか、おトイレにまで付いてくるーとかまでは大丈夫だよ? 今のままで十分」

「じゃありませんよ! トイレでの襲撃は前例も多数あるんですから!」

「「「あるの!?」」」


……まぁ雨宮達も善意で言っているんだろうが、それは事実だった。俺もヤクザ絡みでいろいろ覚えがあるしな。

ただまぁ、護衛対象ともなる雨宮達とも連携やコミュニケーションは取れているようだし、そこは安心でもあったが……。


「まぁ蒼凪、あれだ。そこは例のマニュアル作成やら人員配置の調整で解決するぞ。うちのカオルや早苗も貸し出すしな」

「まぁカオルは騒がしいけど、経験もないわけじゃないしね。アテにはなると思うよ?」

「それならまだ助かりますけど……」

「でさ、なんか修行―って話になっていたけど、技を忘れるって……なにさ」

「……レツさんも同じ教わり方をしたそうなんです。もうちょい後にネタばらしされるんですけど」

『受け売りと言ってしまえばそれまでだけど、このときの恭文君には必要なことだったんだ』


そして、蒼凪は改めて自分を研ぎ澄ます。時間がない中ではあるが、できる限りの研鑽を積みかさねる。


『人斬りの化け物で、妖怪の末裔で……そんな要素はあるけど、忘れちゃいけないんだよ。
……恭文君はそんなことはさておき、武術が好きなんだってね』

「……まぁね」


その好きがどう強さに繋がるか……それはこれから明かされる。


(――本編へ続く)





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