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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
西暦2009年・海鳴その1 『Sと運命/PHANTOM MINDS』


――時空管理局次元航行部保管公式記録。

新暦六十五年(地球歴西暦二〇〇九年)発生案件≪P.T事件≫資料。


これは本件の容疑者兼被害者に対する、民間協力者の『説得』に関する資料である。

観測域外の事象に関しては、本人及び関係者の証言によって状況を記録している。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――????・?????


わたしのおかあさん……わたしのおかあさんは、プレシア・テスタロッサと言います。

おかあさんは技術かいはつの、会社につとめる技術者です。おかあさんはかいはつチームのリーダーです。

なかよしのかいはつちーむの、みんなといっしょに……世界でくらすみんなのためになる技術を、まいにち研究しています


おかあさんはいつもいそがしいけど、だけどすごくやさしくて。毎日tくってくれるごはんはいつもおいしいし、夜はいっしょのベッドで寝ます。

ことしの誕生日は、二人でピクニックに出かけました。いつもいそいがしいおかあさんだけど、こういうときは一日中いっしょにいられるのでうれしいです。

たのしくて、嬉しくて、ママ大好きって言うと、おかあさんはいつもちょっと照れますが、だけどいつも、あとでぎゅってしてくれます。


そんな照れ屋でやさしいおかあさんのことが、わたしはほんとうにだいすきです。

――おわり。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――新暦六十三年

ミッドチルダ南部≪アルトセイム≫ テスタロッサ家



その手紙は、彼女のもの。

彼女が母親に向けて送った、たっぷりの愛がこもった手紙。

偶然見つけたそれで、私の手は止まってしまって……


「………………」

「リニス、お待たせ……なに見ているの?」

「面白い文章を見つけたんですが……これはあなたの書いたものでしょうかね、フェイト」


振り返り、金髪ツインテールな愛しい教え子に確認……が、首を傾げられてしまった。


「これは作分かなにか」

「うん……たしか、そんな感じ。うわ、懐かしいなー」


どうやら思い出したらしい。ちょっと記憶があやふやだったみたいですね。


「書いたときのことは覚えていますか?」

「うん……」


二人で脇のテーブルに着席すると、フェイトは顔を真っ赤にして照れて。


「でも、やっぱり恥ずかしいな。昔のことだから」

「恥ずかしくないですよ。なかなか名文です」

「ありがと、リニス……」

「なので大事に仕舞っておきましょう。額縁に入れて飾りましょう」

「それは相反していないかな!」


なんの問題もないと、慌てるフェイトから手紙を受け取り……その代わりに、魔導教本を手に取る。


「さ、そろそろ勉強の時間です。準備はいいですか?」

「うん、ばっちり!」


――私ことリニスは、ここ……次元世界で言うところの、第一管理世界≪ミッドチルダ≫南部の山間に暮らしています。

土地の名はアルトセイム。家の名はテスタロッサ。そして彼女は私の教え子でもあるフェイト……家長であるプレシア・テスタロッサの娘。

私の仕事は家事全般と、使い魔である私の主であるプレシアのお世話。何よりこのフェイトのお世話と、学問・魔法に関する教育と指導です。


ようするに、メイド兼家庭教師みたいなものですね。


「……できたよ」

「はい、採点しましょうね」


というわけで、答案をさらら……さらさらと…………これは……!


「うん、全問正解ですね」

「ほんと? ありがとう、リニス」

「……名前さえ書いていれば」

「ふぇ!?」

「あと、一問ずつずれていますね。なので〇点です」

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


まぁそんな家庭教師として、悩みの一つは……フェイトがこう、ちょっとドジというか、不注意なところがあること、でしょうか。


「なのでもう一度やってみましょう。そうすれば完璧ですよ」

「う、うん! 頑張る!」


ただ、どうもそういう脳の偏り……特性が絡むようで。なので私もそこは鬼のように叱ることはせず、転けても立ち上がれる強さを養う方向で育てています。

……時折、それでいいのかと迷うようなボケをかまされるときもありますが……いや、きっと……うん、多分……なんとか……大丈夫なはず、です。


「……そういえば、今日は随分静かですが……アルフは」

「さっきまで一緒に遊んでいたけど、今は部屋でお昼寝中。
……アルフ、もう元気いっぱいでね? 走るの速いの! びゅーんって!」

「あの子は元が狼ですからね……」


先日この子は……死にかけていた迷い狼を救うため、自らの魔力を分け与えて、使い魔とした。

私は……まぁ、自分が使い魔という点に矛盾もありましたが、止めたんです。

幼いフェイトに使い魔契約というのは、とても負担ガ大きく、その維持も大変。なにより命を預かる重みがあります。


今助けようとしているこの子と死ぬまで向き合う覚悟がなければ、あなたはいずれこの子を死ぬよりもずっと苦しい痛みに晒す……なんてかなり厳しいことを言いました。

だけどこの子は、私の反対を押し切って、死にかけた狼を助けた。群れから見放された孤独な迷い狼に、今の自分を重ねたというのもあるのだろう。

それでも……優しい子なのだ。一途に、とても純粋に。


「リニス、フェイト、勉強お疲れ様―」


そして……そんな彼女の使い魔足るアルフもまた……って、トレーが揺れているぅ! ミルクとお菓子もぉ!


「ミルクとおやつ持ってきたよー」

「アルフ!」

「ちょ、ストップ! こぼれますから!」


一旦アルフを止めて、慌ててトレーごとミルクとお菓子を回収。いやぁ、お掃除の手間が省けて助かりました……!


「ありがとうございます。でも、お昼寝は」

「もー起きた!」


元気ですねー! サムズアップしてきましたよ! しかもいい笑顔で!


「ありがとうね、アルフ」

「うん!」


それで尻尾をぶんぶんと……狼というか犬ですけど、黙っておきましょう。


「でもいいタイミングですね。少し休憩にしましょうか」

「「はーい」」

「……フェイトが、一問ずつずらして出した解答を修正してから」

「は、はい……!」

「フェイト、また間違えたのかー?」

「でも、次は……頑張る。頑張るから」


フェイト、ガッツポーズはやめてください。あなたがそれをするとこう、不安が……。


「……そ、そうだな。うん、きっと大丈夫だ。アタシも応援している」

「ありがとう、アルフ」


アルフも気を遣っちゃってまぁ! 気づいているだろうに……まぁでも、こういう軽口が叩ける程度には、二人は仲良しで、そしてアルフは幸せだった。

この小さなマスターがアルフと交わした契約は、『私の』使い魔契約とは大分異なる。

その内容は……生涯を共に過ごすこと。使い魔は契約の目的が達せられれば、消滅する定め。しかし二人はそれがない。フェイトがいずれ命尽きる日がきたとき……それが満了の知らせ。


フェイトはアルフが自分のために生きることを赦し、アルフは自分の意志で、フェイトを慕い共に過ごしたいと思っている。


「……あなた達は、いいコンビですよね」

「名コンビ−!」

「うん」

「フェイト、ガッツポーズは、やめましょう……」

「どうして!?」

「あなたは、力むと失敗しやすいですから。穏やかに……力を入れず、リラックスです……!」


そう……私の教え子達には、なんの問題もない。ないったらない……ないんです! フェイトはまだこう、明鏡止水的な境地に達していないだけです! 達したら凄いんですよ!

では、何が問題か……。


「よし、真のリラックスを手に入れるため、勉強が終わったら三人で外に出て、運動をしましょう」

「運動でリラックス……興奮じゃないのか?」

「あなた達は若いから分からないでしょうけど、運動しなければリラックスできない年頃もいるんです……」

「そういうものか……」

「でもこのクッキー、本当に美味しい……ねぇリニス、これ、母さんに持っていったら駄目かな」

「あぁ……あとで、私が届けておきましょう。プレシアも忙しいですから」


そう、問題はこの子の母親……プレシア・テスタロッサ。


「……うん、そうだよね。ごめんね……リニス」

「いえ、あなたが謝る必要はないんですよ。……実はその……隠して、いたのですが……」

「リニス?」

「プレシアはその、運動しなければリラックスできない年頃なんです……!」

「え?」

「だから研究している間も、定期的に肩を回したり、それ体ねじ切れているんじゃないかーっていう変なポーズで踊ったり」

「「踊ったり!?」」

「そういう姿を、あなたに見せて……嫌われるのが怖いんです。許してあげてください」

「「どういうこと!?」」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


プレシアがどのくらい問題かというと、あんなアホな嘘を吐く程度には問題だった。

よく言えば教育熱心で厳しい母親。悪く言えば……愛娘をあえて遠ざける、愛嬌すらないヒドい母親。


近頃、その後者側が目に余る。それでも使い魔として、この人を信用できればよかったのだが……。


「――プレシア、お茶とお菓子をお持ちしました」

「入りなさい」

「失礼します」

「……そこに置いておいて」

「はい……」


実を言うと私は、この人のことを“ほとんど知らない”。

くすんだ長い髪、やつれた肌、必要最低限のことしか言おうとしない……そんなわけで、信頼関係もクソもなかった。


「クッキーは美味しいですよー。しっかり食べてください」

「いらないわ」

「まぁそう言わずに。あなたにも食べてほしいとフェイトが」

「――余計な気を遣わなくていいって言っておいて」


おうして彼女は、なにかに追い立てられるような瞳を……また私に向ける。


「あの子にはもっと大事なことがあるはずよ」

「その“大事なこと”を真っ当する精神性を養うためにも、あなたには母親として受け止める義務があるはずです」

「――そんなことより、勉強はちゃんと進んでいるの?」

「――進んでいますとも!」


さすがに我慢ならず、デスクを殴り付け、プレシアに詰め寄る。


「魔力トレーニングも、魔導物理も、魔法知識も! フェイトは本当に一生懸命やっていますから1
遊びたい盛り、甘えたい盛りの子どもなのに……本当に、一生懸命に!」

「……」

「あなたがそれを……フェイトが一人前の魔導師になることを望んで! それを叶えたらあなたに褒めてもらえると思っているからです!」

「…………」

「プレシア、意図と理由があるのは分かっています。あなたへの甘えがあってはいけないと、そういう話もしてくれましたしね」

「えぇ、そうよ」

「でも、程度はあります。
広いお屋敷とはいえ食事も一緒に撮らない。会うことだって三日に一回あるかないか……しかも」

「まだなにか?」

「今日はこんなものを見つけました。あの子の、昔の作文です。
あなたがうんと優しいママだったころの……読んでいて、気持ちがあったかくなる名文ですよ」


すると、プレシアが私を……ううん、私の持っていた手紙を見る。


「見せて、ちょうだい」

「はい、どうぞ」


優しく……傷などが絶対付かないように、プレシアに渡すと……彼女は瞳から一滴、煌めくものをこぼした。


「その作文、見たことは」

「あるわ……初めて読んだときは、嬉しくってね。涙が止まらなかった。
……あの子はこんなにも……私を想ってくれていたんだって……」


親子なんだから……あぁそうだ。親子なのだから、愛しくないはずがない。

そう思うからこそ、私は……この人のことも知りたいと思って。


「プレシア、あなたが願いを早く叶えたいというのなら、協力してもらえませんか」

「……程度のこと?」

「安心してください。それくらいで甘えて勉強ガ疎かになるほど、フェイトは悪い子ではありません。というか、私がさせません」

「そうね……考えておくわ」

「お願いしますね。本来なら約束してくれるまでてこでも動かないし、研究の邪魔をするところなんですが」

「リニス……!」

「でも私はフェイトを励ますために、あなたがヒドい肩こり&腰痛もちで、定期的にへんてこな踊りを踊ってリラックスしなくてはいけない体質と……嘯いてしましましたし」


きっと、この人はとんでもなく不器用なマスターで。

私はそのマスターと、愛娘の行方が果てしなく心配なだけで。


「……は……!?」

「なのでそんなことはしません」

「いえ、ちょっと待ってちょうだい? なにそれ……なんでそんな話に」

「あなたが遠ざけるせいですよ……!」

「だとしてもそんな話に発展する理由がないでしょ!」

「あったんですよ! 堂々と! そこに! というかここに!」

「リニスゥゥゥゥゥゥゥゥ!」


このときは、きっと大丈夫だと思っていた。

だって……ごくごく普通の使い魔でさえ、彼女を愛しいという気持ちがあったのだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――私がフェイトと初めて会ってから、もうじき一年が経過する。

フェイトの成長……それを記録すると同時に、私にとって大切な日々の記憶と願いを、せめて残せるようにと……いつからか日記を付けるようになった。


勉強と修練を重ねて、フェイトはますます強く賢くなっていく。アルフも随分大きくなって、もう私より背が高い。魔法は二人とも、基礎から総合まで一通り。護身のための戦闘法も覚えた。

まぁまぁ自分で言うのも大概だと思うけど、今の二人にそんじょそこいらの魔導師が勝てるとは思えない。その程度の実力には育てられた。

そこからは空を駆け回る飛行訓練。フェイトは高高度飛翔のメニューを、僅か二か月間でこなしきり……転生の速度を生かした空戦機動の練習に、今は一生懸命。



対してアルフは少し壁にぶつかったこともあった。もとが陸生の狼であるアルフにとって、飛行はできても空戦というのはハードルが高かった。

そこでフェイトと同じ速度で、同じように飛ぶのではなく、中後衛(ウイングバック)としてのサポートを行えるよう、トレーニングを積んでいる。

更に高機動の空戦タイプが苦手とする閉所での陸戦もあると……むしろそこが本領だと道を示したので、鍛えていけばかなりのところまで行けると思う。


ただ、アルフには諦めを押しつけたのかとも、少し申し訳なくなったが……。


――そんなことないよ!――


アルフには、それはさすがに気を遣いすぎだと……叱られちゃいました。先生なのに。


――アタシがフェイトの苦手なところ、足りないところを支えてあげられるんだろ!?
で、アタシも得意なところで頑張れる! リニスはそう教えてくれたじゃないか! それが悪いことなわけない!――

――アルフ……――

――それは、本当に凄く嬉しいし……なにより――

――なにより?――

――空を思いっきり飛んでいるフェイトはさ、すっごく楽しそうで……ずっと見ていたくなるんだ――

――そうですね――


アルフの言う通りだった。他のどの魔法を練習しているときよりも、ずっと楽しそうで……少し、心が安らぐ。

更に私が今、フェイトに合わせた専用デバイスを作っていると話したら……目を輝かせて、喜んでくれて。


その愛機が完成したら……本当に、二人に勝てる魔導師なんて早々いない。そういうレベルのパワーアップであり、魔導師としての完成に近づくと思う。

もしあの二人に勝てるとしたら、戦闘と実戦経験に秀でたプロ……それこそ局でエース級と呼ばれるような魔導師くらいだと思う。

つまるところ、私はこれから師として『お前達は強くなった。でも上には上がいるんじゃ』と、更なる高みを目指すよう促すわけです。ここも頑張りましょう。


……そしてプレシアは、相変わらず研究一筋で。

近頃咳き込むことが多くて、そのことも心配なのだが……相変わらず私の言うことは聞いてくれない。

というか、肩こり&腰痛もちだと吹き込まれた下りで、妙に恨まれている気がする。


もしかしてあれだろうか。誕生日プレゼントとして、マッサージ機やら薬やらをプレゼントされたことも根に持っているのだろうか。それはさすがに……あ、ごめん。私が悪かった気がします。

それでもさすがに心配なので、近いうちに医師を呼んで、診察してもらおうと思っている。


もし二人に勝てるとしたら、よっぽど戦闘と実戦経験に秀でたプロ……それこそ局でエース級と呼ばれるような魔導師くらいだと思う。

つまるところ、私はこれから師として『お前達は強くなった。でも上には上がいるんじゃ』と、更なる高みを目指すよう促すわけです。ここも頑張りましょう。


「……よし」


今日の分を書き終えてから、部屋を出て……すると、荷物というか、お風呂セットを持ったフェイトとばったり鉢合わせ。


「リニス」

「フェイト、これからお風呂ですか」

「うん」

「アルフは」

「もう少し一人で練習したいから、先に入っていてって」

「……ちょうど私もお仕事が一段落ついたところです。一緒に入りましょうか」

「うん!」


じゃあ早速……えぇ、お風呂の付き添いも大事な勤めです。


「……またお風呂で転ぶと、大変ですから」

「えー! リニス、あれは違うのー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


まぁまぁ広い家ですから、お風呂もかなり広めです。正直ここで銭湯できるんじゃないかってくらいには。

そんなお風呂で、体を洗って、頭を洗って……そしてフェイトは、頬を膨らませていて。


「だから、あのときは……頭を洗っていて……」

「はい」

「そうしたら、お湯を入れた桶が見当たらなくなって」

「で、湯船の方に行こうとして、思いっきり転んで、湯船に転落。そのまま溺れたと……」


いやぁ、思いっきりギャグでしたね。ゴールデンのコントショーだったら高視聴率間違いなしですよ。まぁ倫理的に放送できませんけど。

……でも、中身はギャグだと言えるのは、フェイトに大事がなかったからこそで。本当に危なかったのは確かです。


「笑いごとじゃないんだよ! ほんとにビックリしたんだから!」

「ビックリしたのはこっちです……。
光の速さで来てみれば、フェイトは裸で泣いているし、アルフは服ごとずぶ濡れですし……一体何事かと」

「うぅ……!」

「その話をしたときには、さすがのプレシアも少し笑っていましたよ」

「ほんとに!?」

「それからこうも言っていました」

――昔もね。あの子、お風呂ではしゃいで転んだの。気をつけるように言って。怪我でもしたら大変だから――

「ですって……あ、でも内緒ですよ?」


唇に人差し指をアテ、しーのポーズ……それで何度も頷いてくれて。


「うんうん……気をつける! もうころばない!」


そうして一緒に、広い広い湯船に入り……フェイトをそっと後ろから抱き締める。


「……」


するとこの子は……あぁ、まただ。

私が触れるとき、私に抱き上げられるとき、ほんの少し……僅かにだけ、遠慮するように身を固くする。

それはこの年頃の子が本来なら当たり前のように、溢れるほどに与えられるはずの愛情が足りないせいなのか……。

私がこの子の母親ではなく、その使い魔という距離があるからだろうか。


いずれにせよ、私はフェイトとはずっと一緒にいられなうい。

そのことはフェイトにも、アルフにも、もうずっと前から告げてある。

――だからこそ残してあげたい。


あの子が、道を切り開くための力を。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――私がプレシアとした契約は、フェイト・テスタロッサを一人前の魔導師とすること。

さし当たってはという条件こそつくものの、それでも一流と言って差し支えない技術と戦力をあの子に託すこと。

その契約の終わり……私が最後に、あの子に託せるもの。


それは黒き戦斧。今は静かに、ゆっくりと、主との出会いを待つこの子。


「…………」


もうすぐ私の誕生日だからと、いろいろ考えてくれている二人……そんな二人に背を背けるように、私はこの子と……フェイトのデバイスと向き合う。


「やっぱり、ちょっと無骨な形態になってしまったなぁ」


見た目だけなら魔法の杖と思えない。ぶっちゃけ斧にしか見えない。というか地味目だし。


「ただ、フレーム色はフェイトが好きな色で固めたし、クリスタルの金色はフェイトの魔力色」


うん、大丈夫。きっと気に入ってくれる。自分を励ますように言い聞かせて……やだなぁ。最後だからって、不安になっているのかも。


「あの子の力になってあげて」


黒い戦斧が眠るポッドに、そっと触れる……。


「私がフェイトに教えるいくつかの魔法は、あなたなしではなし得ない。
あの子が振るう剣として……あの子を支える杖として。強い機体(こ)になってね、バルディッシュ」

≪――Yes meister≫


――――私は、もうすぐ消える。

それが定め。変えられない運命。

そして私は、とても卑怯で弱く、情けない使い魔だ。


選ぶことができなかった。何一つ……だけど、それでもこれだけは伝えよう。

未来に……幾ばくかの願いと希望を込めて、これだけは。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――誰かが言っていた。

世界の未来は分からなくても、明日の自分は今日の自分が知っている。

わたしはまだ本当に子どもで、未来も、自分のこともキット分かっていないけれど……間違いのないことが一つだけ。


わたしの現在(いま)は、わたしが自分で選んだってこと。


日本・海鳴市街地
海鳴市藤見町 高町家 午前七時四十五分



「――はい! なのは、お弁当!」

「ありがと、お母さん!」

「行ってらっしゃい。気をつけてね?」

「うん! 行ってきまーす!」


――わたしこと、高町なのはは、喫茶店を経営している両親のもと、三人兄妹の末っ子として生まれました。


お父さんの高町士郎さんは、以前は海外でも活動していた……なにやら凄腕のボディガードだったそうで。まぁなのはが小さい頃に大けがして、引退して……そこからは喫茶店の店長さん中心だけど。

お母さんの高町桃子さんは、そんなお父さんと……新婚かって言うくらいにラブラブです。なのはは子ども心に、これが愛の力かと痛感する毎朝です。


お兄ちゃんの高町士郎さんと、お姉ちゃんの高町美由希さんは、お父さんからいろいろ教わりつつ、剣術家として修行中です。PSAという忍者さんの組織からも若手として注目されて、お仕事も依頼されています。

なのでうちの……結構広めな和風邸宅には、道場も併設されています。まぁ自分達で使うのが中心だけど、かなり激しく暴れています。

かく言うわたしは……うん、特にそういう剣術的なこともなく、日々を一生懸命に生きている、どこにでもいる小学三年生です。


学校の勉強とか、春休みに買ってもらった携帯……もといスマホ! スマホのこととか! スマホ最高です! 現代っ子に生まれてよかったぁ!

そんな感動を今日も噛みしめながら、近くのバス停でバスに乗り込み、登校……三〇分弱で到着するのは、市立聖祥大附属小学校。


「なのは!」

「おはよう、なのはちゃん!」


今年も同じクラスになれた、仲良しのお友達二人……アリサ・バニングスちゃんと、月村すずかちゃん。

なのははいろんな幸せに囲まれて、ごくごく普通に……平凡に……でもとっても贅沢に、とっても豊かに暮らしている、そんな小学校三年生です。

……将来の夢はって聞かれたら……『まだ分からない』って答えるしかないのが、ちょっとだけ、最近の悩み事で。


「……ま、そりゃそうでしょ」


お昼時……アリサちゃんとすずかちゃんの三人で、屋上でお弁当を食べながら、ついそんな話をして。


「普通の小三は、将来の夢なんて決まっていないわよ」

「うん……」

「でもアリサちゃんと鈴鹿ちゃんは、もう決まっているでしょ?」

「でも全然、漠然とよ。パパとママの会社経営(おしごと)、アタシもやれたらいいなーってくらいだし」

「わたしもだよー。ぼんやりと『できたらいいなー』って思っているだけ。
機械系とか、工学系とか好きだから、そういうのができたら嬉しいなーって」

「まぁ、他にもいろいろ興味津々なことはあるし、別になんにも決まっていないのと同じよ」

「……そっかぁ……」


そっかぁ。それが普通……そういうものかぁ。でも、どうしてだろう。なにか……うん……。


「なのはちゃん、なにかあった?」

「いやね……お兄ちゃんとお姉ちゃんが、発達障害の子と知り合ったーって話、したよね」

「事件関係でだったよね」

「うん」


なのはも詳しくは聞いていない。お兄ちゃん達がヘルプを頼まれた仕事で、忍者さん達が保護というか、捜査協力してもらっていた子で……だから情報の保護とかが絡むってことで。

ただまぁ、お兄ちゃん達が凄い子だったと……なぜか頭を抱えながら話していたので、疑問一杯だったんだけど。


「その子がね、忍者候補生として頑張っているーって、昨日嬉しそうだったんだ。
忍者さんになれないの覚悟で、捜査協力とか頑張ったから……報われたんだって」

「アタシらより年下だっけ? 凄い奴がいるもんだわ……」

「でしょ? だからこう……そういうのを聞いていると、なのはもう……世界を変えてやるーくらいのことが言いたいなーと!」

「アンタには合わないわよ……」

「アリサちゃん!?」

「それだとなのはちゃん、魔王かなにかだしね……」

「すずかちゃん!?」

「ただまぁ、それでなにがしたいんだろうなーって考えたいというか、気合い入っちゃったんでしょ? だったらいいことよ」


……なのはは友達に恵まれています。

アリサちゃんは微妙な顔をしていたかと思うと、すぐ笑顔を届けてくれて。


「少しずつでも見つかっていくといいわね。アンタがそれくらい覚悟できる何かが」

「……うん!」

「私達もなのはちゃんに負けないよう、考えて、見つけていかないとね」

「そうねー」


そうして下校時間になりました。なのはちゃんとアリサちゃんはお家の人……というか、リムジンが迎えに来て……もう慣れたけど! 二人とも凄いお嬢様なんだよ!


「じゃあなのはちゃん、また明日ねー」

「メッセージ送るから!」

「うん! おけいこ、頑張ってねー」


校門でリムジンに乗り込み、帰って……というかお稽古に向かう二人をお見送り。

手を振って……帰りは、ちょっとのんびりと歩いていく。お決まりのお散歩コースだけど、海が近いから……すっとするんだぁ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


さて、どうしたものかなぁ。お昼は明るく振る舞ったものの……。


「ねぇ、アリサちゃん……なのはちゃん、最近ちょっと悩み気味なのかな」

「うん……」


アリサちゃんもやっぱり気づいていた。というか、気づかない理由が全くなかった。


「ま、元々考えすぎるというか、思い詰める子だからね」

「うん……」


呆れたもんだと……でも心配だと、いろんな気持ちガ入り交じった顔を、右隣のアリサちゃんは見せてくれて。


「多分ね? 何かやらなきゃーって気持ちがあるのに、その行き先が見つからないのよ。
例の……忍者になってーって子の話を気にするのも、そういうところから」

「なのはちゃん、気持ちが強い子だもんねぇ」

「そうそう。情熱家っていうか、突撃ロケットっていうか……」

「障害があって、難しいところもあって……でも、忍者さんになれなくても、みんなのためにーってところで、いろいろ考えちゃった」

「発達障害絡みで、いろいろ煩かったのもあるしね……」


そうそう、煩かった。丸居久っていう政治家さんがヘイトスピーチを繰り返したり、ローウェル事件っていう世間的に大きかった一件のせいで、差別偏見が強かったり。

うちの学校でも多少なりあったもの。私達の家……会社の方でもいろいろあったみたい。お父さん達がどうしようかなーって悩んでいたの、何度か見たこともある。

でも……なんだろうなぁ。お話を聞く限り、その子も突撃ロケットというか、そっち寄りだし、凄いというか同類っぽいんだけど。


いや、同類だからこそ? 同族嫌悪……嫌悪じゃないけど、意識しちゃうとか?


「なんでもいいと思うのよ。
勉強でも、趣味でも、スポーツでも……そんな気持ちの行き先、夢中になれることが見つかるといいんだけど」

「なのはちゃん、一度決めたら行動は早いしね……」

「昔はそれで大変な目に遭わされたけどね……!」

「あれはアリサちゃんも悪いから……」

「だとしてもよ!」

「でもやっぱり、そういうなのはちゃんがいたから……私達三人、友達になれたんだし」

「……まぁね」


そう、いろいろありました。小さい私達なりに、大変なことが。

そんな悪いアリサちゃんとも友達になれたことは、やっぱり嬉しくて……それで。


「私達もなにか、探してみようか。なのはちゃんが夢中になれること」

「押しつけても意味ないし、提案……一緒に遊ぶ程度ね?」

「もちろん」

「でも……」

「うん?」

「案外なのはのことだから、自分でちゃんと見つけちゃうかも」

「あははは……それもありそう」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


寄り道の中、ひょいっと……鵜網打ち際に経って、広い広い海を、高い高い空を見る。


そうしていつも思う……わたしは幸せだと思う。


家族がいて、友達がいて。

特に、体や心を蝕むような……病気や障害も患っていなくて。

おうちとベッド、ご飯の心配なんて一切しなくてよくて。

学校だって楽しい。


なのに、なんでだろう。

寂しくなる理由なんて、どこにもないのに……。


「…………」


悲しいような、苦しくなるような、行き場のない気持ちが……胸の奥から出ていかない。


「〜〜〜〜〜〜〜!」


だから、こういうときは叫ぶ……叫ぶことしかできない。


「――うあぁあぁあぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁぁあぁ!」


声が枯れて……もう絞り出せないってくらいに出してから……涙を拭って、家に向かって走り出す。

そうして思う。あと何度……何十回、これを繰り返すんだろうと。


私はどこをどうやって探せば、欲しいものを見つけられるのかと。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――同日同時刻

時空管理局本局・渡航申請部



探しているものがある。


「ユーノ・スクライアさん……。
管理外世界への渡航……渡航目的は、指定遺失物(ロストロギア)の捜索?」


見つけたもの。でも、失われたもの。


「あの、管理外世界での発掘や探索行為は……」

「いえ、違います! 発掘じゃなくて……なくし物なんです。
輸送中に事故があって、その世界に落ちているはずだって……ちょっと待ってください」


さすがに心配させちゃうよねーと、対応してくれた申請部のお姉さんには、持ってきた数枚の書類を見せる。


「捜索対象は危険指定物。
対応部署には事前に、先行調査の許可も取っていますので……これがその申請書類です」

「ありがとうございます。……はい……これでしたら、問題ありません」

「あと、現地での魔法使用許可と、魔導端末(デバイス)の持ち込みを」

「かしこまりました。それでは、端末を確認させていただきます。
少しそちらでお待ちいただいてもよろしいですか」

「お願いします」


――このとき、僕はまだ知らなかった。

僕と……僕が偶然見つけた≪誰にも心を開かない出自不明のデバイス≫が出会う、一つの運命を。

それが……その出会いが、これから巻き起こる悲しく凄惨な事件において、極めて重要な要素(ファクター)たり得ると。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――クロノ君へ。明日より巡航任務の開始ですね。

アースラでの長期巡航はまだ三度目だけど、もう慣れっこだよね。

今回もまた私は、君の副官兼通信主任として、べたつきで同行するから安心してよいですよ。


……あ、逆に不安とか言うの禁止ね?

この私……本局・次元航行部所属、エイミィ・リミエッタは、立派な執務官補佐なんだから。

身の回り品とか、忘れ物しないように気をつけてね。


あと、S2Uは私がマリーから受け取ってくるから。


「……これでよしっと」


行儀は悪いけど、端末で歩きながらメッセージを打ち込み……技術開発部の一室へ突撃−!

そこには私とクロノ君の愛する後輩ちゃんがいるわけだよ! 緑髪ショートの可愛い奴がね!


「お邪魔しまーす! マリーいる?」

「あ、エイミィ先輩! お疲れ様ですー!」

「うん、お疲れ−!」


彼女がマリエル・アテンザ。通称マリー。私とクロノ君とは先輩後輩の間柄でね。優秀な技術者でもあるんだ。

ただ、今はお忙しいみたいで……大きな荷物で右往左往していた。


「S2Uの受け取りですよね! ちょ、ちょっと待ってください! ここだけ片付けちゃいますから!」

「あー、どうぞごゆっくりー。
報告メールの返信待っているし」

「あ、クロノ先輩ですか」

「お二人とも、ほんと……仲良しさんですよねー」


すぐに首肯すると、マリーは荷物を整理しながら明るく笑ってくれる。


「士官学校在学当時から、魔導と技術で学部も違っていたのに」

「そーだねぇ。なんか会った頃から、お互い姉弟って感じなんだよねぇ。
……真面目だから融通利かないところもあるけど、いい子だよ……クロノ君は」

「ですね」


マリーはいろいろ知ってくれているから、深く同意してくれている。

いやね、士官学校時代は更にしかめっ面で、コミュ力底辺でそれはまたヒドいことに。


「さて、お待たせしました! S2Uは仕上がっています!」

「おー!」


さすがは仕事早いなー! 確認する暇もなかったと、待機状態の……カード状態のS2Uを受け取る。


「クロノ執務官、ていねいに扱ってくれるのでメンテも楽ちんでした。どうぞ、起動チェックを」

「了解!」


そこで、すぅっと息を吸い込み……。


「S2U、スタートアップ」

≪Ready Set≫


瞬間的にカードがヒカリ、一瞬で黒い穂先のワンドロッドに変化する。

まぁ、私は魔法能力ないし? あくまでもS2Uが気を利かせて変身してくれたーって感じなんだけど……。


「おぉ……凄い! 速い!」


それでもクロノ君の側にいて、ずっとこの子を見てきたから分かる。以前より……ずっと速くなっているよ!


「起動時間とアクセスタイムを平均十二パーセントほど短縮しておきました。クロノ先輩にも気に入ってもらえるかと」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――マリーには重々にお礼を言った上で……でもそれじゃあちょっと足りないかなぁとも思い、軽くメモ帳に特記事項として記入。

その足でやってきたのは、管理局本局の法務部。そこでオフィスに詰めていたクロノ君と合流し、S2Uを渡す。


「助かったよ、エイミィ。……マリーにも世話になりっぱなしだ」

「今度ご飯にでも連れていってあげようよ。プライベートでさ」

「あぁ、そうしよう」


クロノ君はS2Uを懐に仕舞い、デスクを立ち上がる。更にコートまで取り出し羽織って……それに三歩下がって付いていく。補佐官ですから。


「なんか技術開発部、最近また忙しいらしいし?」

「そうなのか?」

「例の引き金君が使ったデバイスのデータが、結構独特かつ有用らしくてね?
いよいよ公的に、ベルカ式デバイスの製造できるかーって段階なんだって」

「……あれかぁ……」


……地球にはミュージアムという組織があった。そこが製造しているガイアメモリっていう……生体型端末だっけ?

地球という星……規格外の生命体が保有する無限の記憶。そのデータベースから抽出したワードを閉じ込めたこれは、人間と一体化し、怪物にするというとんでもアイテム。

でも馬鹿にできない。ミュージアムの首魁だった恐怖の帝王……恐怖の怪人は、見ただけで発狂死しかねないほどの恐怖を人に、永続的に刻んでいたそうだし。


実は内密に動いていた本局の調査員達も、この能力にやられて……相当数が原因不明のリタイアを繰り返していた。

そんな状況だと察することもできなかったけど、ある日、突然、全てが解決した。

現地でそんなミュージアムの実験に巻き込まれた子どもが、なんと次元世界と関わりのある人……あのグランド・マスター≪ヘイハチ・トウゴウ≫の弟子になったからさぁ大変!


その子から状況を知った管理局は、内密に人員を動かし、協力を決定。本来なら越権行為すれすれだけど、ガイアメモリが次元世界に入り込むだけでも驚異と判断し、かなり超法規的な処置を押し通した。

更にその子は、首魁のテラーとか、相手が切り札にしていたメモリに対してカウンターを取れる特殊能力があったとかで、六歳にしてそれらを打破し、ミュージアム崩壊の引き金となったそうなの。

あとはレティ提督やグレアム提督中心に、現地組織と連携を取り、危惧していた次元世界への流出などがないよう、目を光らせているのが現状ってわけ。


で、もう言うまでもないけど、引き金君っていうのがそのグランド・マスターの弟子。その子には試作型のデバイスをいくつか渡して、テスター的に使ってもらっていたそうなんだけど……。


「だがそんな子どもの使ったデータが役に立つとはなぁ」

「相当腕が立ったんだって。六歳にして、怪人と殴り合える程度には。
というか……そんな記憶の怪人と殴り合うデータってだけでも稀少だって」

「今後、次元世界で類似例が出た場合にも備えて、か。……あまり喜ばしいことじゃないな」

「まぁね。というか、上も同じ考えだから、今回の巡航任務も地球付近なんだろうし」

「それなら確認したが、違うようだ」


そう言ってクロノ君は、足を進めながらも同時に呆れ顔。


「ロストロギア絡みだよ。次元輸送船の事故で、管理外世界に落ちたらしい」

「じゃあ回収任務?」

「いや。発掘者が申請を出した上で、現地回収協力を申し出ていた。
当面は現地にいるであろう彼とコンタクトを取り、状況を確かめ、哨戒だけに留めるそうだ」

「消極的……とはいかないかぁ。管理外世界での捜索探査は、確実な証拠かよっぽどの危険性がないと」

「そう……人員は割けない」


まぁお役所仕事と言われたら否定できないけど、逆に言えばそれくらいリスクが高いんだよ。だから引き金君の下りも超法規的な処置が積み重なったわけだし。


「とはいえガイアメモリなんてものもあるし、それ以外の火種も多い世界だからね。
別地区への順路途中で、できる範囲で現地観測だ。艦長や上も、これでかなり気を揉んでいる」

「……いやはや、面倒臭いねぇ。我々の職場は」

「組織に規則は必要だし、その中でやれるだけのことをと気張っている上司にも恵まれている。そう言うもんじゃないさ」

「じゃあ……」


すっとクロノ君の前に出て、真っ直ぐに……その黒い瞳を見つめてあげる。


「正義の味方への道、遠く感じたりしない?」

「……君はまた、何年前の話を持ち出すんだ」

「四年くらい前かなー。クロノ君が」


また一緒に歩きながら、右手をあたしの腰くらいに当ててあげる。


「こんなちっちゃかった頃」

「こんな程度だ」


でもすぐに、その手を取ってあたしの肩まで上げられた。むむ、生意気な……!


「でもまぁ……気持ちは変わらないさ。例の引き金君の話も聞くとな」

「うん?」

「彼は自分が現地の法で罰せられて、忍者に……やりたかった仕事に就けないことも覚悟の上で、司法を頼ったそうだ。
……ままならないことは多いが、そういう信頼を向けてくれる子もいるなら……できうる限り意地は張りたい」

「…………」

「なにより、僕だけが戦っているわけじゃないからな。みんな一緒だ」

「そうだね」


正義の味方……まぁ、ヒーローみたいにはなかなかいかないけどね? でも、クロノ君はいっつも頑張っていた。

そんなクロノ君の力になりたいって思うし、そんなクロノ君だからいいなぁとも思って……私は歩く。三歩下がって、奥さんみたいに?


だけど……待ち受けていた運命は、とても残酷だった。

ううん、今回の場合は私達が問題じゃない。一番傷ついたのは、あの二人で。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――本局喫茶室


仕事も終わり、友人とのんびり語らいの時間。……とはいえ、今日はそこまで長話もできなくて。


「それで? 例の若いツバメ君とはどうなっているのかしら」

「晴れて独り身になったし、仲良くさせてもらっているわよ? 私もハーレムに加えていいのよーって言う程度には」

「……逮捕されたいの……?」

「本気で引かないでよ! というか、そこは……あの子のためでもあって……!」

「さすがにそんな、自分の息子と同じ年齢の子とそうなるのは……」

「違うのよ!」


ああもう、なんて面倒な! とにかく友人……リンディが引き気味なので、何度も手招きして呼び戻し……!


「その子……滅茶苦茶片思いしている子が、いてね?」

「あら……だったら手出しなんてしちゃ駄目じゃない」

「……すれ違っただけの女の子なんだけど、顔も、名前も、声すらあやふやなのよ」

「え」

「記憶障害とか、人体実験を受けた影響で……その辺りが吹き飛んでね。補填もできなかった。
だから……アバンチュールを経験してもらうことにしたの……!」

「え」


だから、私は……リーゼ達は覚悟を決めた。


「ハーレムするしかないもの」

「ちょっと、レティ!?」

「私だってさすがにって思ったわよ! でも否定しきれないもの!
障害の絡みもあってこだわりも強いから、このまま一生お姉さんを想い続けて独身も有り得るし!」

「かなり危機的状況なの!?」

「今のうちから心配する程度には危機的状況よ!
現にその子、幼なじみの女の子達もいるんだけど、容赦なく袖にし続けているから!」

「えぇ……!? あぁいや、でも……」


まぁ苺花ちゃんはあの一件でやらかしたし、扱いが多少雑になっても仕方ないけど……風花ちゃんが問題だった。

改めて告白したのに、ばっさり切られたそうだから。それも情や動揺もなく、一撃よ。あまりに不憫過ぎて、もう……!


「ま、まぁ……あまり羽目を外しすぎないようにね? グリフィス君もいるわけだし」

「そうするわ……って、そろそろ時間よね」

「あ、そうね。じゃあレティ、また」

「気をつけてね。地球近辺は……やっぱりまだ物騒だから」


リンディはこくりと頷き、立ち上がり……持ってきたコートもさっと羽織る。が、そのときに苦笑を向けてきて。


「でも困ったわねー。できるようなら地球の地酒と行きたいけど、ツバメ君のツテがあるならなんとかなりそうだもの」

「適当でいいわよ。それで、無事に帰ってくるのが一番の土産」

「ありがと」

「あ、でもガイアメモリが絡むようなら、絶対に一度こっちへ連絡してきて。現地協力者に対処してもらった方が速いから」

「心得ているわ」


そのまま親友を見送り……笑顔で手を振り……その姿が見えなくなってから、ぽつりと呟く。


「……きっとあなたと同じよ。リンディ」


まぁ、あなたとは経緯が全然違うけど……大事で、忘れられず、今でもってところは変わらない。

だから、言ってくれたものね。“でも”って。とすると…………端末を開き、ぽちぽちとあるリストを呼び出し、ため息をぶつける。


「これは私の方で断っておくわね」


それはまぁ、いわゆるお見合いリストよ。上役からいろいろ押しつけられちゃってね。というか、リンディのことを心配して、親友の私からーって感じだったのよ。

というか、私もなんなら一人どうかーって言われたけど……さすがに今すぐ再婚って感じにはならないから、困っていたのよね。


まぁそっちの……角が立たない方便は、これから考えていこう。大丈夫、それが仕事みたいなものだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――第九七管理外世界・極東地区≪日本≫

海鳴市 海鳴臨海公園



今日はなのはちゃん達と一緒に、のんびり帰宅……とは行かず、これから塾です。小学生は意外と忙しいんだー。

ただ、そんな中にも息抜きっていうのが必要で……。


「やっぱりここの鯛焼きは美味しいわねー」

「うん!」

「やっぱり粒あんって正義よね!」

「アリサちゃん、好きだよねー。
わたしはこしあんとか、クリームも好きだなぁ」

「たまにならチョコも捨てがたいかも!」


そう、買い食いです! ちょっと悪いことしている気分だけど、糖分補給もないと勉強だって進まない。

ただ、私はちょっと出遅れて……楽しげにしていたなのはちゃん達を見つけて、手を振って近づく。


「なのはちゃん! アリサちゃん!」

「あ、すずかー!」

「すずかちゃんー!」

「ごめんね、待たせちゃって!」

「ちょうどよかった! 鯛焼き半分こにしよー!」


――――その瞬間だった。


なのはちゃんが……亜利沙ちゃんの左横にいたなのはちゃんが、突然駆け出す。

アリサちゃんを脇に避け、持っていた鯛焼きが落ちるのも構わず、聞き手の左をかざし……突然飛んできた“何か”をキャッチした。

しゅるるると回転し、停止し、落ちるそれは。


「ボール……?」


野球のボール。その方向と角度を考えると、アリサちゃんの頭に直撃コース……!

いや、でも待って。今の……私でも見えなかった。完全に死角外。

それを、硬球を……それなりの速度に飛んでいたそれを、“始めから見えていたかのように”、正確に捉えた。


なのはちゃん、運動神経はそんなによくないって……体育の時間も苦手なくらいだったのに……って、そこはどうだっていい!


「あの、なのはちゃん!」

「なのは!」


私も駆け出し、アリサちゃんもなぜか呆けるなのはちゃんの左手を取る。


「ごめんね、ありがとう! 手……手、大丈夫!?」

「あ、うん」

「…………ごめん! 大丈夫!?」


すると、制服を著た中学生くらいの男の子達が、必死な形相でこちらにやってくる。

バットやグローブを持っているところ、どうやら近くで野球をしていたみたい。


「大丈夫じゃなかったです! この子にぶつかりました!」

「えぇ! あの、病院! 病院に行こう! 俺連絡するから!」

「どこに当たった!? あの、じっとして! 俺達が運ぶから!」

「あ、いや……たまたま美味く取れたので! 当たったとかはないので!」

「ナイスキャッチだったけど……硬球だったしね。一応見てもらった方がいいかも」

「すずかちゃんー!」


――――このとき、私も、アリサちゃんも、すずかちゃんも、全く気づいていなかった。

なのはちゃんの中にある才能……たぐいまれな空間把握能力。見えていなくても見える……空を飛ぶために必要な恩恵≪ギフト≫。

それに気づくのは、本当にもう少し後のこと


西暦二〇〇九年四月二十六日――この翌日のこと。

なのはちゃんは……高町なのはは、“運命”と出会った。




とまと生誕15周年記念小説

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

西暦2009年・海鳴その1 『Sと運命/PHANTOM MINDS』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――プレシア・テスタロッサ事件、主要項目概要。


新暦六五年(地球歴西暦二〇〇九年)四月二十六日。


ユーノ・スクライア、第九七管理外世界≪惑星名称:地球≫へ渡航。

局への申請も通した上で、自身が発掘したロストロギア≪ジュエルシード≫探索を開始。

現地にて異相体化したジュエルシードの捕縛にかかるが、苦戦。同時に現地魔力素との適合不良を起こし、行動不能状態となる。


彼の危機を救ったのは、現地の少女高町なのは(民間人の学生。年齢九歳)。

偶然ながら魔法資質を保有していた彼女の協力を持って、彼が捜索する遺失物二十一個のうち、三個を確保することに成功。


……同時に彼はある事実に気づく。

自身を救ってくれた少女に、たぐいまれな魔導の才能と、空間把握能力が存在していることに。

それ以上に、自らの危険を顧みないその危うさに。


また、同時期に現地を訪れた、本事件の容疑者兼被害者≪フェイト・テスタロッサ≫も、ジュエルシード捜索を開始。

その翌日……まるで必然のように、高町なのはとフェイト・テスタロッサは出会い、衝突する。

圧倒的な力量差に対し、高町なのはは敗北するが、フェイト・テスタロッサの人格に対して思うところがあり、ジュエルシード捜索の折、再び対峙した彼女に対し、幾度もコミュニケーションを試みる。


が、フェイトからは静かな拒絶を受け、交流は成されないまま状況だけが進んでいき……管理局次元航行部艦船≪アースラ≫が本件に介入。

改めてアースラの人間から、次元世界及び時空管理局の状況に疎い高町なのはへ、現状……というより、彼女が関わってしまったことの重大さと、その無謀さを説明。

アースラ艦長リンディ・ハラオウン及びクロノ・ハラオウン執務官が状況解決を約束したものの、高町なのはと魔力素の適合不良から回復したユーノ・スクライアは、現地協力者として彼らの指揮下に入ることを提案。


アースラ組はあくまでも予備選力及び民間協力者として、彼女達を受け入れ……フェイト・テスタロッサとその使い魔アルフを追いかける構えとなった。

一方、母≪プレシア・テスタロッサ≫のため、ジュエルシードを集め、戦うフェイトだったが……その母から彼女ガ受け取ったのは、感謝でも抱擁でもなく、激しい叱責と心に深い傷を残す虐待行為のみ。

管理局に確保された使い魔アルフとも別離状態のまま、それでもフェイトはかつての『優しい母』を、その笑顔を取り戻すために、戦いを続ける。


アルフから彼女の事情を知った高町なのはは、改めてフェイトを救うと決意する。

そして、二人の出会い……そのきっかけとなったジュエルシード全てを賭けた、決戦のときを迎える。


……不測の事態(イレギュラー)はこの戦いの最中に発生した。


二人の戦いに決着が付くよりも早く、アースラチームはプレシアの居城位置を補足。その際、プレシア・テスタロッサは、現場に次元跳躍攻撃を放つ。

この攻撃によって、高町なのは防護服(バリアジャケット)中破。魔力喪失八九パーセント。戦闘活動不能。

フェイト・テスタロッサ、防護服大破。魔力喪失九七パーセント。デバイス破損。行動不能。


更にプレシアはその場で、犯行動機と目的を供述。


――私の娘はこの子だけ。アリシア……一人だけよ――


主な動機は事故で死亡した愛娘≪アリシア・テスタロッサ≫の復活。そのための秘術が眠る地≪アルハザード≫の捜索。

勤めていた会社で行われた、性急な魔導動力炉の実験。その暴走事故の煽りを受け、亡くなった娘。

会社は全ての責任を主任だった彼女に押しつけて、責任逃れに徹する。彼女は危険だと採算の警告を上層部へ行っていたにもかかわらず。


だがそれとて言い訳に等しかった。

自分が関わっていたのは確か。止められていば娘は……そんな自責の念が、彼女の心を歪ませた。


そうして彼女は、ある研究に手を出した。


――その子は、フェイトは私の娘なんかじゃないわ。
私が作り出した、私の命令を聞くしかできないただのお人形――


プロジェクトF.A.T.E.――死者の遺伝情報から作り出したクローンに、記憶を転写する“擬似的な生まれ変わり”。当然人道・倫理的にも許されない非合法研究。

単純に亡くなった人の尊厳どうこうという話だけじゃない。優秀な魔導師……その遺伝情報を流用し、クローンを作り、“生体兵器”として売り出すこともできる。つまりは人身売買や違法研究の温床たり得る。


悲しいかなこの世界には、過去の遺産をそういう形で、利己的に振るう奴らも存在する。だがそんなことは彼女にとってどうでもよかった。


――せっかくアリシアの記憶をあげたのに、あの子は全てが駄目だった――


彼女はそうして作り出したアリシアのクローンに、その記憶を転写した。

それがフェイト・テスタロッサ。アリシアとは全く違う別の存在。


ゆえに、彼女は更に歪んだ。


――あの子はアリシアの偽物で、ただの失敗作。だから……あの子は“もういらないわ”――


――この供述から四十二分の後……事態は大きく動いた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あのドタバタした夏からもうちょっとで一年……。

御影先生の一周忌もあったけど、僕はいつでも元気です。

それで昨日今日明日は、あの頃からお世話になりっぱなしなレティさん宅でお泊まり。


レティさん、最近息子さんの……グリフィスさんだっけ? その子が局の寮に入ったのもあって、少し寂しそうでさ。しかもいろいろあって……離婚、したらしい……!

それを心配したリーゼさん達やグレアムさんから軽くお願いされて、めいっぱい甘えていたんだ。


昨日もレティさんのふかふかとろとろオパーイに包まれて、ぐっすり眠っていたら……。


「よっと……」


次元航行艦隊の一角に紛れて、ある巨大なアジトに突入。そのまま大ボスのおばさんが……生体ポッドとたたずんでいたところを強襲するハメになった。


「ふらいはーい!」


あえて崩壊しかけた大ホールの天井を破り、そのまま数十メートル下の床めがけて落下。

更に相手の立ち位置や状況をチェックしつつ、そのまま地面に着地。

……黒コートを翻し、渦巻く虚数空間があっちこっちで現出している中、おばさんの姿をチェック。


灰色の髪、白い……というより不健康なほどに青白い肌。そして素敵なトップ九十オーバーのオパーイ……く……! オパーイの魂が、泣きじゃくっている!

ただ、それよりも大事なのは、奴の脇に浮かんでいる数個の宝石。あれに魔力攻撃を当てたら、状況が悪くなるんだよね。ロストロギアだから。


それなら……。

(やっぱり、プラン通りにいこう)


あいにくアドリブは苦手。でもアイツのデータならレティさん経由でいろいろともらっている。

ここでアイツとあのロストロギア……ジュエルシードを無力化すれば、勝負は大体勝ちだ。


「はい、標的エンゲージっと」

≪魔導師隊がいい囮になりましたね。でもぼやぼやはしていられませんよ?≫

「分かっているってー」


相棒となってくれたアルトをセットアップ。


「だからとっと、片付ける――」

≪いつも通りにまともじゃありませんねぇ……≫


そのまま腰に装着すると、杖を携えながらおばさんが笑う。笑う……というか嘲笑。


「面白い冗談を言うのね、坊や……。多分局の魔導師なんでしょうけ、邪魔はさせないわ」

「プレシア・テスタロッサ、今すぐに武装を解除し、投降しろ。ついでにこの次元震とやらも止めろ。
でなければ時空管理局嘱託の名において、実力を行使する」

「話を聞かない子ね。あなた程度の魔力量で、私に勝てるはずがないじゃない」

「そうそう……一応慈悲で警告してあげる。そっちの、お前がなんか生き返らせようとしている死体だっけ?」

「……アリシアは死んでなどいないわ」

「遠のけられるなら、今のうちにすっごく遠くに移動させた方がいい。
僕もさぁ……文字通りの死体蹴りは趣味じゃないのよ。動かないお人形をいたぶっても楽しくないでしょ?」


はーい、これで布石を一つ投擲OKっと。


「………………」


……明らかに不愉快な表情をしてくれたからねぇ。

自分の目の前で、生き返らせようとしている娘を、死体蹴りされる……させるわけがないだろうという、母親の意地だ。

で、僕みたいな子ども相手に……たった一人で立ち向かってくる子ども相手に、自分がそんな手を打つ必要もないと即断してしまった。


「どうやら、人間の言葉が通用しない猿のようね」

「それはこっちの台詞だよ。いいから」

「お前のような矮小な子どもを散らすのに、そんなことをする必要はないのよ――!」


奴が杖型デバイスをかざし、周囲に雷撃を振らせる。

ダークパープルのそれが僕を巻き込み、焼き払い……。


(その2へ続く)






あとがき

恭文「というわけで、とまとが生誕して15周年……みなさん、お世話になりまくりです。
今後ものんびりやっていくので、なにとぞよろしくお願いします」


(ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします)


恭文「で、今回はちょっと趣向を変えて、今までやっていなかったジュエルシードの絡みを、もしもの日常Ver2020軸でやることに」


(掲載場所も、今回は記念小説ではなく本編枠の方に……お試しってことで)


恭文「でも劇場版そのままは長いよね? 作者も最近また忙しくなったからちょっと辛い。
……そこでなのは劇場版のコミックスだよ!」


魔法少女リリカルなのはMOVIE1st THECOMICS1 (ノーラコミックス)


恭文「こっちは二巻で収まる形で、なおかつ展開が劇場版とちょっと違う! つまり矛盾しているところは後でこっそり修正だ!」

あむ「修正って言うなぁ1 え、展開違うの!? どうなるの!?」

恭文「友達になれないまま事件が終わるコース」

あむ「それ駄目じゃん!」


(現・魔法少女、びっくりです。
なおそんな事情も絡んで、ご覧の通り急速展開。あと二話で終了予定です)


恭文「友達になれないまま終わるんだしね……」

あむ「だからそれ続かないから!」

恭文「そして僕もプレシア・テスタロッサと対決。初めてだねー」

あむ「勝てるの……!?」

恭文「ウィザードに変身するから」

あむ「殺しにかかるなぁ!」

恭文「ルビーがいるから」

あむ「魔法少女パワーに頼るなぁ!」


(殺しにかからず大事に捕まえるのです。というわけで、今後ともとまとをなにとぞよろしくお願いします。
本日のED:水樹奈々『PHANTOM MINDS』)


大下「おいおいおいおい……そんなことまでやっていたのかよ、やっちゃんは!」

恭文「レティさんにはいろいろお世話になっていますし、地球の危機となれば……ねぇ」

大下「で、勝ち目は」

恭文「真っ向勝負なら絶対に勝てません。なにせ向こうは条件付きSSクラスですから」

古鉄≪媒体からエネルギー供給を受け、自身の魔力として運用できる……そんな特殊技能持ちだったんですよ。
そして奴がアジトとしていた庭園には、そのための動力炉もあった。出力や使える術式などなどの差から、確実に負けます≫

大下「なんだそのチートは!」

鷹山「なるほど。つまり……“普通にやらなきゃいいわけだ”。お前の得意技じゃないか」

いちご「……それでもかなり無茶だったんですよ……!
怪我も治ったばかりだし、ルビーちゃんやメモリ、ドライバーも頼れないし……!」

ロッテ「ただ、そこんところはやすっちが乗り越えるべき課題でもあった。
本気で自分自身を強くしようっていうならね」

アリア「そのためにはちょうどいい試金石ってところだね。あとは知恵と戦術次第だ」

いちご「……………………」

アリア「だ、だから……あの、いちごちゃんも、落ち着いてほしいなーって」

ロッテ「そうそう! 顔怖いよー! 笑って−! ほらー!」


(おしまい)






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あきゅろす。
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