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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
西暦2014年8月・軽井沢その6.5 『アメイジング・ビギンズ/その闘争を破壊する』


魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

西暦2014年8月・軽井沢その6.5 『アメイジング・ビギンズ/その闘争を破壊する』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


二〇一四年 八月十一日 午前十一時十七分。

軽井沢 大型ホビーショップ



マーキュリーレヴはもらったものの、解析もしたいので一旦本格工作はお預け。

ただそれでもやりたいことはいろいろあるので……また例のホビーショップへ。歩いて十分圏内は素晴らしいねぇ。


「しかし武器……武器かぁ……」

「ほらまいさん、前をちゃんと見ないと危ないよー」

「そうそう」


舞宙さん、マーキュリーレヴを見てすっかり盛り上がっているみたい。

ただ今回は、別にサボり的なサムシングにはならない。なにせいちごさんと才華さんもいるしね。

なお、ふーちゃんとフィアッセさんは、タツヤのバトルに付き合っている。トオルばっかりもあれだし……武器類は完成させたからね。


まぁそれで修理用資材やらも必要だし、資材を買い込むのも兼ねて、みんなでやってきました。


「でも恭文くん、あの……マーキュリーレヴだっけ?
トオルくんのオリジナル武器って言っていたけど」

「……軽くバラしてみた限りでは、普通じゃありませんよ」

「へ?」

「いや、確かにオリジナルです。少なくともアニメやゲーム、漫画作品で、あんな武器セットを見たことはない」

「セット!?」

「えぇ。セットです。あのトランクに、大量に武器が詰めてあるんです」


邪魔にならないよう少し端に寄って、軽くバラした結果を……それをメモしたものを三人に見せる。


「十徳ナイフみたいに、いろんなものが折りたたまれている。大きく分けてソードユニットとガンユニットになります」

「詰められている武器も、名前通りなんだね」

「えぇ」


――≪ガンユニット≫内訳。

前方上側:六連装ガトリング(短銃身の基部でプラ棒(丸)接続。ユニット基部両側で挟み込み)。

前方下側:ショットガン(せり出し式の短銃身タイプ)。

後方上側:ロケットランチャー(側面に肉抜き穴あり)

後方下側:レールガン(二つ折りの長銃身。銃身の接続がCの字型ジョイント。銃身下部に肉抜きあり)。


≪ソードユニット≫内訳


前方上側:ソー(のこぎり)。

前方:下側:アーミーナイフ。

後方上側:ソード。(幅広の両刃剣)

後方下側:ブレード(片刃の細剣。そのまま展開すると峰打ち状態になるので、横に出し、斬り抜けのときなどに使うと有効か)。

表面前方:ビームサーベル。

表面後方:レイピア。



「……どの武装も内部へ収まるように、奇麗にセットされているんです。
しかもユニット自体も三ミリ丸棒で接続できるから、ジョイントやグリップパーツがあれば……本当にどんなガンプラにでも付く」

「それ、私のV2にも」

「付きます。……ただあれ、自作品にしては出来がよすぎるんですよ。
まるで金型から生産した、商品としてのプラモみたいで」

≪オリジナルの武器を自作でコピーしたなら、多少の歪みやなんかもできる場合があるんですけどねぇ。それを修正した気配も……いや、してはますけど≫

「でも作ってからコツコツって感じじゃない。成型前の精度計算が、完全に素人を超えている。
……3Dプリンタの類いならまだ分かるけど……」

「でもあの別荘、いろいろ見せてもらったけど……そんなのあったかなぁ」

「僕も見ていません」


才華さんと一緒に首を傾げながら、改めて思い出すけど……うん、やっぱり思いつかないや!


「ねね、その3Dプリンタならいけるの? 恭文くんとサイちゃん、納得って感じだけど」

「理論上は可能です」

「でもハードル、かなり高いよね……!」

「えぇ……」


実は最近、ガンプラの改造やらオリジナルパーツ作成は、新しい時代を迎えている。それが3Dプリンタ。

3DCADとプリンタそのものの発達により、ガンプラの武器やら、ついつい不満が出がちなハンドパーツやらを作っているモデラーさんも多い。

雑誌作例などを受けるプロモデラーさんについては、それで未キット化のモビルスーツをスクラッチすることもある。


ただ、ハードルが相応に高い。まず立ちはだかるのは金銭の問題。


「まず造形に使う3Dソフト。
そのソフトをまんべんなく動かせるだけの高性能パソコン。
更に作り上げたデータを出力し、実際にものを出す3Dプリンタ……どれもこれも、それぞれ十万以上は覚悟した方がいいです」

「全部で三十万!?」

「まいさん、もっといくよ。パソコンもそこまで動かせるのだと、ほんと二十万クラス。
プリンタも市販品があるとはいえ、まだまだ新技術だから……やっぱりそれくらいしちゃうし」

「で、次のハードルが……そもそもソフトをちゃんと使いこなせるかどうかです」

「あぁ……3Dで造形しちゃうしね」

「そういうハードルを超えて、使いこなしているモデラーさんも多いんですけど……まだまだ発展途上ですね」


使いこなせる人だと、ガンプラ製作のみならず、いろんなモデリングの大きな手助けになる。

それにソフトの価格や性能関係も、今後の技術発達でハードルが下がる可能性もあるし……うん、これから大きく変わっていく芽の一つだ。


「なのでこれくらいの精度のパーツを、個人製作すること自体は……まだ理解できるんです」


懐から取り出すのは、ばらした上で組み直したマーキュリーレヴ。データ取りは終わったしね。


「問題はそれを出したのがトオルで、トオルにはその手のIT技術が見当たらなくて、別荘にもアイテムがなかったことで……」

「会社の人に頼んだとかかなぁ……。
3DプリンタやCADなら、都市開発の参考模型とかで使いそうだけど」

「あぁ、それならまだ……」

「だが恭文、そうじゃなかったら……どうなる?」


そこでヒカリが何気なく声を漏らす。……それが妙に突き刺さって、つい顔を背けてしまった。


「恭文くん、どうした?」

「…………かなり、怖い想像が頭をもたげるんです」

「具体的には」

「…………金型から作ったとか……!」

「……おいおいおいおい……」


若干声が震えているのは、気のせいじゃない。というか、それをやると……3Dプリンタの領域を遥かに超える世界なのよ!


「金型って、あれだよね。ガンプラ……というか、プラモのランナーを作る設計図。
あの、そこにプラを流し込んで、固めて完成ーって」

≪それです。そこからやったなら一千万くらい……いや、もっといきます≫

「またまたー。なにかの冗談…………じゃないの、か……!」

「いちさん、本当だよ! 今なら金型もCG設計できるけど、それでも専門技術なんだから! 維持費だってそれなりだよ!?」

「あぁ……HG ガンダムとか、その辺りが絡んで絶版になったしね」

「そう! なんにしても、そういう人に依頼をかけて作ったとか……そんなレベルなのは間違いないって!」

「と、とりあえず凄い世界だっていうのはよく分かった……!」

「だね……」


舞宙さん、いちごさん、そんな引き気味にしないでください。僕もビビっているくらいですから。


「ですが……そんな武器をタツヤさんとお兄様に渡したというのは、中々に意味が深いですね」


シオンは髪をかき上げ、思い出すように目を細める。その瞳が見つめているのは、改めてしまったはずのマーキュリーレヴ。


「昨日の話から察するに、楽しくバトルできる相手が……また友達と遊べるのが、相当に嬉しいんだろうなぁ」

「……大事に使っていこう」

「ん、そうだね」


あう……舞宙さん、それで頭を撫でるのはー。僕もあの、男の子なのでー。


「でもタツヤ君……大丈夫かな……」

「舞宙さん?」


舞宙さんが少し不安げに……瞳を揺らしながら、ぽつりと漏らす。


「ほら、アルトアイゼンも言っていたよね。たくさん武器があっても、使える量……割り当てられるリソースは限られるって」

「まいさんには耳の痛い話だよ……トリガーハッピーでリソース全消費するし」

「あたしを危ない奴みたいに言わないで!? というか、神刀をぶん回すいちさんにだけは言われたくない!」

「私はお国柄だから」

「別府の人達にちょっと土下座してきなよ!」

「……もしかしていちごさんに変な虫が寄り付かないのって、みんな神刀でねじり潰されているせいじゃ」

「それは心外だよ! 私だってそれなりにこう、思うことはあったんだよ! 高校の先輩とか!
なんでか三分の一も伝わらなかったけど……恭文くんはほんと、どうしてなんだろうね。見ていると思いっきり口説く感じでもないし」

「それは僕が聞きたいんですー!」


…………あれ、でも待って。確かいちごさん、高校は女子校…………うん、あえて触れないことにしておこう。


「いや、でもいちさんもあれだよ! 悪いところがあると思うな!?」

「今日の春山は強気だなー」

「というか昨日もひどかったよね! わたしと二人が不安だから、やっくんと代われーって言ってきたし!」

「才華さん、なにをやったんですか?」

「とりあえず謝っておこう? いちさん、時折攻撃的なだけで基本はこころの広いいい子だから……甘えず反省して、ね?」

「揃ってあたしに非があるって断定しないで!?」


いや、だって……さすがに初対面で男の僕相手に、それは。しかも僕、一緒に寝ている人の胸を揉む癖があるって進言していたのに。

しかもいちごさんは、悪意でそういうことを言うタイプでもない。というか、そこまでこじれているならそもそも同室で合宿とか遠慮するでしょ。

となると、才華さんが前段階で、それなりにかましたとしか…………。


「あのね……昨日はまた気持ち悪かった」

≪凄いボールを投げますねぇ。普通ならこの時点でキャットファイトですよ≫

「このボールが投げられる関係性って、希少だよなぁ。見ているとハラハラだが」

「もう……いちさんは何を言っているの? 私を気持ち悪くさせているのは、いちさんだから」

『………………』


才華さん、それ……もじもじしながら言うことじゃないです。見てくださいよ、気づいてくださいよ、いちごさんの鉄面皮を思わせる表情に。

というかあの、ごめんなさい。僕達もフォローできない程度には……きついです。


「……サイちゃん、ごめんね? 私にはもう恭文くんという彼氏がいるから」

「はぁ!? え、まだ続いていたの!?」

「僕もそれ、びっくりですよ! あそこで終わりじゃなかったんですか!」

「……いちさん、恭文君も遊びでお付き合いとか、そういう近い感じができる子じゃないから。
というか、また熱暴走寸前まで考えるよ? ちゃんとしなきゃーって」

「……だって、気持ち悪かったんだよ?」

「凄く分かる! 分かるけど駄目だよ! 昨日だって……それはねぇ!」

「は、はい……」


だってあの、さすがに添い寝は……僕、別のところで寝ようとしたけど、結局押し切られたし。

……でも、凄くどきどきで嬉しかった。フィアッセさんやふーちゃんもそうだけど、受け入れられている感じがして……幸せというか……。


「……まぁそれもそうか。じゃあこの件はまた沙羅さんにお話して」

「沙羅さん!? え、忍者が介入するの!? マネージャーとかじゃなくて!」

「春山、そういう感じでよろしく」

「納得できないからー!」

「たださぁ、まいさんも駄目だよ? 胸部装甲増量のおねだりとか……恭文くん、肖像的に大丈夫かってメッセージ送ってきたし」

「あたしは大丈夫だって言ったんだけどなー。なにせほら、隠れているし」


ごめんなさい、舞宙さん。それについてはなんのコメントもできません。だってほら……ね?

だから僕にジト目を向けないでください。 さすがに持て余したんです。


「というかほら、それよりタツヤ君だよ!」

≪……初心者のタツヤさんだと、持てあますかもしれないって話でしたね≫

「実際私も、アサルトバスターは全ブッパするしかなかったしさぁ……!」

≪いや、あなたは積極的にそれを楽しんでいたでしょ≫

「そうですよ、舞宙さん……一緒にしちゃいけません。タツヤはトリガーハッピーじゃないんです」

「なんで諫められてんのぉ!? というかそれ、ムカつくんだけど!」


うわ、今度はなんかほっぺたをむにーって! なぜだぁ! 自分のバトルを振り返ってから言ってよー! あれはほんとビビったんだから!


「まぁ、その辺りもヤスフミが相談に乗ってやれよ。必要ならよぉ」

「だ、だね……。タツヤ、生真面目だし考え込みそうだもの」

「……じゃあ恭文君は、使いこなせそう?」

「練習は必要ですけど……ビームサーベル以外は、実在兵器ですから」

「忍者としての戦闘経験が生かせるわけかー。というか、レイバーならガトリングとかもあったよね」

「えぇ。TOKYO WARで殴り合ったイクストルにも」

『――――おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


するとそこで鋭い一喝が響く。一体何だろうとそちらへ……バトルベースがあるコーナーへ向かうと。


「あれは……」

――軽井沢ショップ主催 フリーバトルロワイヤル――

「フリーバトルロワイヤル……あ、これか」


舞宙さんが、ちょうど近くの張り紙を見つける。昨日とかはなかったのに……急きょ開いたって感じかな。


「自由参加のバトルロワイヤル? 試合ごとに最後まで生き残ったファイターには、当店のお好きなガンプラをプレゼント……おぉ、これは楽しそう!」

「最近バトロワ系ってゲームでも流行っているし、その流れかな! PUPGとか!」

「ありましたねー!」

「……実はあれの日本語音声、アフレコしたんだよ」

「舞宙さんがなんか凄い仕事をしている!」

「やっくんの中では、そこが凄いことになるかー」


いや、年齢制限やらパソコンゲームという点でちょっと……小学生の僕達では手出ししにくいんだけど、それでも人気ゲームとして話題に昇ることも多くてさ!

それに舞宙さんが出ているということはだよ!? それはもう大人気ゲームの主役同然……え、言い過ぎ!? でもいいの! 楽しいから!


何よりバトロワ系は生き残るための戦術構築も大事だし……だから大盛り上がりになって然るべき、なんだけど。


「でもガンプラバトルでバトロワかぁ。となると極力戦わず、スナイパーライフルみたいな遠距離火器でちまちまと……」

「……恭文くんがやると、本気出しすぎでちょっと怖いよね。というかほら、プロだもの」

「でもほら、じわじわとわけも分からず倒されていく様とか……ドキドキしませんか?」

「そのドS心、私には理解しにくいんだよなー」

「いや、あたしは分かる……分かるよ! いちさんが困って上目遣いしているときとかも最高だし!」

「うん、まいさんはそうだろうね。……でも……」

「いちごも気づいたか。……にしては、なんか盛り上がりに欠けてねぇか?」


二人が言う通りだった。見る限り一度に二十数人参加って感じなのにさ。それなのにこう、静かなのよ。

というか、みんな諦めの視線でバトルベースを見ていて。だから今残っているプレイヤー二人に注目。


『くそ! くそ! くそぉ!』


一人は……フリーダムガンダムか。ハイマットフルバーストを放つけど…………敵はそれを受けても平然としている。

砂漠を踏み締め歩むのは、フリーダムの三倍近い巨体で……!


「…………なに、あのデカいの!」


舞宙さんが驚くのは仕方ない。明らかにオーバーサイズだもの。

でも知っているはずだ。その姿を……煌めくライトグリーンの粒子に、右手のGNソードIIIが放つ圧力を。


「あれ、ダブルオーライザーだよね! でもサイズがおかしくない!?」

「パーフェクトグレードか……!」

「パーフェク……?」

「六十分の一サイズのガンプラです! 大型で高額な分、内臓ギミックやパーツも多数なんですけど」

『――ふん!』


そしてダブルオーライザーは、フリーダムにGNソードIIIを振るう。

可変複合兵器であるそれは、折りたたまれた刃を展開しながら逆風一閃。

ダブルオーライザーの加速と会わせて、驚異的な……災害に等しい暴力となり、フリーダムを真二つに両断し、爆散させる。


≪BATTLE ENDEAD≫


そうしてバトルは終了…………でも周りは意気消沈。というか死屍累々だった。


『だ、第三回ロイヤルの優勝者は……ダブルオーライザーを操る、獅子神さん』

「おっしゃあああああああ――! じゃあもう一回だ!
あ、今の景品はPGのストライクフリーダムでお願いします!」

『いえ、あの……そろそろ次の方に』

「え……勝敗に拘わらず、連続三回まで挑戦可能って書いてありましたよね」

『いや、それはそうなんですが』

「自分、まだ二回目なんですけど」

『あ、はい……』


あぁ、うん……大体状況が分かった。つーかあの人の足下にあるPG≪ウイングガンダムゼロ(EW)≫を見ればバッチリだ。


「……なるほどね。まっとうに力押しで、商品ゲットしまくりと」

「むむむむ……なにあれー! 一回とかならともかく、さすがに連続はどうなのかなー!」

「まぁ、ルールとしては問題ないですけど……」


張り紙をチェックするけど……うん、スケールの制限はないね。

ガンプラバトルもまだ始まったばかりのものだし、その辺りはお店の裁量も大きいしなぁ。


「PGって辺りがキモですね。内部フレームがあることや、LEDなどの電飾によるギミック再現が、ガンプラの性能を上げる一因なのは既に実証済みです。
しかもあの手の大型モデルは、そういう精密さを楽しむのが特徴ですから……」

「とはいえ、春山さんの仰る通りですね。あまりスマートとは……他はHG(1/144)ばかりですよ?」


PGを出すこと自体は決して悪じゃない。しかもこれだけで五万くらいの儲けだからなぁ。賞金と考えたらかなりの儲けだよ。プラスになっているよ。

とはいえ、その煽りを受けている人がいるのも確かで……。


「店長、どうしましょう……!」

「いや、でもルール違反じゃないしなぁ!」

「スケール制限しておけばよかったぁ! まさか違うだけであんなに差があるなんて!」


店員さん達は、ルール設定そのものが甘かったと猛省中。


「ふぁあぁああ……僕のハンブラビがぁ」

「元気を出して。また作って直せばいいから」

「トールギス……」


バトルロイヤルに参加した子ども達は、壊れたガンプラを手に涙目。

いや、バトルでの破損は覚悟していたんだと思う。でもこうまで一方的かつ圧倒的に殴られるのは予想外すぎるでしょ。

あのダブルオーライザーも、ただ素組みしただけじゃない。表面処理やエッジ立て、筋彫りの調整などきっちり作っているしさ。


……誰も悪くない。少なくともこの中に、悪意を持って動いている人間なんて一人もいない。

ルール設定が甘かったなら、それを利用して勝つ……当然のことだ。僕だってそうして生き残ってきた。

でもこれが当然のまま終わったら、同じことを考える人達も増える。それで遊びにくい部分が……飛び込みにくい部分ができてしまう。


それも仕方ないことだ。そもそもPPSE社が、バトルでの破損を当然にした設定にしているのも問題なわけで。

だから仕方ない、仕方ない、仕方ない………………だけど。


「……なんか駄目な空気だなぁ」

「ん……」

「……」


それで納得できるほど、これを見過ごせるほど、嘘に塗れて生きるつもりもない。

だから、無言のまま困り果てた店員さん達に近づき……。


「あの、次の試合、参加メンバーはもう埋まっていますか?」

「……え」


店員さんが呆けた顔をするので、笑って返してあげる。


「参加させてください。楽しくバトルができそうなので」

「え……あの、ちなみに機体は」

「安心してください。オリジナルだけど、ちゃんとHGサイズです」


仕上がったばかりのG-EZBWを手に取って見せてあげると、店員さんが戸惑い半分という顔をする。


「いや、でも……ご覧の通りなのですが」

「だから楽しめるんです。……それで、枠ってもう」

「あ、はい。次の試合は三十分後です。粒子補給が必要なので……それからの参加になりますが」

「ありがとうございます。じゃあエントリーで」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


…………恭文君、自然に飛び込んだよ! あれを見て楽しくバトルできるとか言い切ったよ!

しかもG-EZBW、完成直後なのに! それで勝てるの!? なんとかできるの!?


「い、いちさん……まいさん!」

「迷いなくかー」

「……まぁ、仕方ないなぁ」

「えぇ。お兄様がこれを見過ごせるはずがありません」


ただ、ショウタロス達は呆れ気味に見守る姿勢を取っていて……あぁ、そうだね。

みんな、笑えない。悲しんで、つまらないって……諦めて、腐ってさ。

でも誰も悪くない。だったらどうする? そりゃあもう……パーフェクトだろうと、蹴散らすしかないわけで。


でも、自分が痛みを……損を払うかもしれないのに。誰に頼まれたわけでもないのに。


「……まぁ、今更か」


うん、今更だ。私はそんな子に助けられたし、年の差なんてすっ飛ばして一緒にいるわけで。

だから笑って、エントリーを済ませた恭文君に……エールを送る。というか、背中を軽く叩いてあげる。


「しっかりやろうね」

「はい……でもごめんなさい。ちょっと待ちぼうけさせちゃいます」

「納得しているから大丈夫だよ」


というか……ふふ、まぁいいか。あとでビックリさせてあげようーっと。


「それより勝算は」

「勝つかどうかも分からないから、楽しいんでしょ」

「言うなー」

「まぁいつものことだな……もぐもぐ」


しかも本気だからなぁ。笑って、アレと……あのデカブツと戦うのが楽しみって言わんばかりだしさぁ。

……慣れっこじゃないことだとついワタワタして、わんこみたいに付いていくばかりだけど、ここはどっしり構えて見据えよう。


私、これでも年上だし? 姐さん女房だし? そりゃあ威厳くらいは見せないとねー。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


三十分……いや、十五分あれば十分。作業スペースを借りて、手早くマーキュリーレヴに手を入れていく。

ソードユニットの実体剣は研ぎ澄まし、ロケットランチャーはピンバイスで穴を開けて、砲弾をセット。肉抜き穴も即行効果パテで埋めて、削って整形。

あとは手早くジャーマングレーで塗装……そしてコート! ラッカーが乾きやすくてよかったね! じゃなかったらアウトだった!


「うっし、ひとまず完成!」

「よくできたね……! 観音みたいに手を動かしまくりだったし!」

「そこはもう、タイミングのよさがあればこそです。……さて」


G-EZBWにはマーキュリーレヴを持たせて……これで準備完了。


「――次の試合まで五分前です! エントリーされた方はバトルコーナーに集合をお願いします!」


店員さんの案内に従い、バトルベースに移動。ただ……参加人数は僕と、あのPGダブルオーライザーを使ってきた男だけ。


「あの、参加人数の方が集まらなくてですね……なんでしたら試合を中止しても」

「このまま続けさせてください」

「いや、でも」

「言ったでしょう? 勝てるかどうか分からないから楽しいって」

「そうそう。そういうことですからご心配なく」


うん、舞宙さんの言う通り…………舞宙さん!?

え、なんで隣に……V2まで取り出して、なにしているの!?


「……ヤスフミ、舞宙のアホもエントリーしたんだよ」

「はぁ!? いや、舞宙さんは」

「私の勝手で戦うだけだもの」


その不敵な笑いで……問題なしと張られた胸で、立ち居振る舞いで、思い違いを突きつけられる。

というか、ギャラリーに紛れたいちごさんと才華さんを見ると……半分諦め気味に、大丈夫と頷きが帰ってきて。


(……そうだった)


舞宙さんは僕より大人で、自分で道を切り開いた強い人で……とても奇麗な歌を、声を届けられる人で。

だから僕が守ってあげなきゃとか、助けてあげなきゃなんて侮辱に近くて。僕は、舞宙さんよりこういうことにちょっと詳しいだけなんだ。


「……出落ちハッピートリガーは困りますからね」

「当然――!」


だからそんなエールを送り合って、笑って……舞宙さんが出してきた拳に、自分の拳をコツンと、優しくぶつける。


「……分かりました。では少人数でのバトルですので、時間制限も設けさせていただきます。試合時間は十分となりますので」

「了解です」

「それまでに勝てなかったら、仲良くゴールかぁ。これは気張らないとね」

「ふ……そう来るのなら、お互い盛り上がりそうでなによりだ」


あれ、もう一人……サマーコートに黒気味の髪を揺らす男がいる。

年は、舞宙さんとさほど変わらないくらい? その右手には、トリコローレカレーの……ウイングかな。

でも右肩アーマーは鎧のような丸みを帯びた形状だし、左肩アーマーの内側から、バインダーパーツのようなものが伸びている。


それに二枚の翼が左側に寄せてあって……アシンメトリーってやつか!


「えっと、あなたは」

「美しいレディ……小さな彼氏と盛り上がっているところ悪いな。俺も参加させてくれ」


この言葉……鈍りが少しあるな。でも日本の方言じゃない。


「……イタリアの方ですか?」

「あぁ。リカルド・フェリーニだ」

「蒼凪恭文です」

「あ、天原舞宙です……というか恭文君、よく分かったね!」

「言葉のなまりが若干そっちの発音に近かったので」

「それが見抜けるなら、不安はないな。……そんじゃあまぁ」

「――――あとちょっとで制覇目前……三連勝記念の限定ガンプラゲットだ!」

「鬼退治といこうか」

「えぇ」


二十代後半のその人は、眼鏡を正し当然と笑う。


「悪いが加減はしないよ、お嬢さん方! そちらの君もだ!」

「いらない遠慮だな。バーリトゥードーを割り切れず、勝手に飛び込んだのは俺達だ。お前さんは好きなようにすればいい」

「うんうん……実は結構、お兄さんのことは気に入っているよ。
勝利のためにありとあらゆる努力をするのは、当然だもの」

「よく分かっているね! そう、勝利こそ至上! 戦場とは非情なのさ!」

「……だから、こっちも相応に楽しませてもらうよ」


そうだ、これは滅多にないチャンスだ。


「PG相手と真正面からドンパチなんざ、滅多にできることじゃないもの――!」

「……って、恭文君!?」

「ちょっと待てお前ぇ!」


滅茶苦茶楽しいバトルになりそうで、もう笑うしかないもの!


「だって燃えるでしょ! この文字通りの無差別戦! 勝ったら絶対楽しいし、競り合えても絶対ワクワクだし!」

「義憤に駆られたとかはないのかなぁ!」

「それはそれ! これはこれです!」

「「割り切るなぁ!」」

「……お前、ほんとバトルマニアだな!」

「ですが純粋に、闘争に燃えさかるお兄様も素敵です」


――そうして、バトルは始まる。



≪――Plaese set your GP-Base≫


ベースから音声が流れたので、手前のスロットにGPベースを設置。

ベースにPPSEのロゴが入り、更にパイロットネームと機体名が表示される。


≪Beginning【Plavesky particle】dispersal. Field――Forest≫


ベースと足元から粒子が立ち上り、フィールドとコクピットを形成。

逃げ場も、隠れる場所もない平原かぁ。

地形を利用したトラップは無理……それで幾つかのプランを取捨選択……その上で修正。


≪Please set your GUNPLA≫


指示通りガンプラを置くと、プラフスキー粒子がガンプラに浸透――。

スキャンされているが如(ごと)く、下から上へと光が走る。

カメラアイが光り、首が僅かに上がった。粒子が眼前に収束。


メインコンソールと操縦用のスフィアとなる。

モニターやコンソール、計器類は淡く青色に輝き、アームレイカー型操縦スフィアは月のような黄色。

コンソールにはガンプラ内部の粒子量も逐一表示され、両側に配置された円系ゲージが忙(せわ)しなく動く。


両手でスフィアを掴(つか)むと、ベース周囲で粒子が物質化。

機械的なカタパルトへと変化。

同時に前・左右のメインモニターにカタパルト内の様子が映し出される。


≪BATTLE START≫

『リカルド・フェリーニ――ウイングガンダムフェニーチェ! 出るぞ!』

『天原舞宙――V2ガンダム天で決めるよ!』


…………一呼吸置いて、アームレイカーを押し込む。


「G-EZBW――蒼凪恭文! 目標を駆逐する!」


カメラアイをライトイエローに輝かせながら、カタパルトを滑り、青い空へと飛び出す。

……モニター越しに流れる景色。アームレイカーに反応し、バレルロールやスライドをよどみなく行う愛機。

うん、やっぱりこの感覚が好きだ。自分のガンプラと一緒に飛んでいるこの時間が…………。


「……っと!」


響く警告音より早く、右・左と連続スライド移動。純正太陽炉の粒子を吐き出すようにまき散らしながら、次々飛んでくる三連ビーム砲を回避。

もはやメガバズーカランチャークラスの乱射だけど……見えた。デカいから青い空でもくっきり映る。


「ほんとヤベぇな! 一発当たったらそこで終わりだぞ!」

「最初から分かっていたことでしょ。
GNヴァリアブルバズーカ、Eモードに移行」


大丈夫、狙いは分かる。だから今のうちに、こっちもバズーカを展開。

右脇からアーム接続された砲身がせり出し、展開。その砲口にエネルギーが収束する最中、左のレヴ≪ガンユニット≫からレールガンを展開して、チャージ。

このバズーカには逆手持ち用のグリップもあるけど、今回はレヴ装備だからねぇ。それでも撃てるようには調整しているけど……さて。


「長距離照射≪ロングバースト≫セッティング……ファイア」


バースト連射されるビーム砲を右にやり過ごし、バズーカとレールガンでダブルアウトレンジショット………………数秒後、命中を知らせる爆炎が生まれる。


「やった……わけがないよなぁ!」

「うん」


無事を知らせるように、また雨あられと降り注ぐ粒子達。それを避けながら、レールガンは一旦収納っと。

望遠映像で映る機影……傷くらいは入っているね。でも微弱だった。肩口も、コクピットブロックも、小さな日々入っただけ。まぁ当然だ。これで倒せるなんざ思っちゃいない。


『いい腕をしている……しかし!』


別にいいよ。ただ幾つかの確認と、隙を作りたかっただけだし。


「センサードローン各機射出。オートモードで安全圏へ移動後、ジャミング開始」


バックパック左側のドローンを次々射出。GN粒子でステルス状態を保ち、戦線から離脱する。

そこから離れるように……流れ弾が当たらないよう気をつけつつ、ヴァリアブルバズーカを連射。

ただまぁ、さすがに……防御もなく、平然と装甲で受けて、流してくれるのは、ちょっとショックだけどね! フル出力じゃないと、傷一つ入らない……いや、違う!


装甲表面の強度補正に粒子を回してきた! こりゃあ普通には抜けない……けどさぁ!


「……!」

『遅い!』


ダブルオーライザーは、右手のGNソードIIIを振りかぶり、折りたたまれていた刃を展開。

ライトグリーンのクリアパーツが……刃を構築するそれが淡く輝き、巨体に似合わぬ加速を見せながら突撃してくる。


『ここは……俺の距離だぁ!』


その薙ぎ払いを飛び越え、返す刃をバレルロールで回避……しつつ、右のレヴ≪ソードユニット≫からビームサーベルを、ガンユニットからはショットガンを展開。

甲剣として展開したサーベルを、全身運動で逆風に振るう……もちろん打ち合うつもりはない。というか、勝てるはずがない。狙うは腕の……GNソードの基部。

一瞬の交差……その間に突き立てたサーベルは深く食い込み、そのままG-EZBWのボディごと引っ張られる。


そう、問題ない……なんの問題はなかった。本体はともかく、可変武器でギミックも多いGNソードIIには、相応の隙があった。

ゆえにビーム刃はしっかりと、GNソードの基部に食い込み……その中心を、可動部を溶断していた。


『なに!』

「まぁそっちの距離なのも分かるけどさぁ」


サーベルの発振をカット。すかさずショットガンの砲口を生まれていた孔に突き立て乱射……向こうが手を出す前にGNソードIIIを内部から破砕する。

GNソードは組み付けられていた部品が次々弾け飛び、数秒後に爆煙に包まれる。


ダブルオーは咄嗟に右手を下げ、腕の破損自体は避けた。でも左手で直ぐさまGNソードIIを腰から抜き放ち、振るってくる。

それも見切り、上昇と下降……下がりながらのスラロームで、すれすれにやり過ごす。

刃から発振されるビーム攻撃にも注意しつつ、本当にすれすれに……引きつけて……!


――蒼凪、接近戦のキモは気合いだ!――

「太田先生の打ち込みに比べたら、断然余裕だわ!」

――見切って捌くにしても、殴り潰すにしても、まず気後れはするな! 防戦一方でも、気合いさえあれば反撃の糸口は掴める!――


あいにくこっちは、あのグリフォンともやり合った太田先生から教えてもらっているのだ!

まぁあっちはレイバーだけどさ! でも、そのノウハウはガンプラバトルにも生かせる!


――その上で相手のリソースを奪え!――


分かっていますよ、太田先生……。


――相手の武器、利用できる状況……ようは選択肢を潰し、行動を単一化させろ!
実際泉のグリフォン退治も神技だとか言われているが、決して特別なことではない!
いいな、自分より強い相手には、まず気持ちで押し勝て! その上でその強みを潰していけ!
そのためなら手段は一切問うな! 我々警察官の敗北は、安全と秩序の崩壊と肝に銘じろ!――


ううん、太田先生だけじゃない。

教わったことは、学んだことは、何一つ無駄にしない。


全部使い尽くして、鬼退治を楽しもうじゃないのさ……!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文君はもう……一人でまた楽しんじゃって! でもあれはヤバい……二刀流でばったばった斬られまくっているし!

展開が早すぎてちょっと置いてけぼりを食らったけど、さすがに援護もなしは……ねぇ! 飛び込んだ意味がないし!


「……行くよ、天!」


空に溶け込むような蒼……拘って調色した蒼に塗られた天は、光の翼を羽ばたかせながら突撃。

左腰にセットした両刃の銃剣≪メイン武装≫を引き抜き、まずはライフルモードで構える。


「ドライブソードガン!」


恭文君にもアドバイスをもらいながら作ったこれは、銃身下部を握ればライフルに……後部のグリップを握れば剣として使える複合武器。

変形機構もなにもないけど、その分使いやすくて楽ちん! それに気に入っているのは……この弾数よ!

とにかく連射連射連射ぁ! 射撃技術がない分は、数でカバーってね!


でも…………。


「装甲が硬い……!」


全く通じていないんだけど! 太陽炉とかオーライザーとかにも当たっているのに、弾かれてばかりだし!


「…………だったら!」


アームレイカーを押し込み、速度を……一気に最高速へと高める。そのまま展開した光の翼を羽ばたかせ、大きく広げる。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


数十メートルという範囲で仰がれた翼は、それ自体が巨大なビーム刃となる。そのまま、光に溶け込むようにダブルオーライザーと交差。

左脇腹から翼を切りつけ…………ヒットはしたけど、ダブルオーライザーは動きが止まらない。


「浅い!?」

『邪魔だ!』


それでダブルオーライザーは、バインダーからミサイルを大量展開……これはマズいと、更に翼を羽ばたかせ、慌てて退避。

左に大回りしつつ、追ってくるミサイルをドライブソードガンの連射でなんとか撃墜していく。


『舞宙さん、上に飛んで!』

「え……」


一瞬呆ける……でもすぐ意味を察して上昇。すると足下すれすれに、ビーム砲が通り過ぎる。

GNソード……いや、違う!オーライザーのバインダーに仕込まれたビームガンだ! いや、ガンって大きさじゃないけど! 天の五倍くらい大きいし!


『よそ見をするなよ、大将首!』


――――でも、それと同じくらいの……特大のイオンビームが地上から飛んできた。

オーライザーは咄嗟に動きを止め、バインダーで……そこから吹き出したGN粒子でビームを受け止める。

でもさすがに耐えきれず、爆発が起こり、あの機体が地面へと足を付ける。ボディに……傷は、なしかぁ! 本当に頑丈すぎない!?


とにかく今の射線元を辿ると、あのトリコローレカラーのウイングがホバリングしていて。

そのままダブルオーライザーのビーム砲をすり抜け、ビームライフルを連射。

先ほどよりも細い光条はダブルオーライザーを叩くけど、やっぱり効果が薄くて。


「バスターライフルの下に……普通のライフル?」


あぁそっか。三発しか撃てないのが問題だから、補助装備として搭載しているんだ。あれなら継戦能力も問題ない。

それに、あの動きも凄い……前進していたと思ったら、墜落を思わせるように停止して、そこからすぐに上昇する。左右へのスライドも、私なんかよりずっと機敏。

不安定だけど、荒馬だけど、それを乗りこなしているというか……だったら、やっぱり負けていられない!


「さて、どうしようかなぁ……ちまちま叩いていても、通用する気がしないけど!」

『さすがに出力がとんでもねぇからなぁ!』

『リカルドさん』

『呼び捨てでいいさ、デンジャラスボーイ』

『なら僕もそれで』


男の子同士仲良くなっているのを見て、ほっこりしていると……。


『こっちに合わせて。普通のライフル射撃でいいから』

『あぁ!』

「だったら私も!」


基本的に連射するのがお仕事なドライブソードガンだけど、それだけじゃない……ちゃんと単発火力があるモードもある。

更にメガビームシールドを改造した≪ポップアップシールド≫も構え、エネルギーチャージ。



『GNヴァリアブルバズーカ、EモードAPセッティング。チャージ――――ファイア』

『おらよ!』

「いけぇ!」


ダブルオーライザーの前方からは、バスターライフルにも負けないビーム砲弾が……。

斜め下からはビーム射撃が……。

横からはV字型のビームプレッシャーと、単発砲撃が……。


ダブルオーライザーはそれに対して、どうしたかというと。


『二度はやらせんよ!』


堅実に、周囲に粒子のフィールドを……球体上に展開し、全て無碍に防いだ。


『……やっぱりGNフィールドか』

「硬ぁ!」

『PGだからなぁ!』

『GNミサイル!』


それで今度は、フルバーストでミサイルを……私達は各々、ばらけるように大きく退避!

私は光の翼もあるから大丈夫……いや、受けると一発アウトだろうけど、逃げ続ける程度ならね。

リカルドさんも、見ていると凄腕っぽいし、ビームライフルの方で器用に撃墜もしている。こちらも大丈夫。


となると、問題は……ヘイトを稼いで、あたし達が攻撃するチャンスを作っていた……そのために危険を買って出ていた恭文君で……!


マーキュリーレヴのガトリングを乱射し、弾幕展開。それで一発、また一発とミサイルは爆発させるけど…………駄目だぁ!

こっちの大きさも半端ないから、ほとんどが弾頭に弾かれている! 結局追い立てられるしかない!


『決めるぞ!』


そこで更に、ダブルオーライザーは紅蓮に染まる…………って、あれはトランザム!?

しかも右手のGNソードを、高く振り上げて……一本だけを高く振り上げて……。


『ライザァァァァァァァァァ!』


それが雲を、空を突き抜け……一万キロ単位の巨大な、神の裁きを思わせる輝きとなる。


『おいおいおいおい……それ、GNソードII一本じゃあできなかっただろ!』

「……恭文君!」

『ソォォォォォォォォォォォォォド!』


声を上げてももう遅い。ミサイルは回避していたけど、それで動きが制限されて……恭文君の頭上に、派手に……その輝きが振り下ろされて。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


まぁそうくると思っていたよ。堅実に……ほぼ間違いなくさぁ。

なにせスペックでは圧倒的。こっちは一撃死で、向こうは何発受けても基本問題なしのヌルゲーだ。そりゃあ強みで押し切るよ。


…………だから、こっちも相応の手を打たせてもらった。


「…………ジャマー開始」


コンソールを叩いた瞬間、僕へと密集し、回避ルートを塞いでいたミサイルが……その全てが起動を乱す。

あるものは空へ昇り続け、あるものは楽しげに墜落し、あるものは同胞を巻き添えに焔となる。

だから、即座に……そうして空いた回避コースへと飛び込み、すれすれでライザーソードを回避。


「トランザム」


こちらもトランザムを発動……ただし長時間じゃない……十数秒だけ。


「GNヴァリアブルバズーカ、フルチャージ」


トランザムの勢いを生かし、そのまま隙だらけなダブルオーライザーへ。

もちろんライザーソードが大地を真っ二つにしている最中だから、器用にGNフィールドも張れない。

だからすれ違いざまに……脇を抜けながら、右手に合わせて動いていた、その柄明菜左手に……GNソード目がけて、全力射撃。


「――ファイア」


極光が走った瞬間に、ソードユニットのレイピアを展開。

放たれた光の砲弾すら突き抜ける勢いで、かざした切っ先ごと突進していく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


それは本当に一瞬……。


G-EZBWは零距離砲撃を敢行。まず砲弾でGNソードIIが弾かれ、そこに目掛けて突貫。

あの……レヴのレイピアでがら空きになった手を貫き、強引に破砕する。ハンドパーツの破片を撒き散らしながらも、G-EZBWは反転しながらも安全圏を取りながら退避。

直ぐさま追加のミサイルが放たれるけど、それもやっぱり変に揺らめいて墜落するだけ。……その爆煙を突き抜け、G-EZBWが更に加速。


レヴから片刃の刀を展開し、そのまま逆手持ちの忍者刀みたいに振るう。その一閃は咄嗟に切り上げられたGNソードIIをすり抜け、ダブルオーの顔面へ。

……あの大きな頭とG-EZBWが交差した瞬間、ダブルオーのツインアイが音を立てて崩れた。


――ちぃ……まだだ! まだメインカメラがやられただけだ!――


とか言っているのかなーと、ちょっと思ったりした。

ただそうは言っても、G-EZBWの動きを捉えられない。無様に振り回された刃をすり抜け、G-EZBWはガンユニットのガトリングを連射。

ダメージを与えられないと分かってても、遠慮なく弾丸で装甲を叩いて……それからまたレールガンとバズーカをチャージ。


これは…………あぁ、そうか。


「センサードローン……戦闘空域の観測の他に、ECMによるジャミングも使える電子の目!」


恭文君、あのデスサイズパックとかとのバトルで、そういうのも大事だって……搭載していたんだよ! G-EZBWのオプション装備として!

だから戦闘空域の中では、ミサイルなどの誘導兵器は使えない。もちろん通信も……本来なら駄目だろうけど。


『――舞宙さん、フェリーニ、聞こえる!?』


やっぱり対策しているよねー! もう声が聞こえて驚きもしないってさ!


『指向性音声だよ! 二人のガンプラ宛てに、ドローン経由で直接声を送っている!』


あぁあぁ……声を対象だけに届かせるってやつか。Eテレの科学番組で見た……ん? ということは。


『当然、そっちの声は僕には届かない』

「恭文君ー!」

『とにかくいい!? ここからが本番だ! 向こうはトランザムを使ってくるから、舞宙さんで仕留める!』

「あたしが?」

『リカルドは上手くフォローよろしく! 舞宙さんは合図したら僕と一緒に突貫! 攻撃ポイントは“見ていれば”分かります!』

「…………OK……!」


うん、普通なら無理だよ。あたし、レイバー搭乗資格とかもないし? V2ガンダム天も今ので能力の八割は見せているし?

でもね……残り二割が肝腎なんだ。突破口さえあれば、あの程度のデカブツは一刀両断できる!


「やってやろうじゃん!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ジャミング中は、音声通信できないのがなぁ。この状況だと接触回線も辛いし……まぁなんとかなるでしょ。


「ち……目が潰されてもまだ動くか!」

「サブの探査装置もあるからねぇ!」


GNソードIIのライフル射撃が次々撃ち込まれる。それを右に左にと避けて、大きく左へ迂回……舞宙さんやリカルドと射線を合わせた上で……奥の手を一つ切る。


「GNヴァリアブルバズーカ、Bモード……チャージ完了」


急停止からのバレルロールで、扇状に広がる変速ビームを回避。その上で停止して……レールガンとバズーカを構える。


「ヴァリアブルバズーカ、ファイア」


今までで一番鈍い音を立てて、走る砲弾。バズーカのスリットからは白煙も吐き出される。


『…………!』


うんうん、当然GNフィールドを展開するよね。それならこっちの射撃が通らないのは把握済み。もちろん接近攻撃を許すこともない。

あとはそれでなぶり殺しってコースが確実なんだろうけどさぁ。でも…………残念ながら甘い。

この砲弾は特別製。というより、発射技術が特別製。奴のメインカメラが潰れてさえいなければ、なんの問題もなかっただろう。


でも半端に塞がれた視界と思わぬ逆転により、完全に油断が生じた。ゆえに……奴は、ダブルオーライザーは、その一撃をまともに、GNフィールドで受け止めてしまう。

……その瞬間、“砲弾にコーティングされた膜状フィールド”とダブルオーのGNフィールドが衝突・相殺。その相互干渉の反発すら推進力として利用し、大口径の実体砲弾は音速を飛び越える。

その弾頭が……その切っ先がコクピットブロックを捉え、粉砕。爆発とともに、亀裂を大きな突破口へと押し広げた。同時にGNフィールドがガラスのように砕け散り、消失する。


(トランザムで不用意に飛び込むから……)


多重弾殻射撃――習得難易度AAランクを誇る≪射撃型魔同士が最初に覚える奥義≫。僕も射撃型ではないけど、精密制御の訓練から使えるようになっていた。

つまり、ヴァリアブルってのはただ弾頭を使い分けるだけじゃない。GN粒子の制御技術を用い、そういう魔法を使いこなすことに意味がある。


でも次は警戒される。だから……ここで一気に決めるしかない。


『…………舞宙さん、今です!』


V2ガンダム天はまばゆいほどに加速……会話もできないのに即座に動いてくれるのは、ほんとありがたいわ。


「リカルド!」


即座にチャージしていたレールガンを発射――バランスが崩れ、ほうけたように停止したダブルオーを……その右手が持っていたGNソードIIを狙い撃つ。

レールガンだけでの破壊は、さすがに火力不足。でもその衝撃を最大限加味し、刀身の腹に当ててやれば……ほら、この通り。

手がその衝撃を抑えきれずに、GNソードIIはこぼれ落ち、回転しながら地面から落ちる。それに気を取られている間に、リカルドが突貫……僕も構わず突撃。


リカルドは……フェニーチェはほぼ零距離からバスターライフルを発射。左の太陽炉を……それが接続されたバインダーを断ち切り、爆散させる。

それで展開されたGNフィールド。そこで接近を封じて、仕切り直せばと考えるのは悪くないだろう。


……でも、忘れていないだろうか。多重弾殻射撃≪ヴァリアブルシュート≫によって、GNフィールドが一部相殺されたのを。

出力で言えば、当然PGの方が圧倒的。つまりあれをなし得たのは、機体出力ではなく効果≪エフェクト≫の問題になる。


だから今度はG-EZBWがGNフィールドを展開。リカルドも後ろで適切な距離を取りながら、左肩の出力機からビームシールドを……いや、たなびくマントを展開し、機体に包み込む。

結果GNフィールドには、二つの孔が生まれ……それを見て取ったV2天も、ポップアップシールドのビット達を展開。

自身を包むように展開したビームシールド。それがGNフィールドと衝突し、相互反応を起こし……V2天を機体ごとすり抜けさせる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


もうやることは分かっている。というか、あたしはそこまで難しいことなんてできない。

できることは……やりたいことは、至ってシンプル。

――羽ばたいて、飛び込んで、ただ撃ち貫くのみ!


「ミノフスキードライブ、セーフティー解除!」


ガンモードで保持したドライブソードガン……その銃身を振りかぶり、光の翼も羽ばたかせながら加速――それに合わせ、ソードガンから光が……ううん、羽が映える。

うん、ソードガンはただの武器じゃない。これ自体がミノフスキードライブを搭載した翼であり、私を……V2天をより鋭く羽ばたかせてくれる。

そしてこの翼は、全てを切り裂く刃にもなる。それを突き立てられる。


(ミサイルはジャマーで無効。取り回しのいいGNソードIIは撃ち落とし、あわよくばハンドパーツを壊し、二刀流を防ぐ。
完璧に思えたGNソードIIも、ビームシールドなら中和できる……どういう理屈かは、後で考えていこうっと! というかあたしも気をつけよう!)


『――――!』


危機を察したダブルオーライザーは、右手を伸ばしてくる。でもその手は、G-EZBWが再び放った砲弾によって撃ち抜かれ……指は根本から瓦解。

更にフェリーニさんのフェニーチェは、左腕のビームガンを……ううん、レイピアみたいな武器を取り出し、ダブルオーの首元に突き立てる。

そのダメージで動けなくなった一瞬……それだけあれば、もう十分だった。


「バリアビット、ポップアップゲート展開!」


浮遊したままのビットが……展開したビームバリアが、その色を変える。

青、いちご色、橙色……三色が混じり合い、鮮やかなグラデーションを作る。

展開した粒子の膜を……機体出力を、速度を一時的に乗化させる扉を、自らの意思で突き破る……その瞬間、世界が、見える風景が光のように加速した。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


腕から生まれる爆煙を……衝撃でよろめくボディを、片方残ったバインダーからのビーム砲もすり抜け、半壊したコクピットブロック目掛けてソードガンを、中の搭乗者フィギュアごと貫く……!

すべて一瞬。あたしの技術力じゃ、本当に一瞬のブーストが限界。でもたかが一瞬……されど一瞬ってね!

恭文君もだからあたしに任せてくれた! あたしなら、捉えさえすれば……羽ばたきを止められるものなんてないって、信じてくれたから!


「ブレイク」

『――――!?』

「フライ!」


ソードガンの出力をレッドゾーンにまで跳ね上げる。翻る翼が内部からボディを、フレームをえぐり、後方へと突き抜け、広がった。

そのまま逆風に振るいながら、機体も反転。ソードガンがダブルオーライザーの上半身を両断し、ダメ押しで同じくフル出力の光の翼も返す刃のように襲う。

それがダブルオーライザーの両腕も断ち切り……完全に抵抗力を失い、そのボディががらがらと崩れ落ちる。


『――――全機、全力退避!』


…………そこで響いた撤退の声に、ジャミングも解けたのだと安堵。

同時にアームレイカーをすぐに引いて、展開したままのビット達もシールドに再セット。派手な……空すら突き抜ける爆炎から大きく飛び退く。

ソードガンやミノフスキードライブの出力も安定域に戻る中、静かに息を吐いた……。


「やった…………」


美味しいとこ取りしたって言われたらそれまでだけど、でも、でも……!


「うっし!」

『あぁ。いいフライトだったぞ、レディ』

「あたしも舞宙で大丈夫ですよ、フェリーニさん。というか、ありがとうございます」

『いや、こっちも楽しませてもらった』

『まぁバトルロワイヤルと言いながら、三対一で殴ったのは反省だけどなぁ』

『利害関係が一致したが故の共闘だ。問題はないさ』

『それもそうか。……となると』


…………あれれ、おかしいなぁ。恭文君はどうしてさらっと私の後ろを取って……レヴのガトリングを展開するんだろう。光の翼でたたき斬られるのに。


『ここからは、どうするか……なんだよねぇ』

「まぁ、確かにね。これで馴れ合って仲良くゴールっていうのも……楽しくないよねー!」

『ふ、お前さん方ならそう言うと思ったぜ。
……ならこのままガチでロワイヤル……やっちまうか!?』

『「おぉー!」』


そうだそうだー! 勝負は勝負! きっちり決着をつけなきゃ面白くない!

それに……こういう形なら私も、恭文君と真正面から戦えるしね。それはかなり嬉しいし……じゃあドライブソードガンはソードモードに持ち直して……まずは。


≪TIME OUT≫


でも…………そこで非情なコールが響く。

私達の機体はそれぞれ強制着陸させられて、粒子がフィールドから、コクピットベースから消えていって……。

あとに見えたのは、感動しきりと目を見開いている子ども達やいちさん達、店員さん達で……。


「おい待て。タイムアウトっつーことは……」

「……そうだった。今回は時間制限が……」

「え、じゃああの……」

『――試合時間終了! 特別ルールにより、生き残ったこちらのお三方に景品をお譲りします!』

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」

「なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ちょ、待って! 十分……もう経っていたぁ! でもあの、ね!? あれからこれは……さすがにないよ! 気合い入れて、斬りかかろうとしたところだったのにー!


「ど、どうしよう……なんか、めちゃくちゃ恥ずかしい!」

「言わないで! 恭文君、お願いだから言わないで! 結局三人がかりでPGをフルボッコにしただけって……あぁあぁあぁあぁ!」

「いや、落ち着け! ここはあれだ……後でまた、やりあおう! お昼を食べたら、楽しく……そうだ、総当たり戦とかどうだ!?」

「「それだぁ!」」


そ、そうだね。とりあえずこの場はもう、決着させて……あ、でも好きなプラモをもらえるんだよね! やったー! だったらなににしようかなー!


「…………お嬢さん方」


もう居心地が悪いのなんのって思っていると……響く完成の中、あのPGのお兄さんが近づいてくる。

その表情とても健やかで、壊れたガンプラも……その破片一つ一つから大事に集めて、ケースに入れていて。


それだけで、この人が決して悪い人じゃないと分かるのが、まぁ単純というか。


「完敗だ……ほんと、凄いよ」

「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

「「ありがとうございました」」


だから試合が終わったらノーサイド……私達みんな、ありがとうの握手。

よく見るとその人の手は、小さな傷がいくつかあった。自分の手を使って、何かを作って、壊して、また作ってを繰り返していく手。


……恭文君もそうだったけど、私も……こういう手を持つ人になりたいな。ここには輝きがあるもの。


≪まぁ予定程度には楽しめましたね≫

「まぁね。……あ、それと僕は男なので」

「え、本当に!?」

「えぇ。小学六年生です」

「あぁ……小学生だったのかい! いや、だったら余計に見習わなきゃ! 自分はPGの大きさやパワーに甘えすぎていた!」


なんだか友達になっちゃいそうな勢いで……その中心にいるのがこそばゆくて。

でも、それよりなにより嬉しかったのは……。


「恭文君……凄いね」


そんな時間を、勇気一つで……頑張り一つで生み出した、この小さな子で。だからV2天は大事に仕舞った上で、恭文君を脇からぎゅーっと抱き締める。

……やっぱり暖かくて、優しいぬくもり。それにいい匂い……昨日のこと、思い出しちゃうな。


「ちょ、舞宙さん! あの」

「バトルでみんなのことも楽しませて、仲良しも増えたんだから。
偉いよ……ん、よく頑張った」

「いや、舞宙さんやリカルドもいたし……それにさすがにこれは、くっつきすぎではー!」

「いいのいいの! もうぎゅーってしたいんだから!」

「でもー!」

「受け止めてやれよ。それが男の甲斐性ってやつだ」

「ちょ、リカルドー!」


やっぱり私は……まだまだ子どもで、瞳を星のようにきらめかせるこの子に、ときめいているみたいで。


少しずつ広がっていく私の世界……その中で手を取り合った君とは、どういう形であれ一緒に、笑って進んでいけたらいいなと、心から願っている。


「……お兄様、天原さん……そろそろ後ろを見てはどうでしょうか」

「後ろって…………あ」


そう、だから……私はすっ飛ばしていた。

昨日、ドキドキしながら触れてもらったことを……いっぱい好きだよーって言ったことを思い出したせいで、本当にすっ飛ばしていた。


「…………おい、パライズ! お前も見ろ! 大事なもんがあるだろうが!」

「ショウタロス君までどうしたのかな。勝利の酔いが冷めるにはちょっと早いし」

「――――楽しそうだもんねー」


………………その、地底奥深くから響くような声に、震え……おののき……恐る恐る振り返ると。


「本当にいいなー。素敵だなー。で…………私達に、言うことはない?」

「まいさんのアホォ……!」


お怒りの笑みを浮かべ、仁王立ちしているいちさんと、その横で小動物みたいに震えるサイちゃんがいて…………だから、私は高らかにこう叫ぶの。


「…………見ての通りだよ! 私達、もうこういう関係なの!」

「舞宙さん、ちょっと黙りましょう! 今は駄目です! 火に油を注いでいます!」

「……お前さん、ちょっと話をしようか。まさか、まさか……あのレディ達もなのか! そうなのか!」

「リカルドもヒートアップしないで!? 混乱がヒドくなるから!」


私はやっぱり、この子に首ったけで……だからガンプラバトルも、お仕事としてだけじゃなくて、もっともっと……高いところまで羽ばたきたいってね。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……圧倒的に大きくて強い敵。いくら味方がいるからって言っても、一瞬でやられちゃう状況は変わらず。

なのにこの子は笑っていた。笑って踏み込んで、危険を楽しんで……それが悪いとか、怖いとか、そういう感情じゃない。ううん、最初はちょっと思っていたのかも。

だけど、それは勘違いで、私の勝手な怯えだと気づく。この状況が……誰もが、倒された人すら笑顔でいるこの状況が、答えなのだと気づく。


「ねね、お兄ちゃん……あのPGやっつけるなんて凄いよ! あのすり抜ける弾、どうやったの!」

「あれは弾にGNフィールドを張って、ぶつけるんだ。するとフィールドが相手のフィールドを相殺するの。
……ほら、GNソード以外でも、SEED DESTINYでアカツキやインフィニットジャスティスがやっていたでしょ」

「あれかー!」

「あの……ダブルオーライザー、凄く奇麗に塗装していますけど、どうやったんですか……。ピカピカしていて……」

「あぁ、それはやっぱり丁寧に磨くことだよ。これくらいピカピカしているかなーってイメージしながら、ヤスリとか……コンパウンドっていう磨き剤を使ってね」

「お姉さん、羽……奇麗だった……」

「ありがとー。……あ、君もV2なんだ。好きなのかな」

「レディ、俺のバトルはどうだったでしょうか……良ければ今度、お茶でも」

「あ、はい……喜んで……」


自分の戦いで……誰かが笑顔になる。なってくれる。そういう時間に繋がっていく。

そんなとき、あの子の顔はくしゃっと笑っていた。危険を楽しむ気持ちがあっても、それを“誰かのため“に繋げる気持ちが、その願いがあの子にはあって。


「……そっか」


本当の意味で納得する。


「そういうことかぁ」


まいさんがどうしてあの……まだ小学生くらいの小さな子に、あそこまで気持ちを向けるのか。

どうしてフィアッセさんみたいな世界的に凄い人が、婚約者だって堂々と名乗りたくなるのか。

それは、幼馴染でメインヒロインっぽい風花ちゃんもだけど……きっとあの子がしゅごキャラ達に描いた夢も、あれに近くて。


……まぁ、それでも気をつけていかなきゃいけないんだろうけどさ。今はともかくって感じでね。

ただ、私もあの子のことは……うん、嫌いじゃないかな。まいさんを泣かせなければ、だけど。


(――本編へ続く)






あとがき

恭文「というわけで、尺の都合からカットになっていたG-EZBWとV2ガンダム天のデビュー戦。
同時に……フラッと通りがかったリカルド・フェリーニが登場。なおこのあとはまた旅に出たリカルドを見送りました」


(フェニーチェもビルドダイバーズ本編よりはちょっと原作に近い仕様。でも大体の装備この段階からという感じに)


◆◆◆◆◆


※V2ガンダム天(あまつ)

開き直って自分の名前を一部組み込んだ、HG V2アサルトガンダムの改造機体。

恭文のバトルやG-EZBW製作の様子を見て、自分でもと思いアドバイスをもらいながら、最新キットだったV2アサルトバスターをチョイス。
というより、光の翼に引かれて、武器もたくさんというところからチョイスした。

色は青二種。拘りの調色である。

実際にVガンダムも見て、合宿での息抜きも兼ねて作業し、完成させた。
ただ舞宙の技量……というより性格的な一面から、重武装のアサルトバスター使用は合わないと判断。

というわけでアサルト装備をベースとし、近接戦闘に振り切って武装変更。
舞宙のおおざ……天衣無縫な性格も鑑みて、武装作成には恭文も協力。

声優業界のガンプラバトルに置いて、舞宙は大気圏すら突破する翼を得て、自由に暴れまくる。


※武装

・耐ビームリアクティブアーマー
機体各部に増設された金色装甲。というか、アサルトV2の追加装甲。
実弾に対しては単純な二次装甲だが、ビームに対しては瞬時に熱融解し、強力なフィールドによって機体を保護する。

舞宙は『肩が重たい』と肩部アーマーは外しているが、その代わり胸部と翼の黄色パーツをこれに見立てた上で、金色に塗装し製作している。


・頭部バルカン砲
牽制用バルカン。二門内臓。


・ドライブソードガン
サイドスカートに装備するメイン武装。
グリップが二つあり、持ち替える位置によりガンとソードの使い分けが可能。モデルはキングゲイナーのチェンガン。
GNソードIIのようなグリップ稼働という方式もあったが、整備や再制作のしやすさ、武器としての頑強さも考え、この方式にしている。

名前通りミノフスキードライブを搭載しており、その推力を刃に変換し、敵を切りつける『光の剣』も発動できる。
剣自体が一つのスラスターでもあるため、より変態的な超機動も可能となっている。

ガンモード
ドライブソードガン銃身下部のグリップを保持して使用。刀身側面の砲門二門からビームを発射する。
分かりやすい突撃思考の強い舞宙にも扱い易い形で、初速と連射速度重視にセッティングされている。
可変機構などはないため、この状態でも甲剣として近接戦闘は可能。

ソードモード

ソードガン銃身後部のグリップを保持して使用。分かりやすく剣として扱う。
銃身やハンドガードにも強度加工を施しているため、そこでのつばぜり合いもできる。

(『いいよ、これ! 分かりやすくて使いやすい! 作り方もメモったし、これならいける!』
『…………なんでだろう。舞宙さんを見ていると、そのメモもなくしそうに思えるのは』
『そこまで雑じゃないよ!?』)



・ポップアップシールド

原典V2アサルトでも使用していた防御装備の改良機。
三基のバリアビット(舞宙はマイ・ストロベリー・サイスと名付けている)との連携により、艦載用にも劣らない大面積ビームシールドが展開可能。
部隊指揮用に、中心部分からV字状のビームを発射する機能も有している。

劇中では大気圏内でのビット使用はできなかったが、ガンプラバトルでは舞宙の改良もあって使用可能。
更に防御のみならず、ビットによりパワーゲートを展開し、その中を透過することで一時的なブーストも可能となる。
(使用例。ガンモードでの射撃。機体そのものを透過させての超加速)

舞宙が自分の所属ユニットであるPOP-UP MELODYと、そこに参加しているいちご、才華、自分自身をモデルに改良した。
パワーゲート能力もユニット名の一部であるPOP-UPから取っている。

後にイオリ・セイが作るアブソーブシステムの走りと言えるが、舞宙の制作技術もあってブーストは一瞬。
更に内蔵粒子も相応に消費する上、シールド本体が破壊されれば使用できないため、使いどころが相当に難しい装備となっている。

(『ソードガン二刀流もいいけど……私やいち、サイスの色は入れたかったんだ。
……恭文君とまた会えて、タツヤ君達と出会うことにならなかったら、ガンプラを作ろうとも思わなかっただろうし。
それができたのも、POP-UP MELODYがあったからこそだもの。だから、どうしてもね』)


・ビームサーベル
原点のような腕部収納ギミックは強度計算もあるため、リアスカートのサイドにホルダーでマウントという形を取っている。左右それぞれに二基装備。


・ビームシールド
両肘に搭載している防御装置。ただ舞宙は防御よりも展開したビームを腕に纏わせ、ナックルとして扱うことが多い。
武装をなくした場合のセーフティー敵扱いだが、本人の資質的に殴る方が分かりやすいとのこと。

(『おらおらおらおらおらおらおらぁぁぁぁぁぁぁぁ! とっとと吐きやがれぇ!』
『まいさん、チンピラだよ』
『ボディにしておいてやるからよぉ! ほらぁ!』
『聞いてないし…………恭文くん、まいさんのアレは、正解なの?』
『わたしも聞きたいよ! 滅茶苦茶楽しそうなんだけど!』
『……発想の勝利とだけ言っておきます』)


・光の翼
V2原典機にもある欠陥であり想定外の機構。
パイロットの発想次第では敵をすれ違いざまに切り裂くカッターとなり、両腕のビームシールドと合わせることで極大の防御翼となり、敵の攻撃を防ぐこともできる。

ただし戦場に置いては目立つことこの上なく、取り回しの悪い背部から発生することもあり、欠陥と言う他はない。
ガンプラバトルに置いてはウッソの応用が前例としてあるからこそ、その欠点も補えるが……。

(『でもこれで、外宇宙まで飛び出せるんでしょ? いいじゃんいいじゃん……それで目立ちもしないっていうのは寂しいよ』)

舞宙は声優として、アーティストとして歌を、声を届ける自分には、それくらいでちょうどいいと、今日も笑って光を翼に変えて羽ばたかせる。


◆◆◆◆◆


恭文「そしてこのときの景品で、V2ガンダムや武者飛駆鳥をゲットした僕……いや、武者飛駆鳥は自費で買ったけど」

舞宙「私は……いろいろ悩んだけど、≪Hi-νガンダム Ver.Ka≫を……」


(2014当時の最新キットです。なお価格は、今なら七七〇〇円……当時は七五六〇円となります。消費税上がったからね)


舞宙「青がいいんだよ! 淡い青がいいんだよ! RGも出るしね! それも買う予定だよ!」

恭文「RGのνガンダムが作りやすく、動かしやすくでいい出来でしたしねー。まさしくリアルタイプνガンダム。実は僕も期待していて……」

舞宙「分かる。ファンネルラックも翼みたいだし……自立できるとかそういうことは、この際いい! スタンドもあるんだから!」

いちご「……まいうー、落ち着けよ」

舞宙「ま・ひ・ろ! 水島大宙さんと同じ読み方だよ! あたし達の大先輩と同じだよ!?」


(水島大宙(みずしま たかひろ)さんは、Fateのガウェインや、コードギアスのロロなどたくさんの作品に出演されています)


いちご「というか、正気かと思ったよ……あのときは! マスターグレードってあんな箱だったのに!」

恭文「MGというだけじゃなくて、モビルスーツとしては大型なHi-νな上に、ファンネルやバズーカ、シールドなどもありますからね……」

舞宙「うん。だから届け時期を指定して、自宅への配送にしてもらったでしょ? あれ、ちょっとずつ組むの楽しかったなー」

いちご「その自宅も……いや、これはまた後か。
ところでさ、私のお父さん達を、恭文くんが彼氏ってことで納得させる話はどうしようか」

恭文「それは、PSAの方からいい人を紹介しますから……!」

いちご「本当にできるの!?」

舞宙「……できるらしいよ。レンタル彼氏じゃないけど、タレントさんとかのスキャンダル対策で時折……だったよね」

恭文「まぁ海外で活躍するような……それこそフィアッセさんレベルの人がやることですけどね」


(というわけで夏が終わったら、由布院で大騒ぎ……するの?
本日のED:玉置成実『Connect the Truth』)


メディア・リリィ「宝具レベル3になりました! スキルを鍛えれば、マーリンさんにも負けないくらいお役に立てます!」

恭文「…………360個……120連で……星5鯖なし……星4はメディア・リリィ二人だけ……伊吹童子も来ない……ははあはは……あはあぁあぁ…………」

フェイト「ヤスフミ、しっかりしてー!」

古鉄≪最近卑弥呼さんやらキャストリアさんがサクッと出すぎていただけで、基本こういう確率ですからねぇ。でもほら、二百枚以上貯めた呼符もあるでしょ≫

恭文「怖い……ガチャが、怖い……」

いちご「ウンウン、気持ちは分かるよ。……私達のお仕事だと、アプリ関係はかなり助かっているけど。というか単価結構よくて」

フェイト「え、出演料高いんですか?」

いちご「結構ね。だからまいさんも……」

舞宙「…………200連して……伊吹童子、出なかった……出なかった……」

いちご「資金力にかまけて、大損している」

フェイト「あれは止めるべきじゃ!」


(おしまい)






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あきゅろす。
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