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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
西暦2008年・風都その12 『Vの蒼穹/火花』




魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

西暦2008年・風都その12 『Vの蒼穹/火花』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……ヤスフミはぼろぼろで帰ってきた。リーゼ達に助けを求め、その上で罠を張り、一人の男を殺した。その重さを刻みながらだ。

傷の方は治療も終わり、もう今はぐっすり…………とはいかなかった。


ボクはコトミネから預かった荷物を、アイツに見せる必要があったからな。


「…………ステッキ?」

「あぁ」


木箱に入れられたステッキ……先端部はリングで、中心には星の装飾。その外側には白い翼も生えている。

だがこれは、えっと……いや、まずは説明からだな。


「魔術の大家≪遠坂家≫に秘蔵されていた、魔術礼装≪カレイドステッキ」。
キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグってじいさんが作り上げた超一級品だ」

「……ウェイバー、具体的には」

「使いこなしさえすれば、知識やプロセスが分からなくても、感覚だけで魔法使いになれる。正真正銘奇跡を起こす魔法使いにな」

「ちょっと待って。それがどれだけ凄いかは使ってみてって話として……そんなものがどうしてここに」

「遠坂家の厚意だ。ちょうどお前と年頃も近い娘達がいるから、お前のことを他人事とは思えず助け船を出した」

「正直なところは」

「ガイアメモリの一件を重要視しているが、テラーの問題から頭首自ら前に出ることは“周囲が“止めている。
だがそれでは臆病者の誹りを受けるばかりだから、心遣いで度量を示そうってことだ」

「ん、問題ない。またお礼を言わないとね」


コイツ、やっぱりそういう話は飲み込めるわけかぁ。まぁボク達としては極めて楽だ。揉める必要もないからな。


「恭文くん、それでいいの!?」

「こっちも利用される度量を示すのが礼儀だよ」

「……でもこれ……どう見ても……」


そしてフウカは気づく。というか、世代直撃だから……それはなぁ……!


「……魔法少女もののステッキ、だよね……!?」

「………………カードキャプターさくらかな?」

「そうそう! そうなんだよ! ウェイバーさん、これ本当に……武器的なやつなんですか!?」

「やつなんだよ。まぁその辺りは」

≪ふふふふ……さすがは世代直撃なお年頃。よーくおわかりですねー≫


するとステッキがふわりと浮かぶ。それどころか軟体動物のようにくねくね動き、二人の周囲をぐるりと回って……。


「「…………喋ったぁ!? というか浮いてるぅ!?」」

≪初めましてー。私の名前はマジカルルビー!
このカレイドステッキの機能、指針、気持ちなどを代弁する人工天然精霊です!
……ひとまず、恭文さんを最高最善な魔法少女にしちゃうキュートなステッキと覚えてもらえれば正解ですのでー≫

「「魔法少女ぉ!?」」


そこでボクに視線が……あぁもう、分かっている! 説明するから落ち着け!


「デバイスのAIみたいなものだ。礼装との契約及び各種機能のサポートを担当するオブザーバー。
だが……コトミネから聞いていたより流ちょうな」

≪もう……流ちょうなのも当たり前♪ この卓越したトークスキルこそがルビーちゃんの持ち味です!
マスターさんのあんなところやこんなところをくすぐって、楽しく遊ぶためですから!≫

≪なるほど。あなた、いいデバイスですね≫

≪いやいや、そういうあなたこそー≫

「………………ウェイバー、じゃあそういうことで」


逃げた! コイツ即刻で逃げを宣告しやがった! 関わりたくないって全力で思いやがった!


≪まぁまぁお待ちください! 史上最高の魔法少女さん!≫

「僕は男だぁ!」

≪いいえ! あなたは魔法少女となるべくして生まれた存在です!
まぁまぁ魔術回路やリンカーコア辺りは平凡ですが、魔法少女力ならまさしく神の領域!
因果律すらあなたの思いのままですよ! 私と一緒にあらゆる平行世界を支配できますよー!≫

「それもう魔法少女じゃないよね! ただの女装趣味な最低最悪の魔王だよね! 何かのラスボスだよね!
あとそれ、僕のおもいのままっていうか完全におのれの願望−!」


ヤスフミの言う通りだろ! そんなものに覚醒させるつもりかお前! だとしても隠せよ! なに馬鹿正直に最悪の未来を提示してんだ!


≪大丈夫ですって! 将来的に男が魔法少女や変身ヒロインになるのなんて当たり前になります! 時代の先取りですよ、先取り!≫

「なってたまるかぁ! 男がプリキュアになる未来がくるとでも!?」

≪来ます! いえ、この数多ある次元平行世界においては、既にその未来は開けています!
……あ、というわけでこちら、私の説明書ですー≫


するとマジカルルビーは翼をごそごそ……それを両手代わりに、書面らしき物を取りだし、ヤスフミに見せてやる。


「……えっと、なになに……感覚だけで一時的に、擬似的な魔法使いになれる……。
手にしたマスターに魔力を無限供給……。
多元転身≪プリズムトランス≫により、平行世界の自分からスキルをダウンロード……。
変身時にはAランクの魔術防壁、物理保護、治療促進、身体能力強化…………え、なにこれすご……!」

≪凄いんですよー。
あ、Aランクっていうのは、ぶっちゃけると現代的な異能を全て弾ける程度には強烈です≫

「もう桁が違うってこと!? しかも平行世界の自分から……な、なにこれ! ウェイバーさん!」

「……そいつを作ったゼルレッチってのは、平行世界の行き来とか、その情報を得る魔法……正真正銘の奇跡を操った大魔術師だよ」

≪それが第二魔法『平行世界の運営』です。私はその技術を生かし作られた、最強無敵なマジカルステッキなんですよー≫

「滅茶苦茶すごいじゃん……!」

「うん。事実なら十分ロストロギア認定されるレベルだ。でも……これ……ええぇ……?」


アリア、何度もこっちを見るな。それがこの語りってのは衝撃だろうが、落ち着いてくれ。


≪というわけで契約しましょう。あ、永続的な本契約でいいですよね≫


それよりもほれ、ヤスフミに凄いすり寄っているよ……はね除けようとしてもすり寄っているよ!


「……魔法少女なら、ふーちゃんがいいと思うよ? 女の子だし」

「恭文くん!?」

≪わっかりましたー! なら恭文さんと完全本契約! 一緒に最高最善の魔法少女を目指しましょう−!≫

「話を聞けぇ!」

≪……恭文さん!≫

「な、なによ」

≪あなたの事情はあらかたお聞きしました! その年で過酷な運命に立ち向かう姿……話だけですが心を打たれたのです!≫


するとルビーはぐいっと詰め寄り……真剣な口調でこう告げる。


≪だから、是非その面白い子で遊ぼ…………もとい力になろうと思い、ここまではせ参じてきたのです!≫

「今なにを言いかけたぁ!」

≪とにかく私は、平行世界を旅するゼルレッチが作り上げた、他に類を見ない愉快型魔術礼装!
私の多元転身があれば、使用者である恭文さんを他の恭文さんのスキルにチェンジさせる、悪夢のリリカルアイテム……あなたならきっと、私を面白おかしく使いこなしてくれるでしょう!
もちろん私も最高に楽しませてくれるでしょう! むしろそちらがメイン! その確信があります! なのであなたは魔法少女になるしかないのです!≫

「やっぱただの畜生じゃないかよ、コイツ!」

「ウェイバー君……あの、もうちょっと」

「ボクに言うなよ! ボクも押しつけられたも同然だからな!?」

「まぁ、向こうが押しつける理由もよく分かっちゃうけどさぁ……!」


リーゼアリアの言う通りだな! こんなのと一緒にいたら二十四時間ストレスフルだ! 地獄には誰も落ちたくない!

……これを機会に厄介払いしやがったな、遠坂家! やけに話がすんなり進むから、ちょっとおかしいと思っていたら……これかよ!


「…………よし、コイツ壊す……のは可哀想だし、封印しよう。
あの、僕の感情どうこうじゃなくて、その方が平和だと思う」

≪あ、物質変換とか危なっかしい能力は、私には一切通用しないので。私、いわゆるロストテクノロジーの塊ですからー≫

≪現代の異能も弾くとか宣っていましたからねぇ。
……まぁまぁいいじゃないですか。あなたの活躍は全て撮影してあげますから≫

≪あなたもなかなかに素晴らしい趣味嗜好をお持ちで! ならばともにマスター恭文を弄っていきましょう!≫

≪私のマスターは別にいますけど、それには賛成ですね。やりましょう≫

「おのれらはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!」


……ヤスフミが振り回されている。基本人を振り回す奴なのに……それだけでも察せられる。コイツは悪魔そのものだと。

というか、アルトアイゼンもよく同調……似たもの同士か! そうだったのか! ならヘイハチも押しつけたのか!


「…………ウェイバー……お前さん……なんつうことを……」

「ボクもあんなのは予想外だよ……! つーかその原因の一つはお前のデバイスだろうが」

「あんな化学反応予測できるかぁ!」

「…………カメラ用意してくる」

「ロッテ、絶対やめて……!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


くそ、なんつう疫病神をよこしてくれたんだよ! というかこれ、厄介払いじゃないの!? 凄いロストロギアっていうかただの呪いアイテムじゃないのさ!


「で、でも平行世界の自分からスキルをって……そんなことが本当に」

≪はいー。できますよー≫


ふーちゃん、興味を持たないで! くねくね揺れるこの変質者に興味を持たないで! 苦しむのは目に見えているでしょ!?


≪ただ、全くの無条件じゃありません。これにはいくつかの条件があります≫

「条件?」

≪一番分かりやすいのは、形から入ること……変身することです。
たとえば……風花さん、恭文さんの苦手なことはありますか≫

「えっと……恭文くん、発達障害……ASDとADHDの合併症……って、分かるかな」

≪えぇ。あらかたの情報はお伺いしているので≫

「その関係で、歌の音程を取るのは得意だけど、抑揚などの感情表現が苦手なの。
リアルタイムでのお察し……表情から機微を読み取るのも。だから論理的な思考に偏りがちとか」

≪なるほど……なら、その抑揚などの感情表現ができる、平行世界の恭文さんに変身すれば、恭文さんはたちまち大歌手張りの技量でスタンディングオベーションですよ≫

「「えぇ…………」」


なにそのチート。それでなんでもできるってこと? いや、それはそれで楽しそうだけど、どうせなら修行して身につけたいとは……うん……。

いや、その前に一つ確認することがある。形から入るっていうのが、どういうことなの? 歌が上手くなる形ってなによ。


≪まぁあくまでも借り物なので、変身を解除したら元通りですけどね≫

「……ならその変身ってなによ」

≪今言った通り、形から入ることです。つまり、借り受ける技量にふさわしい姿になってもらうんです。
……紅茶を煎れるのが苦手なら、それが得意なメイドさんに。
……泳ぐのが苦手なら、どこまでもすいすい泳げるスクール水着に。
……歌が苦手なら、可憐な歌声にふさわしいゴスロリ少女の姿に……それが多元転身! まさしく少女の夢を叶える力です!≫

「コスプレってこと!?」

「………………おのれ、友達少ないでしょ」

≪あ、言いましたね!? 私が気にしていることをー!
でもそうなんです! どうしてか誰も契約したがらなくてー! 過去に私のマスターとなってくれたのは二人だけなんです!≫

「答えが明確に出ているんだよなぁ」

「うん……!」


確かに能力はすさまじい。今この状況で僕に貸し与えられるなんて、もはや奇跡に等しい。もうコイツだけでいいんじゃないか状態だよ。

でも……その代償が余りに大きすぎた。


夢を叶える魔法の杖……その正体は、心身ともに役へと成り切るコスチュームボックスだったんだから。

一度使ったら、その時点で黒歴史が大量生産されかねない。下手をすれば人間関係だって崩壊しかねない。


……その上オブザーバーがこの性格なら、そりゃあ誰も契約したがらないに決まっているよ……!


≪……あ、そのうち一人は遠坂凛さんっていうあなたと同年代の子ですけど……気にしなくていいですから。あなたは史上最高の魔法少女力を持つわけですし≫

「その子が可哀想だとは思わないの!? 名前を出すだけで大打撃だよ!」

「おのれ、その性格を直さないと友達できないよ? 僕もよく言われた」

≪恭文さんヒドいですー! 人にされて嫌なことはしちゃいけないんですよー!≫

「じゃあおのれ、ここまでの発言を自分が受けても何一つ問題ないんだね」

≪それはそれ! これはこれというやつですね! はい!≫


コイツ……人を相当振り回すタイプだ。それもこのテンションで徹底的に。それで心が折れないって……悪魔そのものじゃないのさ! 僕とは大違いだ!


「でも待って。それなら……あの、私が魔法少女になるのはどうかな!」


するとふーちゃんがとんでもないことを言い出して……!


「ふーちゃん、正気……!?」

「だって、戦闘力がなくてもってことなんだよね。それなら」

≪あー、無理です無理です。一撃死スキル持ちの凶悪モンスター気質に、魔法少女の素養なんてあるわけないでしょ。
百回くらい生まれ直してからまた来てください≫

「どういう意味!?」

「……ふーちゃん、その言葉を刻んで。今すぐに」

「恭文くん!」


ふーちゃんに怒る権利はないよ……トンベリになりかけていたでしょうが。ここ数日に何十回もさぁ。

いや、でもさすがにこんなとんでもアイテムを使うのは。


(……………………でも、待てよ…………)


………………頭の中でいくつかの算段を立てる。

そうだ、僕に手段を選んでいる余裕はない。全くない。これっぽっちもない。


それにまぁ、実はちょっと楽しく……なってきてはいるんだよね……!


「ルビー、仮契約……今回の件が終わるまでならいいよ。魔法少女でもなんでもやってあげる」

「恭文くん!?」

≪わぁ! 凄い手の平返し! 手首ねじ切れてませんか?≫

「いやね、今思ったんだ。いきなり魔法少女とかが出てきて、奴らをボコボコにしたら……最高に混乱させるし、楽しいかなーって……♪」

「悪魔の発想なの!?」

≪やっぱりあなた、そっち側の人間ですね!
骨を断つためなら肉くらいシェイプシェイプしちゃう……ルビーちゃんは分かっていましたよー≫

≪狂っていますねー。でも楽しいですねー≫

≪はい! 楽しくなってきましたー! じゃあ右手を出してくださいー≫


言われた通りに右手を出すと。


≪えいや≫


ルビーはどこからともなく右の翼で取りだし小刀で、僕の親指を軽く切りつける。

そうして滲んだ血に触れて…………その途端蒼い輝きが僕とルビーを包む。


「恭文くん!」

≪大丈夫ですよー。仮契約のため、採血するだけですので……はい、終わりー≫


それでルビーは傷も塞ぎながら離れてくれて…………特に変わりないので、右手をにぎにぎ……。


≪能力確認は後で改めてやりましょう。そのときに細かい話は終わらせちゃいますので≫

「ん……でもルビー、一応聞くけど、ウィザードをおのれの力で止めるのは」

≪うーん……相当難しいと思いますよ?
あなたはメモリの意識とも“契約”を結んだ形ですので≫

「契約……!?」

≪記憶、一部でも意識に取られちゃっているんでしょ? だったらそれは契約ですよ≫


ふーちゃんは驚きながら僕を見るけど、その辺りに動揺はない。僕も予測していたことだもの。


≪対価は……最初の騒動で助けてあげること……ですかねぇ。
でもお話を聞く限り、抑止の守護者などとは違う。だったらルビーちゃんの契約なしで、サーヴァントくらいにはなれていますし≫

「守護者?」

≪地球上に存在する生命体……その無意識的集合体というのがありまして。ようは滅びたくないーって人間の気持ちが生み出すパワーです。それが抑止力。
抑止の守護者は、その力と生前に契約し、死後もサーヴァントレベルで祭り上げられ、この星の生存と繁栄を守る戦士としてこき使われるんです。永遠に≫

「え……!?」

「……死後の魂をも縛る契約ってこと?」

≪で、なにをするかというと……今みたいな状況で、関係者全員を殺しまくるんです。そうすれば問題解決―ってことを繰り返すんですよ≫

「なにそれ……恭文君!」

「……多分それとは違う。僕、明確に助けを求められたし」


そんなヤバいものがあったのかと、軽く驚くけど……そういう感じもないと、手を握ったり開いたりする。


「なによりもしそうなら、ルビーやリーゼさん達が気づいているよ。
流れ的に僕の契約内容は、それだけの力をよこせーってやつだし」

「まぁ、今のやすっちが噂に聞くサーヴァントレベルかって言われたら……首を振るしかないよ? アタシらはね」

「それなら戦子万雷とかワンパンだったはずだしねぇ」

「それならいいんですけど……でも、だったら恭文くんは、なにと契約しちゃったんですか!?
メモリに……あんな小さなものに、そこまでの意識があるのもおかしいですよ!」

「ふーちゃん。……ならさ、その契約を持ち込む理由は」

≪あなたで面白おかしく遊びたいんじゃ≫

「まじめな理由なら」

≪…………はぁぁぁぁ…………≫


少し視線を厳しくして告げると、ルビーはため息を吐く。


≪やっぱりあなた、根っこは相当悪い人ですねぇ。
私が“年上”だって辺りを踏まえて、契約を結べばいろいろ引き出せると践んだんでしょ≫

「まぁそんなところ……それで」

≪そういう愉悦とかじゃないとしたら≫


そうしてルビーは……本当に少しだけ……少しだけ……真剣な色を含んだ、刃のような声を放つ。


≪――――本当に助けてほしいから、とか≫


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


それでアイツはまた前に進む。戦うことに感情を交えない奴だが、それでも……感じ入るものを見つけたようだしな。

となるとボクはボクでまた……。


(ヤスフミは気づいているし、いずれは……)


それでまぁ、今日は夜の修行も一旦……と思ったんだが、アイツがどうしてもと言ってな。一戦だけ……日課のコピーデッキ対決をしたところ。


「――――サジット・アポロドラゴンのアタック」

「――ライフで受ける」


これはまぁ……ライフ三つをすっとリザーブに下げて、敗北宣言。


「……負けたか……」

「ありがとうございました、いいバトルでした」

「ありがとうございました」


いい動き方だった。途中の流れも……それでアイツは、机の下でガッツポーズしているな。よく分かるよ。


≪これはまた……初めて勝てましたね≫

「ん」

「何か掴んだか」

「どうかな……よく分かんない」


そう言いながらアイツは、頑張ってくれたスピリットを……サジット・アポロドラゴンのカードを撫でる。


「でも、もっともっと……カードに応えたいって思った」

「……あぁ、それでいいんだ」


一つの戦いを超えて、確かに一歩成長した。その姿に少し頬が緩みながらも、しっかり片付け。

一戦……たった一つの道筋を通すため、頑張っていたからな。だからこそ終わりはきちんとだ。デッキとコアをかたしてっと……。


「…………運命…………かぁ……」


するとアイツは、ぽつりと呟く。


「どうした、急に」

「前にカードショップでバトルしたお兄さん……あとショップ店員のミカさんって人が言っていたんだ。
バトルして、手元に来るカードは全て必然……変えられない運命だって」

「あぁ……バトスピはピンポイントなサーチカードがないからか」

「それ」


まぁここはゲーム性なんだが、バトスピは特定のカードを、デッキから抜き出すという効果カードがない。

たとえばデッキトップから何枚か引いて、特定の条件に入るものを手札に入れるものなら大丈夫だ。だがピンポイントで条件に当てはまるカードを抜き出すことはできない。

つまりそのカードがデッキの底にあるなら、そのゲーム中に引く確率は相当に低くなる。


そう言うカードを使った後は、大抵どんなゲームでもデッキをシャッフルするから、副産物的にカードの順番が変わることもない。

だから運命……変えようがない運命。というより、そこで変えちまったらただの積み込み。ズルなわけだ。


「色は変えられない……デッキの属性、コンセプト、フィニッシャー……得意なことを突き詰めると、苦手なことも突き詰められて、有り様は固定化されていく」

「万能無敵なエースになんて、誰もなれないってことだ。というより、それがあったらゲームにならない」

「つまり変えられない運命が悪く響くということは、デッキ構築や組み立てた戦術に問題がある」

「手札事故も結局構築ミスが原因だからな」

「そうだね、よく分かる」


……ヤスフミの言わんとしていることが分かって、軽くため息をこぼす。


「腹が立っているのか? ボクやコトミネが警告したことに」

「むしろ申し訳なさだよ。どうせ何も変わらないのに、手間を取らせた」

「そうだな。変えられない……アイツは自分の選択を積み重ねてきたが、それが“変えられる運命”だと勘違いしていた。
……だがそんなのは大嘘だ。積み重ねた選択……構築されたデッキを崩し、見直せるのは、一つのバトルが終わってからだ」

「バトル中は自ら積み上げた運命を、引き当てた選択を受け止め、全力で応えるしかない。だから鳴海荘吉は“変わりようがない”」


アイツは片付けたデッキをシャッフルし、改めて手札を四枚引いてみる。……どうやら“運命”の風向きは悪かったらしく、表情が渋かった。


「何が来た」

「……サジット・アポロドラゴン三枚、バーニング・サン一枚」

「なんで毎度毎度そんな偏った弾き方をするんだよ……!」


くそ、もしかしたらボクの構築が駄目だったのか? だが相応に練り込んだはずなのに……って、そこはいいか。


「同情しているのか」

「そんなものする必要がないでしょ」

「…………」

「おじさんの構築が悪手うちだったのも、それで最後まで戦い抜くことができないのも……その結果破滅するのも、全部おじさんの問題だ」


…………あぁ、やっぱりか。コイツ、あの病院での話について、鳴海荘吉を助けようとか、引き留めようとはしていない……していなかった。

ただのお為ごかし。主義主張に合わない欺瞞に満ちたお為ごかし。コイツは鳴海荘吉の主張やなんかには“何一つ感じ入るものがない”。

障害どうこうじゃない。それもあるかもしれないが、それ以上にコイツは……認められないんだよ。


「例のショウタロウ・ヒダリも巻き添えにするつもりか」

「するよ? そうすればこっちの都合良く話が進む」

「恨まれるぞ、お前」

「逆恨みにもほどがあるね」


アイツはもう一度デッキを優しくシャッフル。それからデッキケースへと丁寧に仕舞い、その蓋を閉じる。


「だったら自分の“運命”と全力で向き合っていればよかったんだよ」

「……そうだな」

「だから僕も向き合うよ、ウェイバー」

「どういう意味だよ」

「魔法少女になる覚悟はするってこと」

「おま、本気かよ!」

「ウェイバーならともかく、僕はギリギリいけるって」

「うるさいよ!」


コイツはまた……まぁ、また嵐を巻き起こすんだろうな。それだけはよく分かった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――アイツのことはリーゼ達に任せた後、ある男に連絡を取る。

まぁ、聖堂教会への報告などもあるので、一旦風都から離れたコトミネなんだが……。


『――君が先んじて話を纏めてくれておいて助かっているよ。
聖堂教会の方も大枠では賛成している』

「ナルミについても表の裁きに預ける形で問題ないか」

『私も手合わせした経験から説明したのでな』


どう説明したかは聞くまでもない。あんな素人のヒーローごっこで、いちいち代行者を出すのも恥……そんなところだろう。


『だが……それゆえにガイアメモリそのものへの警戒は強くなっている。改めてシュラウドという女にも話を聞きたいが』

「分かった。PSAと調整する」


まぁ、そうだよな。地球の……星の記憶と言えるものが、人を怪物にするんだ。オカルト関係者としてはいろいろと見過ごせない。

しかも地球の記憶は、概要的にも霊脈とかぶっているし……っと、そこもあったな。


「あとは風都の霊脈調査か……」

『周囲の霊脈……その状態については以前の調査結果があったな』

「ラインの流れから、風都の霊脈が相当な大きさなのは予測できるそうだが……細かくは専門家が調べないと」

『そちらの手配は私がしておこう。我が師(遠坂時臣)にもご助力いただければすぐできるはずだ』

「よろしく頼む。で……あともう一つ……ヤスフミのことだが」

『考えられる道筋はいくつかあるが、やはり彼はただの子どもではいられない』

「……やっぱ、そうだよな」


……ソウキチ・ナルミ、アンタは本当に馬鹿だよ。

アンタは善良な大人かもしれないが、それだけじゃ理解できない何かもあるんだ。世の中には……たっぷりとな。


『恐らくその先祖の中に、人ならざる者と交わった誰かがいるのだろう。それも神霊に近い存在だ』

「先祖返り……代を大きく経ての隔世遺伝」

『とはいえ、猫の怪物となると少々専門外の所ではある。それだけの力があるのかとも……』

「そこも少し調べたが……あり得そうだ」


そう言いながら、風都の図書館で借りてきた資料を見やる。その手の伝承本を載せたものだがな。


「ボクも調べて知ったけど、山猫の妖怪が中国にはいるんだってな。仙狸(せんり)ってのが」

『年を経た山猫が、神通力を得て妖怪化したものだな』

「……やっぱり詳しいじゃないかよ」

『少し物忘れをしていただけだよ』


日本だと猫は十年生きると尻尾が日本増えて、猫又という妖怪になる。

二十年生きると猫しょう……更に力の強い妖怪となり、人間と変わらない高い知性と妖力を誇る。

で、その猫又にはモチーフとされるものがあるらしい。それが仙狸だ。


美男美女に化けては、人間の精気を吸うとされている……っと、一応補足しておくぞ? 仙狸の“狸“は、中国語で山猫の意味だ。だから……仙人みたいな山猫……なんて解釈もできるかもしれない。


「つまりアイツの猫ちゃんモードは、ただの変化じゃない」

『妖怪としての性質……その力が前に出たものだ。となれば、魔力についても……』

「既にリーゼ達が気づいていたよ。アイツ、猫ちゃんモードだと魔力量が増大するし、魔力の質も通常のものと大きく変わるそうなんだ」

『間違いないな。その魔力は“妖力”……それも神と拮抗しうる性質を備えたものだ』

「……あぁ」


だからアイツは普通の子どもじゃいられない。そんなのは無理だった。

今はともかく、その性質は、出自は、アイツの人生に影を落とすかもしれない……だが……。


『それで、どうするつもりだ。ウェイバー・ベルベット』

「アンタが言ったことだ。アイツはもうただの子どもじゃいられない……というか、そんな道も元からなかった」

『残酷なことだ』

「だったら安心しろ。……もっと残酷な現実を、アイツは今突きつけられている」

『ほう……』

「ただすれ違っただけ……それで励まされただけの女にご執心だからな」

『それはそれは……幼き心にはとびっきり残酷だな』


楽しげにするなよ、コイツ……! いや、ボクもこういうのは専門外だしさ。

あぁ、そうだよ。アイツが……そこんところで覚悟も決まりきっていたようなアイツが、今更ブレるような要因があるのは……。


…………そのすれ違った女に、恋をしているからだ。


恋をしているから、自分一人だけじゃない世界を望むから、自分が世界にどう映るかを疑い、新しい姿を探し始めている。

ボクはその辺り専門外だと思っていたが、鏡と考えると魔術師的には納得できるところがある。

鏡は呪いの道具としても用いられるものだ。世界を、自分を、客観的に映す。恋をすると人は、自分という存在をその感情に……恋する相手に映し出されるのかもしれない。


自分がその相手から魅力的に思われれば、距離は近づき、そうでなければ瞳に映り込むことすらできなくなる。とても残酷な映し鏡だ。


「だが、いいことだとは思う。アイツは自分の中だけに閉じ込めていた決意や覚悟の上で動いていたんだ。その点は鳴海荘吉に近いと思う。
……それがたった一人の女に惚れちまったことで、砕けて……その女に笑顔や幸せを、希望を届けたいと、誰かのために笑えることを望むようになった」

『そしてその小さな変革が、繋がりようのなかった人々を繋ぎ、風都という街で嵐を生み出すわけか。
だとしたらその彼女は、まさしく変革の女神。抑止の使いと考えてもよい働きをしている』

「多分アイツは、ずっと……その女のことを好きで居続けるだろうしな。割り切れるような奴じゃない」

『…………』

「だから……」


そうだ、だからこの話もヤスフミにはする。それは必要なことだとも思う。

アイツが本当の意味で、運命を受け止め、乗り越えていくなら……ああもう、こういうのはボクの役割じゃないのに。


でも……。


(イスカンダル、お前がここにいたら、きっとアイツのことを見過ごしたりしないよな)


だったら……お前の臣下であるボクが、自分から全てを放り投げるわけにはいかない。


『……っと、そうだ。もう一つ話があった』

「なんだ」

『PSAと魔術協会、管理局組……それらの調査隊から返答があった。……風都の沖合いに、お目当ての城を見つけたと』


思考を現実に引き戻すと、言峰がどこか楽しげに呟く。


『ガイアメモリ製造の根幹……地球と繋がってしまった少年の寝屋』

「ほんとか……!」

『例のシュラウドという女から引きだした情報も含めると、ほぼ間違いないそうだ。どうする』

「……乗りこむしかないな」


いろいろ順番は前後するが、次の行き先は決まった。そういう楽しさはボクも感じ取っていたよ。


「そいつの能力が本物なら、こっちも調べてほしいことがある」


ここからは、ボク達の行動で……状況を動かしていく時間なんだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そこで出てきたとんでもアイテム……だが唐突というわけじゃない。

蒼凪も触れていたからなぁ。数十億って価値のあるアイテムもあったと。でもまさか、それが……魔法少女……!?


「正気だったの……!?」

「もちさん、それは私やまいさん達が言った。
しかもそこだけではガチ天才レベルとか……!」

「いや、正直……僕にとっては、そんなことどうだってよかったんですよ」

「「どうだっていいの!?」」

「いちごさんにも言いましたよね。厄介払いで押しつけられたぽいって。
でもさすがに借りっぱなしはためらうから、それをどう帰したものかって悩むことになっちゃって……」

「だったねぇ!」


そして蒼凪はそこんところすっ飛ばす……というか気にしていないのかよ! 話だけなら魔王になれるって断言されるレベルだったんだぞ!

しかもそのAIというか、人格みたいなのが相当な性格だったんだぞ! それもすっ飛ばして、帰すところからなのか!


「まぁ僕達のアヴェンジャーズにはお似合いの人材ではありました。
そもそも人並みの出世や名誉にハナクソすりつけるようなはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、異端児……そう言った人間の集まりでしたから」

「……シンゴジラの巨災対メンバーかな?
でも蒼凪くん、ほら……グレアムさんとかリーゼさん達は? それに神父さんや沙羅さん達も」

「まずグレアム提督、もう定年が見えてきたような年齢ですから。これから出世するつもりもゼロだったんです」

「それはアタシらも同じ。言峰神父も、いわゆる聖堂教会での出世コースからは外れた管理職についている上、副業で激辛ラーメン屋なんて始める始末だったからね」

「ヘイハチさんも既に局を辞めた人間だし、劉代表代理達も一般的な出世云々に拘る器じゃないから……うん、やっぱりそんな鼻つまみども達だよ」

「うっそみたい……!」


……山崎、こっちを見るな。俺とユージも鼻つまみどもと言いたいのか。まぁ出世や名誉にハナクソをすりつけた覚えは……あるけどな! だがシンゴジラってなんだ! ゴジラでなんかあったのか!


「ほんならさ、ここからどうするの? また地道にドーパント退治かな」

「いえ……ガイアメモリ製造の拠点……風都沖合いにある秘密のアジト。
そこを攻め落とし、園咲来人を確保します」

「おぉ、決戦っぽい! なんかいいなぁ! 盛り上がってきたなぁ!」

≪それは盛り上がりましたよ……。
テラーの概要もあって、それも耐性持ちなこの人でなければできない仕事でしたし≫

「あ、そっか……。そういうところから手間なんだ。あの能力」


雨宮がビクビクするのも仕方ない。というか、俺達もだよ。

園咲琉兵衛に接触してしまった時点で、そんな度胸もなくなるわけだろ? 本当にヤバい力だよ。

……鳴海荘吉がどう言おうと、蒼凪は切り札……引き金として、この好機を通すのが責務だったわけだ。


≪この作戦は重要ですよ。
ガイアメモリ製造能力を奪うと同時に、園咲来人……フィリップさんの能力で、私達も調べてほしいことがありますから≫

「蒼凪くんが、一体なにとどう契約しちゃったか?」

≪もっと言えば、ウィザードメモリという特異点の詳細です。だからここを優先するしかなかったとも言えますけど≫

「確かに……抑止の守護者とか、話だけだとほんとヤバいしなぁ……!」

「危うくやっちゃん、そんなとんでも汚れ仕事を背負いかねなかったわけね……。
いや、でも……確かにやっちゃんがそんな、とんでも存在ってのは、ないよね」

「だったら核爆弾も解体できているしなぁ……。というか俺達、ギャラリーだよ?」

『確かに!』


そうそう、そこなんだよ。被爆とかもないはずだし、そこまでじゃないよなぁ。それはみんな納得してくれるんだが。


「……なにを言っているんですか。僕がそんなとんでもじゃなくても、ギャラリーだったでしょ。しかも僕やトオル課長に女を紹介するとか宣っていたし」

「「課長!?」」

「えぇ……それはどん引きなんだけど」

「「麻倉!?」」

「いちさんとか、本当に大変だったんですよ? リハーサルもこなせないくらいぐずぐずになって……ずっと泣いていて」

「被爆していないし、怪我もほとんどないって聞いたときも大泣きだったしねぇ。
あれであたし達も、ちょっとお話ししなきゃーって思ったくらいだし」


……素の言葉でつい、俺達は顔を背けてしまう。というか、蒼凪も一緒だ。


≪なのに一方その頃、この三人は退屈だからと病室で賭けポーカーしていたんですよねぇ≫

「「「し!」」」

「はぁ!? なにやってんの! 忍者と警察官が!」

「俺達も呆れたよ……! 一応金はやめようって、お菓子とかを賭けていたんだけどよぉ。
そうしたらそうしたで、鷹山達は看護師連中を口説き始めるし……ヤスフミにいたっては一人にラッキースケベをかましてよぉ!」

「それで謝り倒して、随分仲良くなりましたよね……。
新人看護士の末澤ゆりえさんと……Iカップの美女と。
二週間前はデートもしていましたし」

「ちょ、シオン! それはデートじゃないよ! ゆりえさんのお買い物に付き合っただけで」

「立派にデートですよ?」


そうだそうだ、蒼凪についてはゆりえちゃんのこともあった! しかもデートの自覚もない……というか、デートするほど親密になっていたのかぁ!


「なんでだぁ! 舞宙さんも一緒だったのに! 一緒に編み物道具とか買っただけなのに!」

「……って、まいさん公認なの!?」

「そういうの、黙っていられる子じゃないから……でもゆりえちゃん、ほんと可愛かったなぁ……♪
恭文君、大事にしなきゃ駄目だよ! 向こうも本気じゃなかったら、忙しい中デートなんてしないし!」

「だよねぇ。そのデートも私……仕事がなければ付いていく予定だったんだけど」

「いちさんも認知しているの!?」


あ、それはよかった! さすがにいちごもショックを受けるだろうし。


「それはするよ。賭けポーカーについてはゆりえちゃんも苦笑いしていたから……お前達、説教だよ」

「「「え!?」」」

「他にも病棟で暴れ回ったそうだしさぁ。本当に……説教だ――!」

「「「あ、はい……」」」


……俺達はヒートアップしていたのに、一瞬で凍り付く。

いちごが……滅茶苦茶睨んでいるからなぁ……! やっぱ怖いよ、この子!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――――風都に訪れて六日目の夜……夜の八時半。

風都の港に停泊している大型船。そこへひょいっと乗り込んで…………っと。


「……おい……なんだお前! なにを」

「Teller」


足下から展開するテラークラウド……それで船ごと飲み込み……軽くあくび。


「あ、がぁあぁああぁあぁあ……!?」

「えぇえぇえあぁあああぁあぁあぁあ!」

「ちょっと地獄を見ていろ」


あくびで眠気を払っている間に、船にいた乗組員達を悉く錯乱状態に起き、ノックダウン。


「アルトアイゼン、ルビー」

≪いつも通りです≫

≪ルビーちゃんも問題ありませんよー。
とはいえ……普通の人間が、こんな恐怖を永続的に仕込まれたら……そりゃあ対抗なんてできませんよ≫

「なら、おのれから見てメモリの力って」

≪憑依経験、投影……そちら側に属するものですね。それを機械的な技術で人に施し、怪人となるっていうのはもう……魔術師の方々も顔真っ赤で狂い死にするレベルかなーとは≫

「……だったら、早め早めに止めないとやっぱり風都は焦土コースか」

≪ほぼ間違いなく≫


それからすぐテラークラウドを解除して、スマホでぽちぽちと……。


「いづみさん、船内の掌握完了。ただ人数は数十人規模ですけど……大丈夫ですか?」

『問題ないよ。人員は滞りなくいるし。じゃあ悪いけど、テラークラウドは解除で……上手く対処って感じで』

「はい」


そうして十数分後……ドタバタとやってきた人達によって、ガクブルしていた構成員達は悉く謙虚。何台もの車に乗せられ運ばれていく。……ドナドナー。


「ほんと、テラーの能力は便利だね……」

「そうですか? 場に僕以外いられないって下りで結構不便ですけど……特にこういう作戦だと」

「そこを分かっている子が使うとってこと」

「後腐れもありませんしね、僕の場合」

「うん、それも逆に大助かり……っと、そうそう。実はさ……君に一つ悲しい報告があって」

「はい?」


一体なんだと小首を傾げると、いづみさんが……右脇を親指で指す。そうしてPSAの先輩に抑えられて、やってきたのは…………。


≪誰ですか、この半パン甘ったれ小僧は≫

「半パン甘ったれ小僧だよ」

「なんの説明だよ! ……つーか、この街は俺の庭だぜ? 当然さ」

≪そうですか……じゃあ、両手足に重りを付けて、永遠の海中遊泳に招待してあげましょう≫

「どこぞのギャングかてめぇ……つーかなんだそれ!」

「魔法少女の杖」

「嘘吐けぇ!」


まぁそんなことはどうでもいい。とりあえず重りになりそうなものは……あ、あったあった。工具箱ー。それをしっかりワイヤーでがんじがらめにしてーっと。


「おい、やめろ! 重りを用意するな! 沈めようとするな!」

「恭文君、一応私達、公僕だからね? そういうの止める側だからね?」

「いづみさん、三百円あげるので」

「「命の価値を勉強し直してこい!」」

「だから適正価格ですって」

「「えぇ…………」」


え、散々な言いぐさ? でもね、それは仕方ないのよ。さすがに防護手段〇とか笑えないもの。それのお守りをしながらとか無理だもの。


「……とはいえ今帰すのも無理よ。時間もないし……」


更にすっと影が生まれた……って、シュラウドさんか。暗闇だからちょっと気づかなかったし。


「……って、コイツは!」

「おのれは海底散歩を楽しめばいいから……」

「運命の子……園咲来人を救出するのよ。ガイアメモリ製造施設の完全掌握も含めてね」

「なんだとぉ!」

「シュラウドさん!?」

「もう遅いわ」


あぁ……そういう、お話なのね。だからシュラウドさんも、疲れ果てた様子で頷いちゃって…………ここで念話開始。


“アルトアイゼン”

“サーチ完了……こっそり隠れている阿呆がいますね。そしてシュラウドさんが言うように時間もない”

“うん、僕も気配を掴んだ。つまり……どういうこと?”

“肉の盾にしろってことでしょ”

“そりゃそうかー”


あははははは……舐めてくれるねぇ、コイツら。戦闘力五のゴミじゃあフリーザとセルは倒せないんだよ? 魔神ブウは仲良くなれるかもしれないけどさぁ。

………………だったら適当に流してやる。それで邪魔されても困るしさぁ。


「元々は荘吉に依頼したことの一つだった。
でも……これ以上は取り返しが付かなくなるもの」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


コイツ、また勝手に……いや、だが俺は折れない。折れてたまるか。

それでもおやっさんは、踏ん張ろうとしているんだ。だったら俺は、おやっさんを信じる。おやっさんのこれまでを信じる。

たとえどれだけ疎まれようと、俺達は行動し続けて、その覚悟を示す。そうすればきっと伝わるものがある……それが俺達の結論だった。


そして今日……あの襲撃があった翌日。恭文はまだ妙な動きを見せていた。

おやっさんが調べることは難しいので、俺が上手く……まだ使えたツテを利用して、その動きを掴んだ。


それで今日、ここに妙な大型フェリーが泊まり、相当数の資材やらなんやらを運び込むと分かったそうで。


「本来ならもっと慎重に行くつもりだったのだけど……そうも言っていられない状況よ。
なにせ美澄苺花の計画により、荘吉は戦士としても、探偵としても機能不全に陥った」

「だがウィザードのメモリがあれば、おやっさんは戦えるんだろ?」

「いいえ……荘吉ではウィザードには適合できない」

「大丈夫さ、おやっさんなら。俺が保証する」

「あなたの保証なんて無意味よ。それは荘吉が……そして私自身が選び取った運命」

「だったらそんなもん、気持ち一つで乗り越えられるさ。……運命は変えられるんだぜ?」

「………………」


そう笑って言ってやっても、マスク姿の女は納得しない。……だったら、やっぱ姿勢で示すしかないってことだ。


「恭文、そういうことだ。だからお前も……アンタ達も帰ってくれ。
……風都のことは、俺達風都を」


その瞬間だった。俺の眼前に刃が迫り……思わずビビって尻餅を付いちまったのは。

その刃がすれすれで止まって、ずるずる下がっていくのは。


「な…………」

「ステイ……ステイじゃぞー!」

≪うわぁ……即刻迷いなくですかぁ。なかなかたぎらせていますねー≫

≪最初からこうでしたしね、この人≫

≪これはルビーちゃんもサポートしがいがあるぞー!≫


それを打ち込んだのは、瞬間的に飛び上がった恭文で……アイツはじいさんに羽交い締めを受けて、下がって……。


「先生、離して。コイツ殺せない」

「だとしても下がれぇ! しかも乞食清光とは別に刀まで用意しとるとかぁ!」

「物質変換で作りました。まだまだナマクラですけど、コイツの頭くらいは潰せる」

「ステイー!」

「先生、三百円あげます」

「じゃからそんなんで見過ごせるかぁ!」

「や、恭文……なぁ、落ち着いて」

「お前みたいな素人がいても、いづみさん達がカバーで危険にさらされる。だから死ね」

「それも、俺とおやっさんに任せろよ……! そうすれば、そんなことには」

「いいから、死ね」


……なんでだよ。

なんで、コイツはこんな冷たい目ができるんだ。

おやっさんが、人を殺したからか。でもそれは、正義の行いだ。


おやっさんはそうして、みんなを守ってきたんだ。俺は身を以て知っている。

なのに、たった一度……お前に迷惑をかけたからって、おやっさんは死ななきゃいけないのかよ……!


「じゃから落ち着けぇ! つーかワシの想定を超える形で無茶苦茶するの、ほんとやめてもろうてえぇか!?」

「まぁまぁ先生……ミカゲ先生はそれが師匠の喜びって言ってました。
つまり僕は今、ヘイハチ先生も喜ばせている優秀な弟子じゃないですか」

≪そうですね! 恭文さんは素晴らしい弟子です! あなたは幸せものですよ、ヘイハチさん!≫

「人格破綻した杖は黙れぇ! つーか…………ミカゲェェェェェェェェェェ!
お前なんつう置き土産をしとったんじゃあぁ! 今度恐山に呼び出すから覚悟しとけぇ!」

「うん、それについては私も付きそうから……とりあえず刀から手を離そうね? これは没収するから」

「えー」

「えーじゃないの……!」


コイツ、本当に殺そうとしていた。俺を……迷いなく……あの刀で……。

それなりに、信頼は掴めた……仲良くなれたと、思って……それならと…………なのに…………。


「……分かっていたはずだよ、翔太郎君」


そんな俺をかばいながら……いづみさんがそっと告げる。


「メモリ犯罪者がやり直す可能性すら殺しておいて、自分達だけは普通にやり直す。そんな卑怯さが許されないことは」

「違う……おやっさんは、街を守ったんだ。頼むから、それを」

「だったら普通に恩赦を受けるべきだった」

「だから、それも……アンタ達を巻き込んで殺さないためだったんだ! なんでそれが分からねぇんだよ!」

「だからミュージアムの一員だと認定されたんだよ。アンタ達は」

「な……!」


俺は……おやっさんは、この街を泣かせる悪そのものだと……。


「なんだよ、それ……」

「……恭文くん、コイツに攻撃がきたら誰もかばわないし守らない。ただただ見殺しにするってことでどうかなー」


いづみさんにも、俺の叫びは通じない。


「それなら作戦行動中の“不幸な事故”で収められるし。君だって“恩赦”で問題行動を起こしたーって咎められなくて済む」

「ふむ……それならまぁ、納得します。じゃあ今すぐ殺しましょう」

「それは待ってね!?」


俺の覚悟は……おやっさんの覚悟は………………俺が、甘いだけなのか。

だが、それでも……!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


全く、人を凶悪犯みたいに……おかげで刀が届かなくなったし。


とにかく……いづみさんも、アリアさんも、先生も強いけど、万が一ということがある。つまり翔太郎が危険にさらされた場合、死ぬのは僕でありみんなだ。

だから、僕はこう告げる。


「いづみさん、提案した以上は率先してもらいますから。
……コイツらは何が起ころうと見殺しにするし、“始末は後で付ける”」

「ん、了解だ」

「先生も、アリアさんも、見殺しにしてください。大丈夫です、僕が責任を取ります。
そして僕が取り切れない場合は劉さん達に押しつけます」

「「最低か!」」

「……坊や……あなた、師匠から何を教わってきたの?」

「帝王学を少々」

「それ絶対帝王学じゃないと思うわ……」


まぁこれで戦闘力五のゴミについては扱いが決定したので……。


「で、シュラウドさん……制圧の条件としては」

「三つよ」


シュラウドさんは羽交い締め状態が続く僕に対して、指を三本立てる。


「来人がいるセンターの設備や電源、資材などを破壊せず、制圧すること。
来人にこちらの事情と状況を理解させ、協力を確約させること。
もちろん相応の抵抗は予測されるけど、一つ目の条件は守った上で、全て排除すること」

「それなら問題なしだ。ちょうどアリアさんも来てくれたし」

「現場を閉鎖結界で囲えば、通信関係のジャックも可能だよ。あとはセオリー通りにって感じだね。
……本当はロッテも連れてこられればよかったんだけど……」

「ふーちゃんを放っておいたら、鳴海荘吉を刺しに行くでしょ……」

「まぁね」

「それでいづみさん、増援の方は……新しいアヴェンジャーズは」

「もうすぐだよ……って、きた」


早足で誰かが船に入ってくる。……おぉ、これは相当だなぁー。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


絶望だけが襲っていると……俺から見ても腕利きって思えるほどに、眼光の鋭い男と……それとやけに距離も近い三つ編みな女がやってきた。


「紹介するよ。高町恭也君と高町美由希ちゃん……二人とも御神流っていう古流剣術の達人で、うちのエース職員に負けないくらいの腕利きなの」

「「初めまして」」

「初めまして、蒼凪恭文です」

≪どうも、私です≫

「このたびは遠方からはるばる来てくれて、ありがとうございます」

「いや……だが、本当に君のような子どもが……」

「うちの妹より小さいんだけど……」

「大丈夫です。なんの問題もありません」


すると恭文は楽しげに笑ってこう告げる……。


「僕は変なヒューマニズムで動きを止めることはしません。オーダーはただ一つ……見敵必殺≪サーチ・アンド・デストロイ≫一択です」

「何一つ安心できないんだが…………」

「い、いづみさん……!」

「まぁ、こういう子なんだ。……それであと一人は」

「……遅くなってごめんなさい!」


船の上にふわりと浮かんで現れたのは、青い制服姿で金髪ロングの美人。スレンダーな提携だが、それより目立つのは天使っぽい白い羽根で……!


「「「天使ぃ!?」」」

「じゃないの。……私と恭也君達の古い友人で、仁村知佳さん。本業は国際救助隊の隊長さんだけど……」

「災害対策で世界中を飛び回る専門部隊ですか!?
ドキュメンタリーで見たことが……そっか! 確か、災害救助にHGS能力を生かしている隊員もいるって!」

「あははは……恥ずかしながら、私のことなんだよねー」

「なら、なら……」


そこで恭文が、例の蒼い羽根を出す。それは天使の羽根と共鳴するように震えて……。


「ん……!」

「うん……君の羽根、種別XXXかな……私の羽根とは能力共有とかはできないっぽいけど……でも……うん、伝わるよ。その羽根も、たくさんの努力でキラキラしているのは」

「僕も……これ、凄い。本当に……!」

「HGS患者同士の共鳴……エアーフィンにはその能力が元々備わっていると聞いたことがあるけど……なるほど」

「……恭文君、これだけの戦力があれば……いけそう?」

「当然――!」


恭文は羽根を仕舞い、問題なしと拳を鳴らす。


「ウェイバーのツテでやってきてくれたこの子(ルビー)もいますしね」

≪まぁ本来なら私と恭文さんだけで片付く話なんですけど、それじゃあいろいろ不都合らしいですからねぇ。面倒ですよ≫

「当然でしょ。僕達はミュージアムのやり方も、鳴海荘吉の薄っぺらい自己満足も、全部否定しなきゃいけない」


それでまた、おやっさんのことを……! 駄目だ、止めなきゃ……そうしなきゃ……それが、俺の……助手としての……!


「……というわけで、今回の作戦指揮と責任者は恭文君だよ」


だがいづみさんが阻む。俺を軽く蹴り飛ばして、脇に転がし……当然と笑う。


「でも現地での細かい判断は、現場経験が豊富な私達の独自判断に任せてくれる。あらかたの責任だけ背負う立場だ」

「ちょ、君……!?」

「美由希。……いづみさん、さすがにそれは……彼がどれだけ優秀かは知りませんが、子どもじゃないですか」

「風間会長のお墨付きだ。文句があるなら会長に言って。……というか」

「では先ほども説明しましたけど、もう一度……当然僕に取りきれない責任は、劉さんに落ち着けます」

「え」

「劉さんが取り切れないなら、会長に押しつけます。なので皆さんも見敵必殺≪サーチ・アンド・デストロイ≫を実践してください」

『えぇ……!?』


お前、本当に正気なのか!? 恭也さんが可哀想だろ! しかも満面の笑みで! 狂気じゃねぇか!


「…………こういう子だから、細かく心配はしなくていいよ」

「どういう子なんですか……!」

「いづみちゃん、もうちょっと……他にいなかったのかなぁ」

「毒をもって毒を制するんです……!」

「そっかぁ…………」


――――こうして、不安いっぱいで風都港から船は走る。月の明かりを浴びて、切り裂きながら……何もない沖合いを目指す。

だが、どうしている間に、どこからかごろごろと雷鳴がとどろいて……。


「……いづみちゃん」

「感じますか?」

「僕も感じます。……二〇〇メートルほど先……妙な力場がある」

「ん……ちょっと船を止めて」


そこで知佳さんがふわりと浮かび……右手をかざす。

次の瞬間、光が強烈に放たれた……そう思うと、空間がひび割れる。

俺達の眼前にあったそれが、派手に……ぴきぴきと砕け……そこに姿を表すのは、地図にない孤島。


それで十数階っていう大型のビルを……不釣り合いなほどの施設を備えていて……!


「ここが……!」

「来人が捕らえられている地獄よ……」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


残念ながら俺には、忍者や超能力者ほどの戦闘力はない。ついでに言えば多勢に無勢……それは必然だった。だからこそ作戦が……順序立てが必要だった。


――作戦をおさらいします。
まずアリアさんが閉鎖結界で、孤島を改めて周辺から隔絶。関連施設への相互通信や行き来を封じます。
続けて僕と知佳さんが、外から派手に攻撃を仕掛けて、その間にみんなは潜入。
恭也さんと美由希さん、いづみさん、先生は直接戦闘を避けつつアサシンキルで敵を適度に排除。
僕と知佳さんは別コースから進入して、敵を無力化していきます。知佳さん、テラーへの防御は――

――さっきやってくれた感じなら……うん、私だけなら大丈夫。サイコフィールドの範囲内で対処できるよ――

――そうしてシュラウドさん達をガードしつつ、最奥にいると思われる要救助者を発見・保護。
あとは施設を制圧した上で、ここの設備と園咲来人君の知識を使い、ウィザードメモリを仕上げる……それも急ピッチで。
なので見敵必殺……見敵必殺です。比喩なしで命への配慮は一切しなくていいです――

――ちょっと待ってくれ。さすがにそれは――

――それも説明した通りなんです。そもそも現状で、非殺傷設定でのメモリブレイクするノウハウがない。完全に個人の資質頼みなんです――

――それも私や荘吉の罪ね。
……もちろんあなた達にその理解を求めないけど、自分の命を最優先で動いていい……それが坊やの方針よ――


恭也さんはいい人だった。六歳の恭文がそこまで言うのはと思っていたが……そうでもしないと倒せないのがドーパントであり、ミュージアムだった。


――まぁ安心してください。その場合はテロリストには譲歩しない精神で、敵もろとも撃ち殺します。人質に利用される恥辱など与えません――

――ちょっと待ってくれ……!――

――既にみなさんの遺書は、それぞれのご家庭に送っています――

――本当に待ってくれないか!?――

――いづみさん、他にはいなかったんですか! 本当にこれが最適解だと!?――

――最適解なんだよ! というか……それでか! わざわざみんなの連絡先とかしつこく聞いていたのは!――

――ミカゲェェェェェェ! お前ちょっとマジ生き返ってこいやぁ! これを放置で天国とか鬼畜の所行じゃろうがぁ!――

――この作戦はガイアメモリ精製の根源を止めるだけではなく、ウィザードメモリの因縁を断ち切る重要な一戦になるわ……!
本来であれば……そうね、これは私個人の復讐だった。あなた達に偉そうな顔をできる義理立てではないけど……今だけは坊やの流儀に則りましょう。
ここにいる全員の力を貸してちょうだい。風都を、本当の意味で風が吹き抜ける街へと戻すために――


ほんと、どうするのかと思ったら……平然とミサイルランチャーとか打ち込んできたんだよ、いづみさん! 恭文も空飛んで、それをぶちかまして……砲撃っていうのも魔力でぶっ放してさぁ!

魔導師と忍者すげぇなぁ! それにサイコキネシスで連続爆撃も…………え、クレイジー言動にはツッコまないのか? あれについては全員現実逃避すると意見が一致したんだよ……!

それで作戦通りに、混乱したところで中に突入。戦闘を恭也さん達に任せ……というか強襲して、鎮圧したところを俺達は慎重に進んでいく。


俺も、シュラウドが怪我しないように……注意して……全力で注意して……!


「なぁ、じいさん……アイツは帰らせろよ! 俺だけで十分だ!」

「目を覚まさんかい! 昨日も恭文なしじゃあ死んどったじゃろ!」

「だから、それはおやっさんがウィザードになれば!」

「……お前さん方には無理じゃよ」

「じいさん!」

「ところでシュラウドちゃんや、ダブルドライバーとやらはどうするつもりじゃ」


くそ、無視かよ……いや、鉄火場になっているんだ。そこでこんな話をする俺が悪い……わかっちゃいるが……!


「……!」


一人、また一人と倒れる脇を進んでいく中、ヘイハチのじいちゃんが気になることを言い出す。

そこで奴が見やるのは、俺が抱えているアタッシュケース……シュラウドから渡されたものだった。


「本来であれば、荘吉と来人に使わせるつもりだったわ。それも無理になったかもだけど……」

「じゃが、後に備えることは必要」

「……えぇ」

「まぁワシも関わった以上は、相応に様子を見るわい。PSAの監督もあるし……若い奴らも頼れるからのう」

「そうね。もっと早くに気づけば……荘吉のことだって」


シュラウドがちらりと俺を見やる。……言いたいことはなんとなく分かって……何も言えなくなっちまうが。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


知佳さんと二人、適当にドンパチした上で内部へ潜入。派手に騒ぎを起こして、引きつけたところで別の配電通路を通って……ずいずいと……。


「恭文くん、なんだか手慣れているね。びっくりしちゃったよ」

「前に社会科見学で、こういう工場を見せてもらったことがあるので」

≪それにまぁ、私のナビゲートもありますしね。問題ありませんよ≫

≪ルビーちゃんもいますしねー≫

「ん、助かっている」


ある通気口の近くまで進む。ちょうど上は貨物保管用の広間で……でもそこで、力の高鳴りを感じて。


(知佳さん)

(ん……!)


慌てて知佳さんを制して止めるけど、必要なかった。知佳さんも波動を感じ取り停止したから。……そりゃあそうだ。僕なんかより経験たっぷりな上高レベルなHGS能力者だもの。

……次の瞬間、通風口から打ち込まれた銃弾で、いくつもの穴が空く。


「………………出てきなさい、ドブネズミ」


その声には、とっても覚えがあった。しかも上部には多数の気配……。


「そこにいるのは分かっているわ」

「あれは……」

「……園咲冴子」

「この私がいるときに、ここへ乗り込んできたこと……後悔させてあげる」


抜けることは不可能だろうね。一度上に出た方がいい。そうしようとしても撃ち抜かれるか、トラップでドガンだ。

まぁ普通なら、実にピンチと言うところなんだけど…………。


「………………よかったぁ……」


僕は笑っていた。笑ってしまっていた。


「実にラッキーだ」

「……恭文くん?」

≪あなた、夏が終わって運もよくなってきたんじゃないですか?≫

「かもね」


……園咲を構築する一角にして公然企業の社長がいて、しかもここは風都市すれすれの孤島。

アリアさんの結界もあるから、通信はもちろん視覚的にも途絶されて、奴は“袋のねずみ”。

それを捕まえて尋問すれば、今後の掃討作戦で王手をかけられる。その足がかりを掴むことができる。

ここで口を閉ざしてだんまりをすることも当然不可能。なにせ高レベルのHGS能力者が二人もいるんだから≫


園咲来人の重要性から、幹部クラスが常駐しているかも……そういう期待はあった。

そうしたらまぁまぁまぁまぁ……いい形でどんぴしゃだよ……!


もちろん油断はできないけど、今回は僕一人じゃない。いくらでも取れる手はある……。


「あははははは……君、本当にまともじゃないんだなぁ」

「すみませんねぇ。まともでなんていられないんですよ」

「できればいてほしい……!」

「…………出てこないつもり? だったら」


よーし、じゃあ早速……と思っていると、上にがたりと……もう一つ気配が現れる。


「……ドブネズミとは大仰だな」


……この声も聞き覚えがあるよ。気色悪い気配もさぁ。


「ただの客人だ」


それで知佳さんは驚いて、僕の肩を掴んで揺らす。


「ちょっと、アレ……!」

「……ただの連続殺人鬼ですよ」


鳴海荘吉……大人しくしていればよかったのに、出てきちゃったか。

…………だったらもういい。下らないかっこつけに付き合わされるのは面倒だ。


「あら……そっちだったの?」


しかもアイツ、アホだねぇ! 僕達のことを一瞬ですっ飛ばしたよ! しかも声の感じから変身はしていない……だったら。


「……倍プッシュでラッキーだ」

≪えぇ……やっちゃいましょうか≫


というわけで、乞食清光の柄に手をかけ……即座に転送開始。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


翔太郎には感謝しかない。俺の代わりに情報を集め、あの船のことを掴んだ。坊主の無茶苦茶を止めるチャンスをくれた。

確かに変身はできない。だが……それでも俺は戦う。俺は決して折れない。その姿勢を示す……示し続けることが、俺のやることだ。


(この街にさよならなどする必要はない)


信じられないというのなら、戦い続けることで信頼を掴む。


(俺がこの街を守る)


その覚悟が嘘ではないと、男の我慢で坊主に示す。


(俺が、アイツに男の道を示す――!)

「あらあら……もう変身もできない犯罪者の分際で……まだ逆らうつもり?」

「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ……レディ」

「それは撃ち返す武器があればの話じゃない」

「あるさ。男には……いつだって意地という武器がある」

「…………やりなさい」


囲んでくるマスカレイド達……そんな奴らに対し、スタッグフォンを取り出して……………………だがそこで、倉庫の二階から俺を見下ろしていた女が蒼い蔦に戒められた。


「え……」

「――――」


そしてそれに俺が、マスカレイド達が気づいた瞬間、背後に現れていた坊主が刀を抜いて……。


「やめろ!」


一喝するが、奴は止まらない。膝を折りながらの一閃で、女の右腕を断ち切り……返す刃で左腕。崩れ落ちて叫ぶ暇もなく、両足を真横からの一閃で切り払う。

そうして血しぶきが生まれ、それに頬が汚れても……アイツは揺らぐことなく、刃の血を払い…………。


「あ、あぁあぁああぁあ……ああぁあああああああああああああ!」

「Teller」


坊主は冷酷な瞳で、蔦に電撃を走らせ……奴の体を焼き払う。

いや、それだけじゃない。足下から黒い沼のような力を放ち、この空間をその力で染め上げて……!


「あがががががががががががぁあぁあぁあぁあぁあ…………!?」


そうして強引に……俺のときみたいに傷口を塞ぎ、唖然とする俺やマスカレイド達に冷たい視線を送る。


『あ、あぁああぁあぁああぁああぁあぁああぁあぁあぁああ…………!』

『あぁあぁああぁ! あぁぁあぁあぁあぁああぁ!』

『いあやあぁああぁあぁあぁあぁあ!』

「お前達、変身を解除しろ」

『がががあぁあぁああぁああぁあぁあ!』

「じゃなきゃ、死ぬよ?」


黒い沼に触れて、発狂するマスカレイド達を……崩れ落ちて、震え……変身を自ら解除し、血反吐を吐いていく奴らを……。

俺は……いや、大丈夫だ。沼には触れているが、問題ない。こんなもの、男の我慢で乗り越えられる。


だから坊主に声をかける。こんなことはもうやめろと………………いや、声をかけようとした。

次の瞬間俺の体は沼に飲み込まれる。足場が抜けるような感覚を覚え、そのままずぼりと……。


「ぼう」


そうして俺を次に包んだのは、潮風だった。そして見えたのは空……ほの暗い空……夜闇のまっただ中に、俺はいて…………!


「ず……!」


真下を見る……だがそこには海しかなかった。

言葉を、姿勢を、覚悟を示すことすら無意味……そう突きつけられるかのように、俺は海面に叩きつけられる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ほんと、ラッキーで倍プッシュ。


テラーの能力で取り巻き達は一瞬でダウン。

園咲冴子の背後を取る隙も、アホが道化を晒して確保できた。

しかもコイツ……馬鹿じゃないの!? 敵を前にして、変身もせずドレスでおしゃれしていたとか!


「あ、がががあぁぁあ……ひゃえへ……あはひなお……あし……て…………ああぁあぁあ…………!」

「園咲冴子……万雷のおっちゃんが寂しそうだったよ? そこまで愛されていなかったのかなぁーってさ」

「な、ぜ……おまえが、てらーを…………」

「うわぁ…………ここまで容赦なしって……」


空いた穴から出てきた知佳さんを横目でチェックしつつ、ため息を吐いちゃう。


「恐怖は“人間が生まれついて持っている本能であり、根幹的記憶”でしょうが」

「……!」

≪そう、だからあなたは苺花さんにも逆らいようがなかったんですよ。最初から≫

「あ、あぁああぁああ……」

「安心していいよ、殺しはしない。……僕は忍者候補生として、お前を逮捕するから」


というわけで、治療魔法をかける。痛みを緩和する術式も込みだから、アイツは白目を剥きながらも、どこか安らぎの表情を浮かべ……がたりと崩れ落ちた。

そのままザラキエルでアイツを持ち上げながら、アイツが落としたメモリを獲得。


≪Nasca≫


ナスカ……ナスカ文明のメモリ? これも面白そうだし、もらっておこうっと。

メモリを懐に入れてから、二階の手すりを飛び越えて、そのまま跳躍……知佳さんの前に着地し、園咲冴子もドサリと脇に落ちる。


「知佳さん、コイツらの拘束を手伝ってください。その上で進みましょう」

「ん……でもあの人は」

「海の上に落としました」

「…………夜の海に……!?」

「ギリギリで落下死しない程度の高さにしましたから、問題ありません」

「そこじゃないんだよなぁ!」

「それよりほら、急ぎましょう」


まず園咲冴子が舌を噛まないように、ワイヤーで猿ぐつわをかましてーっと。


「ラッキー過ぎてもう笑うしかない状況ですし」

「ほんと迷いなしなんだね、君は!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


全く、この子は……いや、でも納得はできた。


(……いづみちゃんが言っていた通りだね)


実はいづみちゃん、この子は私よりだって言っていたの。HGS能力者だってこともあるけど……それだけじゃなくてね。

……戦いの場も、救助の現場も、どうしてもシビアな判断を迫られることがある。それが正解かどうかはその場で分からないこともある。しかも時間制限付きの場合がほとんどだ。

そういう状況に対応するため、ネタにされがちな厳しい訓練などで精神力と連帯感を高め、任務に当たる……それが軍隊やら自衛隊……私達レスキュー部隊のやり方。


でも、時たま……そういうシビアな決断を、そういう訓練もなしでできちゃう子がいる。

心が強い、何かが欠如している……いろんな表現はできるけど、ただ一つ言えることは。


(日常生活を送る上でなら、決して目覚めない才能……)


この子には間違いなく素質があった。


(危機的状況に対する的確かつ鋭敏なセンスと判断力……それによる状況解決能力)


戦う人間として、力を振るう人間として、高い素質が備わっている。それも“暗殺者(アサシン)”としての性質に近い。

多分それはもう押し隠せない。あとは……うん、だったらまたじっくりお話かな?


翼を持つ先輩として、思い悩んだ青春時代を過ごした一人として、いろいろ聞きたいこともあるし。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『――!』

「ん……アルトからじゃと」


そこでヘイハチがスマホを取りだし、チェック……そうして快活そうに笑う。……ジャミングについては、何か対策していたらしく……今の着信音は。


「かかかかかかか! やっぱアイツ、ワシの想定を飛び越えてくれるんじゃのう!」

「……坊やね」

「園咲冴子を確保したそうじゃよ! どうも搬入の監督役として乗り込んでいたようじゃのお!」

「そう……」

「あぁ、それと……鳴海荘吉も乗り込んでいたから、近くの海に落とした?」

「な……!」


おい、待てよ……おやっさんまで見つかったのか! ウィザードメモリを手に入れて、それでって計画だったのに!


「おい、待ってくれ! おやっさんを」

「………………」


そこでぺたぺたと……左側から音が響く。通路を挟んだ向かい側……白い服とズボン、青白くも見えるそいつは、無表情に歩いていた。

それも年からすれば、俺よりも年下だ。うろついている黒服連中とは違う…………まさか。


「まさか……!」

4
おやっさんのこと・いや、その前にアイツだ! アイツを確保すれば、コイツらだって俺を認める! ウィザードメモリだって託してくれる! そうに決まっている!


「……おい、待て!」


慌てて駆け出し、なんとかアイツが消えていった通路に移動……。


「翔太郎?」

「いたんだ! 子どもが! あの、高校生くらいの!」

「まさか……!」


ヘイハチも慌てて駆け出そうとしたところで、俺達の間で銃弾がいくつも走る……くそ、敵の攻撃か!


「恭ちゃん!」

「大丈夫だ。……手早く片付けるぞ」

「うん!」

「しゃあないのう……! シュラウドちゃん、頭抱えてガクブルしとけ!」

「ご心配なく……これでも自衛くらいはできるわ」


そう言いつつ銃を取り出して、シュラウドも乱射……って、それは俺も欲しかった! 言っている場合じゃないが!


「待ってろよ、おやっさん……!」


慌ててアイツが向かった方へと走り出す……。


(そうだ……俺が、示すんだ。まず俺が示すんだ)


祈りを込めながら、足を必死に動かす。


(おやっさんが否定される理由なんてない。みんながおやっさんを認められないなら、俺が認めさせる)


俺はおやっさんの助手だ。おやっさんにだっていずれ認められて、一流の探偵になる男だ。


(俺の努力で……根性で……男の意地で。風都を守るのは、たったそれだけの力でいいんだって示すんだ)


おやっさんから教わったこと……おやっさんの生き様……それを俺が伝える。それで成果を出す。


(そのためにもアイツを……!)


決意のままに走り続け……あの薄気味悪い奴を見つけた。


「おい!」


そう声をかけると、アイツは足を止め……幽霊のようにゆらりと振り向く。


「お前が運命の子か」

「………………誰だい、君は」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


二〇一七年七月――ぱちぱちと火花がはぜて、お肉が焼ける中、話は進む。

ついに、蒼凪くんとフィリップさん……そして翔太郎さんの出会いになったんだけど。


「――――人生には、決断と選択が求められるときがある」


……すると……そんな中、ソフト帽に黒いベストとスラックスを着た男の人が入ってきて……って、この人はまさか!


「翔太郎!」

「左、お前どうして……」

「悪いな。さすがにこの話……恭文だけに任せられなくてよ。……赤坂さん達とも顔を合わせたかったし」

「……左翔太郎さんですね。初めまして、警視庁公安の赤坂です」

「左翔太郎だ」

「……あ、それならこっちどうぞ! 追加する分には……お金もそのままですけど、それは」

「大丈夫さ。迷惑料として受け取ってくれ」


ひとまずあたしが追加注文を取りまとめて、左さんには座ってもらい……やっぱ似ているんだよなぁ、ショウタロス君とさ。


「…………あのときの俺は、なーんも分かっちゃいなかった」

「ほんとそうだよね。なんで生きているの? なんでそうまでして生きようとしているの?」

「うるせぇよ!」

「え、おのれ……よくその口を叩けたね」

「あ……はい。すみません……!」

「恭文君、煽ると圧をかけるのは、ちょっと止まろうね……!」


まいさんが止めてくれたのを見て、翔太郎さんはソフト帽を正し……はぜる火花を見やる。


「決断と選択……その道筋の中にはときとして、死に神が待ち受けている場合もある。
このとき俺が選んだ道は、間違いなく死に神の道だった」


左さんは静かに息を吐き……ソフト帽をもう一度正す。ううん、更に深くかぶる。


「探偵:鳴海荘吉を殺したのは俺だ」

「え……」

「おやっさんから全てを奪ったのは……俺だ」


……そこであたし達は気づく。この人が……帽子の奥底で泣いていると。


「俺が……おやっさんの“呪い”を……決定的にした……!」

「……だがこのときの翔太郎はなにも知らなかった。
そしてボクもまた、自分の罪を知らなかった」


これは、蒼凪くんが迎えた最初の戦い。蒼凪くんがウィザードメモリと出会って……あたしと伊佐山さんを、みんなを助けてくれた……どうして助けられたのかを辿る、根っこのお話。

あたし達も事件に関わったし、PSAの人達にもいっぱいお世話になる。その上で、それぞれに今までとは違う生活に対し、腹を括っていくための通過儀礼。


でも……始まりを迎えたのは、蒼凪くんだけじゃなかった。


「そんなボク達の出会いは……間違いなく最悪なものだったよ」


左翔太郎さんと、フィリップさん……二人で一人の探偵もまた、始まりの夜を迎えていた。


(その13へ続く)





あとがき

恭文「というわけで、翔太郎とフィリップの出会い……なんて吹き飛ばす勢いで出てきたよ! マジカルルビー!」

マジカルルビー≪ふふふふ……これで恭文さんもプリキュア化から逃げられませんねー! 私にプロデュースをお任せあれー!≫

イリヤ(プリヤ)「ご迷惑をおかけしないでぇ!」

恭文「ただまぁ、今じゃなくて六歳とかだからダメージは比較的少なめで」

イリヤ「ルビーなのにですか!」

マジカルルビー≪恭文さん、洗脳とか通用しませんしねー。ぶーぶー≫



(その辺りが不満そうなルビー)


恭文「それはそうとイリヤ! 聞いてくれた!? 僕と牧野さん、三枝さん、朝倉さんによる共演! アイドルユニット!」

イリヤ「あ、うん……エイプリルフールのやつですよね。……二人ダンディーで一人高めな男性ボイス、一人ガチ女性ボイスでなんとも凄いことに……」

恭文「凄いでしょー! この日のために練習したんだよー」

イリヤ「でも三枝さん、東京編だと失踪していたんじゃ……それに朝倉さんも逮捕されて」

恭文「だから失踪先と拘置所で練習を」

イリヤ「まさかの地続き!?」


(さすがにそれはありません)


恭文「でね、夜は四人でのライブをやるんだー。配信だけど」

イリヤ「ライブ!?」

恭文「ジンウェンちゃんねるで」

イリヤ「まさかの公式チャンネル外!?」

恭文「エイプリルフールだから、公式はちょっとーってNGが出ちゃって」


(だったらジンウェンちゃんねるはいいのだろうか)


恭文「せっかくだし、楽しくいくぞー! 麻奈の曲も三味線で弾き語りするし!」

イリヤ「それすご! 見ます! 絶対見ます! みんなで見ましょう!」

恭文「なお歌うのは朝倉さん」

イリヤ「それ弾き語りじゃないー!」

旋風龍「でもご主人様、楽しそうですねー。メイドとしても盛り上がってきましたよー」


(わいわいがやがやな蒼凪荘…………が、その脇でたたずむ二人)


フェイト「ど、どうしよ……ヤスフミと牧野さん達の嘘が凄すぎて、なに言ったらいいか吹き飛んだ……!」

瑠依「父さん……社長……何をしているの……!? というか、そういうのがありなら私がやりたいのに!」

茶ぱんにゃ「うりゅりゅー」

瑠依ぱんにゃ(仮称)『うりゅ……』


(というわけで、やっぱりエイプリルフールに苦戦なガッツポーズ組でした。
本日のED:雨宮天『火花』)


すみれ「あ、ひぐらし編で私達がもらったサポートデバイスの名前ですね。……私は名前決めましたよ! ほまれです!」

ほまれ『うりゅー♪』

優「うちもコンーって名前つけたよ。なぁ、コン」

コン『うりゅ!』

瑠依「そう、なのね。でもそれだと…………あ、そうよ……名前ならいいのがあるわ」

瑠依ぱんにゃ『うりゅ……?』

瑠依「ゴンザレス!」

瑠依ぱんにゃ『…………………………』

優・すみれ「「…………センスが……ちょっと……」」

コン・ほまれ「「うりゅー」」

千早「ゴンザレス……いい名前ね」

瑠依ぱんにゃ『うりゅ……!?』


(おしまい)






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