[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第86話 『Dandy or Fancy/捨てる事が男の道?』



とある2000以上の技を持つ冒険家「青空は、基本的に晴れた日中の空を指す」





(あれ、なんかいきなり出てきた)





とある2000以上の技を持つ冒険家「昼間空が青く見えるのは、太陽から出た光の内地球に一番届きやすいのが青色だからなんだ。
ちなみに夕焼けは、太陽の角度が変わっていくにつれ、赤色の光が届きやすくなるから赤く見えるんだよ」





(へー♪)





とある2000以上の技を持つ冒険家「みんなも辛い時は、青空を見上げてくれよな」





(そう言って、冒険家はとびっきりの笑顔でサムズアップをしてまたどこかへ冒険に出発した)




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ラン・ミキ・スゥ『しゅ、しゅごしゅご・・・・・・?』

ミキ「なんかまた凄い人に乗っ取られたような」

スゥ「ですねぇ。恭文さんが大喜びしそうですぅ」

ラン「と、とにかく今日もスタートドキたまタイムー。さてさて、今日はあむちゃんが怖い先輩に目をつけられちゃうお話だよ」

スゥ「しかもその人は、あの二人にも関係があるらしくてぇ・・・・・・はわわ、どうなるんでしょお」





(立ち上がる画面に映るのは・・・・・・それはもう鋭い眼光)





ミキ「というかあむちゃん、生きて次回に行けるかなぁ」

ラン「まずそこから不安っ!?」

スゥ「もしかしたら最大の危機かも知れないですしねぇ。それでは、早速行きましょお」





(せーの)





ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、私ティアナ・ランスターは中学生生活を徹底謳歌すると決めて、色々考え中。

だからこそ放課後に入った直後の騒がしい中、陽子と淳とアレコレ見ていたりする。

外見は淳が黒髪ロングなおとなしめな感じで、陽子が若干赤の入ったショートカットの髪で元気ハツラツな感じ。





なお、陽子は陸上部・・・・・・だったんだけど、もう引退時期なのであまり顔を出せなくなって寂しそう。

というか、基本あまり出さない方がいいのよね。立つ鳥跡をなんとやらって言うでしょ?

とにかく教室の一角で陣取りながら見るのは、いわゆる求人雑誌。一応さ、高校進学も考えた。





いや、ここは訂正。今はまだ考え中かな? もう一度0から色んな事、考えていくつもりだから。










「・・・・・・ランスターさん、バイトしたいの?」

「うん、一応ね。まぁ元々鍛えてる技能はあるけど、それ以外の事も勉強してみたくて」

「あー、学校出たらまた海外の方に戻るんだっけ。だから今のうち・・・・・・かぁ。
でもさすがに中学生でバイトって、結構難しいよね。新聞配達とかならアリだろうけど」



陽子が私の右横から、求人雑誌を見つつそう言ってきた。まぁ、確かにそうなのよね。

大体のバイトが高校生以上とか、18才以上とか条件が付いてたりするもの。



「そうね。あとは今の時期だと、バイト先もちょっとだけ厳しめの条件をあと一つ付けているところが多いの」

「条件?」

「例えば今のランスターさんみたいに、『卒業するまでの間』というバイトさんをお断りしてるところもあるの。
もちろん働く期間にもよるけど、やっぱりお店としてはバイトさんには長期で働いて欲しいと思っているわけですし」



左隣に居る淳も、情報誌を見ながら優しい顔で言ってきた。というか、なんか楽しそう。

さっきからこの子はずっとコレなのよ。私の顔見て、まるでお母さんが子どもを見守ってるみたいな感じで見てる。



「あぁ、なるほど。だから今の私みたいな条件だと色々厳しくなると」

「えぇ。うちの兄さんもその関係で、バイトの面接何個か落ちちゃった事があるから」

「実体験からなのね。うーん、そこは予想外だなぁ。そうするとどうしたものか」





あれからまた考えて、局の仕事以外の事も手を伸ばしてみようと思った。

つまりフリーター? そういうので社会勉強するのも、いいかなってさ。

それで色々見てたんだけど、現状のままだと地球ではハードルが高い事が分かった。



でもここは、『地球に居られて自由に動ける今のうちに』って無理にこだわる必要はない。

卒業してミッドに戻って、非常勤みたいな形に勤務体制をシフトするのも手ではある。

一応局員の資格を持ったままでも、諸事情込みならそういう風にも出来る制度があるの。



これ、最近出来た制度でね。管理局は福利厚生に関してだけは、本当にしっかりしてる。

一度辞めちゃったら、また同じ役職に復帰って難しいしね。これは、そういう時のためにあるの。

一見意味のない制度に見えるだろうけど、意味ならもちろんちゃんとある。



というか、ここの辺りで管理局の慢性的な人手不足が垣間見えたりもする。

ようするにそんな制度を作ってでも、一度中に入れた人材を逃がしたくないのよ。

そこは魔導師だけじゃなくて、一般職員も含まれる部分になる。



その理由は、入局志望者の激減。原因はヴェートルでのクーデター騒ぎとJS事件よ。

しかもJS事件に至っては、黒幕が管理局のトップで実質内乱に近いわけでしょ?

市民からすると、管理局の中でのゴタゴタに巻き込まれて穏やかに過ごせない時間を味わった。



当然だけどそんな組織に入りたいと思う人達は・・・・・・相当少なくなってるっぽい。

私みたいに何かしらの目標があるとか食べるためにって人はともかく、選択の自由があるなら局は選ばない。

だって何時あんな内乱や、一種の放置プレイ的な行動を強いられるかも分からないんですもの。



だからこそちゃんと手順を踏む事前提で、こういう制度が事件後にいくつも作られてる。

局という一つの職場の環境に相当に気を使って良くしていって、純粋な就職先としても魅力的にしていく。

それもJS事件をキッカケに加速した、管理局の改革方針の一つなのよ。



元々福利厚生の充実が管理局の組織としての売りの一つだったけど、今は更に良くなるように模索してる。

ただ私としては数年後、こっちで今やってる『事業仕分け』みたいな事にならないかと少し心配ではある。

でも、そういうところも含めて管理局が必死になっているのも分かるのよ。というか、一局員として言うならならなきゃおかしい。



さっき言った二件の事件も含めて、新暦74〜5年近辺のゴタゴタで管理局の支持率はガタ落ちだもの。

そこの辺りの影響に伴なう改革の動きは、まだまだ現在進行形なのよ?

実際去年行われた公開意見陳述会とかも、そこの辺りの関係で関係者がヒートアップし過ぎて大荒れだったし。



なおここは、なのはさんやフェイトさんのような広告塔の影響も含めた上での話。

つまりもう『エース・オブ・エース』や『閃光の女神』という宣伝材料を使っても、意味がなくなってきてる。

まぁこれも当然と言えば当然かも知れないわね。だって相当にへぼやらかしまくってるんだから。



『誰もが憧れる美しいエース』を掲げてイメージ戦略打ったところで取り返せないだけの事を、私の居場所はしている。

というかね、女性の魔導師が全面的にそういう広告材料にされるのは、こっちでも一緒っぽい。

聖夜中では、地球の歴史や現代史の勉強とかも当然あってさ。そんな授業を受けていく中で分かったの。



どうもミッドでも地球でも、まだまだ男性が幅を利かせて・・・・・・ここにはようするに、男女平等の話も絡んでくる。

そういう男性の職場で頑張っていて成果を出せるクリーンな女性魔導師は、広告材料としてはうってつけ。

つまりなのはさんとフェイトさんやそういう場に担ぎ出される魔導師は、女性である事すらも局に利用されてるの。



あとはアイツから聞いたんだけど、こっちではいわゆる893な方々が女性の弁護士に仕事を頼む事も多いとか。

もちろん自分達の関係者の弁護よ。なお、理由は全く同じ。断ろうとしたら、当然のように色々と脅す。

管理局、こっちの極道とかマフィアとかとやってる事がほとんど変わっていないってどういう事なんだろ。私は疑問よ。



ううん、もしかしたら『組織を維持する』点で共通する部分があって、だからどうしてもこうなっちゃうとか?

まぁその、今こうやって管理局や次元世界以外の事で色々考えてみようと思った理由の一つは、ここなのよね。

例えばさ、局員を辞めてアイツやリインさんみたいな嘱託にもならなかったら、私は一般人じゃない?



もちろん魔法の技能を捨てるつもりはないけど、今までとは色々と物事の関わり方や見方が変わってくる部分は多い。

一等陸士という立場は、もう使えない。フェイトさんの補佐官で居る事で自然と受けられる後光もNG。

でもきっと、普通に一般人として生きていても私は世界と関わっていく。何かあった時、見ない振りなんてやっぱり出来ない。



実際にその事件に関わるかどうかって言うのは別として、社会で生きていくってそういう事だと思う。

それぞれの立場なりに、それぞれの想いを通すの。だから、ちょっと考えてる。

もし私が局員・・・・・・執務官以外の方向で世界と関わるなら、どういう風になるのかなと。



完璧な正解なんてきっと出せないだろうけど、それでも今の私なりの『Heartful Song』を少しずつ探してる最中。





「でもティアナ、なんか楽しそうだね」

「そう見える?」

「うん。もう顔がワクワクしてるーって言いまくってるし。ね、淳もそう思うでしょ?」

「そうね。だってランスターさん、目の輝きから違うもの」



二人に微笑まれながらそう言われて、私はまぁ・・・・・・軽く苦笑? というか、それしか出来なかった。

だってさ、ここで何をどう言えばいいわけ? 色々言ったところで、結局はごまかし切れないだろうし。



「そうね。うん、楽しいのかも」



私はそれだけ小さく呟いてから、改めて資料に目を落とす。

胸の中のワクワクを感じながら読んでいると、着信音が響いた。



「・・・・・・ティアナ、さすがにその着信音はひどくない?」

「なんで?」

「いや、なんでって・・・・・・ねぇ?」



なおこの着信音は、アイツからだ。そして陽子と淳は、なぜか苦笑い気味に私を見出す。



「『こんにちは赤ちゃん』だもの。しかもそれ、ガーディアンの蒼凪君専用でしょ?」

「いいのよ。あのバカと話す覚悟を決めるためには、多少気持ちを和らげる必要があるの」

「それもまたひどいわね。というか、噂されてるみたいにお付き合いしてはいないんだ」

「えぇ、いないわよ? もちろん犬猿の仲ってわけじゃないけど・・・・・・だってアイツ、バカだし」



そんな事を言いつつも私は左手を動かす。ブレザー式の制服の右の懐から、左手で携帯を取り出して繋ぐ。



「はい、もしもし?」

『あー、ティアナ? 突然だけどさ・・・・・・前にティアナに告白してきたのって、中等部の岩垣って人かな』

「はぁ? なによいきなり」

『いいから答えて』

「いや、そうだけど・・・・・・それがどうかしたのよ」



なお、私が告白された話に関しては第32話を見てもらえれば大体の事が分かると思うので、あしからず。



『そっかぁ。じゃあティアナ、悪いんだけどその人の評判とかちょっと教えてくれないかな。
というか、もう中等部終わりでしょ? 一緒に帰るついでに、ちょこっとさ』

「いや、ちょっと待ちなさいよ。なんでいきなりその話? 全然見えないから」



だってほら、話数を見て? もう86話なんだから。2年目ももうちょっとでおしまいなんだから。

それで今更1年以上前にやった話の中の話題を出されても、私だって困っちゃうのよ。



『・・・・・・まぁアレだよ、結論から言うと』

「えぇ」

『僕は下手すると50話以上前のフラグのために、その人とケンカしなきゃいけないかも』

「あぁ、そうなんだ。それはまた大変ね」



そう言ってからすぐ、頭の中の動きが止まった。そして私は・・・・・・とりあえず叫んだ。



なんですってっ! てーか何よそれっ!!

「ひっ! ティ、ティアナどうしたっ!?」

「あら、何かトラブルかしら」

「淳、アンタなに落ち着いてるっ!? もうちょい動揺とかしなよっ!!」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第86話 『Dandy or Fancy/捨てる事が男の道?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今回の話を進めるためには、そんなティアナの叫びから少しだけ時を遡らなくてはならない。

この日、聖夜小は朝から妙な緊張感に包まれていた。原因は件の岩垣。なお、空手部の現主将で空海の一つ上。

この子はやや曰く、先祖代々空手道場を営む家の跡取り息子。父親と祖父も、空手家だとか。





そんな祖父と父親から幼少の頃から相当鍛えられていて、その拳の一撃はヒグマでさえも一撃で潰す。





だからこそ空手部の主将を1年時から務めるという異例な感じなのだけど、その行動まで異例ってどういう事ですか。










「・・・・・・てゆうかまなみさん、ぷにょりん持ってたら空手部の人達うるさいですよ?」





ちなみにぷにょりんとは、手のひらサイズで細長い猫を象った可愛いキャラクター。

ぷにょぷにょした素材で出来ていて、真ん中を指で押して離すと『ぶ〜にょ』と鳴いて可愛い。

最近女子向けに出始めたグッズなんだけど、実はフェイトやシャーリーも何気にファンなの。



というかね、指で押して『可愛いよね』って言ってるフェイトの表情が可愛くて、いっぱい抱きしめてしまう。

そんなわけで、フェイトを可愛くしてくれるぷにょりんは僕も大好きだったりする。

さっきもまなみの持ってるの触らせてもらったけど、つい表情が緩んでしまう程の柔らかさだった。



感触、デザイン、そして鳴き声・・・・・・もうバランス取れ過ぎてて怖いくらいの神キャラクターだよ。





「やっぱり? うぅ、私も忘れちゃってたんだよねぇ」

「まなみ、今のうちに隠しておく? ほら、そうすれば問題ないかも」

「あ、そうだね」



わかなにアドバイスされて、まなみはそそくさとカバンの中にぷにょりんを仕舞おうとする。



「二人共、そんな必要ないよ。てゆうか、話おかし過ぎるし」



ただ、あむがそんな事を言ったので動きが止まったけど。



「空手部のみんな大袈裟過ぎない? まるで可愛いもの持って来てたら、あたし達が殺されるって言い方だったし」

「あむ、それは仕方ないんだよ。空手部・・・・・・体育会系ってのは、基本的に上下関係を異常な程に重んじるから」



あむは納得いかないという顔を、そのまま僕に向けてくる。ただ、それは僕に対してじゃない。

なおかつ表情もそれほど強いものじゃない。ちょっと疑問に思って首を傾げてる程度のもの。



「先輩が猫は空を飛ぶものだと言えば、次の瞬間からは声を揃えて猫はそういうものだと言わなきゃいけないのよ」

「あ、それは言えますね。そもそもそういう厳しい体勢で年月を積み重ねたという事自体が重んじられるのですよ」



僕の隣を歩くリインが、納得した顔であむの方を見上げる。



「だから、岩垣先輩が可愛いものが嫌いなら見せないようにするのが」

「体育会系としての在り方だと。いわゆる先輩を立てるってやつ?」

「ですです」

「うーん、やっぱあたしには分からない世界だなぁ。別にこれくらいいいと思うのに」





さて、話を戻そうと思う。僕とリインとあむと空気なりまとわかなとまなみがこんな話をするのには、理由がある。

原因はその岩垣先輩だよ。本日聖夜小は・・・・・・可愛いもの禁止令が出ている。

ようするに可愛い物を持ち込んではダメという妙なお触れが、聖夜小空手部から出てしまっているのだ。



そのために全校集会まで開かれて、昨日は何気にガーディアンは大変だった。

で、そんなお触れが出てる原因は一つだけ。件の先輩が、可愛いものが大層嫌いだそうなのよ。

先輩は本日、聖夜小の空手部に稽古をつけに来てくれるらしい。



で、その時にそういうのが目についたら大変なので、隠しておいて欲しいと頼まれた。

なお、全校生徒は大ブーイングだった。ただ空手部の子が必死に『死にたいのか貴様らっ!!』などと言うから、一応納得した。

まぁアレを納得とは言わないと思うけど。あんまりの剣幕に、全員引いただけだったし。





「でもなんというか、この学校やっぱりおかしいわよね。普通こんなお触れ、先生が止めるはずなのに」

「りま、今更だよ。というか、自分がその『おかしい』の代表の一角担ってる事を忘れてない?」

「そこを言われると色々と辛いわ」





・・・・・・ただ、嫌いなのはグッズやキャラクター関係だけらしい。女の子に関してはそういうのはないっぽい。

そう言える根拠も、当然ながら僕にはある。だってその岩垣って子、ティアナに告白してるみたいだし。

あの時ティアナから名前は聞いてないけど、『空手部の主将』となると他に該当者が居なかったりするんだよね。



まぁアレだよ。男の生き方は、時として傍から見てると矛盾したように見えるものなのよ。

自分の中から矛盾や曇りも出てこない人間なんて、きっとどこにも居ないよ。

みんなそういう矛盾と向き合いながら、必死に生きてる。その子だって、きっと同じだと思うな。



女の子はどうかは知らないけど、男っていうのはそうなのよ。レジアス中将とかも、それと言えばそうなる。

まぁ女の子は理想主義者でありながら現実主義者なので、そこの辺りに理解を示せないっぽいけど。

もちろんそうじゃない人も居るけど、あむはやっぱり分からないらしい。さっきからずっと頭捻ってばっかだし。





・・・・・・オッスッ!!



そんなあむの様子を苦笑しながら見ていると、こんなやたらとでかい声が耳に入ってきた。

その原因は、学校の中・・・・・・正面の通路に列を作っている空手部の連中。で、禁止令を出した要因達。



ありがとうございましたっ!!





空手部のみんなは、ある人物を送り出そうとするかのように陣形を組んでいる。

そしてその送り出される人物は、僕達から300メートルほど先に居る。

丸刈りの黒髪と射抜くような鋭い目つきが、きっと女性からは不評と思われる。



ほら、今ってスイーツ系が主流だしさ。アレはやっぱり一昔前になっちゃうのよ。





「・・・・・・おう」



アレが噂の岩垣らしい。で、僕はそこの辺りには興味ないので進もうとしたら、凄まじく視線が鋭くなった。

そしてその視線の先には・・・・・・あぁ、あむが余計な事言うから。だからこうなるのよ。



可愛いものだと・・・・・・軟弱な



もう視線だけで人を殺そうとしてるんじゃないかって勢いで見てるのは、まなみ。

僕達ではなく、まなみの手元を凝視している。それで軽くプルプル震えてたりする。



「こらー! 可愛いものは禁止だって言っただろっ!!」

「隠せっ! 早く隠せっ!!」





そして怯えたように、空手部が僕達に向かってそんな事を言う。なお、周りは助けてくれない。

ただここは仕方ないのよ。マジであの子、ぷにょりんを相当鋭い視線で見てるから。

まぁここまでは良かった。まなみ達に何かするようなら、遠慮無く止めに入ればいいだけだし。



でも問題はその視線が、僕の方に移った事。それにより全員が驚いた顔をする。





・・・・・・恭文、あなた何したの? どうもあの人、あなたの事見てるっぽいんだけど

まさか、蒼凪君も可愛いものと判断されてるとか?

でもわかな、それだとBL・・・・・・ひ、また私の方見てるっ!!

さすがにあの視線で求愛とか嫌なんですけどっ!? いや、それ以前にBL自体嫌だしっ!!



同性愛自体をアレコレ言うつもりないけど、僕はノーマルなのっ! 彼女居るのっ!!

お願いだからそういうのは同じ趣味の人に・・・・・・って、そういう話じゃないからっ!!



てゆうか、一体なにを

「・・・・・・バカじゃんっ!?」



僕達が状況に対して軽く困惑してると、あむが叫んだ。そしてあの子を睨みつける。



「バ、バカっ!? 貴様、何を言っているんだっ!!」

「そうだそうだっ! 岩垣先輩に謝れっ!!」

「バカにバカって言ってなにが悪いわけっ!? てゆうか、自分が嫌いだからって人にも我慢させるなんて最低だしっ!!」










あむがそう言った瞬間、空気が凍りついた。というか、時間さえも止まったように感じた。





なお、怖い先輩を睨みつけてるあむが内心どう思ってるかは・・・・・・今までの経験から察してください。





うん、間違いなく頭抱えてるね。『・・・・・・やっちゃったっ! どうしよー!!』とか言ってさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そして、そんな状況も授業開始のベルに救われた上であっという間に放課後です。
それでロイヤルガーデンに来てるんですけど・・・・・・日奈森さん達、遅いですね」

「そうだよね。で・・・・・・空海、やっぱり友達居ないの? 中等部では一人でお弁当ライフとか?」



ロイヤルガーデンには、現在僕とリインと唯世となぎひこと空海、それにそれぞれのしゅごキャラ達だけ。

なので僕が若干慰めるようにそう言うと・・・・・・空海は崩れ落ちた。



「相馬君・・・・・・あぁ、やっぱりそうだったんだ。僕、もしかしたらそうじゃないかなって」

「恭文も藤咲も黙れよっ! てゆうか、俺マジで友達居るからなっ!?
別に友達居ないからこっちには来てるんじゃねぇしっ! 今日は藤咲に用があって来たんだっ!!」

「僕に用事?」

「あぁ。・・・・・・なぎひこ、お前にJチェアに隠された使命を伝えるために来た」



空海はまた楽しげにしてるけど、僕達は軽く首を傾げる。なぜなら、ちょっと疑問があるから。



「空海さん、それならどうして夏休みに伝えなかったですか?」



今リインがツッコんだのが、その疑問。だって僕達、夏休み中は一つ屋根の下だよ?

なのにどうしてそこを言わなかったのかと疑問に思うのは、当然の権利だよ。



「夏休みの時は、日奈森達も居ただろ? 中々そこの辺りでタイミングが掴めなくてな。なぁ、王子」

「あ、それ言っちゃ」

・・・・・・王子?



次の瞬間、唯世の頭に小さな金色の王冠が現れた。



「その通りっ!!」



いきなりでかい声を上げたのは、唯世。というか、王冠が頭の上に・・・・・・キャ、キャラチェンジしてやがる。



「空海、これがなんかその使命とやらと関係あるの? 今の、絶対ワザと言ったよね」

「ふ、家臣が疑問なのもしかたあるまい。だが、関係はある。・・・・・・旧ジャック、お茶」

「はい」



あ、空海がどっかからティーカップ持ってきた。

それに紅茶を注いだ上で唯世に渡して、お茶を飲ませてる。



「旧ジャック、肩を揉め」

「おう」



次は凄いスピードで唯世の後ろに回って、肩を揉み始めたっ!?



「旧ジャック、チョコレート」

「ほい」

「あーん」



空海、あーんなの? 普通に差し出すのはだめなの? というか、男同士でそれは嫌だから。

ちなみに今、可愛らしく口を開けた唯世に向かって空海がチョコレートを放り込んでいます。



「・・・・・・・・・ちょ、なにこれ。すごい引くんですけど。ありえないんですけど」

「リインもです。というかというか、これなんなんですか? BLですか?」

「ふん、当然だ。なお、BLの事ではないのであしからず」

「よし、そこの王様キャラ。BL以外で何がどう当然なのかを言ってみろ。
僕もなぎひこもリインもちゃんと聞いてあげるから」



てーか、普通にいきなり過ぎてワケ分かんないよっ!? 使命って言うか、召使いじゃないかなコレはっ!!

もしくはマジでBL!? さっきもう、キラキラとした空気出てたしっ! あのまま『空海×唯世』にもつれ込みそうだったしっ!!



「よいか? トランプのJとは臣下を意味する。つまりK・・・・・・王の手足となって仕えるのが、Jの役目」



王様な唯世は右手で軽く頬杖をつきつつ座っている椅子に体重を預ける。

そして目の前に居る僕達を軽く見下すような目つきを・・・・・・うわ、アレなんかムカつくんですけど。



「犬はリーダーに仕えてこそ犬っ! 犬にとってもそれが幸福なのだっ!! あーははははははははははっ!!」



なるほど、言いたい事は分かった。確かにその通りだし感動的だよ。だが無意味だ。



「・・・・・・・・・・・・リイン、やっぱりエンブリオは管理局で捕獲しようか。そっちの方がいい気がしてきたよ」

「ですね。リインも早速フェイトさんに連絡するです」

「だぁぁぁぁぁっ! 待てっ!! 恭文もリインも待ってくれっ! これには事情があるんだっ!!」



慌てた様子で、リアルに通信をかけようとしていた僕達を空海が止めにかかる。

でも僕とリインは、ただただ冷たい視線を送る事しか出来なかった。



「空海、事情があるなんて言うのは、犯罪者は大小問わず同じだよ。
・・・・・・悲しいなぁ。まさか唯世に100年単位でくさい飯を食ってもらわないといけないなんて」

「唯世さん、大丈夫なのです。家族への手紙を書く事くらいの権利はあるですから」

「だから待てってー! リアルに空間モニター展開して、フェイトさんの番号押そうとするなよっ!!」

「で・・・・・・その犬を僕にやれと?」



なぎひこが引きつりながらも僕達の華麗なボケをスルーしつつ、王様にそう聞いた。

で、調子乗りまくってる王様は当然と言わんばかりに頷いた。



「その通りだ、新ジャックッ! 手始めに王の足をマッサージしろっ!!」



すっごい笑い出しながら右足を出してきた王様はともかく、僕は空海に視線を向ける。

なんかこうね、色々と確認しなきゃいけないと思うのよ。



「空海、まさか・・・・・・ずっとこんな事してたの?」

「まぁ、二人っきりの時だけだな。だからこそ『隠された使命』なんだよ」

「いや、これ使命って言うの? というかさ、まさか海里も」



海里は元Jチェア。まさか・・・・・・まさか海里も僕達が知らないところで。



「あぁ、そうだ。海里にも最初の段階で僕と空海からここは伝えてあった」



出来れば肯定して欲しくなかったのに、あっさり頷いてくれたのはキセキ。

なお、この間も王様は笑い続けなぎひこは頬を引きつらせている。



「海里はとても優秀だった。まるで誰かにこき使われるのが慣れているようだった」

「・・・・・・キセキ、バカでしょ」

「なんだとっ!? お前、いきなりバカ呼ばわりはないだろっ!!」

「そこがバカだって言ってるの。・・・・・・海里がなんで慣れてたのかなんて、原因は一つだけじゃないのさ」

「ま、まぁ・・・・・・それは確かにな」



キセキも薄々気づいていたのか、困ったような顔をしつつ僕の言葉に頷いた。

なお、原因に関しては・・・・・・察してください。



「ただ、なんでだろうな。そう考えると涙が出てくるのだが」

「奇遇だね。僕もだよ。てゆうか王様、海里・・・・・・あのままで大丈夫なのかなぁ。
なんかね、将来的にキャリアウーマンの主夫とかやってそうなイメージが」

「いわゆる恐妻家だな。なんというか、似合っているのが余計に涙を誘うぞ。アイツも相当所帯染みてたしな」



あぁ、どうしよう。海里がこのまま女の人の尻に敷かれるのを当然と思うような生活を送り続けたら。

実際問題、海里って献身的なタイプっぽいしありえそうで怖いんだよね。僕、先行きが色々不安かも。



「というより恭文さん、確か予定だと恭文さんが新Jだったですよね」



キセキと二人涙を拭っていると、唐突にリインがそんなボツ設定を持ち出してきた。

なのでちょっと考えて、改めて気づく。そしてもう一度あのふんぞり返ってるアホを見る。



「・・・・・・そうだよ。下手したらこれやってたんだよ」





さてさて、もう何気に70話以上前の・・・・・・なんか良く続いたなぁ、この話。というか、続くようにしたんだよねぇ。

超・電王編とか無茶もして、しゅごキャラ原作が続いた時のための延命措置を頑張ったでしょ?

で、ミッドチルダ・X編も実はそのためのネタ振りだったのに、原作キリ良く終わっちゃったからもうびっくり。



というか、これまでのお話の半分近くが延命措置・・・・・・そこの辺りにも感慨深くなりつつ、話を戻そうと思う。

6年進級の際、僕とリインは当初の予定ではその時空席なJチェアとQチェアに納まるはずだった。

ただ、みな様ご存知の通りJチェアには海里が。Qチェアにはりまが就任したため、僕達はジョーカー枠となった。



でも、万が一あのまま進んでたら・・・・・・僕は唯世の足を毎日揉んでた可能性があるのだ。





「あー、そういやそうだったな。つーかお前、これやれって言われたらどうする?」



空海に真剣な顔でそう言われて、少し考えてみる。・・・・・・まず、肩を揉めと言われたら。



「ビックカメラのマッサージ機売り場の体験台に乗せる」

「・・・・・・そっか。やっぱりそういう方向性か。んじゃ、お茶って言われたら?」

「直接口に流し込んで、一滴残らず飲ませる。なお、冷茶」

「・・・・・・・・・・・・なら、足を揉めと言われたら?」

「その前に僕の足を揉んでみろとすごむ」



空海、なんでそんな残念そうな顔で僕を見るの? いや、なぎひこもなんだけどさ。



「ちなみに恭文君。フェイトさんにやれと言われたら?」

「フェイトはちゃんと『お願い』として言うもの。それだったら聞くよ。
なによりフェイトはマッサージしてる時の反応が可愛い。吐息も色っぽいし」

「「誰もそこは聞いてないからっ!!」」



せっかくエンジンかかってきたのに、二人が必死な顔で止めてきた。

というか、軽く首を傾げるとなぜか二人同時に右拳を握り締める。



「でも・・・・・・やっぱりか。うん、予想してた。君、ドSだもんね。むしろやらせる側だもんね」

「いや、それほどでも」

「「誉めてないからっ!!」」



まぁ、僕の話はいいじゃないのさ。僕はジョーカーV。反則な切り札。臣下でもなければSuicaでもなんでもないの。

だから僕は改めて、顔と視線で『早くしろ』と言っている王様を見るのである。



「というわけでJチェア、頑張りなさい。おじさんは応援してるよ」

「他人事だと思って・・・・・・!!」

他人事だもん♪

「その満面な笑み浮かべながら可愛く言うのはやめてっ!? なんかすっごいムカつくっ!!」



そこまで言ってからなぎひこは軽くため息を吐いて、一旦立ち上がる。



「でもまぁ・・・・・・それが仕事ならきっちりやるよ」



そう言いつつも唯世の前まで来て、その場で膝をつく。それから両手で、唯世の右の太ももに手を取る。



「ふん、それでいい」

「足のマッサージだっけ? まぁいいけど。たださ」



なぎひこが唯世を見上げながら、にっこりと笑う。それになぜか王様キャラの唯世が引く。



「僕、結構力強いから」

え?

「ちょっと痛いかも知れないけど、我慢・・・・・・してね?」

・・・・・・え?



次の瞬間、王様の悲痛な叫びがロイヤルガーデン内に響き渡った。



い・・・・・・いだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

「ほらほら、キング。じっとしてくださらないと」










なぎひこは笑顔のままで、全く容赦をしなかった。

僕もドSと言われ続けているけど、なぎひこも相当だ。

だってこう、全く手加減をしている様子が見られない。





ただ、見てて安心もしていた。これならなのはともうまく行くと確信が持てた。





だってなのははいじめられるのが大好きな、真性ドMなんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・いやぁ、今度の新Jは辛口だなぁ」

「前に言わなかった? 僕、男には厳しいんだけど。てゆうか、恭文君よりマシだって」

「失礼な事言うな。空海、なぎひこ、僕は甘口よ? それもすっごい甘いって言われる」



てゆうかさ、空海は何故に軽く引いた笑いをしながら僕を見るのさ。

まるで僕に引いてるみたいに見えるから、やめて欲しい。



「フェイトさんと絡んでる時限定な。それ以外はぶっちぎりで辛口な上にドSだろうが」

「そんな事ないですよ? 恭文さんはフェイトさんの事もかなりいじめて楽しんでるです。
でもでも、フェイトさんはそれを楽しみつつもも恭文さんをいっぱいいっぱいいじめ」

「リイン、一体なんの話してんだっ!? てゆうか、なんで黒いオーラ出しつつ言うのかが分からねぇよっ!!」



とにかくマッサージ開始から10分後。王様は口から魂出しつつ沈没した。もちろん、まだ息はある。

ただ相当にキツかったのか、起き上がる動作もかなりふらふらしてたりする。それでもキャラチェンジは解けてないけど。



「うぅ、ひどい目に遭った。旧ジャック、何か甘いものを」

「あー、はいはい」





それで空海は、机の上に置きっぱだった食べかけのチョコを手に取る。

なお、ロイヤルガーデンは冷房関係しっかりしてたりするので、チョコは暑さで溶けたりしてない。

しかしここで『現ジャック』に頼らないところを見ると、相当懲りていると見える。



だからニコニコ顔のなぎひこに怯えるように距離を取りつつ、空海を呼んだのよ。





「・・・・・・む、これはさっき食べてもう飽きた。他のを持って」



次の瞬間、おでこに空海の左手でのデコピンが入った。



「痛っ!!」

「ダメだ。てーか食べかけだろうが。ちゃんと最後まで食え」



呆れたような顔の空海にそう言われて、王様は不満そうにしながらもチョコをパクリと食べて味わい始めた。



「そうそう。王様が食べ物無駄にしちゃダメだしなぁ」



空海はそんな唯世の頭を王冠を落とさないように優しく撫でてから、僕となぎひこの方に来た。



「・・・・・・まぁ、アレだ。アレは唯世なりの甘えなんだよ」



苦笑し気味に空海はこちらへ来ながら、もう一度唯世の方を見る。



≪甘えなの?≫

「あぁ。唯世って、基本的にワガママ関係あまり言わないだろ?
日奈森に負けず劣らず、外キャラが強い方でもあるしな」

「・・・・・・あぁ、それはなんとなく分かるわ」



唯世、有能で冷静でかっこいいキングって学校のみんなから見られてるしなぁ。

でも、実際の唯世は違う。引っ込みがちで内気で緊張症で・・・・・・普通の男の子。



「というか、ちょっと前までは唯世自身がそれを望んでるフシがあったのかも」

「望んでる? 恭文君、それどういう事かな」

「ようするにみんなが言う『いい子』じゃなきゃ、『強い子』じゃなきゃダメってどっかで思ってた。
だから、『みんなが認めてくれる自分』であろうとするのよ。だからそんな形である王様を通そうとする」





ただ、キャラなり出来るようになってからはそういう印象は薄れたかな。うん、今は大丈夫・・・・・・なはず。

色々不安要因は多いけど、それでも根っこは見失ってないみたいだから。

今にして思うと、きっとあの直前に迷ってたのもそういう自分になれるかを不安に感じてたせいとも考えられる。



僕がしっかりとチョコを味わいながら食べている唯世を見ながらそう言うと、空海となぎひこが神妙な顔をした。





「あ、もちろんだからって唯世の夢が嘘とかそういう事じゃないんだ。ただ・・・・・ね」

「なんかあるのか?」

「うん。・・・・・・少し前ね、フェイトも同じような状態だったんだ」



少し驚いたような顔をした二人に頷きながら、ちょっとだけ反省。なんかこう、漏らしちゃったなーと。



「フェイト、小さい頃に色々事情込みでさ。そのせいで自分に対して強いコンプレックスがあったの。
フェイトが唯世の事を色々気にかけてるの、自分と似てるって思ってるからみたいなんだ」





もっと言えば、自分という存在に対しての不安。生まれ方が、成り立ちの仕方が周りと違うから感じる気持ち。

フェイトはきっと、『人』になろうとしていたんだと思う。だから・・・・・・JS事件の時に、それが崩れた。

フェイトのコンプレックスを払拭したのは、周囲の人間の『愛』や管理局という組織の中で得られた地位。



もっと言うと自分を『フェイト』だと認めてくれる人達の認識。それがフェイトを『フェイト』にしていた。

それはある意味では当たり前の事。だけど余りにそこに頼り過ぎちゃうと、色々と道を間違えてしまう。

少なくとも僕とフェイトはそう思ってる。だからこそ、JS事件の時に色々崩れちゃったのよ。





「フェイト前に『局や社会に認められなくちゃ、誰も大人になれないし夢は叶えられない』って言ってた。
ここはリンディさんの教えもあったんだけど、僕はちょっとね。だってそれって、周りが認めない夢に×付けてるようなもんだし」

「なるほどな。でも今の様子見てると、今ひとつ信じられないけどな。
もしそうなら、俺達未だにのんきにエンブリオ探せるはずなくね?」

「そこは僕も同感。僕から見てもフェイトさんが、そういう依存に近いものを持ってるとは思えないよ。
持ってるなら、もっと僕達に対して局の道理や規律を強要してくるんじゃないかな」

「そうそうそれ。例えば『エンブリオは管理局で保管するのが一番いいから、私達に全部任せて』とかさ。
もしくは『みんなのしゅごキャラ・・・・・・レアスキルは凄いよ。だから局の中でみんなのために頑張ってみないかな』とか」





疑問顔で二人がそう言ったのは、きっと当然の事。フェイトが自分で新しい自分を探してきた成果だよ。

僕はさ、別にフェイトが局員やろうがフリーターやろうがなんだっていいのよ。

だからフェイトには、何度もその話してる。僕はフェイトの側に居て、フェイトの事を守るって気持ちと一緒に。



だからフェイトは、フェイトが自分で『そうしたい』と思うようにしていいって、何度もお話してる。

僕は局や仲間や社会に認められたフェイトだから、そうしたいんじゃない。フェイトがフェイトだから、そうしたいんだよ。

フェイトがいっぱい笑ってくれれば・・・・・・そんな寂しい考え方しないで笑ってくれれば、それだけでいい。





「そうだね。今は違う。でも・・・・・・きっと以前は、そういう部分が強かった。そういうの、ちょっと寂しいのにね」



うん、寂しいと思うんだ。だってそれはさっき言ったように、周りに合わせて今の自分のこころに×を付けてるようなもんだし。

ううん、自分だけじゃない。きっと他の人にも×を付ける。周りや社会・・・・・・自分を認めてる人達が否定する存在なら、容赦なくだ。



「周りのための、世界のための自分じゃない。今ここに居る自分のための、自分の時間。
周りのために夢を描く必要なんてないのにーって・・・・・・ずっと思ってたから」





社会や組織、規律がNGを出したら、それがどんなに大事な夢でも×が・・・・・・あぁ、そっか。

唯世の事、色々考えちゃってたけど基本ラインはそれなんだよね。だから今、唯世を見ててなにかこう、弾けた。

表情がハッとしたようなものに変わったのに、自分でも気づく。だから空海が、なんか笑いかけてきた。



それで右手を伸ばして、なんかまた頭をくしゃくしゃと撫でてくる。・・・・・・まぁ、悪くはないのでこのままにしておこう。





「まぁ確かにフェイトさんも唯世も、雰囲気的には似てる部分があるしな。
でも、まだ同じところがある。まずフェイトさんにはお前が居る。で、唯世には俺達Jチェアだ」



空海はそう言いながら、唯世の頭の上の王冠を見る。



「俺思うんだけどさ、唯世がキャラチェンジで王様キャラになるのって、単純な性質の違いじゃないと思うんだよ。
まぁ、さっきも言ったけど唯世なりのワガママや甘え? 今恭文が言ったみたいな感情のために圧迫されてるもんが解放される」

「だからもう、凄い事になると」

「そうだな。で、そういう時に唯世のワガママや甘えたい気持ちを思いっきり受け止めてやる。
それは間違いなく唯世の一部分だしな。・・・・・・それが男の器量で、ジャックってもんだっ!!」

「「・・・・・・なるほどね」」



そして空海は笑って、僕の頭から手を話つつもサムズアップ。それで僕も・・・・・・うん、一応は納得。

確かにそりゃあ、ドSな人間には務まらないわ。そういうのを受け止める器量が大事って事なんだし。



「空海さん、先輩らしいですね。カッコよさが普段の4割増しなのです」

「・・・・・・リイン、それ誉めてんのか? てか、けなしてるよな」



空海、ごめん。リインは最近黒くなってきてるの。僕もちょっと危惧してるんだけど・・・・・・そっか。

アルトとかと絡んで来た影響が今になって出てるのかも。よし、ここは要チェックだ。



「あー、ところで藤咲。実は俺ちょっと聞きたい事があるんだけどよ」

「なにかな」



そう前置きしてから、空海は申し訳なさげな顔をしてなぎひこの左の耳に耳打ちした。



・・・・・・スカート履くのって、どんな?



その言葉は僕にも聴こえた。だからこそ、僕となぎひこの頭の中の糸が音を立てて切れた。



「「・・・・・・・・・・・・知りたい?」」

「え?」



僕もなぎひこと一緒になって空海を見ると、なぜか空海が少し後ずさりした。

なぜだろう。僕達はただただ空海に向かって、優しく笑いかけてるだけなのに。



「相馬君、実は僕も言い忘れてたけど・・・・・・いつでも真剣にやってるんであって、女装の事面白半分に言われるの、嫌いなんだ」

「空海、言い忘れてたけど僕・・・・・・不用意にそういう事聞いてくる奴見ると、潰したくなるの」

「いや、あの・・・・・・待て。ちょっと待て。あの、冗談だよ。冗談」

「「へぇ、そう・・・・・・冗談なんだ。じゃあ僕達、冗談みたいな格好してたんだ」」



空海が軽く目を見開くけど、僕となぎひこはそこを無視して顔を見合わせながらため息を吐いた。



「「つまりアレかな。僕達の人生そのものが冗談・・・・・・あははは、もうひどいなぁ」」

「いや、だから落ち着けってっ! 誰もそんな事言ってないだろっ!?
そしてお前ら息合い過ぎだからっ! 普通になんでそんなハモれんだよっ!!」

「ねぇ恭文君、こういう場合ってどうすればいいかなぁ。さすがに謝って許すってのも違うし」

「無視するなよっ! 頼むから俺の話を聞いてくれっ!!」



なぎひこは、微笑みながら後ずさりする空海に迫る。というか、僕も同じく。



「簡単だよ、なぎひこ。空海は『知りたい』そうなんだから」

「・・・・・・あぁ、それもそうだね。じゃあ相馬君、身を持って知ろうか。うん、チャレンジだね。
ほら、ハンターイモトさんって居るし、言うならハンタークウカイになるんだよ」

「さぁ空海、僕達に任せてもらおうか」

「だからちょっと待てっ! お前らマジ怖いぞっ!? おいリイ・・・・・・って、居ないしっ!!」



なお、リインはとっくに僕達の射程外から退避。空海の後ろで笑顔のまま手を振っている。



「空海さん、頑張るですよー♪」

「くそ、アイツあっさり逃げやがって・・・・・・いや、だから迫るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、あたしとりまとややはついさっきまで追いかけっこしてました。

スタート合図は、たまたま拾ったデフォルメされた子鹿のキーホルダーを職員室に届けようと思った瞬間。

そこを例の岩垣先輩に見つかって、あたし達は学校中を追いかけ回された。





なんていうか、無茶苦茶怖かった。だってあの・・・・・・例の鋭い眼光ぶつけてくるし。

ただ、どうにか撒いてロイヤルガーデンに到着した。でも、本気であたしは頭抱えてる。

だって完全に目つけられたっぽいし。アレかな、朝のがいけなかったのかな。





あとは追いかけ回された時にちょっとまたやっちゃった事とか?





しかもこんな時に限って、恭文とリインちゃん居なくてマジ大変だったし。










「・・・・・・うぅ、どうしよう。思わず怒鳴っちゃったけど、大丈夫かな。
帰り待ち伏せされてたらどうしよー!! よ、よし。ここは恭文に」

「ダメよ。というか、ケンカ売ったのはあむなんだから、あむがなんとかしなくちゃ」

「いや、あたしケンカ売ってないしっ!! ・・・・・・でも、確かにそれも一理あるなぁ」





いつものテーブルは、ロイヤルガーデンの中央にある。だからそこまで歩きつつ、軽く頭を抱える。

確かに恭文に頼りっ放しってのも、アウトなんだよね。別にさ、恭文は便利グッズでもなんでもないしさ。

大事な友達で、仲間。年齢差とか経験差とか色々あるけど、そこだけは絶対に変わらない。



というか、マリアージュ事件の時に恭文にあんまり頼りっ放しになるのとかダメって反省したばかりだし。

だからその、そのためにストライクアーツの基礎訓練とかも、ヴィヴィオちゃんからもらった教本片手に続けてるし。

なによりケンカ売ったかどうかは別として、あたしがやらかしちゃった部分もあったりする。



だから・・・・・・うー、でもヒグマみたいに一捻りにされてもなぁ。





「まぁ相手がストーキングしてるとかなら恭文に頼っても・・・・・・現段階でしちゃってるわよね」

「学校の中でやや達、追っかけ回されたしね。普通に犯罪だよー。
ねね、あむちん。空海に相談してみようよ。ほら、丁度今日来るって言ってたし」

「その方がいいわね。というか、話すくらいなら問題はないでしょ」

「あ、そうだね」



というわけで、小さめの階段を上がりつついつも会議するテーブルのある場所へ一気に上がる。

上がってあたしとりまとややはそこに居るはずの恭文達の方を見て・・・・・・驚愕した。



「ひ、日奈森さん・・・・・・あの、見ないでっ!!」

「離せー! 恭文も藤咲も、お前ら落ち着けよっ!!」





そこに居たのは、赤いケープとスカートを身に纏った・・・・・・というか、女の子姿な唯世くん。



そして恭文となぎひこに羽交い締めにされて、ズボンを脱がされかけている空海だった。



なお、リインちゃんは普通にデスクに座って、一人で書類整理始めちゃってる。てゆうか、アレなに?





「あ、あむちゃん」

「ややもりまも、遅かったねー。なにかあったの?」



平然と笑顔を浮かべながら聞いてきた二人を見て、あたしはとりあえず、あらん限りの声でツッコんだ。



・・・・・・・・・・・・アンタ達、一体なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あむの地球全体に響くような叫びから数分後。僕達は一応着席した。





ただし、空海と唯世は女装姿で着席です。・・・・・・え、唯世が女子の服着てる理由?





まぁアレですよ。王様キャラで不用意な事を言ってしまって、僕達の怒りに触れたせいとだけ言っておく。










「全く・・・・・・あたし信じられないんですけどっ!? てゆうか恭文はともかく、なんでなぎひこまでっ!!」

「いや、それはまぁ・・・・・・俺がなで」



次の瞬間、なぎひこが空海のほっぺたを両手でつねって引っ張った。



「おや相馬君、頬の筋肉がこってますなぁ」

「いひゃー! ひゃへひょー!! ひゃひょひゅひゃひゃひゃひぇひぇー!!」



なにやら楽しそうな二人は無視するとして、僕はあむの方に軽く前のめりになる。

ここに至るまでに、三人が遅れた理由も聞いたのよ。で、ちょっと不用意だったかなと反省してたりもする。



「それであむ、岩垣って子に追いかけられたってホント?」

「ホントよ。私とややも同じくだもの」

「もうね、すっごい鋭い目で睨んでくるんだー。やや達、ちょっとびっくりしちゃったもん」

「そっかぁ。でも・・・・・・うーん、空海から聞いた話ではそんな事する子じゃないっぽいのに」



で、僕は空海の方に視線を向ける。空海はようやくなぎひこから解放された。

それで両手で頬をさすりつつ、僕の視線を受け止めて頷いた。



「空海からって・・・・・・恭文、まさか空海から岩垣先輩の事、聞いてくれてたの?」

「うん。ほら、空手部の空気もちょっとおかしかったしさ。
あとはガーディアンの生徒資料もちょっと見させてもらった」

「資料・・・・・・あぁ、アレか」

「うん、アレ」





さて、ガーディアンには『生徒の個人情報の保護』という目的を果たすために、生徒の資料が存在している。

ただし・・・・・・身長に体重、血液型というパーソナルデータだけを載せてるものじゃない。

趣味に好きな食べ物や好きな事、苦手な事に家の住所に電話番号と言った具合に、相当詳しく載ってる閻魔帳なのよ。



僕も初めて見せてもらった時、驚愕したっけ。そして唯世にツッコんだよ。むしろこれはプライバシー侵害だと。



・・・・・・ただ、あむも全く同じ事を言ってたと聞かされて、ヘコんだけど。だって、あむと被ったんだから。





「中等部の人間がこっちにパワハラしてる可能性も考えて、ちょっと相談してたんだよ」

「私もお兄様も、あの方についてはあまり知りませんから。だからですね」



具体的には、あの『隠された使命』が公開される前段階でだね。

丁度こっちに来る時にはち合わせしたから、リインと二人で色々聞いておいたのよ。資料を見たのは、そのすぐ後。



「そっか。というかあの、ありがと」

「いいよ、別に。あむのためってわけじゃないし」



右手でお手上げしつつそう言うと、あむは苦笑する。ただ、それでも嬉しそうな感じが全面に出てる。



「そっか。うん、そうだよね。アンタって基本冷たい奴だし」



・・・・・・いや、マジであむだけのためじゃないしさ。ガーディアンとして、ちょっと気にもなったのよ。

なので、妙な誤解はしないように。まぁその、少し照れくさくて視線逸らしちゃったりしたけど。



「それで恭文、空海。岩垣先輩があむちーを追っかけ回すような人じゃないって、ホント?」

「空海さんの話やあの資料通りなら、そうなるですね。
資料も聖夜小に居た時のものまでですけど、特に問題はなかったのですよ」



それでもう一度空海の方を改めて見ると、空海はあむ達の方に視線を向けていた。



「まず岩垣先輩は、基本的に成績もそうだが素行関係もいい方だ。
そこに関しては、俺も保証出来る。てーか俺、言うならずっと後輩だしな」



空海が自信を持って言える理由は、まだあの子が聖夜小に居た頃から知ってるから。

それほど親しいわけじゃないけど、人となりが分かる程度には付き合いがあるらしい。



「この辺りは家の教育だな。あれだ、武術やるなら心身も鍛えろとかそういうのなんだよ」

「じゃあ空海的には、あたし達がなんで追っかけ回されたのか分からない感じ? というか、むしろありえない」

「あぁ。俺も何度か話した事あるけど、そういう人じゃねぇよ。
確かにとっつき難くいし無口な上に風貌や噂で人に誤解されがちではあるが、基本いい人だ」



でも、あむ達はやっぱ納得いかない顔をするだけで・・・・・・というか、ここに関しては僕も同じく。

空手部の態度はともかく、あの眼光と犯行履歴があるしなぁ。面識がほとんどない人間には疑わしく聞こえるって。



「というか、多分俺が思うに追っかけ回されたのは、朝の事が原因じゃないんじゃないのか?」

「つまり他に・・・・・・でも、なんで? あたしさっぱり覚えないし。
てゆうか、空手部のみんながなんかこう、配下みたいになってたじゃん。アレはどう説明するの?」

「ちなみに空手部の態度も、まぁまぁちょっと大袈裟だが体育会系としてはアリだ。恭文、お前もそう思うだろ?」

「うん。てゆうかあむ、朝も言ったじゃないのさ。もう忘れたの?
基本後輩は先輩がカラスが白いと言えば、自分も白いと言わなきゃいけないのよ」





とにかく、素行関係で岩垣先輩には黒いところはないらしい。

中等部でも、むしろ評判はいい方らしいなのよ。

というか、ガーディアンの生徒資料に住所や趣味関係も含めて色々載ってた。



それも参考にした上で言ってるので、間違いはない。でも・・・・・・なぁ。



あのプライバシー侵害な資料を考慮に入れても、僕にもやっぱり追いかけ回された理由が分からない。





「というかさ、相馬君。これは岩垣先輩に話を聞かないとどうしようもなくないかな?」

「そこは僕も同感だよ。本当に相馬君の話通りの人なら、何か事情があるかも知れないし。
ほら、もしかしたらガーディアンである日奈森さんに頼みたい事があった可能性だってあるよね」

「あー、中等部じゃなくて初等部の方でって事か。そりゃあ可能性としてはアリだな。
てーか日奈森、お前先輩から即行逃げたんだろ? そりゃアウトだろアウト」

「で、でもマジで眼光鋭かったんだよっ!? 殺し屋の目とかじゃなくて、殺そうとしてる目に見えちゃったしっ!!」



なお、唯世と空海は平然と喋ってるように見えるけど、実はそうじゃない。

さっきさりげなくテーブルの下を見てみたら、ちょっと足が震えてた。・・・・・・見なかった事にした。



「うし、明日岩垣先輩に少し確認してみるわ。さすがに行動が問題あり過ぎだしな。日奈森達が怯えたのも無理ないだろ」

「うん、お願い。てゆうか・・・・・・アレ以外に原因? あたし、何かしたかな」

「あむが追いかけ回される原因かぁ」



両腕を組んで、色々考えてみる。考えて考えて・・・・・・いくつか思いついた。

なのであむの方に視線を向ける。あむはやっぱり困った顔のままだった。



「原因として考えられるのは・・・・・・まず一つに、あむがあの子が不愉快だと思う『何か』をしたか」

「その場合、朝の事も含まれるよね。あたしが言った事が、やっぱり不愉快でーって」

「そうなるね。もちろん空海と唯世が言ったみたいに、ガーディアンに頼み事をしようとした可能性もある」



空海的には今僕が言ったのはナシだそうだけど、原因として考えられる事としてはアリなのよ。

実際、人が何をどう思うかなんて人それぞれだしなぁ。



「それでもう一つは、向こうから見て追いかけたくなる『何か』をあむが持っている」

「持っている?」

≪そうです。例えば一つ目も一応はそれに入るんですよ。
ただ、それは恨み辛みに限ったものではありません。例えば物だったり、人だったり≫

「あ、それだったらあたしにも分かる。岩垣先輩は、あたしじゃなくてそれを追っかけてたんだね」



ようするにそういう要因をあむが持っているからこそ、追いかけ回されたわけだよ。



≪・・・・・・あぁ、ここには恋愛感情も含まれますね≫

「え?」

≪ようするにあなたに告白したいんですよ≫

「はぁっ!? いやいや、なんでそ・・・・・・うなるよね」

≪えぇ≫



もちろん今アルトが言ったのは、可能性の一つ。だけど一応は考えられるのよ。

相手に対しての想いや執着も、今言っている要因になりえるしさ。



「あむ、何かない?」

「いや、恋愛感情って・・・・・・あたしはその、別に好きな人が」

「そっちじゃないからっ! 何か物を拾ったり、ここまでにまたなんか話術サイド展開したとかそういうのっ!!」

「あ、そっち方向か」



納得した顔になったあむを見て、僕は強く頷く。

それであむは、少し考えるように首を捻って・・・・・・ハッとした顔になった。



「あ、もしかして」



そう言いながらあむは、懐からあるものを取り出す。それは手の平にすっぽり収まるサイズの、子鹿のキーホルダー。

なお、デフォルメなデザインで可愛らしくて・・・・・・え、これなに?



「これ、岩垣先輩に追っかけられる前に拾ったんだけど・・・・・・いやいや、まさかね?」

「そうだよー。岩垣先輩は可愛いもの嫌いだし、これが岩垣先輩の持ち物ってのはないよ。
それにそれに、今までの話通りならあむちーが可愛いもの持ってるせいでーってのはないっぽいし」

「なら、本当に原因はなんなのかしらね。まぁ本人から話を聞くしかないんでしょうけど」



僕達は全員で顔を見合わせて、軽くため息を吐く。・・・・・・どうするかなぁ。

この調子だとあむにまた迫る可能性もあるし、側に・・・・・・いや、マズいかも。



「蒼凪君、悪いんだけど日奈森さんの側についててもらえないかな。
帰り道で待ち伏せされても問題だし、僕がついててあげられたらいいんだけど塾があって」

「・・・・・・唯世。それ僕も考えたけど、多分やめた方がいい。
僕が前に出てあの子に接触すると、余計に事態がこじれるから」

「こじれるって・・・・・・あの、何かあったのかな」

「僕じゃないんだけど、少しね。で、連鎖的に僕の方に飛び火してる状態なのよ」



じゃなきゃ、あの眼光が僕に向けられた理由が・・・・・・あぁ、そうだよね。

てゆうかさ、50話以上前のフラグがここで成立っておかしくない? 僕今すっごい困ってるし。



「うー、あむごめん。僕は今回表立って力になったりとかは無理かも。
下手に関わると、一触即発で暴力沙汰の可能性があるの」



なお、『話せば分かるんじゃね?』とは言う事なかれ。

男の恋心は複雑なのよ。そりゃあ恋敵目の前にしたら、冷静にはなれないって。



「いや、それは仕方ないんだろうけど・・・・・・てか、何があった?」

「あのね、詳しくは32話見返して。そうすりゃ分かるから。てゆうかあむ、その場に居たから」

「・・・・・・へ?」










あむが首を傾げてるけど、大丈夫。だってりまは気づいたっぽいもの。





だからなんかこう、慰めるような視線を向けてきてるのよ。





僕はみんなの疑問の視線を受け止めつつ、紅茶を一口飲んだ。・・・・・・あははは、これどうしようかなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ガーディアン会議はその場で解散。あたしはまぁ、一人で帰る事になった。

みんな後の予定入ってて、どうしてもこうなっちゃったんだよね。恭文はなんかNGっぽいしさ。

ただ、その理由もよーく思い返してみたら気づいた。ティアナさん絡みなんだよ。





岩垣先輩は、空手部の主将。それは新年度前から変わりはない。

つまりティアナさんに告白したのって・・・・・・思い出して、恭文が困った顔してた理由がよく分かった。

もちろん事情を話すという方法もあるだろうけど、ティアナさんの話思い返してみるとなぁ。





てゆうか、ティアナさんと付き合ってるわけじゃないって話はティアナさんもしてるはずなのに、聞いてなかったっぽいし。





ただそこを考えると、なんというか・・・・・・あの人の事が色々と分からなくなったり。










「うーん、やっぱ分からないなぁ。ホントはどういうキャラなんだろ」



空海や恭文の話を聞くと、うまく人に自分の素を見せられない人っぽいけど。



「やはり岩垣さんとお話しない事には、どうにもならないでしょうね。
相馬さんもそれほど親しい間柄というわけでもないようですし」

「あくまでも顔見知りというレベルなんですよねぇ」





というか恭文には改めて感謝かな。だってシオン、今あたし達と一緒に居るから。

『何かあった時のために』って言って、付かせてくれたの。なお、今日はこのままシオンはうちにお泊り。

あと実はその・・・・・・左腕にジガンも居るの。恭文、なんのかんのでマジで心配してくれてる。



もしも何かあるようなら、シオンのテレパシーなりジガンの念話なりで連絡する事になってる。

恭文から離れてもそこは出来るっぽいから、一応は安心出来る。

本当はさ、そのままシオンもジガンも家に着いたら即行帰そうと思ったんだ。借りっぱなしだと、アイツ困るだろうし。



けど例のブラック恭文の事もあるから、こっちの方がいいという話になった。

恭文もフェイトさんも、シャーリーさん達も単独行動しないようにしてるって言ってたしね。

つまり関係者である二人が単独行動してるところを狙って・・・・・・という話みたい。



というか恭文、マジ大丈夫かな。あたしの方が心配なんですけど。



改めて考えると、イースターにかなりねちっこく目を付け・・・・・・アレ?





「・・・・・・よう」



・・・・・・恭文の心配をする前に、どうやらあたしは自分の心配をした方がいいっぽい。

だってあの、岩垣先輩が電柱にもたれかかるようにして立ってたの。それでするどくあたしを睨みつける。



「ちょっと話・・・・・・いいか?」










結局あたしは半泣き状態で、岩垣先輩の言うままに近くの公園のベンチに座った。





というかあの、マジで何? 何がどうしてこうなった?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・硬直状態ですね」



シオン、それ言わないで? 確かに数分間この状態だけど、それでも言わないで。

てゆうか、ヤバい。なんかめっちゃ緊張感が漂ってるんですけど。



「ただ、ヒグマのように一捻りというわけではないようですね」

「ホントですねぇ。多分お話したいというのは、嘘じゃないんですよぉ」





それであたしは、おそるおそる右側に居る岩垣先輩の方を見る。・・・・・・確かにそんな感じがする。

岩垣先輩、なんかこうすっごい思いつめたような顔しちゃってるもん。もうね、あたしから見ても痛々しいくらい。

ただ、その顔を見て思い出した。そう言えばあたし達を追いかけ回した時も、この顔してた。



という事はもしかして、恭文と話してたあれこれの何かにあたしが触れてるのかな。





「・・・・・・あの、話って一体」



返事は、帰ってこない。ただただ緊張した面持ちで唸り続けるだけ。



「帰っていいですか?」

「ダメだっ!!」



いきなり大きな声を出されたので、あたしは不満やイライラを若干隠し切れずにもう一度話しかけてみる。



「だったら話してくださいよっ!!」

「し、しかし」

「・・・・・・もう、うじうじしちゃって」

「うじうじだとっ!?」



岩垣先輩は立ち上がって、あたしを見下ろしながら威圧してくる。



「うじうじじゃんっ! 言いたい事があるなら、スパっと言えばっ!?」



なのであたしも同じように立ち上がって、岩垣先輩を睨みつける。

そのあたしの言葉に先輩はイラついたような顔をしてから・・・・・・叫んだ。



・・・・・・好きなんだっ!!



・・・・・・・・・・・・え? 好きってあの・・・・・・え?



「愛の告白ですぅっ!!」

「なんという展開」

「あむちゃんひゅーひゅー」

「日奈森さん、やっぱりおモテになりますね」



えぇい、アンタらうっさいっ! てゆうか、なんか顔真っ赤・・・・・・って、だめっ!!

ここでなんで海里の告白思い出してるわけっ!? これだとあたし最低じゃんっ!!



「いや、でもあの、あたし他に別に好きな人が」



てゆうか、確かこの人ティアナさんの事好きだったんじゃないのっ!? なのになんでいきなりコレかなっ!!

しかもあたし、この人とほとんど話した事ないしっ! なお、えっと・・・・・・凄い顔熱いんですけどっ!!



好きなんだっ!可愛いものがっ!!



ただ、そんなあたしの体温の急上昇は続いたこの言葉によって止められた。



「可愛いもの・・・・・・あぁ、なんだ。そうだった・・・・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

「・・・・・・なんとまぁ」



あたしは信じられなくて、驚きの表情を浮かべたまま岩垣先輩をもう一度見る。

岩垣先輩、あたしと同じように顔を真っ赤にして瞳をキラキラさせてた。少なくともあたしは、嘘言ってるように感じなかった。



「最近の流行で言うと、ぷにょりんのようなキュートなものが・・・・・・!!」



なんか自分の好みを暴露し始めてるっ!? ・・・・・・それで岩垣先輩は俯いて、自分の両手を見る。

両手は胸元まで上げられて、ワナワナと震えていた。



「そういうものを見かけると、触りたい気持ちがウズウズとっ!!」



それで自分の両手を、また鋭い視線で睨みつけ・・・・・・あ、まさか。



「この顔・・・・・・もしかしてぇ」

「我慢してる顔だったのかもねー。あ、でもそれなら恭文は?」

「そっちはボクが思うに、本気で敵意向けてたんじゃない? ほら、恋のライバルなわけだし」



あはは・・・・・・なんというか、紛らわしいなぁ。特に本命が混じってる辺りが。

てゆうかあたし、苦笑いするしかないんですけど。いや、なによりなんでここであたしに向かってカミングアウト?



「・・・・・・情けない男だろ? 可愛いものが好きだなんて」



岩垣先輩はあたしから視線を逸らすようにしつつ、そのまままたベンチに腰を下ろした。



「そんな事ないんじゃん?」

「いいや。可愛いものなど、俺の目指す強くたくましい男には似合わない。
それが・・・・・・それが出来なかったから、ランスター先輩にも・・・・・・!!」



とりあえず今漏れた名前に関しては、聞かなかった事にしとく。

いや、向こうからしたらあたしが事情知ってるってのは分からないだろうし、一応ね?



「だからどんなに可愛いものが欲しくても、触りたくても、我慢しなければならないんだっ!!」



ウズウズする右手を、先輩は左手で必死に押さえる。

それを見てあたし達は、やっぱり半笑いするしかなかった。



「まるで邪気眼患者のようですね。まぁ、ベクトルは似てるんでしょうけど」



シオン、それ意味分かんない。てゆうか、邪気眼患者って何?



「それなのに、俺は未だに子ジカちゃんを手放せない。だめだ、だめなんだ。
きっとアイツは・・・・・・蒼凪はランスター先輩を魅了する程の男だと言うのにっ!!」



やっぱりそっちっ!? あぁ、やっぱりこの人そっち方面でも誤解しまくってたんだっ!!



「・・・・・・完全に恭文さんの事、誤解してますねぇ」

「ホントだねー。というか恭文って、結構可愛いものとかに理解あるよね?
そっち関係詳しいし、ぷにょりんも朝に触らせてもらって表情溶けてたし」

「ティアナさんに振られた原因を『自分が男じゃないから』って思い込んでるしね。これは仕方ないよ」



ごめん、やっぱりあたし半笑いだわ。もうどんな顔していいかマジ分からないし。

でも子ジカちゃん? ・・・・・・あたしは思いついて、ずっと持っていたあのキーホルダーを先輩に差し出した。



「これ、もしかして先輩の」

「あぁ。それは俺のものだ。・・・・・・悪かったな。本当はすぐに言い出せればよかったんだが」

「あ、ううん。事情は分かったし、大丈夫。それじゃ・・・・・・はい」



なんか凄い素直に謝ってきた。この人、空海の言うようにそんな悪い人じゃないのかも。

とにかくあたしは、うなだれてる先輩の右手にキーホルダーを渡す。先輩はそのキーホルダーを大事そうに見る。



「ありがとう」

「ううん」





やっぱり、いい人なのかな。あー、でも言い出せなかった気持ちは、自分に当てはめるとよく分かるよ。

だって子ジカちゃんを自分のものだって言うためには、やっぱりカミングアウトって必要だし。

岩垣先輩は、可愛いものが嫌いだって言うキャラが通ってるもの。そんな先輩が、これを持ってるんだよ?



あたしも今でも信じられないくらいだしさ。多分そこ解決しないと、話を聞いても信じられないって。

・・・・・・岩垣先輩は、右手の平の子ジカちゃんを大事そうに見ている。

というか、どこか視線が寂しそう。ううん、全体的な空気が苦しそうに見えるんだ。





「小さい頃から、ずっと大事にしていた子ジカちゃんだ」



小さい・・・・・・あぁ、でも確かに。毛並みや装飾がちょっとくたびれた感じがしてたから、気にはなってた。

少なくとも最近のキャラクターものでこういうのは見た事ないし、結構前のものなのかなーとは思ってた。



「それでも、いつかはコイツともお別れしなければならない。・・・・・・それが、男だ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



岩垣先輩は、礼儀正しく私にまた頭を下げて謝罪とお礼の両方を言った上で、そのまま家に帰った。





ただなんというか、その背中がすごく寂しそうに見えてしまって・・・・・・胸が締めつけられる。










「・・・・・・なんだか、苦しそう」

「本当ですね。というより、色々違う気がするのですけど」

「シオン的には納得出来ない感じ?」

「えぇ」



躊躇いもなく言い切ったシオンは、腕を組みながら先輩の戻った方をジッと見ている。



「まるで私には、あの人が『可愛いものが好きな自分』に対して自分で×を付けようとしてるように見えます」

「・・・・・・あぁ、確かになぁ。だからあんなに辛そうなんだ」

「えぇ。捨て切れない、拭えない願いと対峙する事は、時として心を引き裂かれるような痛みに変わりますから」










あたしもそんな事を言うシオンと同じように、しばらくその場で岩垣先輩の向かった方向をジッと見ていた。

ただ、その後でみんなにはすぐに連絡。可愛いもの好きの事は伏せた上で、問題は解決したとメールだけはしておいた。

いや、当然でしょ? 多分先輩はそこ知られたくないだろうし、勝手にバラすのもルール違反じゃん。





でも岩垣先輩、なんか気になるなぁ。あのままこころのたまごに×が付きそうでちょっと怖いよ。





というかさ、可愛いもの好きだから男らしくないってなんか違わない? それを振られた理由にするのもさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なるほど。それであんな電話かけてきたと」

「うん」



会議を終えてから、僕とリインはティアナと合流。今日は日用品の買い出しもした上で直帰。

で、陽子と淳に首を傾げられて軽くヘコんでたティアナに事情説明をしつつ、家の近くまで来た。



「まさかあむを好きになったってのは違うだろうしさ」

「いや、そりゃそうでしょ。私の時だって顔真っ赤にしながら相当ストレートだったし」

「じゃあティア的にもナシですか?」

「えぇ。告白もそうだし、私怨で追っかけ回すのもです。
てゆうか、それやるような奴が空手部纏められるわけないし」

「「あぁ、なるほど」」





・・・・・・なお、この時向こうが解決ムードだった事を僕達が知らない事は、留意して欲しい。

まぁそこの辺りも明日確認しようと心に決めつつ、マンションの玄関に入る。

入ってエスカレーターに乗って、自宅のある階層に到着。僕達はそのまま20メートル程歩いて、家の前に来た。



インターホンを押して、『帰って来たよー』とインターホン越しに出てきたフェイトに伝えてから数秒後、ドアは開いた。





「おかえりー! いやぁ、暑い中ご苦労さまー!!
ささ、冷たいお菓子用意してるから、早く中に入ってくれよ」



出迎えてくれたのは、笑顔いっぱいな赤色の髪と紫色の瞳をした女の子。

なお服装は白のシャツにジーンズのオーバーオール。普段ツインテールな髪は下ろしてストレートロングにしてる。



「あはは・・・・・・三人とも、おかえり」



その後ろから、黒エプロンに白のYシャツ。そしてジーンズ姿のフェイトが出てきた。

なお、髪は一つの三つ編みにして纏めている。暑いのでこういう変化形にしてるんだ。



「・・・・・・フェイト」

「「フェイトさん」」

「な、なにかな」



フェイトはきっと、僕達の言いたい事が分かってる。だって半笑いで頬が引きつってるんだもの。

でもきっと、僕達が叫ばないと話が進まない。なので僕達は気合いを入れて、思いっきりツッコむ事にした。



『なんでアギトがここに居る(んですか)っ!?』










目の前できょとんとした表情を浮かべている女の子は、アギト。

シグナムさんの補佐官で、古代ベルカが生み出した真性ユニゾンデバイス。

なので当然のようにミッドに居るはず。局員制服着て仕事してるはず。





なのに、なんでここに居るっ!? てゆうか、そんな嬉しそうに笑うなー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



家に戻った僕とリインとティアナは、ちょっと大変だった。うん、前シーンを見てもらえたから納得だよね?

その原因は、今はリビングでシャーリーと楽しげにワイドショーなんて見ている、赤毛の女の子。

だから家の廊下でリビングの様子を伺いつつ、エプロン姿がとっても素敵なフェイトに確認を取るのよ。





なお、ディードとリースは夕飯の準備中なので、あしからず。ティアナとリインは、先にお風呂入ってる。










「・・・・・・フェイト、どういう事っ!? なんでアギトここに居るのっ!!」

「・・・・・・お昼頃突然来て、『しばらくお世話になる』とだけ言ってアレなんだ。ただね」

「うん?」

「そのすぐ後にはやてからメールが来たの。どうもシグナムとケンカして家出したっぽくて」



困った顔のフェイト共々、もう一度アギトを見る。・・・・・・なんとまぁ、この状況でまた面倒な。

僕達的には戦力増えるから嬉しいけど、シグナムさん的にはよろしくないでしょうが。



「あぁ、それでここなんだ」

「うん。まぁ、妥当と言えば妥当なんだよね」



まずなのはの家だと、ミッドだからあっさり捕まる。かと言って管理外だと、行けるところも少ない。

ここはルーの家も同じかな。だからこそ、僕とフェイトの・・・・・・な、なぜこんな事に。



「というかヤスフミ。シオンは? それにジガンも着けてないし」



フェイトは怪訝そうな表情をしつつ首を傾げながら、ボクほ左手首の方を見た。



「あむのところに居る。ちょっと事情があって、一人で帰すの心配だったから」

「・・・・・・まさか、なぞたま?」

「ううん、違うの。まぁあの、学校生活でのちょっとしたトラブルのせいでね」

「そっか。そこの辺りも、差し支えない程度で聞かせて欲しいな。
だってほら、それだと戦力的に下がってる状態だから、心配だもの」

「ん、分かってる」



僕は言いながら、そっとフェイトの左頬を撫でた。フェイトは瞳を潤ませながら、優しい顔で僕を見る。



「またいっぱいいっぱい夕飯の時にお話するね。でもその前に・・・・・・恒例のアレ、いいよね?」

「ん、いいよ」










そこから改めて、お帰りのキスをフェイトから一回。ただいまのキスを僕から一回ずつ交わした。

それでやっぱりドキドキして、甘い吐息だけが漏れて・・・・・・キス、やっぱり慣れない。

でもあの、頑張っていきたい。だってこれが夫婦円満の秘訣なんだから。前に話したよね?





おはようのキスとおやすみのキスと行ってきますのキスと行ってらっしゃいのキスを欠かさないのは、大事なんだから。




















(第87話へ続く)





[*前へ][次へ#]

13/33ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!