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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第41話 『再開された日常とそれを過ごす人々の風景』



フェイト「前回のあらすじ。無事に・・・・・・一応での決着がつきました。
そして、私の髪が40センチ近く短くなりました。丁度肩甲骨くらいに」

恭文「何気に大事件だよね。ずーっとロングだったのに」

フェイト「うん。今はセミとかボブなんだ。でも、これはこれで新鮮かも」

恭文「そうだね。なんかこう、可愛い。外見年齢が下がった感じがする」

フェイト「えっと、あの・・・・・・ありがと」

恭文「ね、いっぱい撫でてもいい。それでコミュニケーション」

フェイト「・・・・・・うん、いいよ。優しく撫でて欲しいな」

デネブ「蒸気機関車の父、ジョージ・スティーブンソンは、『我々の目的は成功ではなく、失敗にたゆまずして進むことだ』という言葉を残している」





(・・・・・・・・・・・・また?)





デネブ「失敗を恐れずに前に進むことは、意外と難しいことだけど、それを乗り越えてこそ人は成長する。
だから侑斗も椎茸を好き嫌いせずに食べて欲しいんだけどなぁ」

フェイト「あの、えっと・・・・・・えぇっ!?」

恭文「デネブさんっ!? え、アンタ何やってんのっ!!」

デネブ「恭文君久しぶりー! 元気してたかなー!?
・・・・・・あ、フェイトさんもお久しぶりです。それとコレどうぞ」





(オカン、そう言いながらまた前掛けからノートを取り出す)





恭文「えっと・・・・・・これは?」

デネブ「俺が作った、トマト嫌い克服のためのレシピ集です。もし良ければ使ってください」

フェイト「え、また作ってくれたんですかっ!?」

デネブ「はい。あ、それとデネブキャンディーもどうぞ」

フェイト「・・・・・・ありがとうございます。これ、早速試しますね」

恭文「フェイト、まずそこじゃないよねっ!? ツッコむべきところ、たくさんあるよねっ!!
まずデネブさんはどうしてここにっ!? てーか、なんでアンタまで来ちゃったのっ!!」

デネブ「・・・・・・・あ、今回はキバットが風邪を引いたと聞いたから代わりに俺が来ました」





(ちなみに独断)





デネブ「あと、俺達の映画がまた公開するからその時はみんなっ! 侑斗をよろしくっ!!」

フェイト「2010年の5/22から公開だそうです。みなさん、よろしくお願いします」(ぺこり)

恭文「え、宣伝っ!? アンタ宣伝のために来たんかいっ!!」

侑斗「チビ、姉ちゃんもちょっと邪魔するぞっ!!」

恭文「・・・・・・って、なんかまた来たしっ!!」

侑斗「・・・・・・デェェェェェネェェェェェブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
お前また勝手な事しやがってっ! もうやめろって言っただろっ!?」

デネブ「でも侑斗、宣伝って大事だぞ? それにほら、俺達のAction-ZEROもこの話と同じくRemixされるし。
・・・・・・あ、俺達のテーマソング、2010年バージョンとしてRemixされまーすっ! みんな買ってねー!!」

フェイト「えっと、幸太郎とテディのDouble Actionもあるそうなので、よろしくお願いしますね」

恭文「だから、フェイトも普通にアシスタントしないでー! この状況にまず疑問を持とうよっ!!」

デネブ「あ、みんな。映画で侑斗の事、いっぱい応援してくれよな。
アレだよ、映画館でピンチの時はみんなで一斉に『侑斗がんばれー』って」

侑斗「デネブ、お前マジでいい加減にしろっ! てーかそれはやめろっ!?
そんな事映画館でやられたら、マジで恥ずかしいだろうがっ!!」(言いながら、コブラツイスト)

デネブ「い、痛い痛いっ! 侑斗ギブギブっ!!」

フェイト「あ、それなら幸太郎とテディの時には同じコールをお願いしますね」

恭文「いやいや、それは一体どこのヒーローショー!? しても展開変わらないからっ!!
・・・・・・カオスだ。もう僕にはツッコみ切れない。侑斗さん、あとよろしくお願いします」

侑斗「俺に全部任せようとするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いや、しかし今回は助かったぜ」



ここは、ミッド郊外にある墓地。私は昼下がりに、ナカジマ三佐とそこに来ていた。

理由は・・・・・・墓参りだ。ここには、ある人達が眠っている。



「お前さんがゼスト・グランガイツから預かったデータや六課が掴んでくれた情報のおかげで、戦闘機人事件のあらかたが分かった」

「いえ」



・・・・・・調べたのではなく、ハッキングによるものなのだが。それも、サリエル殿だ。

だから私は、ナカジマ三佐の言葉に苦笑しか返せない。私は本当に何もしていないのだから。



「私は今回の一件では、何もしていません。若い連中に叱咤され、命を振り絞る先輩から覚悟を受け取る事しか出来なかった」

「・・・・・・色々反省モードってことか」

「えぇ。どうも私は、組織や常識という物に染まり過ぎていたようです。
そしてそれが故に、騎士としての自分を磨く事を疎かにしていた」

「そうか」





あの時、私はリインを送り出してから騎士ゼストにあるものを二つ預かった。

一つは自身のデバイス。そこに8年前の戦闘機人事件のデータが、全て入っていた。

どうやら騎士ゼストは最高評議会の犬となって、その条件に事件データを要求していたらしい。



8年もの間、騎士の誇りに泥を塗り続け・・・・・・そうして得られた情報で、真実は明るみになった。

ゆりかごが堕ちてから、今日で1ヶ月。ようやく私達は、しっかりとその辺りを報告出来るようになった。

そう、この墓地には戦闘機人事件で亡くなったゼスト隊の方々が静かに眠りについている。



ナカジマ三佐の奥様もそうだが、騎士ゼストも主はやてや騎士カリムが尽力してくださったおかげで、ここで眠っている。





「まぁ、ジックリ行くしかねぇだろ。責任背負って経験して、成功や失敗を繰り返す。
そこから少しずつ学んで、前に進むしかねぇんだ。俺達も、世界もな」

「・・・・・・はい」

「とにかくレジアス中将が暴れまくってたおかげで、そこの辺りの裁判はこれからだが・・・・・・それでも、一応決着だ」

「すみません。恐らくあれは、うちの末っ子に『罪を数えろ』と言われた影響かと」



三佐の後を追うように墓地の中を歩きながら思う。数えて、向き合って、そこから一歩進めと。

だからなのだろう。被告人という立場でありながら、そこから自分に出来る事で現状を変えようとしている。



「別に謝る必要はねぇさ。俺から見てても、アレは痛快で面白いしよ。
で、そういうお前さんはどうなんだよ。八神から聞いてるが、色々苦労してるらしいじゃねぇか」

「そうですね。中々テスタロッサや蒼凪のようにはいかないと、痛感しているところです」

「そうか。まぁ、じっくり行くといい。こういうのは、やっぱ一気にはいかないんだよ。
俺もクイントも、最初の頃は色々悩んだ。そこから言えるのは、『全部含めて焦るな』って事だな」

「・・・・・・はい。ありがとうございます」





私のもう一つの預かりものは、アギト。騎士ゼストに、直々に頼まれた。

あの手合わせの最中、騎士ゼストは私とアギトの融合の相性が高いと思ったらしい。

確かに同じ炎熱系で、古代ベルカの正統な融合騎であるアギトは、まさにぴったりだった。



そういう部分を抜いても、頼まれた身として色々話してはいるが・・・・・・中々だな。

その辺りで、テスタロッサと蒼凪に相談している。テスタロッサはもちろんだが、蒼凪もこういうのは専門だ。

ハラオウン家の双子の事もそうだが、今は自分の中から生まれたしゅごキャラの面倒も見ている。



とにかく、子育てや小さい子との交流に関しては二人は専門家。

色々アドバイスはもらっているが、中々難しい。

アギト自身の人格が成熟している事もあって、子ども相手とはまた要領が違う。



かと言って、部隊の部下相手のような感じもまた違う。これから、こちらも研磨する必要があるらしい。





「でもよ、おチビの曹長さんが言ったの、恭文の言葉だな。『さぁ、お前の罪を数えろ』・・・・・・だっけか」

「えぇ」



なるほど。108の仕事の中でも、言っていたのか。・・・・・・本当に気に入っているらしい。



「アイツが昔から言っている言葉です。罪・・・・・・過去を数え、それと向き合えという意味だと」

「だから、おチビの曹長さんも必然的に使うと。納得したわ。まぁ、そこもしっかり報告するか。
俺達の居場所は罪・・・・・・過去を数え、向き合って、また少し変わり出したってな」

「はい」










まずはナカジマ三佐の奥様の墓。その前に来て・・・・・・私達は気づいた。

白いYシャツに、橙色のスカートを履いた・・・・・・オーリス・ゲイズ女史が居るのを。

オーリス女史は墓の後ろ側の木陰に隠れるようにして、私達に無言で敬礼をした。





私達は・・・・・・静かにそれに返した。そして、オーリス女史は黒服の男に背を叩かれ、静かに去った。

どうやら、墓参り・・・・・・いや、謝罪だろうか。色々な事情を鑑みて、監視と護衛付きだが来られたらしい。

私とナカジマ三佐は自然と顔を見合わせて、空を見上げる。空には、あの時のような脅威の影はもうない。





ただ青く、ただ広く・・・・・・そこに広がっていた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現在、聖王教会のカリムの執務室で、カリムとロッサと一緒にお茶の最中。

まぁ隊舎も無事復活したし・・・・・・色々報告事項、あったりするんよ。

そやから一人でブラリと聖王教会までやってきた。気分転換も兼ねてな。





そやけど、うち・・・・・・どうにもこうにも、色々考えてもうてしまって、ダメやなぁ。










「はやて、事件以後すっかり大人しいらしいけど、どうしたのさ」



ロッサに少し心配げに聞かれてまうくらいに、色々考えてもうてるらしい。

まぁ、紅茶を飲みつつゆっくりと・・・・・・あぁ、やっぱカリムのお茶は美味しいわぁ。



「いやな、レジアス中将や最高評議会の事、あれこれ考えてもうてなぁ。
なんや、うちにも色々思い当たるフシがあるなぁと」

「なんだ、それですっかり反省モードなんだ」

「うん、そうやな。・・・・・・こう、守りたい思うから、頑張るやろ? でも、それで取りこぼしてまう事もある」





レジアス中将、きっとうちよりずっと色んなもんを見とるから。いや、それだけやないな。

うちはまだ、戦えるもん。でも、レジアス中将は今の局の体制やったら、それは無理。

魔法が使えん局員は、大半後方支援に回される。もち、一部例外も居る。



厳しい審査の上で許可を取って、銃器とか扱ってバンバン撃つ人やな。

ただ、普通にやったら魔導師相手には絶対勝てん。そういうのは、あくまでもサポート程度や。

それで前線でガチでやり合いたい思う人間は、局以外の外部組織で頑張っとるよ。



つまり、局の中で非魔法能力者は、基本戦う事も変える事も出来ずに見てるだけ。

それがどんだけ辛いか。うちにも・・・・・・本当にちょっとだけやけど、分かる。

それで目の前で大切なもんが壊れたり奪われた時の無力感は、うちにも経験があるから。





「うちな、レジアス中将の考え自体は、決して間違ってないと思うんよ。そこだけは絶対」





レジアス中将の行動というか、その思想自体は間違っていないと世間は思うとる。

いわゆる『そこに至るための手段を間違えてしまった』という評価をされとるんよ。

裁判で局の不透明だった部分にも言及しとるのも、その評価の後押しをしとる。



しかし、どうしたもんかなぁ。普通に考えて、これからの局はこの辺りに解決手段を出す必要がある。

今回の事件でうち・・・・・・てゆうか、フェイトちゃんと恭文は三回も魔法なしで戦うハメになっとる。

ゼロタロスや555ジャケットみたいな装備を普及させるんも、すぐには無理やろうしなぁ。



なお、理由は以前ベルトのデータどうこうの話をした通りや。

技術流出の観点から、どうしても慎重にならざるを得ない。

いや、その前にフェイトちゃん達がデータくれんという問題もある。



まぁ、ようするに・・・・・・局という組織では、魔法や魔導師が絶対。

で、それに関連した戦力問題が、今回の事件の遠因になっとるんよ。

事件中にスカリエッティにそこツツかれたっちゅう問題もあるしなぁ。



そしてこの忙しいのに教導隊はこの辺りの問題解決に、早速奔走しとると言うんはなのはちゃんの弁や。

その辺りでゼロタロスのデータとか欲しい言うてたけど、当然のようにそれは無理。

なのはちゃんも、恭文の友達に無理言うて手伝ってもらったのは知っとるから、ここは納得しとる。



AMFが局や局の魔導師に対して一種のカウンター装置になるのは、もう立証されとる。

過去の過ちを繰り返さないような形で、これに対しての対策も必要やろうなぁ。

AMFという物自体は昔からある技術なんやし、色々な形で流用は可能や。



ガジェットは無しにしても、他でやられる可能性も大きい。フェイトちゃんも対策考えるって言うてたしなぁ。



これ、他人事やないで。うちもマジでこういうのは今のうちから煮詰めておかんと、現場で痛い目見るわ。





「そういうんが嫌で、そやからまた頑張って・・・・・・でも、頑張り過ぎてまうと逆にあかん時もある。
それが今回の事や。言い方ちょい乱暴やけど、きっとみんなして頑張り過ぎてたんやなと」

「・・・・・・そうね。きっと、誰も根っこは同じだったのよ。ただ世界を、ここに住む人達を守りたい。
いつでもみんなに、笑っていて欲しい。でも、それが強過ぎて逆に歪んでしまった」

「そして、新しい歪みを次々と生み出してしまった。スカリエッティやナンバーズの子達のようにね」



スカリエッティは、最高評議会が生み出した人工生命体やったからなぁ。あぁ、そうなんやな。

強いだけじゃ、力があるだけじゃ守れんものもあるんや。うち、どっかでそれを忘れてたかも。



「そやなぁ。こういう時は、どうしたらえぇんやろうかとか考えて、ちょお思ってな」



自然と、両手に持ったカップに視線を落とす。ティーカップの中には、琥珀色の温かい液体。

湯気が立っているけど・・・・・・どうにも今のうちには、その温かさを素直に感じる事が出来んかった。



「私が思うに、視野が広くなり過ぎた時は、逆に思いっきり狭くするべきだと思うわ」

「え?」



視線を上げると、カリムとロッサが優しくうちに微笑んでくれていた。

微笑んで・・・・・・うちは、ただそれを見てるしか出来んかった。



「もっと言えば、自分の事。あなた自身が、どんな自分になりたいか・・・・・・とかかしら。
基本に立ち返って、どうありたいかやどうしたいかを常に問いかけ続ける」

「強過ぎる想いはやっぱり今言ったみたいに時として歪んで、悲しい行き違いを起こす。
少し、ゆっくり歩いてみたら? それでまずは自分から振り返って・・・・・・変えていく」

「それで、えぇんかな」



二人は微笑みながら頷いてくれた。それで少しだけ、心の中のモヤが晴れた。・・・・・・うち自身をどうするか、か。

あぁ、これかな。これが足りんから、うちもしゅごキャラ見えんのかも。なんかちょっと、分かったかも。



「そっかぁ。なら、そうしてみる。二人とも、ありがとな」

「ううん。それで、六課のみなさんはどう?」

「うん、みんなめっちゃ元気や。・・・・・・一部除いてな」



で、ここも報告しておかんといけんのよ。カリムとロッサの力、まだ借りる必要あるかも知れんから。



「まず、負傷者多数やけど、大体の人間は回復して仕事に戻ってる」



隊舎襲撃の時に怪我した人員も、無事に職場復帰や。あ、フォワードのみんなもやな。

エリオも治療が早かったし、元々元気な子やから、今はもう普通に訓練でシゴかれとる。



「ただ、長期の治療が必要な人間も出てきとる」

「高町一尉とヴィータね?」

「そや。ゆりかご内部で、相当ハッスルしてもうてるからなぁ。
なのはちゃんはともかく、ヴィータにはうちの方で緊急リカバリーかけたんやけど」

「ダメだったのね? やっぱり」



カリムの言うように、ダメやった。・・・・・・マジでこういうのは無しにせんと。

あの子達がちゃんと自分の時間を生きられるように、家族としては頑張りたい。



「なのはちゃんも自己ブーストによる消耗で、相当ボロボロになっとる。
教導こそ再開したけど、基本病院通いは継続やし、長期リハビリも必要」



あとはヴァイス君やな。大怪我しとるのに、回復魔法の重ねがけしてもうたから。

ヘリパイロットの仕事しつつ、こっちも長期のリハビリで病院通いや。



「でも、マジでここは反省せんと。ゆりかごに送った人員、少な過ぎたわ。
そやから、結果的に二人だけに相当な負担をかけてもうた」





アレよ、恭文とフェイトちゃんがダメやったら、マジでバッドエンドやし。

なのはちゃんもヴィヴィオ共々、ゆりかご内部で粉砕されるとこやった。

あとは姿見えんけどシオンとヒカリ・・・・・・やったか? もう一人の子。



どういうわけか、リインフォースに声の似てた子や。アレ、なんでやろ。

まぁとにかく、あの子達にも改めてお礼せんとあかんよな。

あ、お菓子とかでえぇかな。普通に食べ物でNGは無いらしいから。





「そこは私達もそうだし、局の方でも同じね。少しずつだけど、今回の事件の反省を糧にしようとしている」

「あ、そうなんか。でも、まだまだなんやろ?」

「まだ事件解決からさほど時間も経っていないし、関係者の裁判も途中ですもの。
ただ、それでも組織改革の動きは出ているわ。本当に少しずつだけど、それは加速している」





やっぱ世間の事件への注目度が高いせいやと、カリムは語る。・・・・・・まぁ、そうやろうなぁ。

ここ2年ほどのアレコレで、局はマジで色々と失態を繰り返しとる。それはもうかなりのレベルのや。

その上でこれや。これで万が一にでも同じことを繰り返してみ? もう局は世間から信用されんで。



当然のように組織は変わろうとする。いや、変わらないはずはない。ここで気張らんで、何処で気張るっちゅうんよ。





「この辺り、私よりはクロノ提督とリンディ提督が詳しいのだけど」

「まずは海と陸も含めた全体的な組織の再編成と、互いのネットワークの強化」



・・・・・・仲の悪い海と陸が起こしとる色々な問題が、事件の遠因に繋がっとるのは確か。

その辺りを改善する言うんは、妥当なとこやな。それと同時に、必須項目でもある。



「あとは君は知ってるかも知れないけど教導隊の方に、対AMF戦の錬度の強化プランの作成を依頼している」

「あー、そこはなのはちゃんからちょこっと聞いたわ。それで解散後が忙しくなりそうやとな」





・・・・・・まぁ、ようするにや。今回みたいに六課というチート部隊を作る必要性を無くそう言うことや。

六課でなのはちゃん達を呼び寄せる必要があったんは、対AMF戦闘に慣れてるからやもん。

そして局の一般的な魔導師は、六課メンバーと違って対AMF戦の錬度が低い。それは今も変わらず。



中央本部とかが好き勝手にされてもうたの、その辺りの問題が大きかったらしいしなぁ。



錬度が低い言うことは、それを活用するガジェット相手に苦戦言う事やから。まぁ、これも基本やな?





「でも、聞いて安心したわ。教導隊以外でも少しずつやけど、動いてるんよな。
うち、忙しくて身近なところ以外は、ほんまにさっぱりやったから」

「えぇ。本当に少しずつだけど、変わっていこうとしているわ。それだけは・・・・・・きっと救いよね」

「そうやな」










うちは両手に持ったままのカップのお茶を、一口飲む。そして、ゆっくりと味わった後で息を吐く。

今度はちゃんと、その香りを堪能出来た気がした。さっきより味が良くなってるしな。

・・・・・・もう少し、ゆっくりかぁ。そやな、ゆっくり歩いて考えてみようかなぁ。具体的には・・・・・・そうや。





うち、普通にフェイトちゃんや恭文とリインに、ヒロリスさんやサリエルさんにスバルとキャロに負けとるんよ。

原因は当然、しゅごキャラや。しゅごキャラ見るには色々条件があるんやけど、うちはそれに入らん。

ただ、大人でもヒロリスさん達は見えるらしいし・・・・・・フェイトちゃんも見えるようになったし、まずそこやな。





ゆっくりとうちの『なりたい自分』や夢について考えて、あの子達が見えるようになる。

こういう仕事やし、子どもの頃みたいには無理かも知れんけど、それでもちょお頑張るわ。

きっと本当にこういう基本的な事から、抜けてる感じするし。それで絶対、みんなビックリさせたる。





うちかて夢を大事にしている乙女やもん。そんなうちがしゅごキャラ見えんって、おかしいやろ?




















魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第41話 『再開された日常とそれを過ごす人々の風景』





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ダンスレッスンを終えて、私は午後の街の雑踏を歩く。・・・・・・歌手にはこういうのも必要なの。

でも、悔しい。今日は先生やマネージャーに思いっ切りダメ出しされまくって・・・・・・・よし、練習だ。

今日は早上がりだし、早く帰って練習だ。必死に練習して、次で絶対見返してやる。





そんな気持ちを固めながら私は携帯をチェックすると・・・・・・あ、恭文だ。練習中に届いたのか。










「歌唄、恭文なんだって?」



ここひと月くらい、恭文は仕事が凄まじくゴタゴタしてたらしくて、連絡がなかった。

でも、半月くらい前かな。律儀にもその辺りを書いたメールが来た。



「・・・・・・何か、あの青と黒のたまごからしゅごキャラが生まれたらしいわよ?」

「ホントですかぁっ!? あぁ、よかったですねー!!」

「つーことは、エンブリオじゃなかったんだな。なんか残念だな。アレ、絶対そうだと思ったのに」

「イル、今はそこはいいじゃないですかっ! 素直に誕生を喜ぶのですよっ!!
というわけで、愛の天使・エルが祝福の歌をうたうのですっ! せーのっ!!」

「こんなとこで歌うなっ! てーか、普通に静かにしてろよっ!!」





歩きながらも、私はメールに付与された画像を開く。そこには・・・・・・あ、この子か。

銀色の髪で黒い服で、大人しそうな子。恭文から生まれたとは到底思えないくらいに良識派っぽい。

画像の中でビスケットを両手に持って、美味しそうに頬張るその子を見て、私は口元が緩む。



その横でもシオンが同じ感じだし・・・・・・アイツのキャラ、何気に食い意地張ってるのよね。



ということは、アイツも食い意地張ってるのかしら。・・・・・・あ、なんだか想像出来る。





「まぁエルの歌はともかく・・・・・・イル、今は普通に喜んでいいわよ。うん、今はそれでいい」

「そうか? てーか歌唄、なんか恭文やシオン絡みだと、ちょっとキャラが変わるよな」

「気のせいよ。私、いつも通りだし。それにエンブリオも諦めてないんだから」










私は言いながら青い空を見上げる。見上げて・・・・・・思う。もっと頑張らないとダメだと。

早く歌手になって、潰されない力を身につけて、それでエンブリオを見つけて・・・・・・イクトを助けるんだ。

私にはまだ力が足りないから。だからもっと・・・・・・もっと力を手にしないと。





あとは、負けたくないってのが大きいかな。きっと恭文、色々気づいたからこれだもの。





キャラ持ちの先輩として、後輩に負けるわけにはいかないのよ。えぇ、絶対にね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なのはさんも、ヴィータ副隊長も・・・・・・元気、過ぎ」

「ホント、よ。何よ、あの回復力」





ねぇ、二人揃って確か死にかけたんじゃなかったの? 重傷で入院してたんじゃないの?

確か、私の記憶ではそうなっていたのよ。ほら、ゆりかごとかではボロボロだったしさ。

なのに、たったひと月と少しであれって・・・・・・信じられない。もしかして、アレなのかな。



エース級になるためには、魔導師としての能力だけじゃなくて人並み外れた回復能力も必要とか。





「僕達・・・・・・まだまだ甘いみたいですね」

「そ、そうだね。やっぱり手を握り締める力も、必要なんだよ」

「くきゅー」



現在、私達は木にもたれかかって、その木陰でへばっている最中。理由? 簡単よ。

訓練終了直後で、普通に私達全員死にかけてる。



「てゆうかエリオ、アンタ怪我はマジでいいの?」

「はい。シャマル先生にもお墨付きをもらっています。
というか、なのはさんやヴィータ副隊長に比べれば軽傷ですよ」

「まぁ、そりゃあね」





ゆりかごで見たなのはさん、マジでボロボロだったしなぁ。アレに比べれば・・・・・・ねぇ?

でも、ちょっと安心した。なんて言うかこの子、マジで変わってきたから。

一時期の洗脳状態が、まるで嘘みたいよ。でも、嘘じゃないのよね。



エリオはエリオなりにそれにケジメをつけたから、こうして笑っていられるというだけ。うん、それだけ。





「あ、それで怪我が治って退院して、ちょっと嬉しい事があったんです」

「嬉しい事?」

「はい。・・・・・・シオンと、あのスターライトのたまごの子。
ヒカリ・・・・・・でしたよね。とにかくまたしゅごキャラが、見えるようになってて」

『そうなのっ!?』



完全脱力していたスバルが身体を起こして、エリオの方を見る。

というか、私とキャロも同じ。てゆうか、私はまだ見えてないのに。



「はい。・・・・・・色々決めたからかも知れないですけど、それは嬉しかったです。
僕の中にも・・・・・・僕だけの夢や可能性がちゃんとあるから、また見えるようになったのかなって」

「そっか。エリオ、良かったね。うん、ホントに良かった」

「ありがとうございます」



とりあえず、スバルとキャロは変わらずに見えている。エリオも復活した。

あとは・・・・・・私か。やっぱり私も、踏ん切りつけなくちゃいけないのかな。



「で、そんなエリオは六課解散後どうするの? ほらほら、見えたってことは、何か目標とかさ」

「そ、それはまだ。ただ、フェイトさんとも色々相談は始めているんです。ね、キャロ」

「うん。・・・・・・私とエリオ君で、学校に通うというのも選択肢の一つだと。
幸いな事に、私の廃棄都市部での大暴れもお咎めなしになりましたし」



あぁ、あの召喚獣による殴り合いか。まぁ、当然よね。

キャロはルーテシア・アルピーノの暴走した召喚獣を、止めようとしただけだし。



「学校かぁ。いいじゃないのよ。普通にそういう年齢なんだしさ」

「そうそう。ここではちょっと難しいけど、同年代の友達とか出来るだろうしさ」

「ただ、やっぱり色々と考えちゃって。フェイトさん的にも安心な選択肢ではありますけど、それだけでいいのかなと」



言いながら、エリオが空を見上げる。空はあの時と違って静かで・・・・・・そして、青く広がっている。



「事件の中で見た事や痛感した事、絶対に無かった事にしないように。
だけど、そのために足を止めるような事にならない選択、もうちょっと探したいんです」

「そのために学校というのも有りですけど、それでももう少しだけ。ただ、方針は決まってるんです。
六課で教わったスキルを活かすのと、フェイトさんを安心させるために、二人一緒に居ようねって」

「そっか。アンタ達も色々考えてんだ」

「「はい」」



なら、あとはフェイトさんとの協議次第か。まぁ、何にしてもいい選択はしてくでしょ。

安心したように、私は少し笑う。なんだかんだでチームメイトだし、心配ではあったの。



「そう言えば、スバルさんとティアさんは解散後どうするんですか?」

「私とティア? 一応予定としては、前の部隊に戻る事になってるんだ」

「私らはアンタ達と違って、学校はもう出てるしね。別のお仕事場で、いつも通りってわけ」



なんて考えていると・・・・・・こちらに近づいてくる足音。そっちを見ると、シャーリーさんが居た。

シャーリーさんが、小走りで走ってくるので、私達は全員揃って身体を起こす。



「あぁ、ティアここに居たんだ。探したよー」

「シャーリーさん、どうしたんですか。そんな急いで」

「えっとね、ちょっと大事なお話。お疲れのところ悪いんだけど、急いで着替えて、ついて来てくれるかな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



よくは分からないけど、急いで着替えてついて来る事にした。

場所は、六課の食堂。それで・・・・・・そこに居たのはフェイトさん。

とにもかくにも、事情がよく飲み込めないけど話を聞く事にした。





私はフェイトさんとシャーリーさんの向かい側に座って、話を聞いて・・・・・・ビックリした。










「・・・・・・私がフェイトさんの補佐官ですかっ!?」

「うん」



解散後にフェイトさんの補佐官にならないかと、単刀直入に言われた。

なお、フェイトさんとシャーリーさんは解散後は元の次元航行部隊に戻る。



「で、でもどうして? お話を色々聞く限り、現状で手は足りてますよね」

「それ、ヤスフミから?」

「はい。まぁ、アイツとは色々繋がり深くしていきたいんで、よく話してるんです」



そうして、私とフェイトさんの視線がぶつかって、火花が散る。



「そっか」

「はい。だから聞いてますよ? フェイトさんがアイツを補佐官にしなかったこととか」

「そこまで話してるんだ。ヤスフミ、何気にティアと仲良しなんだね」

「えぇ」



火花がぶつかり、辺りが明るくなってる感じがする。きっとそれは、ライバル関係の証。

・・・・・・よし。とりあえず視線には対抗出来る。私、なんとかやれるわ。フラグへし折った甲斐はあった。



「とっても仲良しですよ。フェイトさんに負けたくないので」

「でも、私も負けないよ? 私だってティアに負けたくないから」

「望むところです」



・・・・・・って、だめだめ。ここでライバル関係出しちゃだめだから。シャーリーさん、置いてけぼりだし。



「とにかく、それなのにどうして私を? あの、嫌とかではなくて一応その理由は知りたくて」

「あ、そうだね。・・・・・・まず一つの理由として、私だけでは手の届かない所がある。もっと言えば戦闘関係。
今のままだと私は、基本渉外と事務とバルディッシュのメンテナンスが専門で、前線にはフェイトさん一人になっちゃう」

「この間の事件の時に痛感したんだけどね、これからは今までみたいな単独行動は原則無しにしたいんだ。
現場でも捜査活動でも、そういうのは出来るだけ控えたい。ティアももしかしたら思ってるだろうけど、もう今までと違うもの」



フェイトさんも、一旦火花を抑えて私を見る。もちろん、お仕事モードで。



「現場では自分と異なる技能を持った相手と、チームを組んで対処。
最低でも常時ツーマンセルは出来るようにしたい」

「あとはバックヤードとの密な連携や後ろ盾も欲しいけど、とりあえずここは置いておくね。
とにかく現在のハラオウンチームに足りないのはこの部分だと、私達は協議の上で結論つけたの」

「そして問題解決のためには、補佐官の増員は必須」



AMFによる魔力リンクの完全キャンセル化状態とかの事を言ってるのは、すぐに分かった。

確かにみんながみんな、魔法無しで戦闘出来るベルトとか、持ってるわけじゃないしなぁ。



「だから前線で私とヤスフミと連携が取れて、能力の高いティアが適任だと思ったんだ」

「・・・・・・私、ゼロタロスや555ジャケットみたいなベルト、持ってませんけど」

「あ、必要ならヒロリスさん達に頼むといいよ。データはもらえなかったから、私は無理だけどね。
でも、お二人とも基本的にとても気さくでいい人だから、ティアが頼めばきっと」

「それはいいかも。・・・・・・ティアもやってみようよ。『変身』って、意外と楽しいよ?」

「フェイトさん、それもなんか違いませんっ!? てゆうか、色々毒されてますからっ!!」



あぁ、アイツの影響だ。絶対アイツの影響だ。

今疑問顔で首を傾げるフェイトさんは、前だったら絶対見られなかったし。



「それで元々フェイトさんも、前線だけじゃなくて捜査官的な動き方が出来る子が欲しいと思ってたの」

「ティアを誘うのは、別にここでの縁どうこうだけじゃないんだ。ティアの能力が今私達には必要なの。
まぁ、そこに執務官の試験を受けるなら、実地研修が1番いいとかそういうのもあるけど」



一応私の将来の志望とかも考えてくれて、誘ってくれているというのも分かった。

ただ、ここで申し訳なさそうな顔になる理由が、私には分からないけど。



「もちろん補佐官の考査試験をパス出来るかどうかだけど、勉強・・・・・・ちゃんとしてるんだよね。
スバルから聞いたけど、私が前に渡した問題集、かなり真剣にやってるらしいし」

「・・・・・・あとでスバルは殴っていいでしょうか」

「え、えっと・・・・・・やめてもらえると助かるかな。私が逆にスバルに謝らなくちゃいけないし」



でも、一発は殴る。あのバカ、色々喋ってくれちゃって・・・・・・・普通に口軽いし。

アイツに進言しよう。しゅごキャラのこと、もっと強く口止めした方がいいって。てーか、私がする。



「とにかく、勉強してるのなら大丈夫。あ、もちろんティアに他にやりたい事があるなら、そっち優先でいいよ?
私の今の話は、あくまでも選択肢の一つとして考えて欲しいな。大事なところは、ティアが全部決めていいから」

「あの、ありがとうございます。なら、まずは・・・・・・補佐官の考査試験、必ずパスします。返事はそれからでいいでしょうか」

「うん、大丈夫だよ。頑張ってね」



嬉しそうに微笑む二人に、私は力強く頷く。・・・・・・道は、何とか開けたみたい。

まず、そこは喜ぶ。でも、それだけじゃ足りないものがある。だから、私はツッコむ。



「あの、それで一つ質問なんですけど」

「何かな」

「さっきフェイトさん、『私とヤスフミ』って」

「あ、うん。実は・・・・・・ヤスフミも、補佐官になるんだ」



それに驚きを隠せなかった。てゆうか、だってそれは・・・・・・あの、え?

いや、いいのっ!? 普通に理由は今聞いたような感じだって分かるけどっ!!



”・・・・・・ヤスフミと事件後に色々話して、そうしようって思ったんだ。
ティアの事も色々考えたけど、ここで誘わないのも違うかなって思って”



突然届いた声は、フェイトさんからの思念通話。そして、また視線と視線がぶつかり合う。



”・・・・・・いいんですか? 私、アイツの事奪うかも知れないのに”

”決めるのはヤスフミだもの。ヤスフミが本気だったら、私は受け入れるよ。
でも、悪あがきはするよ? ティアに負けないように、私も頑張るんだから”

”そうですか。なら・・・・・・マジでライバルですね”

”うん、そうなるね”



視線はぶつかり、再び周囲が明るくなる。シャーリーさん置いてけぼりだけど、もういい。

だって、話終わったんだし。終わったから、もういいのよ。



”フェイトさん、私は恭文の事、好きです。フェイトさんみたいな時間はないけど、それでも”

”私だって同じだよ。私は、ヤスフミが好き。私はティアみたいに少ない時間で分かり合えるほど相性良くない。
だけど、それでもヤスフミが好きな気持ちは変わらない。私、絶対負けないよ。私は彼女として、全力でぶつかるから”

”望む所です。・・・・・・もしもアイツが『三人がいい』とか言い出したら、どうします?”

”ティアもそこ、考えた? 実は私も”



あ、フェイトさんもなんだ。うーん、アイツってモテるみたいだから、そうなっちゃうのかなぁ。



”・・・・・・むしろ、そっちの方がいいのかな。私達二人でぶつかって、選択はヤスフミに任せて”

”下手に私達が外で小競り合いするよりはスッキリすると思いますけど、それはそれでダメのような”

”でも、一夫多妻はミッドでは合法だもの。ヤスフミの気持ち次第だけど、アリだとは思うんだ。
というか、私は女の子として・・・・・・ちゃんとティアと、決着はつけたい。ライバルだから”

”そう、ですね。ならまた後で会議しましょうよ。アイツにどういう風にするかとか色々”

”うん”










この日、私とフェイトさんの恋愛同盟は成立することになった。

・・・・・・あれ、なんかおかしいかな。でも、問題ないわよ。

知ってる? 人は恋をするとおかしくなるのよ。





ほら、アイツ見なさいよ。フェイトさんに必死過ぎて、『おかしい』という言葉を体現してるでしょ? はい、納得したわね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あ、あの・・・・・二人とも、ちょっと落ち着きません? ほら、冷静に冷静に」










だけど、そんな私の声は全く届かない。ただただ火花は衝突し続けるのみ。

え、えっと・・・・・・私、何かした? いや、してないよね。普通に進路の話しただけだし。

それでなんでこの状態っ!? 絶対おかしいからっ! てゆうか、なんなのこれっ!!





どうしてフェイトさんとティアは普通に火花散らしてるのー! お願いだから誰か原因を教えてー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



訓練が終わってから、聖王教会の医療施設に直行。

ようやく・・・・・・ようやく、ヴィヴィオを引き取れる事になった。

体調の問題や細かい検査に時間がかかって、後処理もあった。





だから自然と足早に私は廊下を歩く。というか、隣の子も同じく。










「ごめんね、ヴィータちゃん。付き合わせちゃって」

「別にいいさ。バカ弟子とフェイトの代理だし、アタシの検査もあったしよ」

「そっか。・・・・・・結果は?」

「お前には負けるよ。ま、しばらくはノンビリ療養してくさ」



とりあえず、後遺ダメージが残っているというのは分かった。まぁ、そうだよね。

はやてちゃんがあの時助けに行かなかったら、死んでたかも知れないらしいし。



「あ、そうだヴィータちゃん」

「なんだ?」



歩きながら、ちょっとだけお話。実は・・・・・・最近考えている事がある。



「あのね、六課解散後に教導隊・・・・・・入ってみる気ない?」

「教導隊? あ、やめとくわ」



即答っ!? あの、さすがにそれは予想外なんだけどっ! ほら、私ちょっと涙出てるよっ!!



「いや、なんかガラじゃねーし。それに何より、解散後までお前と一緒なんて、気持ち悪い」

「ヒドイよー!!」



それどういう事っ!? いいよねっ! 一緒だったらきっと楽しいよっ!!

ご飯も一緒だし、お泊りする時も一緒だし、仕事途中にお風呂が必要なら一緒に入れるしっ!!



「アタシはアレだ。仕事もプライベートも充実してるカッコいい女目指すんだ。
というわけで、もうお前のフォローなんて絶対しないから。これからは全部自分で何とかしろ」

「いや、それ関係なくないっ!? というか、ヴィータちゃんがなんか冷たいよー!!」

「うっせぇ。アタシはこれからは個人主義で生きるんだ。お前はお前で勝手にやってりゃいいだろ」



弟子に感化されて師匠まで個人主義になってるっ!?

うぅ、どうしてー! どうして師弟揃って私をいじめるのー!!



「・・・・・・まぁ、アレだ」



ヴィータちゃんは早足で歩きながら、私を追い越す。追い越して、ポツリと呟いた。



「一応、考えてはおいてやる」

「・・・・・・うん」

「ただ、もうくっつくなよ。あと、他人のふりだからな。他人のふり。
例え教導隊に入っても、そこで初めてアタシらは会ったんだ。いいな、そういうシナリオだからな?」

「やっぱりヒドイよー!!」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そう言えば、六課解散後はリイン曹長はどうするんですか?」



とりあえず、火花を散らし合って談話室に駆け込んだフェイトさんとティアは気にしない事にした。

私は、みんなのデバイス整備だよ。いや、訓練が再開したから、忙しい忙しい。



「リインは・・・・・・そうですね」



で、リイン曹長も手伝ってくれてる。目の前のモニターに向かいながら、決意に満ちた声で言い切った。



「恭文さんの所で暮らそうって、考えてるです」

「あぁ、そうなん・・・・・・えぇっ!?」



ど、どうしてっ!? 普通に八神部隊長の所で補佐を続けるとか思ってたのにっ!!

私は驚きながら、左隣に居るリイン曹長を見る。リイン曹長は、手を動かし続けていた。



「というか、フェイトさんに負けたくないのです。リインだって・・・・・・・リインだって、恭文さんが好きですから」



あ、あれ? おかしいな。なんだろ、このデジャビュ。普通に色々間違ってない?

なんでリイン曹長、黒い炎で燃えてるんだろ。というか、さっきのフェイトさんやティアと姿かぶってるし。



「なんだか、最近の事で色々分かったです。リイン、恭文さんの側に居て恭文さんの事、守りたいんです。
恭文さんが全力で戦えるように、いっぱい頑張るのです。・・・・・・よし、やるですよー! おー!!」

「が、頑張ってくださいね」










私は、こんな風にしか言えなかった。だって・・・・・・だって、普通に私は他人だもの。





とりあえず、今外に出ている八神部隊長に涙と共に敬礼しか出来そうになかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、二人で色々相談したんだ」



いやいや、何が『というわけ』っ!? 話おかしいでしょっ! そしてなんでおのれら、僕の自宅に押しかけてきたっ!!

ほら、仕事終わりで僕はぐーたらしてたのに・・・・・・台なしだよっ!? そこんところ察してっ!!



「よし、フェイトもティアも落ち着けっ!? 普通に僕を抜かしてそんな相談をするなっ!!
てーかフェイト、彼女としてその行動はどうなのよっ! 色々間違ってるからっ!!」

「とにかく・・・・・・私達、恋愛同盟を設立したんだ」



そして僕の話を無視っ!? うわ、完全にエンジンかかって目が据わってるしっ!!



「私、アンタが好き。でもアンタは、フェイトさんが好き。・・・・・・正直さ、『彼女居るから』じゃ納得出来ないのよ」



出来ないの問題でしょうがっ! むしろ納得しようよっ!! そこは絶対納得しようよっ!!



「まずアンタに、私・・・・・・ティアナ・ランスターを見て欲しいの。そのためのチャンスが欲しいの。
アンタに女の子としての私を知って欲しい。知って、選んで欲しいの。それなら納得出来る」

「私も同じだよ。・・・・・・私、8年もスルーしてたでしょ? だから、改めて見て欲しいの。
今の私の事、もう一度。それで・・・・・・それでも変わらないなら、付き合って欲しい」

「いや、あの・・・・・・だからちょっと待ってっ!? 話おかしいからっ!!」

「「おかしくないっ!!」」

「即答するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 全てにおいておかしいんだよっ!!
100人に聞いたら、全員がおかしいって言うくらいにおかしいんだよっ! 何これっ!?」



・・・・・・顔を見合わせて首を傾げるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんで自覚無いんだよっ!!



「ヤスフミ、私はヤスフミが好き。ヤスフミの事・・・・・・本当に大好きなんだ。
ヤスフミから沢山優しさと勇気と、力をもらった。私も、ヤスフミにそれを返したい。・・・・・・だから」

「私、アンタが好き。アンタとの時間が、繋がりが大切なの。
生まれて初めて、人を好きになった。だから」



僕の目の前に正座して、二人は瞳を震わせながら・・・・・・こう言い切った。



「「私達二人と、一緒に恋愛してください。恋愛して・・・・・・選んでください」」



言い切りやがった。色々ワケの分からない発言を、自信満々に言い切りやがった。

だから、僕は現実という物を叩き込む事にする。うん、それしかないよね。



「よし、ティアごめん。僕はフェイトが好きだから、ティアとは付き合えない。はい、オーケーだね」

「ヤスフミ、何言ってるのっ!? ちゃんと考えてっ!!」

「そうよっ! まだ恋愛の『れ』の字も始まってないじゃないのよっ!!
アンタ、それでフェイトさんが納得すると思ってんのっ!? 女バカにしてんじゃないわよっ!!」

「その前にお前らが僕をバカにしてんだよっ! てーか、フェイトもしっかりしてー!!
普通に『ヤスフミは私の彼氏だからだめ』とか言えばいいよねっ!? なんでこうなるのさっ!!」



アレ、なんか固まった。固まって・・・・・・驚いた顔になった。え、いやいやちょっと待って?

僕、何がどうしてこうなるのか、さっぱり分からないんだけど。



「・・・・・・そう言えばそうだよねっ!!」

「気づいてなかったのっ!?」

「ご、ごめん。彼氏なんて出来た事なかったから、どうしていいのか分からなくなって」

「分からなくたって、こっちにはいかないでしょうがっ! 普通にありえないしっ!!」



だぁぁぁぁぁぁぁっ! 天然だ天然だとは思ってたけど、ここまでっ!? ひど過ぎるしっ!!

・・・・・・でも、ここがちょっと可愛いとか思ってしまうのが不思議。うぅ、フェイトやっぱり好きー。



「え、これダメなの?」

「ダメに決まってるでしょうがっ! ティアも何考えてるっ!? 常識人がバカやってどうすんのよっ!!」

「バカってなにっ!? さっきまでフェイトさんと二人でアレコレ考えた恋愛同盟の規約をバカにしないでよっ!!」

「規約まで作ってるっ!?」



それで、二人は懐から髪を取り出して・・・・・・同時に広げた。



「1・蒼凪恭文を一途に想い、守る事。2・蒼凪恭文の障害となる物を全力で振り払う事。
3・どちらか一人を選んだ場合、片方は選ばれた方を全力でバックアップする事」



まず、フェイトが読み上げる。というか・・・・・・あれ? なんだろ、このデジャブ。



「4・もしも私達二人共との関係を蒼凪恭文が望んだ場合、それを受け入れる事。
5・この規約を、決して破る事なかれ。・・・・・・という感じなのよ。分かった?」

「分かるかボケェェェェェェェェッ! てゆうか、どこのおねツイッ!? こんなのありえないしっ!!
とにかく、ティアとは恋愛出来ないからっ! あとフェイト、今日はここに泊まってもらうよっ!?」

「えぇっ!?」



顔を赤らめてんじゃないよっ! 普通に僕は怒ってんのよっ!?

もう二人揃ってバカ過ぎて怒ってるんだからっ! いや、もう呆れてるしっ!!



「一晩かけて、ちょっとお説教するからっ! いくらなんでもひど過ぎるしっ!!」

「「・・・・・・だめ」」

「何がだめっ!? 無茶苦茶な事言い出すおのれらの方が、もっとだめだっつーのっ!!」

「「だめじゃないっ!!」」



なんて言いながら、二人が手を伸ばす。そして、僕はあっさりと押し倒された。押し倒されて、気づいた。

二人とも・・・・・・涙目になってる。涙目になって、僕のこと見ていた。



「・・・・・・その、彼女としてはヤスフミには絶対に取られたくない。それは絶対。
ただ、私を理由にティアの気持ちを振り切るの・・・・・・なんだか、嫌なの」

「どうしてさ。だって、立派な理由だし」

「私が、ヤスフミの事を好きだから。好きになったから。・・・・・・私、嬉しかった。
惰性じゃなくて、好きになり続けているって言ってくれた時、本当に」



涙目だけど、嬉しそうにフェイトが微笑む。微笑んで・・・・・・僕の右頬をそっと撫でる。



「彼女としては、それで納得出来る。でも、女の子として考えると、納得出来ないんだ。
ヤスフミには、私を選び続けて欲しいの。好きだと言われて、考えても・・・・・・それでも」

「それで、別の人選ぶかも知れないよ?」

「そうならないように、私はキラキラに輝く。ヤスフミがそれでも私を選べるように、思いっ切り。
上手く言えないけど、彼氏彼女というのを理由にヤスフミを占有するの、物扱いしてる感じがして」



言いたい事は、さっきより伝わった。選ぶのは僕だから、自分がそこに介入するのはだめとか思ってる。

・・・・・・バカ。別にいいのに。彼氏彼女って、夫婦って、そういう関係でもあるのに。



「マジでさ、最低な事してるって思ってる。そこはホントに。アンタに内緒で、勝手に話決めちゃったしさ」



次はティア。ティアも、フェイトと同じように涙目で・・・・・・ううん、涙が零れた。零れて、僕の頬に当たる。



「だけど、それでも・・・・・・ダメ、みたいなんだ。初めてだからなのか、コントロール出来ないの。
お願い。私・・・・・・最低でダメな女の子だけど、見て欲しいの。見て、それからなら嫌ってくれてもいいから」

「・・・・・・あぁもう、分かったよっ!!」



両手を伸ばして、二人の頭を抱きしめる。・・・・・・もう、覚悟を決めるしかない。

振り切る事、出来ないみたいだし。それに・・・・・・あの、ちゃんとした方がいいかなと。



「二人と付き合う。それで、答え出すから。・・・・・・それで、いい?」



二人は、頭を抱きしめられながらも頷いた。で、手を離すと・・・・・・うわ、なんか嬉しそうだし。



「ヤスフミ、ありがと」

「あの、その・・・・・・マジでありがと」

「いいよ、別に。でもティア、僕・・・・・・やっぱりフェイトが好きなんだ。だから」

「答えなんて約束してくれなくていいわよ。ただ見てくれるだけでいい。その上なら、納得する」



とりあえず、起き上がろうとする。するけど・・・・・・あれ、二人が手を離してくれない。



「あの、えっと・・・・・・二人とも?」

「それでね、さっき確認し合ったら・・・・・・私達、今日は大丈夫なんだ」

「一応、男の家に行くわけだしさ。覚悟はしてた。・・・・・・三人で、したい」

「はぁっ!?」



や、やばい。二人とも目が据わって・・・・・・これ、もしかしなくてもピンチ?



「それにヤスフミ」

「そっち見ないでっ!? あの、えっと・・・・・・こんなのダメだからっ! 三人でなんて」

「というか、ごめん。私も抑えられないの。ヤスフミの事・・・・・・欲しい」

「私も同じく。あの、好きにしていいから。何されても、絶対受け入れる」

「だから、ちょっと待ってー!!」










そして、僕は・・・・・・そのまま、フェイトとティアとそうなってしまった。ごめん、普通に止まらなかった。





二人とも初めてで、僕も初めてで・・・・・・それで、三人? うぅ、色々贅沢だけど罪悪感が。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・という夢を見たのさ」

≪だからあなた、そんなに仏頂面なんですか。そして、やっぱり夢オチですか≫



え、どこからが夢だったって? 当然あのワケの分かんない三人での会話からに決まってるでしょうが。



「当然でしょ? だから展開も強引だし、もう話もワケ分からないし」





訓練が再開されたり、隊舎が復旧したりした10月後半のある日。僕はこんな夢を見た。

ヤバい、普通にあり得ないって。ティアが僕を好きで、三人でそうなるとかさ。

かなり早めの朝食の焼きジャケ定食(自作)を自宅で食べながら、僕は思う。



なーんでこんな夢を見てしまったのだろうと。いや、原因は一つしかない。





≪アレですか、女なら誰でもいいんですか≫

「恭文、最低だな。フェイトという恋人がありながら、それは一体どういう事だ」

「本当です。というか、それならそうと私に言ってもらえればしっかり対策を整えるのに。
しゅごキャラという身ではありますが、お兄様の愛をしっかりと受け入れる覚悟は決めています」

「いいわけあるかボケっ! そしてシオンは黙れっ!?」



コイツ、何をするつもりっ!? しゅごキャラなんだから、それは絶対無理でしょっ!!



「それになにより、普通にこの夢を見た原因は分かってるしっ!!」

≪あ、そうなんですか。で、なんですか?≫

「いや、昨日・・・・・・School Daysの三人体制で付き合って誰も死んだりしないEDを見て」



それがまた、後味悪いというか、どっか病んでるのよ。やばい、アレは無理だわ。

マジで複数の女性とそうなるとか、三人体制とか無理。僕にそんな器量はない。



「なら、どうしてそこでティアが出てきたんだ?」

「んー、昨日ティアを補佐官に誘ったって、フェイトから聞いたせいかな。あとは、これからの予定のせい?」

「それなら私も一応は納得出来る。色々混ざり合ってそれという事か」

「そうそう」



まぁティアも、僕も同じく補佐官になるしね。その関係で、色々考えたからなのかも。

でも、フェイトとティア・・・・・・いやいや、確かにティアは綺麗だけど、僕はフェイト本命だもの。



「よし、もうSchool Daysなんてしないぞ。興味本位で手を出していいゲームじゃないよ。
結局あのEDも普通に鬱というか、病んでるEDだったし」

「でもお兄様、ランスターさんはともかくとして、結局はフェイトさんとリインさんとで三人体制になるのでは」

「ならないよっ! てか、普通にリインはパートナーってだけだしっ!!」










新暦75年。世界はひと月前の混乱から立ち直り、少しずつだけど日常が戻ってきている。





だからこそ、僕もこんなバカな夢を見れたのかと思うと、多少は・・・・・・いや、やっぱ嫌だ。ハーレムとか無理だし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、『これからの予定』というのは・・・・・・昨日ティアに呼び出された事。

てゆうか、ひどい。普通に夜明け前に時間指定された。まだ日も出ていない。

出ていないから・・・・・・普通にあくびなんてする。なお、場所は隊舎の外。





というか、うちのマンションの屋上で・・・・・・夜明けを見たいとか言い出した。










「・・・・・・前にさ、ここからだと夕日とかが綺麗に見えるって言ってたじゃない? だから興味があって」

「左様で。てか、なんでそれで僕も一緒?」

「不審者に間違われないための処置よ。悪いわね」

「な、なんつうハタ迷惑な」



なんて言いながらも、普通に付き合う僕は凄くいい子だと思うの。

二人で僕が持ってきた携帯用の椅子に座り、日の出る方向を見る。世界は、まだ暗いままだ。



「あのさ」

「うん?」

「フェイトさんと・・・・・・付き合ってるのよね」

「うん」



ティアは、ただ夜明け前の空を見ている。その表情がどこか真剣に見えたのは、気のせいじゃない。



「マジでフラグ、へし折れてなかったわけか」

「折れてなかったね。だからビックリしたよ。成立してるとは思ってなかったから」

「そうよね。アレだけやらかしてたのに。
・・・・・・フェイトさん、なんだかんだでちゃんとアンタの事見てたんだ」

「みたい。ティアに責任取ってもらう必要は、無くなったわ」



軽く、いつもの通りに冗談めいた口調で言うと・・・・・・ティアが目を細めた。それから、僕の方を見る。



「そうみたいね。でもさ、例えば・・・・・・ううん、例えばじゃないな」



少しだけ声が掠れているのに気づいた。腹部の前に組まれた両手が、強く握り締められている。

どうしていきなりそうなるのかよく分からなくて、僕はティアに聞こうとする。でも、その前に答えが出された。



「私がそれでもあの時言った事、通したいって言ったら・・・・・・どうする?」

「え?」

「私、アンタが好き。アンタの事・・・・・・男として意識してるみたい、なんだ」



・・・・・・ちょっと待ってっ!? 今ティア、なんて言ったっ! というかアレ・・・・・・まさか正夢かいっ!!

え、つまりつまり・・・・・・僕、告白されてるのっ!? というかそうだよっ! これは告白だしっ!!



「なんかさ、だめね」

「え?」

「もっとさ、感動的な告白って言うの? 色々考えたんだけど・・・・・・だめだった。やっぱ、私は私にしかなれないって事かな」



言いながら、ティアは苦笑する。だけど、それさえもいつもより綺麗に見える。・・・・・・なんでだろ。



「多分助けてもらったり、色々距離感近かったせいかな。普通にずっと意識してたみたい」



そう口にするティアの瞳が涙で潤む。滲んで・・・・・・それを右手の人差し指で拭う。



「ティア、あの・・・・・・えっと」





こういう時、言うべき言葉は一つ。一つだけど・・・・・・それを口にするのが、辛い。

・・・・・・少しだけ、世界に光が差し込む。夜が、明け始めた。

そんな中で僕は、右手を強く握り締める。握り締めて、目の前の子と向かい合う。



答えは・・・・・・決まってる。だって僕は、心の中に大切な人が居るから。



だけどあの、なんだろう。無茶苦茶ドキドキする。昨日あんな夢、見たばかりだからかな。





「あの、ありがと。すごく・・・・・・すごく嬉しいんだ」

「ホントに?」

「うん。そこはホント。・・・・・・でも、ごめん。
僕、フェイトと付き合ってて、フェイトの事が好きだから」

「フェイトさんを理由にしないで」



ティアが、少し顔を近づけて視線を厳しくする。・・・・・・あれ、なんだろ。

もしかしなくても、夢の通りになってるっ!? アレ、これってなんかおかしくないかなっ!!



「あのさ、しばらく私も含めて三人でって・・・・・・ダメかな」



なんか展開が夢の通りになってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!



「二股とかじゃなくて、三人で。私の事をちゃんと一度女の子として見て、その上で・・・・・・ごめん、これはさすがにダメよね」



あ、夢と違って良識的だ。僕、少し安心した。やっぱりティアは良識派なツッコミ役が1番だよ。

とりあえず、無駄にビクビクしている心と心臓を落ち着かせる。落ち着かせて・・・・・・呼吸を整える。



「・・・・・・ティア」

「うん、ダメだから・・・・・・もうちょっとストレートに行く。私と付き合って欲しいの。イエスかノーかで答えて。
待たされるの嫌いだから、今すぐに。・・・・・・私、フェイトさんみたいに綺麗じゃない。才能があるわけでもなんでもない」



整えているけど、ドキドキが止まらない。恐怖というより、嬉しさ。

どんどん差し込んでくる朝の光を浴びているティアの表情が、とても綺麗だったから。



「性格だって、色々負けてる。でも、それでも・・・・・・アンタと居たいの。
アンタとずっと繋がれたらいいなって、そう思ってる。だから・・・・・・お願い」

「・・・・・・ティア、あの・・・・・・ごめん。やっぱり、変わらないの」



ドキドキする。多分これでフェイトが居なかったら、OKしてたと思う。

それくらい嬉しい。ちょっと目に涙が溜まりかけてるもの。



「ティアは・・・・・・まぁ、一応友達で、好きな方だと思う。だから、告白されて本当に嬉しい。
今、僕無茶苦茶ドキドキしてるんだ。それは本当に。だけど・・・・・・やっぱりティアは友達で」

「うん」

「僕が好きなのは、フェイトなんだ。フェイトが、好きなの。別に能力とか性格とか、そういうのあんま関係ない。
外見も・・・・・・まぁ、関係がない。フェイトと居る時間が大事で、大切で・・・・・・だから、一緒に居たいって考えて」



そこはティアと同じだと思う。だから、僕はティアの目を見返す。逃げないで、ここはちゃんと受け止める。

受け止めて・・・・・・しっかり返さなくちゃいけない。道理どうこうはともかく、僕がティアにそうしたいから。



「だから、ごめん。僕・・・・・・ティアとは付き合えない。三人体制も無理っぽい」

「・・・・・・そっか。でも、リイン曹長は?」



・・・・・・・・・・・・なぜ、誰も彼もリインの事をツッコむのだろう。フェイトにもちょっと言われたし。

というか、リインはそういうのじゃないよ。その、パートナーで大事な女の子で・・・・・・え、これってそういうのなの?



「どっちにしてもアンタ、リイン曹長ともそうなるわよ? 見てると相思相愛だもの。
・・・・・・三人も四人も一緒って考えれば、私も一応チャンスが出来るんだけどな」

「そうなのっ!?」

「アンタ、ガチで自覚なかったのっ!? ・・・・・・まぁ、さっき三人でなんて嫌って言っちゃったし、ここはいいか」



夜明けは日の出に変わって・・・・・・水平線からゆっくりと日が昇る。

昇って、その間にティアの瞳から涙が一滴零れた。



「てゆうか・・・・・・あの、ありがと。ちゃんと答えてくれて・・・・・・無視なんて、しないで。あの・・・・・・マジでありがと」



ティアがそれから、目の前でボロボロと涙を零し始めた。僕はどう言っていいか分からなくて・・・・・・ううん、ダメなのか。

こういう時、下手に慰めたらアウトだもの。だから、僕は何も言えない。言えるわけがないし、必要なことは全部言った。



「ううん。僕の方こそ・・・・・・ありがとう、だから」

「ん・・・・・・!!」










・・・・・・朝日が昇りきって、仕事に行く時間になるまではティアはそこで泣いてた。

僕は・・・・・・ティアとその場で別れてからはやてに連絡して、朝はサボタージュさせてもらった。

少しだけ、気持ちの整理。というかあの・・・・・・真面目にヤバかった。ちょっと揺らぎかけた。





告白してくれた時のティア、すごく可愛かったから。それで、胸に強く伝わった。





やばい、今フェイトに会うと色々見抜かれそう。ちょっと怖いな。




















(第42話へ続く)




















おまけ:その後の二人




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヤスフミ、ティアに告白されたでしょ」

「なんで分かるっ!?」



その日の夜、談話室で恋人同士のコミュニケーション。そうしたら、フェイトに即行で見抜かれた。

予想通りに、やっぱり見抜かれた。それに衝撃を受けていると・・・・・・フェイトが少し申し訳なさげに苦笑いしていた。



「ごめんね。実は私、気づいてたんだ。
それでティアと勝負してたの。・・・・・・ヤスフミを賭けて、本気の勝負」

「そうなのっ!? ぼ、僕が知らない間に勝手に・・・・・・!!」

「あの、ごめんね。ただ・・・・・・勝負したかったの。それで、ヤスフミに私の事選んで欲しかったから」



言いながら、右手で僕の頬を触る。触って、一杯撫でてくる。



「『彼女だから』って言う惰性じゃなくて、『私だから』で選んで欲しかった。
もちろん、私もそれが出来るように一生懸命努力していくけど」

「それでもし僕がティアの事選んでたら、どうしてた?」

「・・・・・・嫌だった。凄く、嫌だった。でも、惰性で私を選んでくれるのはやっぱり嫌で・・・・・・うぅ、ごめん。上手く言えないよ」



・・・・・・まぁ、色々と分かった。てゆうか、ただそれでも許さない。普通にお仕置きしてやる。



「だめ、謝っても許さない。・・・・・・お仕置き、していい?」

「え?」

「まずはハグ。ほら、こっち来て」



フェイトは頬を染めて頷きながら・・・・・・僕の前に来た。それで、そっと抱きしめてくれる。

だから僕は・・・・・・下からフェイトの胸に手を伸ばして、制服の上から両手で触ってみる。



「ヤ、ヤスフミ・・・・・・だめ。ここ、職場だし」

「これ以上は何もしないよ。ただ、フェイトの温かいの、一杯感じたい。
というか、心臓の鼓動・・・・・・感じさせて欲しい。いいよね」

「それがお仕置き?」

「お仕置きというより・・・・・・再確認」





少しだけ、両手の指を動かして服の上から、フェイトの乳房を愛撫してみる。

そんな揉みしだく感じじゃない。触れて、撫でるようにするだけ。

服の上からでも、あの時みたいに柔らかくて・・・・・・フェイトが、甘い息を吐く。



それで左手から・・・・・・右の胸から、高鳴る鼓動が伝わった。



フェイト、すごくドキドキしてる。だから、フェイトの体温が一気に上がったように感じる。





「僕の好きになり続けている子は、フェイトなんだって。フェイトも、僕の事好きだと思ってくれてるって」

「ヤスフミ・・・・・・そう、だよね。私、ヤスフミに悪いことしちゃってたし、そういうの必要だよね。
じゃああの、ここでエッチな事をするのはホントにダメだけど、いい?」

「うん。ただね、フェイトの気持ちとかちゃんと伝えて欲しい。
思いっ切り抱きしめて・・・・・・伝えてよ。じゃなきゃ、僕だって不安になるんだよ?」

「分かった。なら、しばらくこのままで・・・・・・いっぱい、伝えるね」










しばらく、フェイトの事を愛撫しながら・・・・・・いっぱい再確認させてもらった。





フェイトが好きで、フェイトも僕の事好きだと思ってくれてて・・・・・・うぅ、やっぱり幸せ。





ティアに告白された直後にコレはおかしいんだろううけど、それでも僕が好きなのは、フェイトだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・だ、だめ。一杯気持ち確認し合う必要はあるけど、胸・・・・・弱いの。

服越しからでもヤスフミの手の温かさが伝わってきて、かなり苦しい。

嫌とかじゃなくて、嬉しさと申し訳なさと色々で・・・・・・こう、凄いの。





好きな人に自分の身体を触られるって、本当に凄いから。だから、ちょっと思う。

もしもこれがキスとかだったら私、本当にどうなるんだろ。

・・・・・・今は、いいか。とにかくいっぱいヤスフミに気持ちを伝えなくちゃ。





ヤスフミは私の大好きで・・・・・・大切な恋人だって。だから、取られたくないって。

でもでも、ヤスフミの手と指がちょっとだけいたずらしてくる。これはダメージ大きいよ。

恥ずかしいけど、嬉しくてドキドキしてる。それで私、もっと触って欲しいとか考えてる。





ここではだめだけど、ここじゃなかったら・・・・・・いい、よね。

というかあの、もう事件は終わってるし、事後処理も落ち着いた。

だからみんなだって先のことを考え始めてる。私も同じく。





だから、きっと・・・・・・いいよね。もう、充分な時間が経ってる。





私、もうあの時と違う。今までと違う。ヤスフミと・・・・・・結ばれたい。










「・・・・・・フェイト、嫌じゃない?」

「うん、嫌じゃないよ。どうして?」

「フェイト、凄くドキドキしてる。服越しからでも伝わるの。だから」

「・・・・・・納得した」



ヤスフミは、やっぱり優しい。私が本当は嫌がってるんじゃないかとか、気にしてる。

でも、ここなら大丈夫。戸締りもちゃんと確認したし、変な機材の反応もないし。



「でも、本当に大丈夫なんだ。ドキドキするのは、ヤスフミが触ってくれて嬉しいから。
だからもっと、触って欲しいな。というか私の好きな気持ち、伝わってる?」



なお、私は伝わってきてる。ヤスフミが本当に優しくしてくれるから、いっぱい伝わるの。



「うん、伝わってるよ。凄く・・・・・・伝わってる。じゃあ、もうちょっとだけラブラブしててOK?」

「うん、大丈夫だよ」










とにかく、もうちょっと頑張って時間を作ろう。恋人タイム、頑張るんだ。





これは何も諦めない私が手を伸ばす、本当に大切なことなんだから。




















(本当に続く)




















あとがき



あむ「というわけで、六課隊舎が復旧してからの色々な人達の風景を描いた第41話、如何だったでしょうか。お相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文です。・・・・・・しかしさ、あむ。普通にSS04の話かかなかったら、次回で決着つきそうなんだけど」

あむ「あー、ちょうど分量的にそういう感じだしね。でも、一応ちょこちょこはやるんでしょ?」

恭文「うん。アレだよね。『とある魔導師の休日・Remix』な感じにして、それでEDって感じ?」

あむ「じゃあ、電王編とかは」

恭文「一応そこも『ありましたー』的な感じで語って解散・・・・・・かなぁ。
ほら、リインフォース・ライナー出したから、一応それでもいいのよ」





(一応、あれが決着点ではありましたので。キャラなりは単純なパワーアップというより、こころの有り様の変化で使える能力なのです)





恭文「でもさ、あむ・・・・・・みんなの期待を裏切って出なかったね」

あむ「いやいや、ここであたし出てもおかしいじゃんっ! てゆうか、普通にありえないよっ!?
・・・・・・あ、でも歌唄はまた出てきたよね。ちょこちょこーっとだけど」

恭文「うん。歌唄のポジションって、何気に大きいし。やっぱり出さなきゃいけないかと。
てゆうかさ、何気にStrikerS・Remixも41話なんだよね。すごい続いたよね」

あむ「途中ですごい描写が丁寧だったしね。戦闘話とか、色々あったし。
ま、もうちょっとだから頑張ろうか」

恭文「うん。これ終わったら、メルティランサークロスやるんだ」

あむ「え、なんかやる気満々っ!?」





(蒼い古き鉄、すっごい楽しそうだ。もちろん、理由はある)





恭文「いや、ゆかなさんがシルビィだから」

あむ「それ、アンタの趣味じゃんっ! 普通に作者どうこうじゃなくて、アンタの趣味っ!?」

恭文「あむ、分かってないね。シルビィの素敵さを。もうね、シルビィはすごいんだよ?
ゆかなさんボイスで、恋愛妄想癖が激しいって設定なんだから。どれだけすごいか分かる?」

あむ「分かるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! もうちょっとさ、他の理由ないのっ!?
クロスの話出して、カラバとかヴェートルの話の顛末をちゃんと描きたいとかさっ!!」

恭文「それよりゆかなさんでしょっ!? 何よりゆかなさんでしょうがっ!!
フェイトは僕の永遠の嫁だけど、ゆかなさんも僕の嫁なんだよっ! あむ、一体何言ってるのさっ!!」

あむ「それはあたしのセリフだよっ! 何逆ギレしてんのっ!?」

恭文「それはこっちのセリフだっ!!」

あむ「あたしのセリフで合ってんのよっ!!」





(現・魔法少女は不満そうだけど、蒼い古き鉄はどこ吹く風。どうやら、相当ゆかなさんが好きらしい)





あむ「と、とにかく・・・・・・次回だね。次回はなに?」

恭文「僕とフェイトの話。そこから休日話だね」

あむ「いよいよラストかぁ。まぁ、そこも期待しつつ・・・・・・本日はここまで。お相手は日奈森あむと」

恭文「あむは、最近逆ギレが多いと思う蒼凪恭文でした」

あむ「それはアンタでしょっ!? てゆうか、アンタの十八番芸じゃんっ!!」










(とにもかくにも、今日も仲良しなエターナルヒロインと蒼い古き鉄であった。
本日のED:嵐『Believe』)




















はやて「え、小説やうちの同人誌を貸して欲しい? それもエロ描写のあるの?」

フェイト「・・・・・・うん。その、ゆかなさんに負けたくないなって思って。
ヤスフミ、ゆかなさんに対してだけは凄まじくデレデレだし」

はやて「・・・・・・フェイトちゃん、アイツのアレはもう病気やし、気にしたらあかんって。
でも、そう思うって事は・・・・・・ハハーン、いよいよ初夜の準備か?」

フェイト「そ、その・・・・・・う、うん。というか、ダメかな」

はやて「うーん、別にえぇんやけど・・・・・・あの手の本は、ちょお問題があるんよ」

フェイト「問題?」

はやて「読者がヌキやすく・・・・・・ようするに、自慰する時に材料になりやすいようにしてる部分があるんよ。AVとかもそうなんよ?
もちろんそれは物による。文学の方向性の一つとして、そんな材料どうこう抜きでそれをやっとるんもある。でも、そうやないのもある」

フェイト「じゃあ、はやての持っているのは」

はやて「もう笑ってまうくらいに、ブッチギリでそうやない方やな。それも全部や。アレや、経験者に相談した方がえぇよ。
下手にそういうのから仕入れると、実際にそうなった時に手痛い失敗するよ? それで気まずくなっても嫌やろ」

フェイト「うん、それは・・・・・・嫌だ。でも、それなら誰に」

はやて「身近で確実に経験ありな女性・・・・・・リンディさんやエイミィさん・・・・・・は、相談しにくいか」

フェイト「う、うん。その・・・・・・まさか家族にエッチの時のテクニックなんて聞けないよ」

はやて「同じ理由で、桃子さんや美由希さんもアウトやし、フィアッセさんとかに聞くわけにもいかんし」

フェイト「さすがに聞けないよっ! というか、フィアッセさんに聞いたら、私最低じゃないかなっ!?」

はやて「まぁなぁ。向こうさんからすると、アンタは8年スルーした上で、婚約者奪った宿敵やし」

フェイト「でしょ? だからちょっと困ってて」

はやて「なら、やっぱここはアイナさんやろ。ほら、寮母で既婚者でもあるし。
本気で困ってるって言う風で相談すれば、絶対力になってくれる思うよ」

フェイト「あ、そうだね。なら、少し恥ずかしいけど・・・・・・ちょっと、相談してみる。あのはやて、ありがと」

はやて「えぇよ、別に。ただし・・・・・・一晩越えたら、ちゃんと成果は教えてよ? うちも参考にしたいし」

フェイト「りょ、了解。あの・・・・・・ただし本当に触り程度だよ? 深いとこまでは、ダメだから」

はやて「分かっとるよ。てーか、深いとこまで吐かせてもうたら、恭文にぶった斬られるもん。そんなん嫌やし」










(おしまい)








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あきゅろす。
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