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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第40話 『祭りの終わり。日常の再開』



恭文「前回のあらすじ。リインフォース・ライナーに変身しました。そして・・・・・・変身出来ないー!!」

フェイト「うぅ、どうしようっ! はやての前でヒカリとキャラなりってマズいよねっ!?
でも、そうしないとこの状況で自力で脱出は難しいし、クリムゾンフォームだけだと、壁の破壊も難しいし」

恭文「くそー! せめてゼロタロスが無事なら、ゼロガッシャーも単独で使えるのにー!!」

フェイト「ヤスフミ、単独では使えないんだよね」

恭文「うん。ゼロタロスとの連動で初めてAMF化で使えるようになってるから。あぁ、どうすりゃいいのこれー」

はやて(PSPなのは版)「『鏡』とは、可視光線を反射する部分を持つ物体のことである。
古来から『鏡』に映像が見えるんことは神秘的なものとされ、世界の『こちら側』と『あちら側』を分けるレンズのような物と考えられていたんや」





(・・・・・・・・・・・・なんかまた来た)





はやて「『違う世界』にはもう一人の私もいるのかもしれへんな♪
・・・・・・・と、こんなんでええんかな?リインフォース」

リインフォース(PSPなのは版)「お見事です、我が主」

はやて「ありがとうな。せやけど、ここはどこやろうな?二人で散歩しとったらいきなり銀色のオーロラにのみ込まれてここに来て。
ちょお変わったコウモリさんに「この事項は君が読むべきだ!」と言われて読んだんやけど」

リインフォース「ご安心を我が主、どんなことがあろうとも必ずお守りいたします」

はやて「ありがとうな、リインフォース。せやけど、1人で無茶はあかんで?前にも言うたけど、夜天の主と祝福の風は一心同体・・・・・・無茶するんも、一緒にや」

リインフォース「はい・・・・・・我が主っ!!」

恭文「はい、そこ何やってるっ!? 人が無茶苦茶大変な時に、あのバカコウモリはー!!」

フェイト「というか、完全に居着かれちゃったね。これ、また渡さんに謝らないといけないんじゃ」

リインフォース「問題はあるまい。もう既に、私とお前のIF要望まで来ている」

恭文「それはどういう理屈っ!? そして、それはプロット難易度高過ぎるしっ!!」

はやて「いやぁ、おっきくなったフェイトちゃん・・・・・・綺麗やなぁ。あー、おっぱいも大きいし」

フェイト「あの、はやてっ!? お願いだから触ろうとするのはやめてー!!」

恭文「そうだよっ! 触っていいのは僕だけなんだからっ!!」

フェイト「そ、それは・・・・・・あの、えっと・・・・・・そういうのもだめっ!!
・・・・・・二人っきりの時ならいいけど、でもあの・・・・・・うぅ、恥ずかしいよー!!」

リインフォース「・・・・・・なるほど。ヒロインになるためには、こういう恥らいが必要なのか。勉強になった」

恭文「なんかさりげに学習しまくってるっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



廃棄都市部で、フォワード陣は一旦合流することになった。

ただ、エリオとキャロは除く。エリオは重傷だし、キャロは召喚師の子に付き添ってる。

だから、私とティアだけなんだけど・・・・・・無事だった事に、安心した。





一応ではあるし、まだ全部終わりでもない。だけど私達は、ちゃんと勝った。

それだけは、間違いない。・・・・・・集合場所が見えてきた。

そこには、一台のヘリ。アレ、多分ヴァイス陸曹が乗ってたやつだ。





ハッチの開いたヘリの中には、二台のバイク。一つはヴァイス陸曹のバイク。

この間の休日の時に、ティアと借りたのだ。そしてもう一台は、白いオフロードタイプ。

あれ、確か恭文のバイクだ。・・・・・・隊舎崩壊で壊されたって聞いてたのに。





あ、もしかしてシャーリーさん達が直したのかな。それで、必要になるかもと思って持ってきた。










「スバル・・・・・・あぁもう、マジで良かったし」



そう安堵した表情で私に声をかけるのは・・・・・・あぁ、本当によかった。姿見るまで、ちょっと安心出来なかった。



「・・・・・・ティア。あの・・・・・・えっと、頑張ろうね?」

「アンタ、いきなりその言葉はおかしくない?
なんでそんな生暖かい感じで応援されなきゃいけないのよ」



それはね、ティアの発言が色んな所に広まってるからだよ? 絶対に口には出来ないけど。



「とにかく、各地のガジェットが止まってるって」

「うん、聞いてる。ゆりかごの上昇速度も激減してるらしいし、きっとなのはさん達が」

「だが、色々とマズい事になってるらしい」



ヘリの影からライフルを持って出てきたのは、ヴァイス陸曹。

ティアはヴァイス陸曹と顔を見合わせて、頷き合う。



「それでなのはさんと内部に乗り込んだ恭文やフェイトさん、八神部隊長達とも連絡が付かなくなってるらしいの」

「えぇっ!? あ、あの・・・・・・それって凄くマズいんじゃっ!!」

「さすがにこれはあのベルトだけじゃどうにもならないでしょ。そういうわけだから、スバル」

「・・・・・・私達で、助けに行くの?」



ティアは私の言葉に頷いた。・・・・・・屋内での救助活動は、私達陸戦魔導師の得意分野とも言える。

というか、ティアとコンビでそういう現場は沢山踏んでる。だから、やれる。



「つーわけで、俺がヘリでゆりかごまで運んでやる。お前ら、やれるな?」

「「はいっ!!」」










私達はヴァイス陸曹の操縦するヘリに乗り込んで、ゆりかごに向かうことになった。





その間にも、アースラの方でなのはさん達への連絡は続けられるけど・・・・・・さっぱり。





急がないと。本当に急がないと・・・・・・大事なものが、全部壊れちゃう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪姉御、金剛から連絡だ。ゆりかごの進行速度が低下。問題なく本局の艦隊で撃墜出来るってよ≫

「あ、そうなの? ・・・・・・なるほど。やっさんとフェイトちゃんがやってくれたわけか」



現在、スカリエッティのアジトの外。いやぁ、私達みんな無事にお天道様にまた出会えたよ。

シャナとセインは、局と教会騎士団に保護された。それで輸送される途中。



「でも良かったよ。ギンガちゃんとシャッハが事情説明してくれて」

≪だな。おかげでどっちも思いっ切り縛られてる感じじゃなかったし・・・・・・で、姉御どうする?≫

「当然、ゆりかごをライジングパニッシャーで撃墜して」

≪それ、マジでやるのかよっ!!≫



いや、さすがに冗談だって。普通にもう艦隊の砲撃でなんとかなるんだったら、私が出張る必要もないでしょ。

・・・・・・青い空を見ながら、ちょっと残念に思う。私、Remix出来てないなと。さっぱりだなと。



『ヒロ、今いいか?』



なんて考えていると、私の左横に通信用の空間モニターが展開。

そこに映っているのは、薄暗い場所にいる私の相棒。



「・・・・・・サリ、どうしたのよ。勝利の余韻に浸ってるとこだったのに」

『悪い、余韻に浸ってる場合じゃなくなった。お前にもう一働きして欲しいんだよ
・・・・・・やっさんとフェイトちゃんと高町教導官達、ゆりかごから出られないかも知れない』

「はぁっ!?」



で、事情を聞いた。ゆりかごが撃墜可能になった事から、内部でのゴタゴタに決着がついたのは間違いない。

ただ、AMFで魔力リンクを完全キャンセルされていて、内部で魔導師がほとんど行動不可能になってるらしい。



『内部の六課メンバーとは、全く連絡が取れない。
その上、残ってた艦載機・・・・・・ようするにガジェットや自動防衛システムがフル稼働とか』

「うわ、何その無茶振り。・・・・・・とにかく、話は分かった。だから私なんだね?」

『あぁ。他はまだ稼働しているガジェットの相手とかで、手が回らないらしい。
負傷者も多いしな。悪いが六課所有のヘリと合流して』

「了解。やっさん達をパっと助けてくるよ」



え、私ら引退組だからだめ? 何言ってるのさ。もうそんなの言っても説得力無くなってるし。



≪でもよ、サリ。AMFなら空飛んだりとかもダメなんだぜ? どうすんだよ≫

『大丈夫だ。そのヘリにはデンバードを搭載してもらってる。・・・・・・やれるだろ?』

「もちろん」










デンバードの起動キーは、ライダーパス。そして、そのパスは二つある。

一つは、やっさんが持っている。そしてもう一つは、私。

DEN-Oジャケット用のパスに、その機能を持たせてるのよ。だから、私ならデンバードが使える。





こうして教会騎士の連中にゆりかご付近まで転送魔法で跳ばしてもらってから、始まる事になる。





そう、私の・・・・・・待ちに待ったRemixがっ! さぁ、気合い入れていくぞー!!




















魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第40話 『祭りの終わり。日常の再開』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・さて、現在の状況を整理しようか。まず、魔法は全く使えない。

だって、艦内全域で魔力リンクを完全キャンセルされたから。

さすがにバリアジャケット解除で裸ってことはないけど、それでもまずい。





そして、もっとマズい事がある。・・・・・・僕達、閉じ込められました。





艦内修復が働いて、なのはとヴィヴィオが散々暴れた結果出来た穴やらクレーターは一瞬で修復。










「・・・・・・おのれのせいじゃボケがっ!!」



はやてが下から背負って連れてきたバカ女を罵る。

くそ、コイツがやたらと深いとこに居たせいで、救出に時間かかったし。



「聴こえてへんよ。もう茫然自失状態で、意識手放しとるもん。・・・・・・で、どないする?」

「とりあえず、通信環境はさっぱりです。魔法もアウトですし・・・・・・うぅ、リイン達完全に無力です」

「フェイトちゃん、恭文もベルトは」



はやては言いかけて、気づく。僕の腰元にある穴の開いたベルトに。



「・・・・・・ごめんなさい。ヴィヴィオが壊しちゃったんです」

「なるほどなぁ。なら、さすがにこれをフェイトちゃん一人で壊すんは」

「いや、方法はあるよ」



僕は、フェイトの方を見る。フェイトは・・・・・・頷いてくれる。そして、背中を押してくれる。

だから、前を向いていられる。こんな状況でも、僕は不敵に笑える。



「今までのアレコレで、大体分かった。僕達はきっと今心が一つになってないんだ。
だからリインフォース・ライナーになれない。つまり、心を一つにすればリインフォース・ライナーになれる」



・・・・・・あれ、みんながズッコケた。おかしいなぁ、僕は変なこと言ってないのに。

というか、フェイトも泣き出さないでよ。なんか僕が悪いみたいな空気出来ちゃうじゃないのさ。



「お前、まだ諦めてなかったのかっ!? 普通に前回から今回までの間に散々試しただろうがっ!!」

「お兄様、もう無理ですよ。ご決断を。というより、私とのキャラなりに出番をください」

「嫌だっ! 絶対もう一度アレになるんだー!! だってかっこいいんだよっ!? もっと暴れたいー!!」



なんて叫びながらも、頭は高速回転でどうすれば心を一つに出来るか計算中。そして、答えが出た。



「よし、コーヒーだ。みんな、すぐに美味しいコーヒーを用意して。
それを僕とヒカリとシオンで飲めば、心が一つになる」



電王でも、クライマックスフォームになるために、最初の時はコーヒーを飲んでた。

リインフォース・ライナーは、言うなればキャラなりのてんこ盛り。てんこなりだ。つまり、コーヒーが必要なのよ。



「あぁ、恭文君が壊れてるっ! この状況でコーヒーとか言い出してるしっ!!
フェイトちゃん、恭文君どうしちゃったのっ!? いくらなんでも今日は何時にも増しておかしいよっ!!」

「なのは、これは仕方ないのっ! 本当に仕方の無い事で・・・・・・あぁ、ヤスフミお願いだから落ち着いてー!!」



失礼な、僕は落ち着いているというのに。だからフェイトも泣かないでよ。

完全に僕が空気読めてないみたいな状態になるしさ。



「二人とも、今この子は色々あり過ぎて、ちょお現実が見えなくなってるんよ。ソッとしといてあげよ?」

「いいからコーヒー出してっ! そうすれば僕達は助かるんだよっ!! 未来に向かってダッシュ出来るんだよっ!?」

「やかましいわボケがっ! この状況で誰がコーヒー持っとるとっ!? 持ってるわけがないやろっ!!」

「そうですよ、恭文さん落ち着いて・・・・・・あ、ちょっと待ってくださいです」



リインは言いながら、ジャケットをまさぐって・・・・・・あるものを取り出した。



「あったです。コーヒーはなかったですけど、酢昆布が」

「なんでアンタも酢昆布持っとるんやっ!!」

「本局でメンテしてる時に、マリーさんからおやつにもらったの、すっかり忘れてたです。というわけで」



僕はリインから酢昆布を受け取る。なお、包装されているのでそれを外して一枚取り出す。

それを三等分して、二つをシオンとヒカリに渡す。で、残り一つは僕。



「リイン、ありがと」

「はいです。でも恭文さん、これでダメだったら覚悟決めてくださいね?」

「・・・・・・いや、その場合は多分食べるタイミングに差が出ただけだと思うんだ。
本当に完璧になんのラグもなく食べる事によって、初めててんこなりは使えて」

「どこまで引っ張るつもりですかっ!? そしてウザいくらいに設定が細かいのですっ!!
とにかく、これが最後のチャンスなんですから覚悟決めるですよっ!!」



・・・・・・らしいので、覚悟を決める。これがダメだったら、女装なんだ。

うぅ、やっぱり辛いんだ。辛いから、これで成功してくれることを祈・・・・・・いや、成功させる。



「シオン、ヒカリ」



信じるのは自分。そして、自分の中から生まれた二人の『なりたい自分』。

一緒に戦って、側に居てくれる・・・・・・大切な新しいパートナー達。



「・・・・・・いや、絶対無理だろ。お前、これ食べて・・・・・・いやいやいやいや」

「というより、酢昆布を食べてキャラなり出来ても私とお姉様は嫌なんですけど」



信じろ。出来ると、やれると。信じて・・・・・・ただ貫く。

僕に出来る一歩は、まずそこから。そこから、自分も自分の世界も変えていけるから。



「えぇい、やかましいわっ! とりあえず食べてどうにかなるんだったらよくないっ!? ほら、いくよっ!!」



そして僕達は、この状況から脱出するために覚悟を決めて・・・・・・酢昆布を食べた。



「「「・・・・・・・・・・・・スッパッ!!」」」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、ヴァイス陸曹とストームレイダーの操縦するヘリでゆりかご近辺まで来た。

そして、私はまたヴァイス陸曹のバイクを借りる。後部座席には、スバル。

船の中は、高濃度のAMFのために全く魔法が使えないらしい。だから、これ。





バイクで隊長達を拾って、とっととここに帰還。それが私達のやるべきこと。










「いいかっ! さっきも説明したが船の中は高濃度のAMFで充満してるっ!!」

≪普通に魔法の使用は無理。頼みの綱はバイクと各々の素の技量ってわけだな≫

「そして、時間も手元の地図を見るに、相当ギリギリだ。止まってる暇はないね」

「はい。何が何でもなのはさん達を回収して、戻りましょう」





スバルもみんなも、すっごい気合い充分。でも、その前に私はツッコみたい事がある。

うん、それもかなりね。それは、いきなりヘリに乗り込んで、恭文のバイクに跨った女の人。

服装は聖王教会の騎士服だから、多分関係者なのは分かった。



ただ、それがいきなりヘリに乗り込んで恭文のバイクを動かした理由が全く分からない。





「あの、あなた誰ですかっ!? いきなり過ぎて、私全く分からないんですけどっ!!」

「・・・・・・あぁ、そう言えば本当に誰なんですかっ! あの、というかどうして恭文のバイク動かせるんですかっ!!」

「そしてアンタは気づいてなかったのっ!? もう分かりやすいでしょっ!!
『ここツッコんで?』って電波が届くくらいに分かりやすいじゃないのよっ!!」

「あー、そういやお前らは知らなかったな。なんでも坊主のダチで、ギンガ陸曹とも親しいらしい」



アイツの友達っ!? あぁ、だから行動が何か図々しいんだっ! 図々しく、普通にバイク跨ってるんだっ!!



≪ピンチヒッターってわけだな。てか、バイク一台じゃ全員回収は無理だろ。
何度も往復してる時間もねぇしよ。だから、俺と姉御で手伝いに来た≫

「それはまぁ・・・・・・確かに」



単純にヴィヴィオや残りの保護していない戦闘機人も加わると、六人とか七人でしょ?

うん、無理だわ。確かに手数は居る。そして、バイク乗れる人間も居る。だからってわけか。



「よろしくー」



そしてピースしなくていいですからっ! 誰もそんな自己アピール求めてませんよっ!?

あぁもう、こういうところまで似てるしっ! 普通にアイツの友達って納得出来るのはおかしいからっ!!



「あ、それとスバルちゃん」

「はい」

「実は私、ギンガちゃんとさっきまで居てさ。ちょっと預かってきたものがあるんだ」



言いながらあの人は、着ているローブの懐からあるものを出す。

それは紫色の六角形の宝石。というか、ギンガさんのデバイス。



「これ、ブリッツキャリバー!!」

「ギンガちゃん、事情を聞いて『自分は大丈夫だから、使って欲しい』・・・・・・だってさ。
使い方は大丈夫なんだよね? ギンガちゃんはそう言ってたから、詳しく聞いてないんだけど」

「・・・・・・はいっ! あの、ありがとうございますっ!!」



スバルは、あの人から差し出されたブリッツキャリバーをしっかりと両手で受け止める。それからお辞儀。

受け止めて、左手で握り締める。・・・・・・そうこうしている間に、勝負を始める時間が来た。



「つーわけで、俺がヘリをギリギリまで近づける。
お前らは姐さんと一緒に、ウィングロードで一気に乗り込めっ!!」

「「了解っ!!」」



そして、ヘリはヴァイス陸曹の言葉に合わせるように上昇していく。・・・・・・ハッチが開く。

ハッチが開くけど、ガジェット達が居て普通には近づけない。だから、ヴァイス陸曹はライフルを構える。



「で、俺が今から突破口を開くから、タイミング見計らえよっ!! ・・・・・・いくぜ、ストームレイダー」

≪了解≫





狙撃用ライフル・・・・・・ストームレイダーをヴァイス陸曹が膝立ちで構える。

それからカートリッジが3発ロード。それから銃口の先に魔力弾が生まれる。

それが真っ直ぐに飛んで、私達の前面に飛んでいたガジェットT型を撃墜。



真っ直ぐに胴体を撃ち抜いて、爆散させた。そして、次々に狙撃は行われていく。



的確で、素早くて、そして・・・・・・強い。どこまでも飛んでいく弾丸は、私達の前で力を示し続ける。





「・・・・・・俺はな、隊長達みたいな万能無敵の超一流のエースでもなければ、ストライカーでもねぇ。
ましてや、かのヘイハチ・トウゴウみたいなマスターになんて、絶対なれねぇ」





言いながらも、ヴァイス陸曹は狙撃を続ける。続けて、再びカートリッジを3発ロード。

ヴァイス陸曹はきっと、自分の魔力量が少ない分をカートリッジで補っている。

そのまま、マガジン型のカートリッジを入れ替える。入れ替えながらも視線はただ前へ。



撃ち貫くべき標的を見据え、決して揺らぐことなく前を見つめている。





「身内相手にバカなミスしちまって、クサッて逃げた事もある。・・・・・・マジで、情けねぇ男さ」



それからまた構え直して、周辺のガジェットT型をほんの10数秒で20機近く撃墜した。

そして、その銃口は真正面で出入口に陣取っていると思われる、V型に向く。



「それでもな・・・・・・そんな俺でもな」



ヴァイス陸曹は躊躇わずに弾丸を形成。そして、トリガーを引いた。



「お前らの道を切り開くくらいの事は、出来らぁなっ!!」

≪Variable Shoot≫



それは、AMFを突き抜ける膜状バリアにくるまれた弾丸。ヴァイス陸曹はそれを形成して放った。

放った弾丸は真っ直ぐにV型に飛んで、V型が発生させていたAMFを突き抜け、その胴体を撃ち抜いた。



「いけっ!!」



V型が、爆発する。そしてその向こうには・・・・・・ヴァイス陸曹が開いてくれた道があった。だからスバルが叫ぶ。



「ウィングロードッ!!」





生まれたのは、真っ直ぐに伸びる青い空への道。その上を、まず私が走る。

右手のアクセルを捻ると、バイクはそれにすぐに応えて加速してくれた。そして、次にあの人。

距離にして数百メートル。その距離を一気に走り抜けて、私達はゆりかごに突入した。



ヴァイス陸曹に感謝しつつ、それでも後ろは振り返らずに前へ進む。

私達が目指すのは、前。ヴァイス陸曹へのお礼は、みんなを救出してからだ。

いいや、それが出来なきゃ感謝の気持ちなんて伝わらない。だから、今は前へ。



私もスバルもあの人も、さっきのヴァイス陸曹と同じように・・・・・・ただ前を見据える。





「でも・・・・・・これやばいわね」

「そうだね。魔力が全然結合しない。でも、私は大丈夫」



言いながら、スバルは後部座席から跳ぶ。跳んで、床に着地。



「よっとっ!!」





瞳が翡翠色から金色になると、マッハキャリバーでそのまま加速。

・・・・・・スバルが戦闘機人モードって呼んでる状態。

この状態なら完全キャンセル状態でも、攻撃もマッハキャリバーによる走行も可能。



だから、私達なのよ。こういう状況、前の部隊での救助活動で散々やってたから。

でもスバル・・・・・・なんて言うか、マジで思うわ。この子、ホントにレスキュー向きだ。

助けるために全力で走れる心根。魔法無しだとしても、直進出来る力。うん、そうだ。



この子の力は、守るためにあるんだ。戦うためじゃなく、泣いている誰かを助けるためにある。



正直、ここは羨ましいかな。私じゃさすがにこうはいかないわ。





「あ、えっと・・・・・・あの、これは」



・・・・・・あ、しまった。あの人の前でやっちゃった。てゆうか、あの人がこっち見てるし。

とにかく、あの人はアイツのバイクで走りながら・・・・・・軽く私達に向かって笑いかけた。



「あー、大丈夫だよ。私もそうだし、やっさんもアンタの身体の事は知ってる」

≪お前のねーちゃんから、諸事情で俺ら全員聞いてたんだよ。だから、気にするな≫

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」



そ、そうか。ギンガさんと友達だから、もしかしたら私みたいに教えてもらったのかも。

それならまぁ、納得。でもアイツ、マジで話さないわね。スバルが軽く混乱してるし。



「で、でも恭文は何にも・・・・・・あの、どういう事ですかっ!?」

「スバル、その話は後っ! 今は目の前よっ!! ・・・・・・ほら、ぞろぞろ出てきたし」



ガジェットのT型に、四角いキューブは自動防衛システムの類かしら。

それが、私達の前面を埋め尽くすように立ちはだかる。だから、私は少し下がる。



「分かってるっ!!」



スバルのナックルのタービンが、激しく回転を始める。そして、あの人が腰の二振りの剣を抜く。



「・・・・・・って、あのっ! 両手離してますけどっ!!」

≪大丈夫だ。俺のコントロールで自動運転に切り替えた。姉御、思いっ切りやっていーぜ≫



な、何気にこのバイク高性能なのっ!? 自動運転機能があるなんて、聞いてないしっ!!



「了解。・・・・・・いや、ジン坊にレオ−のデータもらってて良かったね」

≪だな≫



とにかく、スバルが一番手になる。右手首のタービンを中心に、渦が巻く。



「リボルバァァァァァァァァァァァッ!!」



高速で走行しつつ、迎撃のための射撃をジグザグ走行で避ける。避けながら、右拳を突き出した。



「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」



放たれた不可視の渦を巻く衝撃波が、迎撃システムやガジェットを粉砕して行く。

だけど、まだ数は残っている。だから、あの人が今度は前に出る。



「・・・・・・邪魔だよっ!!」





速度を一気に上げて、あの集団をジグザグに駆け抜けながら二刀を振るう。

多分、アクセルとブレーキワークであの機動をこなしている。

かなり乱暴で急な機動なのに、あの人は体重移動もしつつバランスを取って剣を振るう。



銀色の閃光が幾重も生まれて、あの人の通り過ぎた後に爆発が10数発起こる。



それはもちろん、真っ二つにされたガジェットや自動防衛システム。





≪姉御、普通にスラッグフォルム使ってよかったんじゃないのか?≫

「いや、ここは剣でしょ剣」



あ、あははは・・・・・・私、今の全く見切れなかったんですけど。

え、何気に無茶苦茶強い人なの? そっか、うん・・・・・・なんか分かってた。



「す、すごいねティア」

「そうね。でも、感心してばかりもいられないわよ」

「分かってる」





ここは本来、救助活動の専門家である私達の独壇場。

初対面の人に勝手されて『はいそうですか』じゃ納得出来ない。

だから、アクセルを更に開けて私とスバルは加速する。



加速して、前へ出たあの人に追いついて並走体勢に戻す。





「絶対・・・・・・絶対助けようねっ!!」

「えぇ。そして、それは可能よ。私とアンタなら」

「・・・・・・うんっ!!」










てーか、マジでこんなところでお亡くなりなんて、許さないんだから。





私、まだフェイトさんとガチに勝負してないのよ? そして、アンタに気持ちぶつけてない。





だから・・・・・・絶対に助けるっ! 助けて、私の勝負に決着をしっかりとつけてやるんだからっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「「「・・・・・・・・・・・・スッパッ!!」」」



僕達三人の口の中に酸っぱさが広がった瞬間、別のものも広がった。

それは、さっきと同じ翠と黒の渦巻く光。それが、僕達の身体を包み込む。



≪あ、出来ましたね≫



というわけで・・・・・・当然のように僕はその光の中で鍵を開けた。

強烈な酸っぱさを感じながらも、自分を・・・・・・二人を信じて、自分のこころの鍵を。



「僕とシオンとヒカリのこころ・・・・・・!」



『解錠』アンロック



「アンロックッ!!」



螺旋を描いている翠と黒の光の中で、僕の姿が変わる。変わりながらも僕は、右手を上げる。

右手を上げて、先ほどと同じように指を鳴らしてみる。きっとまた面白い事になると信じて。



≪The song today is ”With The Will”≫





鳴り響くのは、僕の予想通りに音楽。というか、さっきよりも響いている感じがする。

黒いインナーに翠色のロングパンツに、編み上げのブーツ。

その上から、白い陣羽織を羽織る。それの各所に、赤と青と金色と紫のラインが通る。



陣羽織の背中には、青色の刺繍で時計をモチーフにしていると思われるエンブレムが刻まれる。

そして両手には、ゼロフォームの時と同様にジガンを装備。

ただし、左右で色が違っている。右が翠で左が黒。翠はシオンの色で、左はヒカリの色。



右の手の甲には銀色の十字、左の手の甲には蒼いスターライトを象った装飾がある。

陣羽織の上から装着するのは、青いDEN-Oベルト。腰には、アルトが変身したデンガッシャー。

それぞれに青い宝石が装着されていて、元のデンガッシャーとはデザインが少し異なる。





【【「・・・・・・キャラなり」】】



螺旋を描く二色が弾けて、再び姿を表すのは駆け抜けるライナー。

過去も、今も、未来も・・・・・・何も諦めず、全てを持って駆け抜ける力溢れる姿。



【【リインフォース・ライナー!!】】



僕は、思わず右手を強く握る。・・・・・・やった。僕は勝った。勝利者になった。



【いやいや、ありえないだろっ!!】

【・・・・・・カオスですわ】

「ふふ、だから言ったでしょ? 心を一つにすれば出来るって」



あぁ、みんなが驚いた目で僕を・・・・・・僕達を見ている。きっと今僕は、次元世界の勝利者なんだろう。

とりあえず、いつもの調子で軽く浮き上がってみる。・・・・・・お、ちゃんと飛べる飛べる。



【いや、一つって言うか・・・・・・なぁ?】

【さすがはお兄様です。お兄様ならきっと出来ると信じていました】



前後左右に浮きながらも軽く移動していると、中からヒカリとシオンの声が聞こえる。



【さすがはお兄様です。私、お兄様ならきっと出来ると信じていました】

【ちょっと待てっ!? お前、普通に『無理』とか言いまくってただろっ! そして二回も言うなっ!!】

【気のせいです】

【そんなわけがあるかっ! 普通に姉を裏切るんじゃないっ!!】



とにかく、遊んでる時間はない。宙に浮きつつも僕はガッシャーを組み立てる。



「ちょ、ちょお待とうやっ! アンタそれなんやっ!? 何いきなり不可思議パワーで変身しとるんよっ!!」

「そしてこれ、デジモンフロンティアだよねっ!? だからワケ分からないよー!!」

「なのはママ、落ち着いてっ!? ほら、酢昆布食べてっ!!」

「ですですっ! この間の実験ではそんなの・・・・・・えぇっ!?」



両手で、両腰のパーツを組み立てる。えっと、これをこうして・・・・・・で、こっちをくっつけてと。

うむぅ、電王見ていてやっぱよかったなぁ。普通に使いこなせるから嬉しい。



≪説明している時間は無いので、後にしてください。・・・・・・どの形態にするつもりですか?≫

「そうだよ。ヤスフミ、慎重にやらないとまた一回攻撃しただけで変身解除になるよ?」

「分かってる。だから、ソードモードは使わない」



もしかしたら、アレを使ったために解除しちゃったのかも知れないもの。だから、それ以外のモードだ。

そうして組み立てたのは・・・・・・アックス形態。僕の右手には、一振りの斧が生まれた。なお、刃の色は蒼。



「フルチャージでの必殺攻撃も危ないな」



地面に降り立ち、腰を低く構える。そして、力を溜め・・・・・・集中する。

右手を引きつつ見定め、狙うはただ一点。ありったけの力でこの壁をぶった斬る。



【使った途端に変身が解除される危険もあるということか。だが】

【やれます。・・・・・・壊す事は、開く事。閉ざされた未来を、可能性を開く事。
それを成すのは、決して諦めない想い。そして、お兄様はそれをずっと選んで来ました】



右手のジガンが・・・・・・シオンの色が淡く輝く。



【そんなお兄様に壊せないものなんて、あるはずがありません。だからお兄様、壊してください】

「うん、選んできたよ」



言い訳してもいい。『魔導師だから』で止まってもいい。そう言われ続けてきた。

だけど、その言葉に首を振った。そしてその理由が・・・・・・今シオンが言った通りの事なんだ。



「だから、壊せる。こんな壁」



自分を捨てて、諦めて、嘘をついて得られる未来なんて・・・・・・僕はいらない。そんなの、いらない。

そんな事で生きてても楽しくなんてない。僕が欲しい未来は・・・・・・そこには、ない。



「壊せないわけがない」



僕は、そのまま踏み込んだ。踏み込み、走り抜けて壁との距離を零にする。

そのまま腕を振り上げ・・・・・・唐竹に蒼く輝くアックスの刃を叩き込んだ。



「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



斬撃に耐えたのはほんの一瞬。閃光が壁を斬り裂き、粉々に砕いた。

僕の目の前には、道が開けてる。帰るべき場所も、しっかり見えた。



「・・・・・・う、嘘やろ。あの壁を魔法もなんもなしで」

【不思議な事は、何もありません。これはお兄様の可能性の力。
積み重ねた『壊す』という選択は、軽くはないということです】



僕達の行く手を閉ざしていた壁は見事に砕け、その穴が僕やフェイト、なのは達に希望を伝えてくれる。

まだ、諦めるなと。この身を動かして・・・・・・抗い尽くせと。だからフェイト達は顔を見合わせる。見合わせて、頷く。



「なるほどなぁ」



今更だけど気づいた。この状態の時だと、みんな普通にシオン達の声が聞こえるらしい。

なのはもはやても、しゅごキャラ見えてないのに。なんていうか、不思議だ。



「なら・・・・・・なのはちゃん、フェイトちゃん」

「うん、行こう。それでみんなで・・・・・・帰る」

「うん」










僕達は、王の間から脱出して走り出した。全速力で・・・・・・ありったけで。





まだ諦めない。まだ僕達は、ここに居て・・・・・・一歩を踏み出せるんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



突入して10数分。もう1時間は切った。時間・・・・・・やばい、ギリギリかも。

さすがに大気圏離脱しちゃったら、脱出なんて出来ないもの。

だから、マジでとんぼ返りしないとマズい。だから、最高速でぶっ飛ばしてる。





幸いなことに、優秀な前衛が二人居る。あの人・・・・・・ヒロリスさん、無茶苦茶強いし。










「てゆうか、さっきから流れてるこの音楽は何っ!?」



どこからともなく、音楽かかってるのよっ! 何なのこれっ!? 普通にゆりかごの機能とかじゃないわよねっ!!



≪あぁ、和田光司の『With The Will』だな。・・・・・・まさか、姉御≫

「だね。この状況でこんなバカな事する奴は、私らの知る限り一人しかいない」

「ヒロリスさんもなんでそこ納得っ!? 普通に疑問持っていいとこですからっ!!」










そう言いながらも、スバルだって負けてない。負けてないから、私達は止まらずに前に進める。





そして、音楽も止まらない。てゆうか、マジでこれは誰の仕業よ。マジで殴ってやりたいんだけど。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヤスフミは、ただ直進する。なお、私はなのは達の護衛。本当は一緒に前に出たいけど、不意打ちされたら怖い。

私はともかく、はやてもリインも魔法が使えないし、なのはに至っては重傷だもの。

どこからともなく鳴り響く音楽の中、ヤスフミは3メートル程の高さを飛ぶ。





飛びながら、両手の武器を振るう。ただ、何時もより動きがゆったり目というか、優雅な振る舞いに見えるのはどうして?










「・・・・・・降臨、満を持して」

≪そしてそこをこだわりますか≫

【お前、こだわり方を間違えてるぞ】

【さすがはお兄様です。この状況でも遊び心を忘れないなんて】





その対象は、私達の目の前に居るガジェットや青いキューブ型の自動防衛システム。

それをヤスフミは斬り払う。なお、また別の形状に武器は組み換えられている。

小さな斧とブーメランのようなものになった。えっと、ハンドアックスにブーメランモードだっけ。



加速しながら、両手を動かし袈裟に振るい続ける。AMFの中でも、威力は全く変わらない。



その度に、蒼い閃光が生まれてガジェット達が爆発していく。





「はぁっ! ・・・・・・うぉりゃっ!!」





袈裟に、右薙に、駆け抜ける。駆け抜けつつ上に向かって、両手の武器を放り投げた。

それらは空中で4個パーツに変わって、また別の形状を取る。その形は、黒い銃。

それをヤスフミは空中で手に取ると、クルリと回転しながら銃口を前に向けた。



その対象は、私達の前に再び姿を表していたガジェット達。なお、数は30近くある。





「あぁもう、普通に数多過ぎですっ!!」

「艦載機総出って言ってたしね。これくらいはあるよ」



リインの言葉に返している間に、ヤスフミは不敵に笑いながら引き金を引いていた。



「お前達、倒すけどいいよね?」



引き金を引くと、まるでマシンガンのように弾丸が乱射され、10数機が撃ち抜かれた。



「答えは」



それからまた時計回りに踊るように回転して、迎撃用に放たれたガジェットのミサイルも含めて、全ての敵を撃ち抜く。

ミサイルは弾丸を真正面から食らい爆発。そして、ガジェットや迎撃システムの残りも、同じように撃ち抜かれ砕けた。



「聞いてないっ!!」










でも・・・・・・マズい。普通にヤスフミだけじゃあこの全員を抱えて飛んだりなんて出来ない。

転送魔法系統の能力は、今の状態もそうだしシオンとヒカリとの単独キャラなりでも使えない。

なのはは小走りするのがやっとだし・・・・・・私達、間違いなく機動性が足りてないよ。





このままじゃ、全員脱出は不可能だ。これは、情けないけど救助人員に期待するしかないのかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あれ?」



全速力でただ前へ。前へ走って・・・・・・私は気づいた。いや、スバルとヒロリスさんもか。



「前方に・・・・・・何か、居るわね」





三人で少し進んで、ようやくその正体が分かった。それは巨大な金色の死神。

体長は4メートル程で・・・・・・な、なにアレっ!!

右肩に巨大なロケットランチャーを担いでるし、アレはやばくないっ!?



てゆうか、何よアレっ! あんなの今までは影も形も出てなかったのにっ!!





「おいおい、ここもかいっ! さすがにもうマンネリでしょうがっ!!」



両足・・・・・・いや、足じゃなくてあれはキャタピラだ。装備と形状を見るに、拠点防衛用。

機動性や移動能力で圧すのではなく、しっかり腰を落ち着けて射程距離と火力で圧すタイプだ。



≪くそ、この時間のねぇ時にっ! その上防衛用に射撃兵器装備かよっ!!≫

「ヒロリスさん、アレが何か知ってるんですかっ!?」



私がバイクで追いかけるように走りながら聞くと、返事はすぐに返って来た。



「スカリエッティのアジトにも出てきた、自動戦闘兵器のバージョン違いだよっ! なお、戦闘能力は見かけ通りっ!!」



くそ、艦載機が総出とか言ってたから、普通に船に積んでたのも出てきてたのか。

だったら・・・・・・やるしかない。てゆうか、人任せなのが辛い。



「ティアナちゃん、速度落として警戒しつつ下がってっ! ・・・・・・アメイジアっ!!」

≪Slug From≫



ヒロリスさんの両手の剣が変化する。その形態は、銃。銀色のリボルバーに、金色のトリガーガード。

そして、そのグリップエンドには紫色の宝石。・・・・・・って、AMFでデバイスの機能使ってるっ!?



≪姉御、威力は≫



走りながらも、ヒロリスさんがリボルバーの弾倉を展開。そこに、一発の弾丸を込める。

それからそれを銃身に納めると、両手で真正面を狙って構えた。



「分かってるっ! 完全キャンセル下だから、通常より下なんでしょっ!? だから、アイツのドテっ腹は撃ち抜けないっ!!」

≪そうだっ! だから、姉御は武装を潰せっ!! それでブルーガールは≫



デバイスの銃身に、白い火花が走る。あの人は走りながらも、あのランチャーを狙う。

・・・・・・ヤバい。なんかこっちに向かって狙い定めてるんですけど。



「本体を狙うんだねっ!?」

≪正解だっ! 一発で決めろよっ!!≫

「了解っ!!」



そして、ヒロリスさんはゆっくりと・・・・・・その引き金を引いた。



「ライジング・パニッシャー! ・・・・・・いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



放たれたのは、超高速の弾丸。音と衝撃を撒き散らしながら、それは真っ直ぐにロケットランチャーに向かって飛んだ。

砲口の中に入ったかと思うと、そこから大爆発を起こす。それでも、あの巨体はまだ倒れない。



≪行けっ!!≫

「うんっ!!」



スバルは左手にブリッツキャリバーを持って、前進する。そして、左手を上に上げる。



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」



加速しながら、左手に装備されるのは白と紫色のリボルバーナックル。それは、ギンガさんのもの。

でも、すぐにスバルの右のナックルと同じ黒と青色に染まる。スバルの使用に合わせて、カラーが変わった。



「あとは・・・・・・やっさんっ! そっち居るんでしょっ!? 挟み撃ちで潰せっ!!」

「・・・・・・え?」

「・・・・・・分かってますよっ!!」

≪Full Charge≫











その瞬間、アイツの声がした。そして、死神の背中に巨大な青色のエネルギー状の甲羅が生まれる。





防御のためじゃない。まるで、その甲羅に身体を張り付けられて、戒められてるように死神は動きを止めた。





だから、スバルも最大速度で接近する。てゆうか、あの・・・・・・・あれ、なに?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ボロボロのなのはを引きずりつつも必死で走る。走って見えたのは、金色の死神。





あ、アレ・・・・・・アジトの入り口で居た奴じゃないのさっ! くそ、しかもなんかロケットランチャー持ってるしっ!!










「・・・・・・くそ、万事休すか?」



だから僕達は、曲がり角で様子を見ながら対策を考えるのです。ここを抜けなきゃ、脱出出来ないし。



「あは、あははは・・・・・・その通りよ。さぁ、死になさい。お前達みんな、ここで神と一緒に」



どうやら意識を取り戻したらしい。グダグダ煩いので、折れた足を思いっ切り蹴ってやった。

そしたら、あり得ないような叫び声をあげた。なんかすっごい痛そうだ。



「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そして、泡を吹いて失神した。・・・・・・全く、神経緩い奴。



「あの、うちの首に泡が付いてるんやけど。なんか、めっちゃヌルヌルしてるんやけど」

「慣れろ。てゆうか・・・・・・あぁもう、やるしかないんだよね」

≪そうですね。ですが、フェイトさん達を狙われたらおしまいです≫

「そうだね」



・・・・・・こうなったら、フルチャージ攻撃使うしかないか? 躊躇ってる余裕、無さそうだしさ。

だったら、ここは一気にガンモードで撃ち抜く。向こうは遠距離武器持ちだし、それが1番いい。



「ヤスフミ、私も行くよ。クリムゾンスマッシュならやれる」

「・・・・・・分かった。なら、二人でだね」

「うん」



僕とフェイトが気持ちを固めて飛び出そうとした瞬間、轟音と共に死神の持っていたロケットランチャーが爆発した。



『・・・・・・何事っ!?』

【・・・・・・これ、バイクの音ですね】



ホントだ。シオンの言うように、走行音が聴こえる。それで、どんどんこっちに近づいてる。



【それも複数台だ。恭文、もしや】

≪というか、近くにデンバードの反応が≫



・・・・・・僕は、それを聞いて瞬間的に飛び出していた。大体の事情が理解出来たから。



「ヤスフミっ!?」

「フェイトはここに居てっ!!」





この状況で、あんな長物爆発出来るだけの攻撃出来て、デンバード運転出来る人は、一人しか居ない。

そして、それは正解だった。死神の足元から、二つのバイクが見える。そして、三人の人物。

何故か両手でナックル装備してるスバルと、バイクに乗ってるティアとヒロさんだった。



僕は、ガンモードのガッシャーを右薙に振るう。ガッシャーのパーツが、火花を散らしながら分割。



「やっさんっ!!」



やっぱヒロさんの声だ。・・・・・・右手のガッシャーが、青い火花で繋がりながら一つの形を取る。

それは、ロッドモード。決して槍ではなくて竿。僕の足から肩くらいまでの長さの長物。



「そっち居るんでしょっ!? 挟み撃ちで潰せっ!!」



僕は左手で走りながらもパスを取出す。そして、ベルトにセタッチ。

死神は、まだ生きている。だから・・・・・・まだ攻撃が必要。



「分かってますよっ!!」

≪Full Charge≫



ベルトから青色の電気を象ったエネルギーが、竿の柄尻に伝わっていく。



「お前早速だけど・・・・・・僕にっ!」



そして、竿の穂先が強くその色で輝く。僕は、竿を逆手に持って投擲した。



「釣られてみるっ!?」



竿は死神の背中に突き刺さり、巨大なエネルギー状の甲羅になる。



「シオン、ヒカリ、行くよっ!!」



そうして、死神の動きを戒める。そのまま全速力で・・・・・・高く跳び上がった。



【はい】

【遠慮なくぶちかましてやれ】



僕は、右足を突き出しながら、死神に飛び込んだ。右足の先には、蒼い力ある光。

見ようによっては流星に見えるように、僕はただ・・・・・・目の前の脅威に向かって飛び込む。



【【「ビート・エクストリームッ!!」】】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



恭文の声が聴こえた。聴こえたから私は、ウィングロードに乗って高く跳び上がった。

左腕の、ギン姉のナックルのカートリッジを3発ロード。そうして、まずは一発。

撃ち込むのは、リボルバーシュート。・・・・・・左手のタービンが高速回転を始めた。




私が狙うのは、飛び込んでくる敵意を狙うあの顔。青い瞳が輝いて、熱光線を撃とうとしている。










「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



放たれた衝撃波は、頭をひねり潰すように爆砕させた。死神は、正体不明の力に拘束されながらももがく。

だから私は引いていた右拳のタービンを回転させて、カートリッジもまた6発ロード。



「行くよ、相棒っ!!」

≪はい≫



飛び込む私の足元に生まれるのは、青い翼。・・・・・・魔力ギリギリだけど、一瞬だけだったらやれる。



≪Gear Exerion≫



そして、左手で魔力スフィアを形成。ありったけで、あの巨体を粉砕出来るだけの力を一瞬の内に込める。



「一撃・・・・・・必倒っ!!」



青い羽根を撒き散らしながら、私は怪物の胸元に向かって拳と零距離での砲撃を叩き込んだ。



「ディバインッ! バスタァァァァァァァァァァァッ!!」





死神の身体が後ろに仰け反る。そして、後ろからは恭文の追撃。

高く跳んで、右足で飛び込みながらの蹴りを叩き込んだ。私は、すぐにウィングロードを一部形成。

それを足場に大きく後方に跳んだ。一瞬だけの出力強化のためのエクセリオンは、もう停止してる。



恭文の蹴りが、死神の背中に命中した。瞬間、甲羅を形成していたエネルギーが消えた。



いや、きっと恭文の足元に集束して、死神を穿つための力に変わった。





【【「ビート・エクストリームッ!!」】】





次の瞬間には轟音を立てながら、巨人は前のめりに倒れた。

キャタピラだから、安定性はバッチリのはずなのに・・・・・・それでも。

そしてその胴体は、同時に前後からの衝撃に耐えきれずに潰れていた。



だから私と恭文が着地したと同時に、死神は爆発した。その場で炎を上げて・・・・・・と、止まってくれた。





「・・・・・・てゆうか、もしかして助ける必要なかったかな」

「いや、かなり助かったよ。・・・・・・スバル、ありがと」



炎と瓦礫の向こうから聴こえてきたのは、私の大事な友達の声。

違うけど、それでも繋がりたいと思える・・・・・・大事で、大好きな男の子。



「・・・・・・うん。あ、それでなのはさん達は? 八神部隊長やフェイトさんに、ヴィヴィオも」

「スバルもティアも、聴こえるっ!? 私もなのはも、みんな無事だよっ! というか、ありがとっ!!」

「ごめんねー! ホントに助かっちゃったー!!」





聴こえてきた声は、なのはさんとフェイトさん。

その声に、私はホッと胸を撫で下ろす。・・・・・・あれ、なんか変だな。

恭文、この状況じゃあ魔法使えないはずだよね?



なのに、なんであんな強力で派手な攻撃・・・・・・あれ?

まぁ、いいか。とにかく時間もないし、すぐに脱出だよ。

私は、後ろで停止していたティアとヒロリスさんを見る。二人も強く頷いてくれた。





「それじゃあ、とっととみんな助け出して、脱出するわよ。スバル、もうちょっと頑張ってね」

「うん」





その後、炎の向こうからみんなを救出。というか、半分恭文が手伝ってくれた。

完全キャンセル状態なのに空が飛べてたり、普段のバリアジャケットと違う姿。

まぁそんな感じだったので、ティアとヒロリスさんが驚いてたけど、ここはいい。



だって、恭文の中からシオンともう一人・・・・・・あのスターライトのたまごの子かな。

その子の声が聴こえたから、私は納得出来たの。きっと、あの子達が力を貸してくれたおかげだと思う。

ヒロリスさんはなのはさんとヴィヴィオを乗せて、ティアは八神部隊長とナンバーズのあの子。



恭文がフェイトさんを後ろから抱えて、飛行。私が先陣を務めて外を目指す。





「・・・・・・キャラなり、ですか?」

「それが、今の恭文君がしてる変身? え、でも女装形態のはずじゃ」



ティアとヒロリスさんに、移動しながら恭文とフェイトさんが事情説明。

というか、八神部隊長やなのはさんにヴィヴィオも知らなかったらしくて、すごく驚いてた。



「うん。ヤスフミにシオン達が力を貸してくれて、使える能力。ヤスフミの中の、『なりたい自分』の形。
今のリインフォース・ライナーなら、女装はしなくていいみたいで、これなんだ」

≪それの能力のおかげで、ボーイは空も飛べるしこの状況でも戦えたと。・・・・・・お前ら、すげーな≫

【私達が凄いのではありません。これはお兄様の中にある、未来への可能性の力です】

【ヴィヴィオを元に戻したのも、壁を壊したのも、あの死神をスバルと一緒に倒したのも、全部恭文の力だ。
恭文の中にある、これから生まれる力。私達はただ、それを引き出す手伝いをしているに過ぎない】



どうも、そういう事らしい。でも、そんな事出来たんだ。・・・・・・しゅごキャラって、凄いかも。

可愛いだけじゃないんだよね。うー、やっぱり羨ましいなぁ。キャラなりは別にいいけど、シオンは可愛いしさー。



「・・・・・・やっぱ納得出来ないわ。てか、チートよチート。恭文、アンタマジで反省しなさい。
逆を言えば、未来のアンタはあんなの魔法無しでも出来るって事でしょ? ありえないわよ」

「そうだよ。やっさん、アンタ何時からそんな最強キャラになっちゃったのさ。おかしいでしょ」

≪そうだぜボーイ。ボーイはヘタレでアホで笑えない程不幸なのが売りだろ?
もうちょっとキャラクター性考えろって。ほら、そんな事だと人気投票で主役なのに1位取れないぜ?≫

「やかましいわボケっ! てーか、普通に苦労したんだよっ!?
ここに来るまで、すっごい苦労したんだからっ! なんでそれで文句言われなくちゃいけないのさっ!!」

「あぁ、ヤスフミ抑えて抑えてっ! とりあえず前に集中ー!!」










とにもかくにも、私達はいつもの調子に戻って・・・・・・ようやく戻ってきた。

青く輝く、眩い空の下に。私はウィングロードを発生させて、その上を走る。

恭文は、フェイトさんを抱えながら空を飛ぶ。さっきまでと変わらずに、どこか楽しげに。





ふと、中に居るシオンやもう一人の子の笑顔が・・・・・・目に浮かんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、ヴァイスさんの操縦するヘリに僕達は駆け込んだ。駆け込んで、ようやく腰を落ち着けた。





そこには、シャマルさんとザフィーラさんと師匠も居た。てゆうか、普通にボロボロだった。










「・・・・・・ボロボロじゃないですか」

「まぁな。でも、勝ったぞ。で、お前はまた変わった格好してたな」



右にはフェイト。そして、左には師匠。三人でヘリの床に座りながら、ようやく息を吐く。



「シオン達が、力を貸してくれたんです。何も諦めずに・・・・・・手を伸ばし続けろって。そうしたら、変身出来てました」



現在、リインフォース・ライナーの変身は解除して、元のバリアジャケットに戻ってる。

解除したくなかったけど、さすがにずっとはダメなので泣きながら解除した。



「そっか。やっぱ残念だな。あたしには見えてねぇから、礼も言えない。なぁ、近くに居るんだろ?」

「はい。師匠の前であっかんべーしてます」

「・・・・・・くそ、やっぱ見るようになりてぇ。とりあえず、見えれば殴れるしよ」



なお、他の席は全員に奪われていた。何気に大人数だしなぁ。

そして師匠、やめてください。師匠の力で殴られたら、死にますから。



『失礼します』



ヘリの中にモニターが立ち上がる。それは、シャーリー。

どこか嬉しそうな顔をする理由、僕達はすぐに分かった。



『ゆりかご、たった今本局の艦隊が撃墜っ! やりましたっ!! 任務完了ですっ! やったー!!』



その声に、ヘリの中で立っていたリインとはやて、シャマルさんとザフィーラさんが、安堵の息を吐く。

それは僕と師匠も同じ。・・・・・・あぁ、やっと終わったな。でも、一つ言っておこうっと。



「シャーリー、うるさい。ちょっと静かにして」

『なぎ君、いきなりなにっ!? せっかく全部終わったって言うのにっ!!』

「シャーリーが空気読めてないからだよ。・・・・・・ちょっと目を凝らしてこっちの方見てみて」



それだけ言うと、シャーリーは分かったらしい。

一度画面を覗き込んでいるのか、顔が大きくなる。なってから顔を離して、苦笑する。



『ごめん。確かに私が空気読んでなかったね。ね、こっちからは見えないんだけど、フェイトさんも同じく?』

「うん」



なのはとヴィヴィオ、スバルとティアにヒロさんは、ヘリの座席にもたれながらぐっすり。

相当疲れたらしい。で、それはフェイトも同じ。僕にもたれかかりながら、気持ちよく寝息を立ててる。



「・・・・・・てか、師匠までかい」



いつの間にか、師匠も僕にもたれかかりながら寝ていた。あー、また気持ちよさそうにしてるなぁ。



「お兄様、モテモテですね」

「まぁ、寝かせておいてあげよう。激戦続きだったからな。というか、お前は大丈夫か?」

「・・・・・・彼女と師匠が隣で寝てるんだもの。安心して寝ていられるように、もうちょっと気張るよ」

「そうか」



確かに疲れはあるけど、僕は男の子だもの。だから、もうちょっと頑張る。

頑張って・・・・・・その後で、フェイトに添い寝でもお願いしようかな。



「それと恭文、お疲れさま」

「うん。ヒカリもシオンも、お疲れ様。それで、ありがとね」

「問題ありませんわ、お兄様」

「同じくだ。それに、礼を言うのはこちらだ。私達を信じてくれたからな」

「・・・・・・うん。それでアルト」



忘れちゃいけない、胸元の相棒にも声をかける。大事なとこだから、最後に回した。



「ありがと」

≪問題ありませんよ。というか、言いませんでした? ずっと一緒に戦うと≫

「それでも、ありがとうだよ。こういうのは気持ちだもの」

≪納得しました。あなたにしてはいい心がけですね≫

「でしょ? ・・・・・・ちょっと待ってっ! 『僕にしては』ってなにっ!?」










こうして、この事件は終わりを告げた。事後処理のあれこれはともかくとして、一応の終結。

結果だけを見れば、被害も少なくなかったけど・・・・・・それでも、被疑者は全員逮捕出来た。

ゆりかごも沈められたし、むしろ上々。そしてこの日、機動六課はようやく勝利を手に出来た。





設立された理由・・・・・・その内の一つの本分を貫き通し、その上で得られた勝利。





それを僕達は、これから少しずつ噛みしめる事になる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・それから、季節は一気に10月半ばに飛ぶ。ようやく、色々な事にカタがつき始めている。

この事件はジェイル・スカリエッティ事件・・・・・・JS事件と呼称され、数々の波紋を呼び込んだ。

そりゃ当然だ。全部のきっかけは最高評議会。局のトップだしな。普通にスキャンダルだよ。





で、世界はともかく個人個人の事後処理も本当に色々と大変だった。特に俺らだよ。

まぁ、後見人の方々が色々フォローしてくれたので、無事に俺とヒロは職場復帰は果たせた。

六課の方も、隊舎は復活してやっさん達は全員無事に帰還を果たした。





それとアースラだが、10月の頭にようやく退艦式を行えた。ついこの間の話だ。

その時には、機動六課メンバーは全員出席。あと、アースラゆかりの人間もだな。

俺とヒロも都合をつけて参加させてもらったが・・・・・・なんというか、実に感慨深い。





いやさ、ちょっと泣きそうになったんだよ。アースラに関わりは持ってないが、それでもだ。

長年頑張って戦って、働いた船がこれから眠るかと思うと、色々と来るものがある。

ただ、それは俺らよりも六課関係者だな。特にフェイトちゃんとやっさんは、ボロボロ泣いていた。





それをフォローするのが八神部隊長とかではなく、やっさんのしゅごキャラ二人って言うのがまたシュールだった。

シオンとヒカリ・・・・・・だったな。しかし、どっちも濃いキャラだったよなぁ。ただ、ヒカリとはかなり仲良くなった。

何かこう、俺達の中には通じ合えるものが出来たんだよ。なんだろう、色々無茶苦茶な相棒持ってる事とか?





で、そんなやっさんもやっと自宅勤務に戻った。・・・・・・すっげー嬉しそうだったなぁ。

アイツ、自分の家好きだもんな。引篭もり性質だから余計に。

かく言う俺は、自宅にドゥーエが住み着いた。てか、同棲始めた。





そして、ぶっちゃけていい? もうすっげー幸せ。尻に敷かれる予感なんて、軽く吹き飛ぶくらいに。

で、事後のあれこれについて、軽く触れようと思う。まず、レジアス・ゲイズ中将は逮捕された。

娘であり、今回の事件に関与していたオーリス・ゲイズ三佐もだな。現在、裁判の真っ最中だ。





その裁判の中で中将が局の問題点やなんやを色々暴露しまくって、非常に大変な事になっているが。

もう裁判なんだか、あの人主催の局の恥部や陰部の暴露大会なんだか、ワケの分からない事になっている。

しかも当然の事なんだが、事件への世間の注目度が高いせいで、非公開になんて出来ないから余計に性質が悪い。





ただ、被告人でありながらレジアス中将の顔が嬉しげで、生き生きとしているのが気になった。

とにかく、最高評議会を俺が全員殺した以上、スカリエッティを除くとレジアス中将は貴重な生き証人だ。

その生き証人が吐き出す色々な情報のために、管理局がしばらくは震撼し続けるのは確定だと思う。





そして次に、そのスカリエッティ。スカリエッティ自らが、進んで捜査協力に応じている。

もちろん条件はある。それは、自分の娘達・・・・・・ナンバーズの未来を保証する事。

ただそこに居るだけの『人形』から、『人』へ進化する機会を与える事。それが条件だそうだ。





ようするに、社会復帰や自立のための支援と教育をしっかりして欲しいという事だな。

その流れは3女・トーレと4女・クアットロと7女・セッテの三人を除くナンバーズにも影響を与えている。

ただの人形としてではない。不完全だが進化出来る『人』だからこそ選べる道を、模索しているらしい。





やっさんもそうだが、俺としては色々因縁もあるフェイトちゃんもここを許容していたのがビックリした。

なにやらやっさんにしゅごキャラが生まれてから、色々考えを改めたと言っていた。

変わっていけるという未来への可能性。それは誰の中にでもあるもので、誰の可能性だろうと否定は出来ない。





例えそれが、スカリエッティであろうと誰だろうと・・・・・・と、苦笑いしながら話していた。

あ、そういうわけだから前述の三人以外のナンバーズは更生プログラムが適用になった。

スカリエッティ自らが、娘達を『人形』・・・・・・道具として扱っていたと認めていたのが大きい。





色々娘達の間ではまだまだ迷いもあるらしいが、それでも長女のウーノと5女のチンクが取りまとめているとか。

ただ、前述の三人はそれに迎合しようとしない。スカリエッティが厳しい監視の元で話しても無駄とか。

まぁ、クアットロは分かる。ただ、他の二人だ。やっさんとフェイトちゃんに相当叩きのめされても、変わらずらしい。





軌道拘置所の中で、未だに『人形』としての自分にしがみついていると、やっさんが苦い顔で話していた。

・・・・・・話を戻そう。それでその更生プログラムには、ルーテシア・アルピーノと融合騎アギトも参加している。

アギトの方はともかく、ルーテシアちゃんはフェイトちゃん曰く、完全に無罪放免は難しいらしい。





召喚術による、中央本部や六課隊舎や廃棄都市部への破壊活動。そこが相当に問題視されている。

ただし、ここには続きがある。赤ん坊の時に誘拐され、事件後半では洗脳状態だったという要因がある。

本人も少しずつだが、外の世界の事を知ろうとしているし、拘置所に収監という可能性は低いとか。





魔力や召喚術の厳重な封印を施した上で、無人世界への何年かの島流しが妥当とか。

ただ、その場合保護責任者の問題があるので、そこが頭の痛いところと言っていた。

今はフェイトちゃんと母親であるリンディ提督がそれを務めているが、ずっとは無理だ。





互いに仕事もあるし、さすがにルーテシアちゃんを無人世界でずっと一人にするというのも出来ない。

なお、ヒロが最悪の場合はこっちの仕事やめて、ルーテシアちゃんの面倒を見るとか言い出している。

それに関しては、フェイトちゃんが必死に止めてる最中だったりする。まぁ、それはなぁ。





フェイトちゃんが止めるのにも、理由があるんだよ。ヒロがあんまりに熱入れてるから。

それで、その鍵となるであろうメガーヌ・アルピーノは、まだ目覚めてないしな。ただ、ここにも救いもある。

スカリエッティが吹き込んだように、レリックが無ければ目覚めないと言うことはないらしい。





聖王教会の医療施設で、現在も懸命な治療が続けられている。

もしかしたら、すぐに目を覚ます可能性もあるということらしい。

この辺りの話を聞いた時のヒロの喜びようは、まぁ察してくれ。





それとゼスト・グランガイツは・・・・・・あの後、すぐに息を引き取った。

ゆりかご落として、1時間後とかそれくらいだな。

本当に身体はボロボロで、レジアス中将と話すためだけに動いていたとか。





アギトの奴は相当ボロボロに泣いてた。あ、俺も一応顔は合わせてんだよ。

ヒロに付き合って、更生プログラム受けてるナンバーズ・・・・・・もっと言うと、ルーテシアちゃんに会いに行った時にな。

しかしヒロの奴、セインとウェンディに相当懐かれてるよな。姐さんとか言われたし。





あ、そうそう。更生プログラムと言えば、ヒロが名付け親になったシャナも受けている。

ただ、こっちは罪状が少々重いものばかりなので、別のもう少し監視が厳重なところだ。

実刑を受けるかどうかという話になりかけたが、それは無しになった。





原因は、フォン・レイメイの所業だ。あの野郎、相当乱暴にシャナを扱っていたらしい。

その辺りはご想像にお任せするが、シャナはフォン・レイメイの暴力によって支配されていた。

もちろん、だからって罪が全部帳消しになる事はないが、それでも多少は温情をもらえた。





それが更生プログラム。ヒロ曰く『私の人生をRemixしてやる』とか言って、張り切りまくっているようだ。

とにもかくにも、色々な要因が絡みに絡んで発展しまくった事件は・・・・・・一つの決着を迎えた。

これから局では色々な意味で改革が起こると思う。てゆうか、起きなきゃおかしい。





起きた改革によって、世界が少しでもマシに変わって欲しいと、俺はただただ、本局の自分のデスクで願うばかりだ。










「・・・・・・これ、今日も午前様かな」

≪ドゥーエ女史なら大丈夫でしょうが、多少はサービスするべきでしょうか≫

「そうだよなぁ。うぅ、まだ左腕治ってねぇってのに」



ドゥーエとの時間と引き換えにへし折られた腕は、未だギブスのまま。

これ、治ったらじっくりリハビリだな。無茶させたら、痛めちまうよ。



「局長、俺にも優しさくださいよー。俺、家に素敵な彼女待たせてんっすけど」

「やかましい。俺も付き合ってやってるんだから、とっとと全部終わらせろ。・・・・・・全く、お前らは本当に。
やんちゃなのは相変わらずなのが分かって、俺は泣きたいぞ?」

「じゃあ泣いてください。それが上司の仕事と、パトレイバーの後藤隊長も言ってますし」

「よし、お前は今日は泊まりだな。俺の分の仕事を半分分けてやる」

「鬼ー!!」



・・・・・・ちくしょお、局長が俺をいじめる。普通に無茶した俺とヒロへのお仕置きを敢行してくる。

そうして俺らに、労働規制法無視な残業を押し付ける。・・・・・・え、ヒロ?



「局長、サリなんかいいから、私に優しさをくださいよ。私、家で素敵なゲーム達が待ってるんですよ」

≪それで徹ゲーだろ?≫

「そうそう」

「そしてお前は普通に救いようがないなっ! 少しはサリエルを見習って家に男が待ってるとか言えないのかっ!?」

「なんですか、それっ! 私は充分満たされた人生送ってますよっ!! 失礼な事言わないでもらえますっ!?」










隣で死にかけながら、書類に向かってるに決まってるじゃないのさ。あのヒロでも、局長は怖いんだよ。





くそ、俺らの平穏な日々はまだまだ戻って来そうにないなぁ。




















(第41話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、ほぼ10話に及ぶ戦闘話がようやく終わったー」

歌唄「長かったわね。走り切ったわね。そして全部書き切れると思ってなかったらしいわね」

恭文「戦闘だけで、一つの中編になったしね」

歌唄「そんなわけで、本日のあとがきのお相手は月詠歌唄と」

恭文「蒼凪恭文です。いやぁ、僕達頑張ったー」





(蒼い古き鉄、何気に頑張ったらしい)





歌唄「でもアンタ・・・・・・酢昆布って。まさかあむルートの6話でフェイトさんが酢昆布持ってきたのって」

恭文「うん、これが原因だけど何か?」

歌唄「・・・・・・いや、何でもないわ。そうよね、アンタは常識外の生命体だったものね。何でもありよね」

恭文「歌唄、まずその言い方は色々引っかかるからやめて?」

歌唄「気にしちゃ負けよ」

恭文「いやいやっ! 気にするからっ!!」

歌唄「それで、しばらくはエピローグ話よね」

恭文「うん。せっかくだし、とまとFSでもやったサウンドステージ04の話もしたいなーと。
てゆうかさ、下手するともう10話くらい頑張らないと、しっかりエピローグ出来ないという事に」

歌唄「あぁ、ティアナさんとかよね」

恭文「そうそう」





(毎度毎度の事ながら、普通に難易度が上がりました)





恭文「別にこのままテレビみたいに解散ーでもいいんだけど、Remixで差異は出来たしそこも出したいなーと」

歌唄「というかアレよね、三角関係に決着つけないとだめなのよね。・・・・・・アンタだけは知らないけど」

恭文「そうなってるね。フェイトとティアナは普通に火花散らしてるけど、僕だけ知らないんだよね。
あはははは、なんかすごい変な状況になって来たなぁ。てゆうか、僕が分からないって無くない?」

歌唄「大丈夫よ。アンタ、そういうキャラだし。・・・・・・あ、実はこんなご意見をもらったの」





(あむが新訳stsやFSに出る方法として、六課結成前に恭文がしゅごキャラクロスしちゃうのはどうでしょうか?

・本編ではメルティランサーとクロスしていた時期に、フェイトの補佐ではなく恭文個人として関わる。メルティランサーとは六課解散後に改めてクロスする。

・しゅごキャラ登場人物全員の年齢設定もそれに合わせて改変して、sts開始時点で中学1年生相当になってる日奈森あむはミッドに留学に来ており、恭文宅に下宿(同棲にあらず)しながら六課メンバーと関わる。

・フェイト、リイン、シャーリー、ティアナとあむはミッドに来てから初めて面識を持った。

・シオンとヒカリもsts開始時点で生まれているんだけど、しゅごキャラのことはリインとヒロサリさんしか知らない。
・リイン以外の六課メンバーでしゅごキャラが見えるのはスバルとヴィヴィオだけ。対外的にはキャラなりのこともレアスキル扱いされるのが嫌で隠している。

・しゅごキャラクロス終了後なので恭文はラン・ミキ・スゥ・ダイヤと、あむはシオン・ヒカリと、互いの連れているしゅごキャラ全員とキャラなりできる。特に素の戦闘力が無い分あむはマジ良太郎さん方式になってる。

のっけから色々パワーアップしてる分、恭文が主人公を務めるのは難しいかも知れませんが、あむやスバル達FWメインで物語を構築するにはこう言うのも有りだと思います)





恭文「えー、ありがとうございます。・・・・・・あぁ、これは雑記のミキとの実験でやったアレコレの発展形だね」

歌唄「そうね。でも、これなら出来るのよね。あむの視点多めにすれば、また色も変わるし」

恭文「前半あむで、後半僕って感じ? でも、これだとヒロイン誰よ」

歌唄「当然、私よ」





(ドS歌姫、遠慮なく言い切った)





恭文「どうしてそうなるっ!? 普通にフェイトでいいじゃんっ!!」

歌唄「何言ってるの。このシチュなら、私はアンタの事もう好きになってるしいいじゃない。
アレよ、たまにはフェイトさんから離れて、私の所に帰って来てくれてもいいじゃない」

恭文「なんかすっごいやる気出してるっ!? そして、そんなどっかの愛人みたいな言い方するなっ!!
ほら、トップアイドルでしょっ!? もうちょっと自分を高く持ってよっ!!」

歌唄「・・・・・・何言ってるのよ。私、アンタじゃなかったらこんな事言わないわよ」





(ドS歌姫、ちょっとプンプン。それに蒼い古き鉄、首を傾げる)





歌唄「というわけで、私ヒロインのRemix・IFに期待しつつ本日はここまで。お相手は月詠歌唄と」

恭文「あ、蒼凪恭文でした。あの、えっと・・・・・・え、マジでやるの?」

歌唄「アプローチとしては面白いから、考えてはみたいそうよ。なお、やるなら当然また色々差異は出すけど。そして、私がヒロイン」

恭文「いやいや、このプロットだと歌唄は出番ほとんど取れないじゃないのさっ! 基本地球在住なんだしさっ!!」










(そんな事、ドS歌姫には関係がないらしい。もうすっごいやる気を出している。
本日のED:和田光司『With The Will』)




















恭文「・・・・・・フェイト、髪がスッキリしちゃったね」

フェイト「そうだね。結構長めに斬られちゃったから」





(詳しくは、Remix33話を参照してください)





フェイト「バランスを取ったら、こうなっちゃった。こんなに短いの、初めてかも」

恭文「腰まであったのが、肩甲骨までになったしね。
あー、でもこれだとツインテールは厳しいかも」

フェイト「そうだね。だから、バリアジャケットの時は一つ結びかな。高速型だし、髪は纏めておかないと。
・・・・・・ね、私その・・・・・・今はボブロングという感じなんだけど、どうかな。似合ってる?」

恭文「うん、似合ってるよ。こういうフェイトも結構好みかも。凄く綺麗だし可愛い」(言いながら、一杯撫でる)

フェイト「あぅ・・・・・・あの、ありがと。そう言ってもらえると、すごく嬉しいよ」

なのは(遠目で見ている)「・・・・・・恭文君とフェイトちゃん、もうずっとあの調子だね」

師匠「普通に無自覚にイチャつくよな。別に変なことしてるわけじゃねぇのに、なんでか甘くなるんだよ」

なのは「アレ、なんでだろ。もう他のみんなもお腹いっぱいって顔だし・・・・・・あーん、どうにかしてあの甘いのはやめさせたいよー」

師匠「いや、無理だな。本人達も無自覚だしよ」










(おしまい)





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